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2章.転生
31.
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「手島さん?」
確か木根さんの病院で働いてるって言っていた。でも何故手島さんが僕達にこんなことをするの?
「ユウ、知ってるいる人か?」
「うん。前世で僕を助けようとしてくれた人…たしかお父さんと一緒に働いてた。」
「とにかくさぁー。二人とも智美さんのせいでこんなことになったんだからその報いを受けてもらわないと。」
手島さんの言うことが正しければ、二人は前世の木根さんとあの人で間違いはないんだろう。でもそれで何故手島さんがお母さんにここまでする必要があるのかがわからない。
「手島さんはお母さんに何故こんなことをするの?」
「こんなこと?」
鎖を引かれる。苦しそうなお母さんの声が聞こえる。指輪の魔法を解かないとそう思い声を出そうとすると
「駄目。指輪返してね。」
指輪を引き抜かれ座り込んでいた僕の横で砕けた音がした。指輪には核として魔石が付いているそれが割れた音だと思った。
「これで解けることはないね。ラウルくんが戻って来れないように結界張ってよ智美さん。」
きっとこの契約の魔法を解けるのはラウルさんしかいないんだ。
「レネ!掛ける必要はない。ラウルが戻ってくれば魔法を解除できる。」
「あぁ、やっぱり君の両親は君のことより自分達のことなんだね~優くんがこちら側にいるのにね。どっちが大事なの先生?」
「くっ…。」
「いいです。僕はどうなっても。結界を張ります。ラウルくんが入れないように。」
そう言うとお母さんが詠唱を始めた。きっとラウルさんが帰ってきても転移魔法を使っても入れないだろう。この国一番の結界魔法が掛けられているだろうから。
「さぁ、掛けましたよ。ユウを傷つけないで
。その首輪も外してください。」
「傷つけませんし、外しませんよ。これからユウくんと先生が味わった苦しみを死ぬまで味わってもらいます。」
「お前は何故そこまでレネを憎む。」
「…先生…あなたがそれを言うの…」
手島さんの声が泣いてるように聞こえた。
「手島さん。僕はもうこの世界の獣人です。復讐とか考えていません。前世の記憶があるのは僕だけです。だから復讐なんてもうしなくていいんです。」
「あんなことをされて優くんは許せるの?」
「…許せるかと言われるときっと無理です。」
「でしょ。そうか目が見えないからね。優くんの目を治してあげるよ。その目だって前世に受けた傷が原因だから。まぁ、完全に癒える前に俺が無理やり転生させちゃったのもいけないんだけど。」
転生させた?手島さんは一体何者なんだろう。
「ユウの目は治るんですか?」
二人が驚いている。僕の目が見えるようになる。18年間何も見えなかった。でも周りに助けられて何不自由なく過ごせた。困ったこともあった。僕は今まで出会った人の顔も知らない。もちろん両親もラウルさんも。目が見えるのは嬉しいけど…何故か不安が押し寄せる。このままで見えないままの方が幸せじゃないかと。
「元はと言えば智美さんのせいなんだよ!!」
手島さんがまた鎖を引っ張り上げる。
「くっ…僕はどうなっても構いません。ユウの為だったら。お願いします。ユウの目を治して下さい。」
お母さんは、本当にあの人なんだろうか?僕のことばかり心配してくれるお母さんがあの人だとは思えなかった。前世の記憶がないからなのかもしれないけど。
「傷はこの18年で癒えてるんだ。智美さんの治癒魔法で治るよ。まぁ、治したらきっとあんたのことお母さんって呼ばないだろうけど。さぁ、治してあげなよ。」
手島さんが嬉しそうにお母さんの方に僕を押し出した。鎖は手島さんが握っている。お母さんが僕の手を取り抱き締めた。いつものお母さんの匂いだ。お父さんも一緒に抱き締めてくれる。二人とも泣いていた。
「ユウ…ユウ。産まれた頃に治癒魔法を掛けても掛けても治らなかったから諦めてた。ごめんね。お母さんが治してあげる。」
「お母さん…」
ぎゅっと抱き締め返す。温かい。この温もりを産まれた時から感じていた。僕はこの二人の子供だ。やっぱり前世なんて関係ない。前世でどんなに虐待を受けていて、酷い扱いをされていたけど僕は復讐なんて出来ない。
「前世でユウを傷つけていた私達を許さなくていいから。これから何百年掛かっても償っていくから。可愛い私達の子供。愛してる。」
「うん。僕もお父さんとお母さんを愛してる。」
二人の抱き締める力が強くなる。髪や頬にキスをしてくれる。
「可愛い私達の宝物。さぁ、ユウ。顔を上げて。」
顔を上げると温かく心地よい魔力が僕の目に降り注ぐ。小さい頃からよく知っているお母さんの治癒魔法。
「ゆっくり目を開けて。」
ゆっくりと目を開ける。今まで暗かった世界が光を感じる。ぼやけて焦点が合わなかった二人の輪郭がはっきりと見えた…
「ヒイイイ…ぃ!!」
目の前にあの人がいた。前世と変わらない顔。違うのは耳が付いてるだけ。前世でも僕はこの人に似ていると言われていた…忘れることの出来ないあの人の顔…。
「あっ…あぁぁぁーーー。」
「ユウ…?見えるの?私達が見えるの?」
「ユウ…お父さんだぞ。」
横には僕を犯した木根さんもいた。二人とも嬉しそうに抱き締めてきた。僕は怖かった。頭では分かってる。この二人が僕の両親だ。18年ずっと一緒にいて僕を守り愛してくれたと分かってる。でも、心と身体が頭とは別の行動を起こす。ガタガタと身体は震えさっきまで温かかった心も身体も冷たくなってしまう。腕の中から逃れようと身体を捩る。力が入らない。怖くて怖くて仕方なかった。
「はははっ。優くんを離してあげなよ。凄く怖がってるじゃない。」
手島さんの言葉で二人が僕を覗き込む。至近距離で覗き込まれてもうどうしていいかわからない。
「ごめんなさい…ゆるしてください…ゆうは悪い子です…ごめんなさい…ごめんなさい。」
驚いた二人の力が抜ける。すぐに二人から距離を取る。振り向いて手島さんの方に手を伸ばした。
「ユウ…。」
「ユウ…ユウ…。」
手島さんに手を引かれてその胸に倒れこんだ。
「ほら。だから言ったんだ。優くん君は智美さんを許すことは出来ない。復讐するしかないんだよ。」
怖くて後ろが振り向けない。もしかして怒って魔法を使ってくるかもしれない。この世界は暴力よりもっと酷いことが出来てしまう。
「ねっ。復讐しよう。そして本当の両親の元に帰してあげるから。」
その言葉に僕は頷くしかなかった。
確か木根さんの病院で働いてるって言っていた。でも何故手島さんが僕達にこんなことをするの?
「ユウ、知ってるいる人か?」
「うん。前世で僕を助けようとしてくれた人…たしかお父さんと一緒に働いてた。」
「とにかくさぁー。二人とも智美さんのせいでこんなことになったんだからその報いを受けてもらわないと。」
手島さんの言うことが正しければ、二人は前世の木根さんとあの人で間違いはないんだろう。でもそれで何故手島さんがお母さんにここまでする必要があるのかがわからない。
「手島さんはお母さんに何故こんなことをするの?」
「こんなこと?」
鎖を引かれる。苦しそうなお母さんの声が聞こえる。指輪の魔法を解かないとそう思い声を出そうとすると
「駄目。指輪返してね。」
指輪を引き抜かれ座り込んでいた僕の横で砕けた音がした。指輪には核として魔石が付いているそれが割れた音だと思った。
「これで解けることはないね。ラウルくんが戻って来れないように結界張ってよ智美さん。」
きっとこの契約の魔法を解けるのはラウルさんしかいないんだ。
「レネ!掛ける必要はない。ラウルが戻ってくれば魔法を解除できる。」
「あぁ、やっぱり君の両親は君のことより自分達のことなんだね~優くんがこちら側にいるのにね。どっちが大事なの先生?」
「くっ…。」
「いいです。僕はどうなっても。結界を張ります。ラウルくんが入れないように。」
そう言うとお母さんが詠唱を始めた。きっとラウルさんが帰ってきても転移魔法を使っても入れないだろう。この国一番の結界魔法が掛けられているだろうから。
「さぁ、掛けましたよ。ユウを傷つけないで
。その首輪も外してください。」
「傷つけませんし、外しませんよ。これからユウくんと先生が味わった苦しみを死ぬまで味わってもらいます。」
「お前は何故そこまでレネを憎む。」
「…先生…あなたがそれを言うの…」
手島さんの声が泣いてるように聞こえた。
「手島さん。僕はもうこの世界の獣人です。復讐とか考えていません。前世の記憶があるのは僕だけです。だから復讐なんてもうしなくていいんです。」
「あんなことをされて優くんは許せるの?」
「…許せるかと言われるときっと無理です。」
「でしょ。そうか目が見えないからね。優くんの目を治してあげるよ。その目だって前世に受けた傷が原因だから。まぁ、完全に癒える前に俺が無理やり転生させちゃったのもいけないんだけど。」
転生させた?手島さんは一体何者なんだろう。
「ユウの目は治るんですか?」
二人が驚いている。僕の目が見えるようになる。18年間何も見えなかった。でも周りに助けられて何不自由なく過ごせた。困ったこともあった。僕は今まで出会った人の顔も知らない。もちろん両親もラウルさんも。目が見えるのは嬉しいけど…何故か不安が押し寄せる。このままで見えないままの方が幸せじゃないかと。
「元はと言えば智美さんのせいなんだよ!!」
手島さんがまた鎖を引っ張り上げる。
「くっ…僕はどうなっても構いません。ユウの為だったら。お願いします。ユウの目を治して下さい。」
お母さんは、本当にあの人なんだろうか?僕のことばかり心配してくれるお母さんがあの人だとは思えなかった。前世の記憶がないからなのかもしれないけど。
「傷はこの18年で癒えてるんだ。智美さんの治癒魔法で治るよ。まぁ、治したらきっとあんたのことお母さんって呼ばないだろうけど。さぁ、治してあげなよ。」
手島さんが嬉しそうにお母さんの方に僕を押し出した。鎖は手島さんが握っている。お母さんが僕の手を取り抱き締めた。いつものお母さんの匂いだ。お父さんも一緒に抱き締めてくれる。二人とも泣いていた。
「ユウ…ユウ。産まれた頃に治癒魔法を掛けても掛けても治らなかったから諦めてた。ごめんね。お母さんが治してあげる。」
「お母さん…」
ぎゅっと抱き締め返す。温かい。この温もりを産まれた時から感じていた。僕はこの二人の子供だ。やっぱり前世なんて関係ない。前世でどんなに虐待を受けていて、酷い扱いをされていたけど僕は復讐なんて出来ない。
「前世でユウを傷つけていた私達を許さなくていいから。これから何百年掛かっても償っていくから。可愛い私達の子供。愛してる。」
「うん。僕もお父さんとお母さんを愛してる。」
二人の抱き締める力が強くなる。髪や頬にキスをしてくれる。
「可愛い私達の宝物。さぁ、ユウ。顔を上げて。」
顔を上げると温かく心地よい魔力が僕の目に降り注ぐ。小さい頃からよく知っているお母さんの治癒魔法。
「ゆっくり目を開けて。」
ゆっくりと目を開ける。今まで暗かった世界が光を感じる。ぼやけて焦点が合わなかった二人の輪郭がはっきりと見えた…
「ヒイイイ…ぃ!!」
目の前にあの人がいた。前世と変わらない顔。違うのは耳が付いてるだけ。前世でも僕はこの人に似ていると言われていた…忘れることの出来ないあの人の顔…。
「あっ…あぁぁぁーーー。」
「ユウ…?見えるの?私達が見えるの?」
「ユウ…お父さんだぞ。」
横には僕を犯した木根さんもいた。二人とも嬉しそうに抱き締めてきた。僕は怖かった。頭では分かってる。この二人が僕の両親だ。18年ずっと一緒にいて僕を守り愛してくれたと分かってる。でも、心と身体が頭とは別の行動を起こす。ガタガタと身体は震えさっきまで温かかった心も身体も冷たくなってしまう。腕の中から逃れようと身体を捩る。力が入らない。怖くて怖くて仕方なかった。
「はははっ。優くんを離してあげなよ。凄く怖がってるじゃない。」
手島さんの言葉で二人が僕を覗き込む。至近距離で覗き込まれてもうどうしていいかわからない。
「ごめんなさい…ゆるしてください…ゆうは悪い子です…ごめんなさい…ごめんなさい。」
驚いた二人の力が抜ける。すぐに二人から距離を取る。振り向いて手島さんの方に手を伸ばした。
「ユウ…。」
「ユウ…ユウ…。」
手島さんに手を引かれてその胸に倒れこんだ。
「ほら。だから言ったんだ。優くん君は智美さんを許すことは出来ない。復讐するしかないんだよ。」
怖くて後ろが振り向けない。もしかして怒って魔法を使ってくるかもしれない。この世界は暴力よりもっと酷いことが出来てしまう。
「ねっ。復讐しよう。そして本当の両親の元に帰してあげるから。」
その言葉に僕は頷くしかなかった。
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