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10年前。

夜会のエスコートは…。

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準備を終え、エントランスに向かうとそこにはなぜかお兄様ではなくティオドール王弟殿下が待っていた。


「テ、ティオ様。お兄様は……?」

お兄様に今日のドレスを見てもらうのを楽しみにしてきた私はお兄様がいないことがショックでならなかった。

「やぁ、リア。急にすまないね。エドは予定があって先に行ってしまったんだ。大丈夫。王宮に行けばエドに会えるよ。」

私の顔を見てお兄様がいないことに不安を感じていることがわかったのか、小さな子供を諭すように宥めてくるティオ様。

「今日は私が一日、エスコートすることになったんだ。良いかな…?」

王子様のように跪いて私に手を差し出してくるティオ様。王子様のようと言いつつ本当の王子様でした。

「1人では少し心細かったので助かります。よろしくお願いいたします。」
少し戸惑いながらもティオ様の手を取った。
ティオ様が私に微笑んで来る姿が破壊力抜群だ…。

「こちらこそよろしく。エドに話は聞いていたが…そのドレスとても似合っているよ。なかなかない形だね。」


「かなり斬新な造りなので少し心配だったのですが…大丈夫でしょうか?」
何をするにしても初めてのものに挑戦するは少し緊張するものだ。まわりから受け入れてもらえるかがとで心配である。


「本当に似合っているよ。その刺繍もとても綺麗だし、一つ一つすごく丁寧に作られているのがよくわかる。貴族の間では流行っていくだろうね。」


「あ、ありがとうございます。ティオ様にそう言ってもらえると少し安心いたしました。」
軽くドレスをつまみカーテシーをするとティオ様が腕を少し曲げて組める状態にしてくれたので、私はティオ様に腕を絡めた。

「お嬢様、お気をつけて行ってらっしゃいませ。」
ベルタとセレスが声をかけてくれたので、
「行ってまいります」と一言声をかけてから屋敷を出た。


馬車に乗り王都の中央に位置する王宮へ向かうとたくさんの貴族が集まっていた。
夜会を行うのは貴族だけだが、15歳が成人というのは平民の方々も同じだ。なので至る所に出店が出ていてお祭りモードとなっている。

国全体が眠らない国になっているようでとても神秘的だ。


馬車を降りてティオ様と腕を組んで歩き始めると皆がこちらをチラチラ見てくる。

「ティオドール王弟殿下が女性を連れているなんて…」

「あのドレスとても素敵ね。どこで売っているのかしら…」

「ついにティオドール王弟殿下にも恋人ができたのかしら…」

「あのドレスの刺繍とても繊細で綺麗ね…」

「ティオドール様と一緒に歩いている女性。初めて見るけれどとてもお似合いね…」

ティオ様はすごく女性にモテそうだと思っていたけれど、やっぱり女性の方々がチラチラ見ているところを見るとあたりなのだろう。でもそれ以上にドレスを褒めていただけているのがとても嬉しい。

「これなら、他の絹織物でも色々売れそうね。うちの領地と東の国貿易も以前より盛んになりそうだわ。」

1人で周りの言葉を聞いてニコニコしていると、ティオ様がそれに気づいたのか、

「リア。口元が緩んでいるから扇子で隠して歩きなさい。」
と声をかけてきた。
危なく1人だと、ゆるゆるの顔を見られるところだった。私は扇子で顔を隠しながら周りに軽く頭を下げて歩いていく。

ティオ様の方を見るとたまたま目が合ったお互い微笑み合った。


「「「「きゃああああああ」」」」


周り叫び声のような声が聞こえたけど、あえて聞こえないふりをして私たちは宮殿内に入った。


⟡.·*.··············································⟡.·*.


ティオドール視点

夜会当日、エドと約束した通りにリアを迎えに行った。

エントランスで少し待っているとリアがゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。

いつもの少し子供っぽい雰囲気がなくなっていてすごく大人っぽくなっていた。

「テ、ティオ様…お兄様は…?」

おそらくエドが待っていると思ってエントランスに来たのだろう。顔を左右に動かし、エドがいないか探しているようだ。
まるで親猫を探す子猫のようでとても可愛らしく思う。10歳も離れているから、余計にそう感じるのかもしれないが…


「やぁ、リア。急にすまないね。エドは予定があって先に行ってしまったんだ。大丈夫。王宮に行けばエドに会えるよ。」

まるで猫のようにシュンとした顔が保護欲をそそる。

「今日は私が一日、エスコートすることになったんだ。良いかな…?」

膝をついて手を前に出すと、リアは恐る恐る私のでを取ってくれた。

それにしで今日のリアはとても綺麗だ。
元々エドに似て人形のような顔立ちをしていたが…赤色に金の刺繍。白も含めた3色でまとめられており、それに合わせた赤い髪飾りがよく似合っている。

リアは母親がいない分、あまりお茶会に参加したことがないと言っていたしおそらく今日は会場中の皆がリアに注目することだろう。

案の定、宮殿に着くと、いく先々で男性たちが顔を赤くしながらリアのことを見ている。

「これはやはり1人で来させなかったのは正解だな…」

リアがこちらを向きながら微笑むので私も微笑み返すと、周りから黄色い声が聞こえた。


「このまま何事もなく終われば良いが…これだけ綺麗だと何かしら巻きこまれそうだな…」

なるべくリアからは離れないようにしようと心に決めて会場内を目指した。
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