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新しい婚約者

ダルデンヌ公爵。

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ダルデンヌ公爵が家を訪ねてきた日の夜、お父様たちに話があると食事の後少し時間を貰うことにした。

「メルティ、それで話とはなんだい?」
今日の出来事を全く聞いていない…ということは無いだろうが、私から話をして欲しいのかお父様は何も言おうとしない。


「本日、お父様達が居ない時のお話なのですが…。ダルデンヌ公爵とアポロ様が急遽来訪されました。」


2人が何をしに来たのかを皆に伝えると、皆の顔が少しずつ渋くなっていく。


「本当に面倒だな…慰謝料か…今まで援助した金を返金しなくていいということで終わらせたのが悪かったか…。」


「あ、あの…今まで怖くて聞けなかったのですが、ダルデンヌ公爵家に援助した金額はいくら位なのでしょうか?」


ダルデンヌ公爵領は小麦の産地として有名だが、ここ数十年災害などが原因で立ち行かなくなっているなんてことも無いし、ある程度お金は持っているはずだ。

援助金も金貨100枚くらいだろう…。領民の1年の稼ぎが金貨1枚いくかいかないか位だし。そのくらいあれば足りるはずだ。

「金貨1000枚は軽く超えている…。」


「い、い、いっせんまいですか!?」

この言葉には思わずお母様たちも吃驚しているくらいだからかなりの金額ではないだろうか。


「あぁ…私たちが1ヶ月、ドレスなどを買わずに生活しても金貨10枚~20枚位だ。あの一家がどれだけ金遣いが荒いのか、何となくわかっただろう?」


「え、えぇ…思っていた以上でした…。金貨1000枚…何に使っているのでしょうか。寧ろこちらが返済して欲しい位のものでは無いでしょうか。」


「毎月10枚から20枚くらいでかりに来ていたからかな。何に使っているのか聞いてみたが、領民が苦しむ姿を見たいのか?と何度も言われたよ。だから気付いていなかった鉱山をひとつまるまる譲り受けたんだがな…。」


領民が苦しむ姿が…。例えば災害などで復興の援助をしているなどであればわかるけれど…。それ以外に何があるというのか。


「私が知らなかっただけでダルデンヌ公爵領は最近大きな災害があったのでしょうか?」


「あそこはここ数十年安定しているはずだ。そういったことがあれば、国王に報告が義務付けられている。領民を理由にして自分たちが使っているんだろうな…」


私たちの話に入ってきたのは他の誰でもないオスト様だった。婚約して5年間。毎月であればそれなりの金額になるのも無理は無い。


「ヘル。君に頼みがある。ダルデンヌ公爵領民が無理な暮らしをしていないか。今まで貸した金の流れを調べてきてくれないか?俺は先に王宮に戻ることにする。ダルデンヌ公爵から聞き捨てならない言葉もあったからね…」


「わかったよ。オスト。僕は調べてから王都に戻るから先に帰っていて欲しい。」

ヘルお兄様はそれだけ言うと部屋からそそくさと出ていった。恐らく今後どう動くか1人で色々考えるのだろう。

オスト様はお父様達にも今後あの2人が訪ねて来たらすぐ伝えるように指示を出すとそのまま部屋に戻っていく。

「婚約者交換出来たのは良かったですが…なんだか周りが色々と面倒くさいですね…」


「元々、ダルデンヌ公爵家は色々と面倒な家なんだ。ウラヌスが妹を嫁に出したのだって初めは反対していたくらいだしな。」

ウラヌス国王陛下の妹、ヘシオネリア姫とダルデンヌ公爵は恋仲だったが、ウラヌス国王陛下の両親は反対していたらしい。
元ダルデンヌ公爵も、現ダルデンヌ公爵も金遣いが荒く、女遊びが激しかったし国を乗っ取ろうとしている噂まで立っていたくらいだったそうだ。

「それでもヘシオネリア姫はダルデンヌ公爵と結婚すると言って聞かず、身篭ってしまえば結婚できると考えた2人は夜な夜な2人で密会を重ねた。そして生まれたのがアポロという訳だ。」

「そうだったんですね…。」
ヘシオネリア姫も王族だから、外聞を考えてお腹が大きくなる前に仕方なく結婚式を行ったらしい。
それからもやはり金遣いは荒く、姫は姫で大人になりきる前に結婚をしたからか右も左も分からない状態だった。そしてダルデンヌ公爵家に染まってしまったようだった。


「少しでも…と望みをかけてメルティを婚約者にと頼まれたんだがな…メルティには辛い思いをさせてすまなかったな。親の都合に振り回してしまった。」

いつも堂々としているお父様が凄く小さく見える。

「大丈夫ですよ。アポロ様との色々があったから、きっと今があるのだと思います。王妃教育は確かに大変ですが、色々知識が得られるのは楽しいですし、オスト様と出会えたおかげで結婚が少し楽しみになりました。」

素直な気持ちをお父様とお母様に伝えると、お母様が優しく抱きしめてくれる。普段からあまり話すタイプではない分、こういう時の抱擁は嬉しい。

「アレウス。メルティは曲がらず真っ直ぐ育ってくれています。私たちは私たちができる手助けをしていきましょう。大丈夫ですよ。私たちの娘なんですから…。」

家族団欒の時間を少し楽しんだあと私たちは自室へと戻った。

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