幸せはあなたと

ヒイロ

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2章.転生

34.

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二人が僕を庇うように僕の身体を隠しているから前が見えなかった。

「やっと会えたね。ユウくん。」

そう声をかけられて二人が僕の前からどいてくれた。そこにはとても綺麗な女の人が立っていた。真っ白な服を着て白銀の髪が床に付くぐらい長い。まるで女神だ。

「あっ、ユウくん。俺、男だから。」

「えっ?」

今、僕声に出してた?

「俺、一応この世界の神様だからね。みんなが思ってること考えてることは分かっちゃうんだ。隠し事出来ないんだよ。ごめんねー。」

この人がこの世界の神様カロ?

「そう、俺がカロ。弟が迷惑掛けてごめんね。もう大丈夫だから。」

そう言って、手島さんに手をかざすと小さな子供が現れた。ただ髪の毛が全く無く坊主だった。白いワンピースみたいな服を着ていて10歳くらいだろうか、すごく可愛い女の子だった。

「う~ん。ユウくんキースも男なんだよ。かなり年上だしね。この子が地球を創ったんだよ。」

キース…僕が大切にしていたキーホルダーと同じ名前。
手島さんが神様でキースが地球を創った?僕達は理解が出来ず、カロの周りで立ち尽くす。

キースと呼ばれた男の子はずっと座り込んでいた。正座のまま、目が虚ろで遠くを見ている。

「説明するからまず場所移すね。」

そう言ったかと思ったら僕達はとても高級そうなソファーに座っていた。僕とラウルさん、お父さんとお母さん、カロとキースがそれぞれ隣同士で座っていた。目の前のテーブルには飲み物まで置いてあった。

「喉渇いてない?どうぞ飲んで。」

まるでお茶会でもしているかのように軽く言われて、さっきまで復讐だのと言ってたのが嘘みたいだった。お母さんも服は血で汚れてはいるが、どこにも傷は見当たらない。すると、ぎゅっとラウルさんに手を握られた。知らずに肩に力が入っていたみたいでそっと息を吐く。

喉は渇いているけど飲めるような雰囲気でもない。手島さんがいなくなって、キースが現れてこの子供みたいな男の子が地球を創ったって言われても理解が出来ない。

「だよね~。みんな頭混乱してるね。」

カロは、みんなの考えていることが分かるって言ってたし黙っていても意味がない。

「テシマは一体何者なんですか?なぜレネに復讐するのか。俺が救ったと言っていたが…」

お父さんが言う。みんなが一番知りたかったことだと思う。

「そうだね。まず俺達のことから話をしようか。」

カロは、テーブルの上の飲み物を飲むと足を組み目の前の僕達に微笑むと話しを始めた。男の人だと分かっていてもドキッとする。もしかしてラウルさんもカロに惹かれちゃうかもしれないと隣を見ると真剣な顔をしたラウルさんがいた。

「ははっ。ユウくん可愛いね。嫉妬しなくてもラウルくんは君しか見てないよ。」

僕は顔が熱くなった。キース以外みんながこっちを見てる。考えてることがバレちゃうのは恥ずかしい。

「ユウ?」

「なっ…なんでもないよ。」

赤くなっていだろうとおもう頬を両手で隠す。

「さて、俺達の話しをしよう。俺達は君達のお陰で生きているんだ。まぁ、言うなれば君達は食糧ってことなんだけどね。」

サァーっと血の気が引いた。神様は僕達を食べるために創った?

「わーっ、違わないけど違うよ。みんなそんなに怖がらないでくれる?君達が家畜を育てるのと変わらないけど君達を食べるために創ったんじゃないんだよ。」

「そう言われても…」

お母さんの顔色が悪い。僕達は食べられる運命なんだ。もしかして前世で死んだときキースに食べられたんだろうか。

「そんなことしてないよ!!」

ずっと下を向いてたキースが僕に向かって怒り出した。キースも僕の考えてることが分かるんだ。

「ただ僕は幸せになってほしかっただけ…」

幸せになってほしかった?なれなかったじゃないか。
キースがぼろぼろと涙を流す。違う違うって繰り返してる。

「キース泣かないの。君達その物を食べるんじゃないんだ。君達が死ぬときにその人生で幸せだった気持ちを俺達は食べるんだ。」

カロが話してくれる。自分たちがどうやって生まれたかはわからない。どうやって生きていくのか生まれた瞬間からわかるという。そして自分で世界を創り人や動物や植物などを創り、その物が死ぬとき今まで幸せだった気持ちや感情がとても綺麗なビー玉みたいな形になる。それが神様達の食糧になる。そしてまた僕たちを生まれ変わらせる。何度も何度も。基本その世界を創った者の所でしか生まれ変わらない。

「君達を創るのも体力がいるんだ。お腹が空いてては創れない。この世界の他に仲間も何人もいるんだ。交流してるのはキース位だけどね。」

カロとキースは兄弟でも何でもないらしい。キースがカロの所に来ては世界を覗いて兄弟に憧れて勝手に兄さんと呼び始めたと。

「こんなに慕われると悪い気はしないしね。色々先に生まれたからアドバイスをしてたんだ。キースの世界がよくなるように。」

キースも地球という世界を創った。最初は植物から創って少しの食糧で暮らしてた。植物だけでは空腹は満たされない。次に動物を創った。

「恐竜だっけ?あれは無理でしょ。どう考えても幸せな気持ちは生まれないよ。」

と、カロはケラケラと笑ってる。恐竜もキースが創ったんだ。

「その後キースは俺の真似をして人を創ったんだけどね。」

争いが絶えず、戦争を繰り返していたという。学校で習ったことが目の前にいるキースが創ったものだったなんて。なかなか上手くいかず細々とした食料で暮らしてたんだけどとカロは辛い顔をした。

「幸せな気持ちを育てる為にキースは自分で経験すると言い出したんだ。それがユウくんの前世の時代だよ。」

「それが手島さんですか?」

「あぁ、そうだよ。俺は止めたんだ。自分の世界に降りるということは君達と変わらなくなる。ただの人だ。キースの世界には魔法もない。自分で守れる力がないんだ。それでも神様だから人間になっても自分の世界のことは把握は出来る。しかし、人間と同じ寿命と同じになってしまう。嫌だと思ってもその人間の寿命が尽きるまで死ぬことは出来ないし、神様としての力も使えない。」

だから手島さんは僕が死ぬときの言葉を知ることが出来たんだ。神様としてあの世界を把握してたから。僕がどうやって死んだのか、晴一の最後のことまで知ることが出来た。カロが僕の考えに頷いた。

「それが俺とレネに何故関係するんですか?」

お父さんが聞く。カロは、ふぅーと息を吐きまた飲み物に手を付けた。

「俺が止めるのも聞かずキースは地球に降りた。とても仲の良いアルファとオメガの夫夫の子供として生まれた。」

キースはまたなにも言わず下を向いたままきつく唇を噛み締めていた。
   
「そして手島恵として生まれた。しかしアルファとオメガの子供だったのに何故かベータで生まれてしまった。キースが神様だったせいなのか本来の子供の代わりに入ったせいなのか…理由はわからない…」

 この世界にはアルファ、オメガ、ベータという性は存在しない。三人は不思議そうな顔をしていた。

「アルファとオメガの親からはアルファかオメガしか産まれないんだ。」

僕が簡単に説明する。それでも意味がわからないと思う。するとカロは詳しく説明をしてくれた。三人は納得した顔をしてる。

「夫はオメガの奥さんを疑った。自分以外の誰かと浮気をしていたと…。キースはそれはあり得ないことは知っているが伝えることも変えることも出来ない。俺達は人を創ることが出来ても生まれてしまったら性別も性も変えることは出来ない。だから俺の世界は生まれ変わるときに会って…分かりやすく言うと設定を決める。」

だからこの世界では、生まれる前に神様のカロに会う。

「キースは細かく設定をしない。性別と性位じゃないか決めるの。」

隣のキースにカロが聞くと

「人をいっぱい創れば幸せになってくれると思ってた…兄さんがそんなの決めてたなんて知らない…」

「そうか…。俺達は君達を幸せにしないと生きていけない。キースなりに地球という世界をよくしようと頑張ったんだ。でも…手島恵で生まれたキースはその夫夫から木根に助けられるまでずっと虐待を受けて育った…俺は違う世界の者だ。虐待を受けて死にそうになっているキースを助けることは出来なかった…」
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