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10年前。

ニコラウス様とのこれから。

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夕食を食べ終え、お兄様に呼ばれたのでそのまま執務室へ向かう。

「お兄様、お待たせいたしました。」
ノックしてから扉を開けると、お兄様は席について何か書類仕事をしているようだった。

「リアか。もっとゆっくり食べていてよかったんだが、急かしてしまったか…」
お兄様の方が食べるのが早く、今日は執務室にすぐ戻ってしまわれたのでそれに釣られて私も早く食べてしまったのかもしれないけど話の内容が気になっていたということもあるだろう。

「そんなことありません。それで話というのは…」

「あぁ、そこに座って話そう。セレス、お茶を頼む。」

2人で向かい合ってソファに座ると、お兄様が話しはじめた。

「急に時間をもらってすまないな。なるべく早く話したかったから。」
そういって話し始めた内容は、ニコラウス様の話だった。

「リアの話次第ではイグナ家に婚約の件を白紙にしてもらうよう話をしてもいいと思っている。ただ、それを考えるとなるべく早く動いた方がいいと思ってな。できればリアの社交界デビューまでになんとかしたいなと思ったんだ。」

婚約白紙と、婚約破棄ではイメージが全然変わって来る。婚約白紙については婚約自体を無かった事にするため傷がつかない。
逆に婚約破棄の場合は相手になんらかの理由があった時に使うもので、婚約破棄を突きつけられた方は名に傷がつき、次婚約する時にしにくくなるのだ。

確かに婚約を白紙にする事ができれば社交界デビューまでに色々動ける。今後の動き方も大きく変わって来るのかもしれないので、お兄様に今までのことを伝えた。

「そもそも、ニコラウス様にお会いしたのは婚約した時一度だけなので…10歳くらいの頃だったと記憶しています…」

相手は確か3つ年上だったから13歳くらいだたかもしれない。
ほとんど話をしていたのは親同士で私もニコラウス様は席に着いているだけだった。恐らくあの時から私に興味もなかったのだろう。

「正直いって顔も覚えていません。なのでどんな方なのか、きっと名前を言われるまで気づかない自信があります。」

「なるほど...それはあまり褒められたことではないのだが…まぁいい。なぜ会わなかったんだ?」

あわなかったことがいけなかったのだろうか。正直用事もないし会う理由が思い浮かばなかったのだが、ニコラウス様も忙しそうなのでそのままになっていた。

「まぁ、お、お互い忙しかったからじゃないでしょうか…」
嘘はついていないはずだ…。

「ふむ。忙しいといっても全く会える時間が取れないということはあまりないと思うのだがな。」

お兄様は少し考えてるようだったが、わたしはそのままニコラウス様のことを話し続けた。

「留学に行って何日国外に行く、何ヶ月国外に行く、何年帰ってこないと言うような一言しか手紙がなく…いつ帰ってきてるかすら知りませんでした。」

嘘はついていない。本当にいつ帰って来るかもわからず、もう誘わなくてもいいかなと思ってしまった。半分は自分が面倒臭かったと言う方が正しい。
わたしが知っているのは留学に行ったことくらいでそれ以外は全く知らない。

お兄様は今の話をメモに残していたようで、一つ一つ書き記していた。
「手紙はまだ持っているか?」

「はい。一応とってあります。」

「わかった。今度それを持ってきてほしいが…すぐでなくても構わない。送ってもらうように頼んでくれ。」

何に使うかわからないが、セデスに全て渡していたので置いてある場所は知っているだろう。わたしは頷いてわかりましたと返した。

「ここからは俺の話だが…」
ニコラウス様について私から話を聞いた後、色々調べてくれていたことを聞いた。

そもそも留学の話は本当だが、全部が全部留学というわけではないということ。
この国と他国にも恋人らしき人がいるということだ。その恋人についてはまだ調べている途中らしい。

パーティーなどには参加しており、挨拶をしてきていたので気づくことができなかったことを教えてくれた。
まさか、パーティーに参加しているとは思わなかった…。

そして向こうの両親もその事について知らないようだ。

「そうなのですね…色々調べていただいてありがとうございます。」

お兄様は首横に振り、話を続ける。
「いや、こちらこそもっと早く気づくべきだった。申し訳ない。もう少し状況がそろえば婚約を白紙にすることができるが…リアはどうしたい?リアの気持ちを教えてほしい。」

確かに、婚約を白紙にできるのであれば…特にニコラウス様に思い入れがあるわけでもないし、いいとは思うけど…
ただ、このまま婚約を白紙にするだけで今までのこと含めて全てを許せるかと言われるほど私は大人ではない。それに婚約者がいることで自分のやりたいことも自由にやりやすい気もする…。

私は少し考えた後、今の気持ちを正直に伝えた。

「そうですね。特にニコラウス様のことは思い入れもないので婚約を白紙にするで構わないのですが…白紙にだけするには癪に触ります。ですので5年後帰って来るといっていますし、それまでは婚約したままにして、目の前で婚約破棄を突きつけてやりたいと思いますわ。勿論あちらのご両親には申し訳ないのですが…」

その頃には私も結婚適齢期を過ぎてしまっているだろうが…結婚できなかったら仕方がないだろう。


「お兄様にはご迷惑をおかけして申し訳ございません。まだまだ商会も大きくしたいですし、やってみたいことがあるのです。結婚できなくなってしまうかもしれませんが…お兄様は気にせず好きな方ができたら結婚してくださいませ。」

結婚できなくなるかもしれないのは申し訳ないが、最悪お兄様が結婚して私が家を出なければならなくなったら、商いをしながらいきていけばいい。

働く女性もかっこいいのではないかと頭で想像しながらお兄様に伝えた。


「はぁ。わかった。確かにこのまま白紙にするだけでは許すに許せないな。これからのことはまだゆっくり考えればいい。それに結婚しなければ養子を取ることだってできるんだ。リアは気にせず好きなことをしなさい。」

お兄様は少し立ち上がって窓の外を見ながら、

「まずは次の夜会だな。ニコラウスも参加するだろうが恐らくリアには気づかないだろう。リアもニコラウスに気づかないふりをしておきなさい。向こうが話しかけてきたら何を言われたか教えてくれ。」


「わかりました。お兄様。次の夜会楽しみにしています!」

結構遅くまで話していた私ので、わたしはお兄様との話を終えると部屋に戻って休んだ。




お兄様が1人、
「何もなく次の夜会が終わればいいが…」
と話していたことは知る由もない。
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