16 / 29
10年前。
ファーストダンス。
しおりを挟む
ダンスホールの中央に行き、音楽が鳴り始める。
始めはゆっくりとした音楽でそれに合わせて私もティオ様と腕を組んでリズムに乗り始めた。
私の身長がヒールを履いて167cmくらいで、ティオ様がお兄様と同じくらいの身長なので丁度いい身長の差だ。
ティオ様のリードも上手いのだろう。さすが社交界の貴公子と呼ばれるているだけのことはあり、とても踊りやすい。
「ティオ様と踊っているとまるで自分が自分じゃないみたいです!」
「本当かい?そう言ってもらえるととても嬉しいよ。私もリアがまさかこんなに踊れるなんて思っていなかった。」
少し揶揄っている口調で話すティオ様に「これでもダンスだけは褒められていたんです。」と返すと、笑われてしまった。
大人の余裕という奴だろうか。そんな笑顔も周りから見ると毒でしかないのだろう。ダンスを踊っていない人たちから黄色い歓声が聞こえてくる。
「ティオ様はすごい人気ですね。」
「まぁ、これでも王子だからね。25歳だから王子って感じでもないけどね…でも…」
確かに王子だし、人気なのはわかるけどきっとそれだけが理由ではないのだろう。
お兄様よりも紳士的だし、笑顔が素敵だ。話しやすい雰囲気も人気の一つだろう。
そして、裏表なく
「今日のリアも負けていないくらい人気だよ。そしてこの会場の誰よりも綺麗だ…。」
こんなことを言えるからこそ、人気が落ちないのだと思う。不覚にも耳元でいうからドキドキしてしまった。
2人で話しながらゆっくりダンスを踊っているとあっという間に一曲目が終わった。
そして次の曲が始まるかと思って待っていると、扉が開く音が聞こえる。
皆が端に寄ったため、私もティオ様と一緒に端に寄った。
ティオ様より少し年上のようだけど、顔や雰囲気がすごく似ている。
その隣をとても綺麗な女性が歩いているところを見ると国王様と、王妃様だろう。
2人が中央をゆっくりと進んでいくと、男性は片膝をついて一礼し女性はカーテシーをしていく。私も周りに合わせてカーテシーをした。
国王様達が通り過ぎるまでは顔を上げることができないため、カーテシーのまま通り過ぎるのを待っていると、目の前で急に国王様達が止まった。
「ティオドール。」
「なんでしょうか。オズワルド国王陛下。」
ティオ様のお兄様でもあるし恐らく声をかけたのだろう。
「いや。お前が女性を連れているのは珍しいな。いつか紹介してくれるのを楽しみにしている。」
私に軽く目を向けた後、そのまま王妃と共に中央を歩き玉座に着いた。
国王が玉座について軽く手を上げると皆も顔を上げる。
「皆のダンスの邪魔をしてすまない。そして成人を迎えた諸君、おめでとう。これからジェネシス国の貴族として国のため、民のために尽力してくれることを期待している。」
国王様が軽く挨拶をした後、軽く手を上げると再び音楽が鳴り始めた。
ティオ様を見ると少し顔を赤くしているようだが、体調が悪いのだろうか…。
「ティオ様。お顔が赤いようですが、大丈夫ですか?」
ティオ様に声をかけても、反応がない…。本当に大丈夫だろうか。
「ティオ様、聞こえていますか?」
「あ、あぁ、すまない。大丈夫。体調は悪くないよ。さぁ、せっかくの夜会なんだ。ダンスを踊ろうか。」
そう言ってまたダンスホールまで手を引いて歩いてくれるティオ様。
体調が悪くないようでよかった。
「はい、よろしくお願いいたします。」
ティオ様と数曲踊った後、少し休んでからナル様やお兄様とも踊り、夜会を終えた。
ありがたいことに一度だけ知らない方に声をかけられたが、お兄様達のおかげもあり、それ以外の男性から声をかけられることがなく済んだ。
夜会を終えた後、ティオ様が馬車で屋敷まで送ってくれたのでお礼を伝えてから馬車を降りる。
「ティオ様。今日はありがとうございました。ティオ様のおかげで、思い出に残る夜会となりました。」
「こちらこそ、楽しかった。これから夜会に出る機会も多くなるだろう。もしリアさえ良ければこれからも一緒に参加してくれないか?」
ティオ様曰く、まだ婚約を考えてないティオ様と、婚約者はいるものの婚約者の顔すら知らず一緒に参加することがないだろう私だと夜会にも参加がしやすくなるらしい。
「ティオ様のお言葉は嬉しいのですが、婚約破棄をする際にできれば不利な条件は作りたくないのです…。ですので一度お兄様に相談してからお返事させていただいてもよろしいでしょうか。」
ティオ様と一緒であれば、これからリアルディア紹介で展開して行く服飾系も販売しやすくなるのは間違いないし、今日のような知らない男性に声がかけられる心配もなくなるのだろうけど、こればかりはすぐに決められは問題ではない。
「わかった。急ぐわけではないから、一度エドと話してから答えを出してくれて構わない。また何かあればエドを通して連絡するよ。ちなみにいつ頃領地に帰る予定なんだ?」
「承知いたしました。お兄様に聞いていると思いますが、領地経営や、商会で行いたいことがあるのでできれば2.3日中には戻りたいと思っています。」
もう少し色々見て回りたいところでもあるのだが帰りが遅くなってしまうと雪が積もって帰れなくなってしまう可能性もある。それに野菜などがきちんと育っているかも心配だ。帰ってから一度は領地を視察したいところだ。
たくさん時間はありそうだけどあっという間に時間がなくなってしまいそうだ。
「そうか…。すぐ帰ってしまうんだな…気をつけて帰るんだよ。こちらから手紙を送ってもいいかい?また会える時を楽しみにしているよ。」
「はい!私もまたお会いできるの楽しみにしています!あの…こちらからもお返事書きますね!今日は本当にありがとうございました。ティオ様。おやすみなさいませ。」
領地にいると中々新しい情報が入らないので、ティオ様と直接手紙のやり取りができるのはとてもありがたい。ティオ様に挨拶をしてから馬車を降りた。
始めはゆっくりとした音楽でそれに合わせて私もティオ様と腕を組んでリズムに乗り始めた。
私の身長がヒールを履いて167cmくらいで、ティオ様がお兄様と同じくらいの身長なので丁度いい身長の差だ。
ティオ様のリードも上手いのだろう。さすが社交界の貴公子と呼ばれるているだけのことはあり、とても踊りやすい。
「ティオ様と踊っているとまるで自分が自分じゃないみたいです!」
「本当かい?そう言ってもらえるととても嬉しいよ。私もリアがまさかこんなに踊れるなんて思っていなかった。」
少し揶揄っている口調で話すティオ様に「これでもダンスだけは褒められていたんです。」と返すと、笑われてしまった。
大人の余裕という奴だろうか。そんな笑顔も周りから見ると毒でしかないのだろう。ダンスを踊っていない人たちから黄色い歓声が聞こえてくる。
「ティオ様はすごい人気ですね。」
「まぁ、これでも王子だからね。25歳だから王子って感じでもないけどね…でも…」
確かに王子だし、人気なのはわかるけどきっとそれだけが理由ではないのだろう。
お兄様よりも紳士的だし、笑顔が素敵だ。話しやすい雰囲気も人気の一つだろう。
そして、裏表なく
「今日のリアも負けていないくらい人気だよ。そしてこの会場の誰よりも綺麗だ…。」
こんなことを言えるからこそ、人気が落ちないのだと思う。不覚にも耳元でいうからドキドキしてしまった。
2人で話しながらゆっくりダンスを踊っているとあっという間に一曲目が終わった。
そして次の曲が始まるかと思って待っていると、扉が開く音が聞こえる。
皆が端に寄ったため、私もティオ様と一緒に端に寄った。
ティオ様より少し年上のようだけど、顔や雰囲気がすごく似ている。
その隣をとても綺麗な女性が歩いているところを見ると国王様と、王妃様だろう。
2人が中央をゆっくりと進んでいくと、男性は片膝をついて一礼し女性はカーテシーをしていく。私も周りに合わせてカーテシーをした。
国王様達が通り過ぎるまでは顔を上げることができないため、カーテシーのまま通り過ぎるのを待っていると、目の前で急に国王様達が止まった。
「ティオドール。」
「なんでしょうか。オズワルド国王陛下。」
ティオ様のお兄様でもあるし恐らく声をかけたのだろう。
「いや。お前が女性を連れているのは珍しいな。いつか紹介してくれるのを楽しみにしている。」
私に軽く目を向けた後、そのまま王妃と共に中央を歩き玉座に着いた。
国王が玉座について軽く手を上げると皆も顔を上げる。
「皆のダンスの邪魔をしてすまない。そして成人を迎えた諸君、おめでとう。これからジェネシス国の貴族として国のため、民のために尽力してくれることを期待している。」
国王様が軽く挨拶をした後、軽く手を上げると再び音楽が鳴り始めた。
ティオ様を見ると少し顔を赤くしているようだが、体調が悪いのだろうか…。
「ティオ様。お顔が赤いようですが、大丈夫ですか?」
ティオ様に声をかけても、反応がない…。本当に大丈夫だろうか。
「ティオ様、聞こえていますか?」
「あ、あぁ、すまない。大丈夫。体調は悪くないよ。さぁ、せっかくの夜会なんだ。ダンスを踊ろうか。」
そう言ってまたダンスホールまで手を引いて歩いてくれるティオ様。
体調が悪くないようでよかった。
「はい、よろしくお願いいたします。」
ティオ様と数曲踊った後、少し休んでからナル様やお兄様とも踊り、夜会を終えた。
ありがたいことに一度だけ知らない方に声をかけられたが、お兄様達のおかげもあり、それ以外の男性から声をかけられることがなく済んだ。
夜会を終えた後、ティオ様が馬車で屋敷まで送ってくれたのでお礼を伝えてから馬車を降りる。
「ティオ様。今日はありがとうございました。ティオ様のおかげで、思い出に残る夜会となりました。」
「こちらこそ、楽しかった。これから夜会に出る機会も多くなるだろう。もしリアさえ良ければこれからも一緒に参加してくれないか?」
ティオ様曰く、まだ婚約を考えてないティオ様と、婚約者はいるものの婚約者の顔すら知らず一緒に参加することがないだろう私だと夜会にも参加がしやすくなるらしい。
「ティオ様のお言葉は嬉しいのですが、婚約破棄をする際にできれば不利な条件は作りたくないのです…。ですので一度お兄様に相談してからお返事させていただいてもよろしいでしょうか。」
ティオ様と一緒であれば、これからリアルディア紹介で展開して行く服飾系も販売しやすくなるのは間違いないし、今日のような知らない男性に声がかけられる心配もなくなるのだろうけど、こればかりはすぐに決められは問題ではない。
「わかった。急ぐわけではないから、一度エドと話してから答えを出してくれて構わない。また何かあればエドを通して連絡するよ。ちなみにいつ頃領地に帰る予定なんだ?」
「承知いたしました。お兄様に聞いていると思いますが、領地経営や、商会で行いたいことがあるのでできれば2.3日中には戻りたいと思っています。」
もう少し色々見て回りたいところでもあるのだが帰りが遅くなってしまうと雪が積もって帰れなくなってしまう可能性もある。それに野菜などがきちんと育っているかも心配だ。帰ってから一度は領地を視察したいところだ。
たくさん時間はありそうだけどあっという間に時間がなくなってしまいそうだ。
「そうか…。すぐ帰ってしまうんだな…気をつけて帰るんだよ。こちらから手紙を送ってもいいかい?また会える時を楽しみにしているよ。」
「はい!私もまたお会いできるの楽しみにしています!あの…こちらからもお返事書きますね!今日は本当にありがとうございました。ティオ様。おやすみなさいませ。」
領地にいると中々新しい情報が入らないので、ティオ様と直接手紙のやり取りができるのはとてもありがたい。ティオ様に挨拶をしてから馬車を降りた。
1,142
お気に入りに追加
2,126
あなたにおすすめの小説
嫌われ者の王弟殿下には、私がお似合いなのでしょう? 彼が王になったからといって今更離婚しろなんて言わないでください。
木山楽斗
恋愛
冷遇されていたフェルリナは、妹の策略によって嫌われ者の王弟殿下ロナードと結婚することになった。
色々と問題があると噂だったロナードとの婚約に不安を感じていたフェルリナだったが、彼は多少面倒臭がり屋ではあったが、悪い人ではなかっため、なんとか事なきを得た。
それから穏やかな生活を送っていた二人だったが、ある時ロナードの兄である国王が死去したという事実を知らされる。
王位を継承できるのは、ロナードだけであったため、彼はほぼなし崩し的に国王となり、フェルリナはその妻となることになったのだ。
しかし、フェルリナの妹はそれを快く思わなかった。
ロナードと婚約破棄しろ。そう主張する妹を、フェルリナはロナードの助けも借りつつ切り捨てるのだった。
【完結】義妹と婚約者どちらを取るのですか?
里音
恋愛
私はどこにでもいる中堅の伯爵令嬢アリシア・モンマルタン。どこにでもあるような隣の領地の同じく伯爵家、といってもうちよりも少し格が上のトリスタン・ドクトールと幼い頃に婚約していた。
ドクトール伯爵は2年前に奥様を亡くし、連れ子と共に後妻がいる。
その連れ子はトリスタンの1つ下になるアマンダ。
トリスタンはなかなかの美貌でアマンダはトリスタンに執着している。そしてそれを隠そうともしない。
学園に入り1年は何も問題がなかったが、今年アマンダが学園に入学してきて事態は一変した。
【完結】こんな所で言う事!?まぁいいですけどね。私はあなたに気持ちはありませんもの。
まりぃべる
恋愛
私はアイリーン=トゥブァルクと申します。お父様は辺境伯爵を賜っておりますわ。
私には、14歳の時に決められた、婚約者がおりますの。
お相手は、ガブリエル=ドミニク伯爵令息。彼も同じ歳ですわ。
けれど、彼に言われましたの。
「泥臭いお前とはこれ以上一緒に居たくない。婚約破棄だ!俺は、伯爵令息だぞ!ソニア男爵令嬢と結婚する!」
そうですか。男に二言はありませんね?
読んでいただけたら嬉しいです。
お姉様。ずっと隠していたことをお伝えしますね ~私は不幸ではなく幸せですよ~
柚木ゆず
恋愛
今日は私が、ラファオール伯爵家に嫁ぐ日。ついにハーオット子爵邸を出られる時が訪れましたので、これまで隠していたことをお伝えします。
お姉様たちは私を苦しめるために、私が苦手にしていたクロード様と政略結婚をさせましたよね?
ですがそれは大きな間違いで、私はずっとクロード様のことが――
あなたとの縁を切らせてもらいます
しろねこ。
恋愛
婚約解消の話が婚約者の口から出たから改めて考えた。
彼と私はどうなるべきか。
彼の気持ちは私になく、私も彼に対して思う事は無くなった。お互いに惹かれていないならば、そして納得しているならば、もういいのではないか。
「あなたとの縁を切らせてください」
あくまでも自分のけじめの為にその言葉を伝えた。
新しい道を歩みたくて言った事だけれど、どうもそこから彼の人生が転落し始めたようで……。
さらりと読める長さです、お読み頂けると嬉しいです( ˘ω˘ )
小説家になろうさん、カクヨムさん、ノベルアップ+さんにも投稿しています。
【完結】好きでもない私とは婚約解消してください
里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。
そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。
婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。
(完)婚約解消からの愛は永遠に
青空一夏
恋愛
エリザベスは、火事で頬に火傷をおった。その為に、王太子から婚約解消をされる。
両親からも疎まれ妹からも蔑まれたエリザベスだが・・・・・・
5話プラスおまけで完結予定。
【完結】ハーレム構成員とその婚約者
里音
恋愛
わたくしには見目麗しい人気者の婚約者がいます。
彼は婚約者のわたくしに素っ気ない態度です。
そんな彼が途中編入の令嬢を生徒会としてお世話することになりました。
異例の事でその彼女のお世話をしている生徒会は彼女の美貌もあいまって見るからに彼女のハーレム構成員のようだと噂されています。
わたくしの婚約者様も彼女に惹かれているのかもしれません。最近お二人で行動する事も多いのですから。
婚約者が彼女のハーレム構成員だと言われたり、彼は彼女に夢中だと噂されたり、2人っきりなのを遠くから見て嫉妬はするし傷つきはします。でもわたくしは彼が大好きなのです。彼をこんな醜い感情で煩わせたくありません。
なのでわたくしはいつものように笑顔で「お会いできて嬉しいです。」と伝えています。
周りには憐れな、ハーレム構成員の婚約者だと思われていようとも。
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
話の一コマを切り取るような形にしたかったのですが、終わりがモヤモヤと…力不足です。
コメントは賛否両論受け付けますがメンタル弱いのでお返事はできないかもしれません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる