幸せはあなたと

ヒイロ

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2章.転生

13.

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朝早くお父さんとお母さんは出掛けていった。何を調べたいのか聞いても教えてはくれなかった。両親を見送った後ラウルさんが迎えにきた。

「身体の方は大丈夫ですか?」

「傷は完全に塞がってる。荷物それだけでいいのか?」

着替えと指輪くらいしかない。それなのに荷物を持ってくれる。

「自分で持ちます。ラウルさんの看病に行くのに荷物持たせられません。」

「このくらい大した荷物じゃないし。俺の家まで分からないだろう。」

そう言って荷物を持ち杖を持ってない方の手を繋いでくれた。

「どっちが病人か分からないですね…すみません。」

「気にするな。魔力が回復するまで休めと言われてるからな。俺がちゃんと守るから心配するな。結界も張っているし家にいれば大丈夫だ。」

そう言って帰りの途中で買い物をして帰った。きっとご飯も作るつもりだろう。

「大体の場所はこの間来たからわかるな?寝るのは一緒の部屋になるから。荷物は俺の部屋に入れとけ。」

「えっ?一緒に寝るんですか?」

「近くにいた方が守りやすい。」

そうかもしれないけど…ラウルさんの近くにいるとドキドキするし落ち着かないんだけど。

「分かりました。ラウルさんとりあえず休んでください。」

「いや、今日の晩御飯の仕込みをする。」

「駄目です。何のために僕が来てると思ってるんですか。お母さんに怒られます。」

二人で言い争いになっていたがラウルさんの一言で僕は折れてしまった。

「オムライス作ってやらないぞ。」

「ぐっ…卑怯です。」

笑いながら仕込みを始めてしまった。しょうがないので僕も手伝う。

「しかし、見えないのに綺麗に野菜切れてるな。上手だぞ。」

嬉しい。ここ何年かはお母さんも疲れててご飯は僕が作ってる。

「今度クラムチャウダーの作り方教えてもらえますか?」

自分で作ると美味しくないわけじゃないけど何かが足りないと感じる。

「明日作るか?」

「お願いします。」

「あれは隠し味があるんだ。それを入れるか入れないかでかなり味が変わるんだ。」

二人での料理は楽しかった。料理は任せっきりなので洗濯をする。水の指輪をはめてラウルさんの服を洗う。

「痛っ。」
最近指輪を使うと締め付けが酷くなる。きっと身体が大きくなったからだと思う。今度先生に指輪のサイズを直してとらわないと。この世界は、洗濯機はないので手洗いだ。かなり大きくないかこれ?見えないから汚れがわからないのでまんべんなく洗う。お父さんも大きいけど更に大きい服を洗い終わる頃にはヘトヘトになった。干すのも一苦労だ。パジャマやパンツも大きすぎる。干し終わるといい匂いがしてきた。

「ありがとう。疲れただろ。お昼にしようか?」

お昼はパスタだった。キノコがいっぱい入ったクリームパスタ。

「美味しい。」

「そうか。よかった。夜はオムライスにするが明日からは肉中心だな。」

何でだろう?

「血が足りないからな。それにユウは小さすぎだから。」

やっぱり…そうじゃないかと。両親に比べてかなり小さいと思ってた。もう15歳なのにお母さんの肩にも身長が届いてない。周りの人もまだ7歳くらいだと思ってる。獣人は成長速度も早いらしいけど僕は前世くらいの成長しかしていない気がする。

「肉食べたら大きくなります?早く大きくなって自分のことは自分で守れるようになりたいんです。」

「急には無理だろうけど…いや…そうだな…。」

きっと無理だと思ってる。そりゃ小さいけど魔法の指輪だってあるし。このまま人に守られてばかりいてはいけない気がする。

「あせる必要はないさ。まだ、15だろ。あと100年くらいすれば普通になるさ。」

「100年!?ラウルさんはその身長になったのいつなんですか?」

「…15。」

「もういいです。」

そう言うと大笑いされた。むかつく~。

「ははっ、そんなに膨れるなよ。頬っぺた膨れてんぞ。」

そっぽを向くと頬っぺたを指でつつかれる。

「今日のオムライスチーズ入れるか?」

「…入れる。」

また笑ってる。
その後、片付けは僕がやってラウルさんにはゆっくりしてもらった。
夕方になり洗濯物を入れてお風呂の準備をした。

「ラウルさんお風呂準備できましたよ。」

「あぁ、ありがとう。お湯にも出来るのか?その指輪。ニーニストさんが色々な人に頼んでいたがすごいな。」

「これがないと僕生活できないですから。」

指輪のおかげで生活が出来てる。先生がいなければきっと家からも出ることもあまりしなかったと思う。


「そうだ。一緒にお風呂はいるぞ。」

「一人で入れます。」

「この間もレネさんと入っていただろう。家の湯船は俺用に作ってあるから溺れるぞ。」

そうなのだ。この間来たときに入ったが湯船がかなり大きくてお母さんと入った。

「大丈夫だ。溺れないように抱いてやるから。」

完全に子供扱いだ。意識もされてない。意識されても困るんだけど何だか落ち込む。

「お願いします。」

お風呂は楽しかった。魔力が回復してないとはいえ、ラウルさんは魔法全般使える。お風呂を泡泡にした上で気泡を作り出しジャグジー風呂にしてくれた。身体に気泡が当たり気持ちいい。

「気持ちいい~」

湯船の縁に顔を乗せてプチプチ音がするお風呂を楽しむ。

「しっぽが揺れてるな。面白い。」

「ひゃん。」

急にしっぽを掴まれて変な声が出た。

「ちょっとラウルさんしっぽ触らないで。」

「しっぽ敏感なんだな。俺のしっぽ短いからな。どれ、しっぽ洗ってやるよ。」

そう言うとしっぽの付け根辺りから両手で洗い出した。洗うというより撫でられる感じで。獣人になって思ったがしっぽと耳は触られると気持ち良くなってしまう。

「うーんっ。」

「気持ちいいのか。耳も洗ってやるから。」

勝手に喉がゴロゴロと鳴る。猫と一緒だ。

「っん…あっ…ん。」

「…変な気分になってしまうな。」

そう言いながらでも手は動いてる。止めてほしいような止めないでほしいような。

「のぼせてしまうな。上がるぞ。」

好き勝手に触られて僕はもう力も入らない。抱き抱えられて頭からお湯を掛けられた。タオルで拭かれてもぐったりしていた。

「ヤバいな。楽しい。」

僕の世話を焼きながらラウルさんが何か言ったけど、ボーッとしていた僕にはわからなかった。ご飯を食べて一緒のベッドで寝る。お風呂上がってからラウルさんがやたらに僕を構いだした。自分ですると言っても聞かないし、やたら抱っこしたがる。子供扱いだ。ただ、楽しそうなのでそのままにしておいた。

それから3日経ってもお父さんもお母さんも帰っては来なかった。


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