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時渡り。
フランチェスカのおかげで少しだけすっきりしました。
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お兄様に呼び出された次の日、早速カルミアに動きがあった。
フランチェスカが無視したとか何とか言って校門の前で泣き喚いているのだ。
周りもそれを見てはいるが関わりたくないのか誰も間に入るものはいなかった。
柱の上から二人の様子を眺めていると、カルミアの声がさらに大きくなる。
「酷いわ!そんな言い方するなんて…私たち友達じゃない!」
その問いに、間髪入れず「え?そうだったんですか?」と返したフランチェスカをみて思わず笑いそうになってしまった。
フランチェスカは何度も助けを求めた顔をしていたが、昨晩お兄様に言われたことを思い出す。
「いいかい?明日カルミアは恐らく動くと思うんだ。今までと同じなら、何故か分からないがオルテンシア王太子殿下がフランチェスカの前に現れる。普通だったら阻止してくれと言いたいところなんだが…エディは干渉しないで欲しいんだ。見ているだけにしてくれ。」
なぜ干渉してはいけないのか…少し気になるところではあったけど、恐らく私たちは本当にこの時代を生きる人間ではないからなのではないだろうか。
お父様たちは今精神だけ数年前に戻ってきているといっていたし、きっと解決することには元の時間軸に戻るということなのだろう…。と思っていたけど、私事態は戻れるか謎だ。だって猫だから…。
小さい頭をフル回転させて考えていると、突然静寂に包まれた。馬車が校門の前に停まり、扉が開くと、人間の時に嫌というほど見てきた、オルテンシア王太子殿下だった。
「フランチェスカよ。久しいな。」
「オルテンシア王太子殿下。お久しぶりでございます。」
簡単に挨拶をするとカーテシーをするフランチェスカ。以前の私も同じように挨拶をしていたのだろうか。
最近は昔の細かいことは思い出せなくなってきている。処刑されるまでに大切な時系列は何となく覚えているけど、それだけだ。
「まぁよい。今から王宮に行くぞ。」
さすが王族…という感じか、あまりの上から目線に見ているだけで嫌になってくる。フランチェスカも顔には出ていないものの、いつも見るような笑顔ではなく、能面にただ張り付けただけなような笑顔だった。
「申し訳ございません。私、用事がありますので王宮へはいけません。それに貴族院に通っている間は執務など免除されるはず…私はそのようにオルテンシア王太子殿下のお義母様から教えていただいたのです。」
今までの私ならここでなし崩し的連れて行かされて王太子殿下の代わりに仕事をやっていたところだろう…
「フランも成長したにゃ…」
王太子に断るだけでもものすごく勇気のいることだろうが、きちんと自分の気持ちを伝えられるようになったということはそれだけ成長しているということだ。自分で自分をほめてやりたい。
「お、お前!そんな言い方していいと思っているのか!?」
「私はただ殿下のお義母様と話したことを伝えただけにすぎません。もし何か思うのでしたらご自分でお義母様に聞いてくださいませ。それでは…」
それだけ言うとフランチェスカは踵を返して歩き出した。
どうせここまで来たのだって、自分の仕事を押し付けるためだ。考えなくてもわかる。
第三者の目線で王太子を見ていると、王太子の性格を考えれば1年間何していたかわかりそうなものなのに、どうして自分は知ろうとしなかったのか…不思議でならなかった。
フランチェスカが帰ろうとしている姿を見て王太子は、「いったい何が起きたんだ!?」という顔をしていた。
そして、今まで話もせず蚊帳の外にいたカルミアが急に眼をキラキラさせながら王太子殿下に近寄っていく。
「オルテンシア王太子殿下ですかぁぁ。はじめましてぇぇ。フランチェスカの親友のカルミア・パンナコッタと申しますぅ。よろしくお願いいたしますぅ。」
ウィンクをしながら必死に猛アピールをしていた。
王太子殿下はカルミアに「あ、あぁ…」と返していたけどどうやらそれどころではないようだ。
「いい気味だにゃ…」
「なぁ~にが「いい気味だにゃ」よ!少しは助けてくれてもよかったじゃない!」
私のプリチーな頬をつねりながら話しかけてくる。
「ひはたはにゃひのにゃ。」
フランチェスカは気づいているだろうか。そう言いながらも、今まで以上に最高の笑顔で私のことを抱きしめていることに…
今までずっと何も言わずに我慢していたからこそ、言い返せたことに少しすっきりしたんだろうね。
私も見ていてすごくすっきりしたから。感謝の気持ちを込めてもう少しだけプリチーな頬をつねる栄誉を与えることにした。
⟡.·*.··············································⟡.·*.
???視点。
「おい!ガロファノはいるか!?」
「はい。こちらに…」
オルテンシア王太子殿下に呼ばれて急いで王太子殿下のもとへ向かう。今日の王太子殿下も大層機嫌が悪そうだ。
「あいつはどこにいる。」
あいつとは…恐らくフランチェスカ様のことだろう。この人は自分の婚約者の名前すら憶えていないようだ。仕事だっていつもフランチェスカ様がほとんど行っていて、王太子殿下が行っているのは印を押すくらいなものだ。
「貴族院に行かれていると思いますが…」
貴族院に行っている間は公務は免除されるはずだ。国王も、王妃もそれは認めているし、もっと知見を広げてきなさいと仰っていた。王太子殿下も聞いていたはずなのだが…忘れてしまったんだか、聞いていなかったんだかは定かではない。
「なに!?すぐに呼んで来い!」
「申し訳ございませんが、貴族院に行かれている間は学業優先でございます。ですので呼んでくることは不可能です。ご自身でお仕事を進めてくださいませ。」
王太子殿下は本当に何もできない…国王もいつも頭を抱えているくらいだ。
「仕方がない。では私が直接貴族院へ行こうではないか。そしたらあいつも断れまい。」
確かにフランチェスカ様はあまりご自分の意見を言えないですもんね。そうさせたのはオルテンシア王太子殿下あなただということに気付いているのでしょうか…。
私はため息をついてから王太子殿下の後を追った。
この後、久しぶりに会ったフランチェスカ様の行動は王太子殿下だけでなく、私までもが吃驚したのは言うまでもない…
「オルテンシア王太子殿下。今回は諦めましょう。帰りますよ。」
「あ…あぁ…そうだな…」
フランチェスカが無視したとか何とか言って校門の前で泣き喚いているのだ。
周りもそれを見てはいるが関わりたくないのか誰も間に入るものはいなかった。
柱の上から二人の様子を眺めていると、カルミアの声がさらに大きくなる。
「酷いわ!そんな言い方するなんて…私たち友達じゃない!」
その問いに、間髪入れず「え?そうだったんですか?」と返したフランチェスカをみて思わず笑いそうになってしまった。
フランチェスカは何度も助けを求めた顔をしていたが、昨晩お兄様に言われたことを思い出す。
「いいかい?明日カルミアは恐らく動くと思うんだ。今までと同じなら、何故か分からないがオルテンシア王太子殿下がフランチェスカの前に現れる。普通だったら阻止してくれと言いたいところなんだが…エディは干渉しないで欲しいんだ。見ているだけにしてくれ。」
なぜ干渉してはいけないのか…少し気になるところではあったけど、恐らく私たちは本当にこの時代を生きる人間ではないからなのではないだろうか。
お父様たちは今精神だけ数年前に戻ってきているといっていたし、きっと解決することには元の時間軸に戻るということなのだろう…。と思っていたけど、私事態は戻れるか謎だ。だって猫だから…。
小さい頭をフル回転させて考えていると、突然静寂に包まれた。馬車が校門の前に停まり、扉が開くと、人間の時に嫌というほど見てきた、オルテンシア王太子殿下だった。
「フランチェスカよ。久しいな。」
「オルテンシア王太子殿下。お久しぶりでございます。」
簡単に挨拶をするとカーテシーをするフランチェスカ。以前の私も同じように挨拶をしていたのだろうか。
最近は昔の細かいことは思い出せなくなってきている。処刑されるまでに大切な時系列は何となく覚えているけど、それだけだ。
「まぁよい。今から王宮に行くぞ。」
さすが王族…という感じか、あまりの上から目線に見ているだけで嫌になってくる。フランチェスカも顔には出ていないものの、いつも見るような笑顔ではなく、能面にただ張り付けただけなような笑顔だった。
「申し訳ございません。私、用事がありますので王宮へはいけません。それに貴族院に通っている間は執務など免除されるはず…私はそのようにオルテンシア王太子殿下のお義母様から教えていただいたのです。」
今までの私ならここでなし崩し的連れて行かされて王太子殿下の代わりに仕事をやっていたところだろう…
「フランも成長したにゃ…」
王太子に断るだけでもものすごく勇気のいることだろうが、きちんと自分の気持ちを伝えられるようになったということはそれだけ成長しているということだ。自分で自分をほめてやりたい。
「お、お前!そんな言い方していいと思っているのか!?」
「私はただ殿下のお義母様と話したことを伝えただけにすぎません。もし何か思うのでしたらご自分でお義母様に聞いてくださいませ。それでは…」
それだけ言うとフランチェスカは踵を返して歩き出した。
どうせここまで来たのだって、自分の仕事を押し付けるためだ。考えなくてもわかる。
第三者の目線で王太子を見ていると、王太子の性格を考えれば1年間何していたかわかりそうなものなのに、どうして自分は知ろうとしなかったのか…不思議でならなかった。
フランチェスカが帰ろうとしている姿を見て王太子は、「いったい何が起きたんだ!?」という顔をしていた。
そして、今まで話もせず蚊帳の外にいたカルミアが急に眼をキラキラさせながら王太子殿下に近寄っていく。
「オルテンシア王太子殿下ですかぁぁ。はじめましてぇぇ。フランチェスカの親友のカルミア・パンナコッタと申しますぅ。よろしくお願いいたしますぅ。」
ウィンクをしながら必死に猛アピールをしていた。
王太子殿下はカルミアに「あ、あぁ…」と返していたけどどうやらそれどころではないようだ。
「いい気味だにゃ…」
「なぁ~にが「いい気味だにゃ」よ!少しは助けてくれてもよかったじゃない!」
私のプリチーな頬をつねりながら話しかけてくる。
「ひはたはにゃひのにゃ。」
フランチェスカは気づいているだろうか。そう言いながらも、今まで以上に最高の笑顔で私のことを抱きしめていることに…
今までずっと何も言わずに我慢していたからこそ、言い返せたことに少しすっきりしたんだろうね。
私も見ていてすごくすっきりしたから。感謝の気持ちを込めてもう少しだけプリチーな頬をつねる栄誉を与えることにした。
⟡.·*.··············································⟡.·*.
???視点。
「おい!ガロファノはいるか!?」
「はい。こちらに…」
オルテンシア王太子殿下に呼ばれて急いで王太子殿下のもとへ向かう。今日の王太子殿下も大層機嫌が悪そうだ。
「あいつはどこにいる。」
あいつとは…恐らくフランチェスカ様のことだろう。この人は自分の婚約者の名前すら憶えていないようだ。仕事だっていつもフランチェスカ様がほとんど行っていて、王太子殿下が行っているのは印を押すくらいなものだ。
「貴族院に行かれていると思いますが…」
貴族院に行っている間は公務は免除されるはずだ。国王も、王妃もそれは認めているし、もっと知見を広げてきなさいと仰っていた。王太子殿下も聞いていたはずなのだが…忘れてしまったんだか、聞いていなかったんだかは定かではない。
「なに!?すぐに呼んで来い!」
「申し訳ございませんが、貴族院に行かれている間は学業優先でございます。ですので呼んでくることは不可能です。ご自身でお仕事を進めてくださいませ。」
王太子殿下は本当に何もできない…国王もいつも頭を抱えているくらいだ。
「仕方がない。では私が直接貴族院へ行こうではないか。そしたらあいつも断れまい。」
確かにフランチェスカ様はあまりご自分の意見を言えないですもんね。そうさせたのはオルテンシア王太子殿下あなただということに気付いているのでしょうか…。
私はため息をついてから王太子殿下の後を追った。
この後、久しぶりに会ったフランチェスカ様の行動は王太子殿下だけでなく、私までもが吃驚したのは言うまでもない…
「オルテンシア王太子殿下。今回は諦めましょう。帰りますよ。」
「あ…あぁ…そうだな…」
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