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10年前。

ファーストダンス。

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ダンスホールの中央に行き、音楽が鳴り始める。
始めはゆっくりとした音楽でそれに合わせて私もティオ様と腕を組んでリズムに乗り始めた。

私の身長がヒールを履いて167cmくらいで、ティオ様がお兄様と同じくらいの身長なので丁度いい身長の差だ。

ティオ様のリードも上手いのだろう。さすが社交界の貴公子と呼ばれるているだけのことはあり、とても踊りやすい。

「ティオ様と踊っているとまるで自分が自分じゃないみたいです!」

「本当かい?そう言ってもらえるととても嬉しいよ。私もリアがまさかこんなに踊れるなんて思っていなかった。」

少し揶揄っている口調で話すティオ様に「これでもダンスだけは褒められていたんです。」と返すと、笑われてしまった。
大人の余裕という奴だろうか。そんな笑顔も周りから見ると毒でしかないのだろう。ダンスを踊っていない人たちから黄色い歓声が聞こえてくる。

「ティオ様はすごい人気ですね。」

「まぁ、これでも王子だからね。25歳だから王子って感じでもないけどね…でも…」

確かに王子だし、人気なのはわかるけどきっとそれだけが理由ではないのだろう。
お兄様よりも紳士的だし、笑顔が素敵だ。話しやすい雰囲気も人気の一つだろう。

そして、裏表なく
「今日のリアも負けていないくらい人気だよ。そしてこの会場の誰よりも綺麗だ…。」

こんなことを言えるからこそ、人気が落ちないのだと思う。不覚にも耳元でいうからドキドキしてしまった。


2人で話しながらゆっくりダンスを踊っているとあっという間に一曲目が終わった。
そして次の曲が始まるかと思って待っていると、扉が開く音が聞こえる。

皆が端に寄ったため、私もティオ様と一緒に端に寄った。

ティオ様より少し年上のようだけど、顔や雰囲気がすごく似ている。
その隣をとても綺麗な女性が歩いているところを見ると国王様と、王妃様だろう。

2人が中央をゆっくりと進んでいくと、男性は片膝をついて一礼し女性はカーテシーをしていく。私も周りに合わせてカーテシーをした。

国王様達が通り過ぎるまでは顔を上げることができないため、カーテシーのまま通り過ぎるのを待っていると、目の前で急に国王様達が止まった。

「ティオドール。」

「なんでしょうか。オズワルド国王陛下。」

ティオ様のお兄様でもあるし恐らく声をかけたのだろう。

「いや。お前が女性を連れているのは珍しいな。いつか紹介してくれるのを楽しみにしている。」


私に軽く目を向けた後、そのまま王妃と共に中央を歩き玉座に着いた。

国王が玉座について軽く手を上げると皆も顔を上げる。

「皆のダンスの邪魔をしてすまない。そして成人を迎えた諸君、おめでとう。これからジェネシス国の貴族として国のため、民のために尽力してくれることを期待している。」

国王様が軽く挨拶をした後、軽く手を上げると再び音楽が鳴り始めた。

ティオ様を見ると少し顔を赤くしているようだが、体調が悪いのだろうか…。

「ティオ様。お顔が赤いようですが、大丈夫ですか?」

ティオ様に声をかけても、反応がない…。本当に大丈夫だろうか。

「ティオ様、聞こえていますか?」

「あ、あぁ、すまない。大丈夫。体調は悪くないよ。さぁ、せっかくの夜会なんだ。ダンスを踊ろうか。」

そう言ってまたダンスホールまで手を引いて歩いてくれるティオ様。
体調が悪くないようでよかった。

「はい、よろしくお願いいたします。」

ティオ様と数曲踊った後、少し休んでからナル様やお兄様とも踊り、夜会を終えた。

ありがたいことに一度だけ知らない方に声をかけられたが、お兄様達のおかげもあり、それ以外の男性から声をかけられることがなく済んだ。

夜会を終えた後、ティオ様が馬車で屋敷まで送ってくれたのでお礼を伝えてから馬車を降りる。

「ティオ様。今日はありがとうございました。ティオ様のおかげで、思い出に残る夜会となりました。」


「こちらこそ、楽しかった。これから夜会に出る機会も多くなるだろう。もしリアさえ良ければこれからも一緒に参加してくれないか?」

ティオ様曰く、まだ婚約を考えてないティオ様と、婚約者はいるものの婚約者の顔すら知らず一緒に参加することがないだろう私だと夜会にも参加がしやすくなるらしい。

「ティオ様のお言葉は嬉しいのですが、婚約破棄をする際にできれば不利な条件は作りたくないのです…。ですので一度お兄様に相談してからお返事させていただいてもよろしいでしょうか。」

ティオ様と一緒であれば、これからリアルディア紹介で展開して行く服飾系も販売しやすくなるのは間違いないし、今日のような知らない男性に声がかけられる心配もなくなるのだろうけど、こればかりはすぐに決められは問題ではない。

「わかった。急ぐわけではないから、一度エドと話してから答えを出してくれて構わない。また何かあればエドを通して連絡するよ。ちなみにいつ頃領地に帰る予定なんだ?」

「承知いたしました。お兄様に聞いていると思いますが、領地経営や、商会で行いたいことがあるのでできれば2.3日中には戻りたいと思っています。」

もう少し色々見て回りたいところでもあるのだが帰りが遅くなってしまうと雪が積もって帰れなくなってしまう可能性もある。それに野菜などがきちんと育っているかも心配だ。帰ってから一度は領地を視察したいところだ。
たくさん時間はありそうだけどあっという間に時間がなくなってしまいそうだ。

「そうか…。すぐ帰ってしまうんだな…気をつけて帰るんだよ。こちらから手紙を送ってもいいかい?また会える時を楽しみにしているよ。」

「はい!私もまたお会いできるの楽しみにしています!あの…こちらからもお返事書きますね!今日は本当にありがとうございました。ティオ様。おやすみなさいませ。」

領地にいると中々新しい情報が入らないので、ティオ様と直接手紙のやり取りができるのはとてもありがたい。ティオ様に挨拶をしてから馬車を降りた。


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