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国王主催のパーティーで

アーテリアからの提案

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「ちょっと!なんで無視して1人で言ってしまうのよ!!」


まさかの国王の御前で、大きな声を上げてきたのは…アーテリアだった。


「アーテリアよ。静かにしないか…。借りにもお前はオストの婚約者だろう。」

アーテリアに婚約者がいたことは知っていたが、まさかヘリーオスト王太子殿下だったとは…全然知らなかった。

まぁ、見た感じ好きで婚約をしたという感じはなさそうだけれど…アーテリアは私よりも4つ年上だし、ヘリーオスト王太子殿下もヘルメントお兄様と同じ21歳だったと記憶している。
貴族位や、年齢の近さから考えると同年代の人が少なく仕方なしに婚約をしたのだろう…。

あとはヘリーオスト王太子殿下見ている感じ、アーテリアを止めるのはもう諦めている…という感じがする。

きっと私と同じで婚約破棄出来たら嬉しいなと思っている感じだ。


「メーティア!静かにしなさいって言われているわよ!」
いえ…言われているのは貴方であって私ではありませんよ。責任転嫁もやめて頂きたい。


「いえ、アーテリア様。周りを見てくださいませ。今貴方はこの場で一番取っては行けない行動をしていますよ。」

それにしても…なんでこんなにこの人は私に話しかけてくるのだうか。他の人がもう相手にしてくれないからなのか…でも私も相手にしているつもりは無いから本当に不思議でならない。

「あら…皆さんが私に注目して下さるなんて嬉しい限りですわ!では折角ですしこの場で叔父様にお伝えしたいことがありますの。」

お、お、叔父様!?


国王主催のパーティーでまさかの国王陛下を叔父様呼びとは…皆も同じ思いなのか顔面蒼白だ…。


国王陛下に至っては口の端がピクピクしている。恐らく皆の手前怒るのを我慢しているのだろう。

「な、な、なんだい?アーテリアよ。言ってみなさい…。」


「はい。では…。メーティア!」


「え!?私ですか?何でしょうか…?」

国王陛下に伝えたいことがあると言ったのに急に何故私の名前を呼ぶんだろうか。
国王陛下をチラリと見るとおでこに手を当て頷いている。取り敢えず話を聞いてやれということみたいだ。


「あなたの婚約者を私に譲ってちょうだい!!」


パーティー会場にいる人達アーテリアの声が届いたのかザワついていた会場がシンと静まり返った。

そして、お父様達も何事だと近寄ってくる。

「はぁ…アーテリア様には婚約者いらっしゃるじゃないですか…」

ヘリーオスト王太子殿下を見るとどこか遠い目をしている。

「では、こうしましょう。私と婚約者を交換しましょう。叔父様よろしいですか?」

アーテリアは国王に近づきながら交換したい旨を伝える。

アポロ様に至っては「私を取り合うのはやめてくれ」と言っており、事の重大さが分かっていないようだった。


「アーテリアはアポロを好きになってしまったと言うことかな?それならオストとの婚約破棄にしようか。勿論慰謝料は貰うが構わないかね?」

「いえ、慰謝料は支払いませんわ!だって新しい婚約者はここにいるじゃありませんか!」

そう言って私の肩を持ち、ズルズルと国王陛下の前へ突き出すアーテリア。


「そういう問題では無い。それにメーティアは関係ないだろう?アーテリアが勝手に言ってきたことだ。」

本当に国王陛下の言う通りだ。私はただ巻き込まれただけでしかない…慰謝料支払う支払わないはそちらの問題だ。

「とりあえず今はパーティーの場だ。この話は後でしよう。両親も連れてきなさい。皆騒がせてしまってすまない。パーティーを楽しんでくれ。」

それだけ言うと国王陛下、王妃、ヘリーオスト王太子殿下が会場を後にした。アーテリアは何も無かったかのようにアポロ様に近寄っていきアポロ様の腕に抱きついた。
アポロ様はそんなアーテリアに鼻の下を伸ばしており満更でも無い様子だ。

そんな2人の姿を見ても何も思うことはなく、寧ろ2人が近くから居なくなってくれたことがただただ嬉しかったのは言うまでもない。



⟡.·*.··············································⟡.·*.

ヘリーオスト王太子殿下視点。


歳が近く、貴族位的にも近いという理由だけで決まったアーテリアとの婚約も、今年に入って10年が経過しようとしていた。
婚約をしていれば、女性が18になる頃に結婚という流れになるのが通例だが、相手が相手なだけに一筋縄では行かず、結婚せずに2年が経っていた。

「オストよ。先程のアーテリアの件だが…」


「はい。婚約破棄で構いません。寧ろアーテリアが王妃にならないと言うだけでこの国も安泰になるというものです。」

王妃教育もままならず、執務を手伝うこともしないアーテリアにはほとほと困り果てていた。頑張っていて覚えられないのであれば、いくらでも手助けしたのだが、そういう訳でもなく向こうから言われなければこちらから父上に進言するつもりだったくらいだ。

「ふむ。そう言うと思っておった。タイミングがなくズルズルとここまで来てしまったからな。取り敢えず、アレウスたちを読んで少し話し合うか…」


父上がそう言うと同時に扉を叩く音が聞こえた。
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