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新しい婚約者
突然の来客。
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「メーティアお嬢様!!」
オスト様と2人でゆっくり読書をしているとバネッサが慌てた様子で庭にやってきた。
「バネッサがそんなに慌てるなんて珍しいわね…そんなに慌ててどうしたの…?」
「実は…」
私の耳元で、バネッサが話し始める。バネッサの話によるとダルデンヌ公爵とアポロ様が家を訪ねてきたそうだ。
しかもアポ無しである…。
「お父様たちは?」
「今、視察に出ておられて、家にはメーティアお嬢様と、オスト殿下しか居られず…」
と、いうかよく2人だけ残して出かけたものである。まぁ、お父様たちのことだ。2人なら大丈夫だろう…くらいにしか思っていなさそうだけど。
「そうなのね。オスト様、申し訳ないのですが、来客が来たようなのでちょっと行ってまいります。」
オスト様にそれだけ告げると私は足早に応接室へ向かった。
「お待たせして申し訳ございません。ダルデンヌ公爵様、アポロ様。」
カーテシーをしてお詫びを伝えると2人はふんぞり返った態度で返してくる。
「本当に遅かったな。公爵を待たせるなんて何事だ!」
いえ、急に来たあなた方が常識知らずなのですが…その辺りは分かっておられるのでしょうか…
思わず喉元まで出そうになった言葉を頑張って飲み込む。
「申し分ございません、それでご要件はなんでしょうか。」
言い返したいことは山ほどあったが面倒なことにもなりそうだったので早速要件を聞くことにした。
「婚約破棄の件だが。君が全て悪いと聞いた。だから慰謝料を払って頂きたい。」
「はい?どうやら私の耳が悪くなってしまったようです…もう一度聞いてもよろしいでしょうか?」
ダルデンヌ公爵が言っていることがよく分からず思わず聞き返してしまった…慰謝料って。そもそもその話は随分前に話が纏まっていたはずなのだけれど…。
「はぁ…君は私の言葉も理解できないのか?どうやらアポロと婚約破棄してもらって正解だったようだ。アーテリアは律儀でとてもいい子だからね。」
理解できない訳では無いのだ。ただ、話が纏まったはずなのになぜ今更蒸し返してくるのか。そもそも今回の件はアーテリアの話にアポロも乗った訳だし、最後に私のことを貶していたことを覚えている。寧ろ…慰謝料が欲しいのはこちらだ。
「慰謝料については家族の問題ですので父に聞いてみないとお伝えできません。それに今回の件は全てご納得頂けているとお伺いしているのですが、なにか相違がございましたでしょうか?」
父上たちからしたら今まで援助してきたお金を全て返して欲しいと思っていたようだが、それ以上に縁を切りたいと言っていた。だから敢えて慰謝料などを請求しなかったのだ。その代わり一山領地として貰うという約束をしたと言っていた。
この山…特に調べもせずに二言返事で譲ってくれたが、実際は鉱山になる可能性を秘めていると調査したニケオスお兄様が言っていた。
鉱山になろうが今更返してくれと言われても返す気はさらさらないわけだけど…。
それにアーテリアが律儀でいい子なわけが無いだろう。恐らく、猫を被っているだけだと思う。
「ふん。それはそれだ。あとから見えてくることもあるだろう。お前が悪女だということは分かっているんだ。アポロという婚約者がおりながら、ヘリーオストとも付き合っていたのだろう?とんだ阿婆擦れだな。」
あ、あ、阿婆擦れ!?そもそもオスト殿下とあったのはあのパーティーが始めてだし、ほとんど領地から出ず、お茶会などの参加も公式的なものだけ。パーティーに至っては初めて参加したくらいだ。どこで他の男と仲良くなれるのか…こちらが教えてもらいたいくらいである。
「はぁ…そのような言葉どなたから聞いたのですか?」
「アーテリアとアポロが言っていたぞ。」
アポロ様の方を見ると、私と顔を合わせる気は無いようだ。きっと嘘を話していることは自分が一番わかっている事だからだろう。都合の悪い時はいつもこれだ…。
話が通じない間に説明するのはかなり疲れる…どうやってこの場を切り抜けるか頭をフル回転させていると、ガチャリと応接室の扉が開いた。
⟡.·*.··············································⟡.·*.
ヘリーオスト王太子殿下視点。
メルティとコルベール領に来てから1週間が経った。久しぶりに公務もなくゆっくりできている気がする。王宮に戻れば嫌でも公務三昧だし、今のうちに好きな本たんまりと読もうと思っていると、メルティの侍女であるバネッサが少し慌てた様子でやって来た。
メルティに気づかれないように様子を見ているとバネッサが耳打ちしたあたりから少しだが顔の表情が曇っていく。
コルベール家は本当に表情が乏しい。特にヘルとアフロディーナ様、メルティは顔の表情がほとんど変わらない。そんなメルティの色々な顔を見分けるのが楽しくなりつつある。
「オスト様。申し訳ないのですが、来客が来たようなので行ってまいります。」
メルティは足早に応接室に向かった。
「アルマン。何があったか知っているか?」
「はい。先程メイド達が話していたことを小耳に挟んだ程度ですが…前触れもなく、ダルデンヌ公爵とその息子のアポロ様が訪ねてきたようです。」
まさかこのタイミングで来るとは、良いのか悪いのか…という感じだな。
確か朝からコルベール侯爵もアフロディーナ様も出かけるとおっしゃっていた。ニケやヘルも視察で出かけると言っていたし…
「そうか…。タイミングが悪いな。アルマンは取り敢えず様子を見ておいてくれ。話が通じなさそうであれば俺が出よう。」
「承知いたしました。」
それから15分後、アルマンに代わりバネッサが俺の元へやって来た。
オスト様と2人でゆっくり読書をしているとバネッサが慌てた様子で庭にやってきた。
「バネッサがそんなに慌てるなんて珍しいわね…そんなに慌ててどうしたの…?」
「実は…」
私の耳元で、バネッサが話し始める。バネッサの話によるとダルデンヌ公爵とアポロ様が家を訪ねてきたそうだ。
しかもアポ無しである…。
「お父様たちは?」
「今、視察に出ておられて、家にはメーティアお嬢様と、オスト殿下しか居られず…」
と、いうかよく2人だけ残して出かけたものである。まぁ、お父様たちのことだ。2人なら大丈夫だろう…くらいにしか思っていなさそうだけど。
「そうなのね。オスト様、申し訳ないのですが、来客が来たようなのでちょっと行ってまいります。」
オスト様にそれだけ告げると私は足早に応接室へ向かった。
「お待たせして申し訳ございません。ダルデンヌ公爵様、アポロ様。」
カーテシーをしてお詫びを伝えると2人はふんぞり返った態度で返してくる。
「本当に遅かったな。公爵を待たせるなんて何事だ!」
いえ、急に来たあなた方が常識知らずなのですが…その辺りは分かっておられるのでしょうか…
思わず喉元まで出そうになった言葉を頑張って飲み込む。
「申し分ございません、それでご要件はなんでしょうか。」
言い返したいことは山ほどあったが面倒なことにもなりそうだったので早速要件を聞くことにした。
「婚約破棄の件だが。君が全て悪いと聞いた。だから慰謝料を払って頂きたい。」
「はい?どうやら私の耳が悪くなってしまったようです…もう一度聞いてもよろしいでしょうか?」
ダルデンヌ公爵が言っていることがよく分からず思わず聞き返してしまった…慰謝料って。そもそもその話は随分前に話が纏まっていたはずなのだけれど…。
「はぁ…君は私の言葉も理解できないのか?どうやらアポロと婚約破棄してもらって正解だったようだ。アーテリアは律儀でとてもいい子だからね。」
理解できない訳では無いのだ。ただ、話が纏まったはずなのになぜ今更蒸し返してくるのか。そもそも今回の件はアーテリアの話にアポロも乗った訳だし、最後に私のことを貶していたことを覚えている。寧ろ…慰謝料が欲しいのはこちらだ。
「慰謝料については家族の問題ですので父に聞いてみないとお伝えできません。それに今回の件は全てご納得頂けているとお伺いしているのですが、なにか相違がございましたでしょうか?」
父上たちからしたら今まで援助してきたお金を全て返して欲しいと思っていたようだが、それ以上に縁を切りたいと言っていた。だから敢えて慰謝料などを請求しなかったのだ。その代わり一山領地として貰うという約束をしたと言っていた。
この山…特に調べもせずに二言返事で譲ってくれたが、実際は鉱山になる可能性を秘めていると調査したニケオスお兄様が言っていた。
鉱山になろうが今更返してくれと言われても返す気はさらさらないわけだけど…。
それにアーテリアが律儀でいい子なわけが無いだろう。恐らく、猫を被っているだけだと思う。
「ふん。それはそれだ。あとから見えてくることもあるだろう。お前が悪女だということは分かっているんだ。アポロという婚約者がおりながら、ヘリーオストとも付き合っていたのだろう?とんだ阿婆擦れだな。」
あ、あ、阿婆擦れ!?そもそもオスト殿下とあったのはあのパーティーが始めてだし、ほとんど領地から出ず、お茶会などの参加も公式的なものだけ。パーティーに至っては初めて参加したくらいだ。どこで他の男と仲良くなれるのか…こちらが教えてもらいたいくらいである。
「はぁ…そのような言葉どなたから聞いたのですか?」
「アーテリアとアポロが言っていたぞ。」
アポロ様の方を見ると、私と顔を合わせる気は無いようだ。きっと嘘を話していることは自分が一番わかっている事だからだろう。都合の悪い時はいつもこれだ…。
話が通じない間に説明するのはかなり疲れる…どうやってこの場を切り抜けるか頭をフル回転させていると、ガチャリと応接室の扉が開いた。
⟡.·*.··············································⟡.·*.
ヘリーオスト王太子殿下視点。
メルティとコルベール領に来てから1週間が経った。久しぶりに公務もなくゆっくりできている気がする。王宮に戻れば嫌でも公務三昧だし、今のうちに好きな本たんまりと読もうと思っていると、メルティの侍女であるバネッサが少し慌てた様子でやって来た。
メルティに気づかれないように様子を見ているとバネッサが耳打ちしたあたりから少しだが顔の表情が曇っていく。
コルベール家は本当に表情が乏しい。特にヘルとアフロディーナ様、メルティは顔の表情がほとんど変わらない。そんなメルティの色々な顔を見分けるのが楽しくなりつつある。
「オスト様。申し訳ないのですが、来客が来たようなので行ってまいります。」
メルティは足早に応接室に向かった。
「アルマン。何があったか知っているか?」
「はい。先程メイド達が話していたことを小耳に挟んだ程度ですが…前触れもなく、ダルデンヌ公爵とその息子のアポロ様が訪ねてきたようです。」
まさかこのタイミングで来るとは、良いのか悪いのか…という感じだな。
確か朝からコルベール侯爵もアフロディーナ様も出かけるとおっしゃっていた。ニケやヘルも視察で出かけると言っていたし…
「そうか…。タイミングが悪いな。アルマンは取り敢えず様子を見ておいてくれ。話が通じなさそうであれば俺が出よう。」
「承知いたしました。」
それから15分後、アルマンに代わりバネッサが俺の元へやって来た。
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