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1章.現代
18.
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ヒート中何度も晴一に抱かれてる夢を見た。僕は晴一が欲しくて何度もおねがいする。
「晴一…もっともっと。」
『優、好きだよ』
目が覚めると晴一はいない。キーホルダーが手の中にある。こっちが現実。
あれからお互いに部屋に籠っていて木根さんも入って来てない。そろそろ発情期も終わりだろう。薬を飲むと眠くなるらしく、ヒートも和らぐ。しかし完全に収まることはなく自分で慰めることをしていた。木根さんの精を受けたことも大きいのだろう。ヒートも酷くなることはなかった。
「優くん起きてるかい?智美が帰ってくる。」
出てくるように言われた。トイレ以外はこの部屋から出ていない。正直怖かった。
「もう、優くんのフェロモンも感じない。大丈夫だから。」
本棚をどかしドアを開ける。ほっとした表情でリビングであの人の帰りを待つ。
浮かれた様子のあの人が帰ってきた。すぐに眉間に皺が寄る。
「何でここにいるの?鎖外れてるじゃない。ベッドに繋いでたハズでしょ。もしかして激しくて外れちゃった?」
お互いに身綺麗で待っていれば、おかしいことに気付いて当たり前だった。しかも僕が傷ついてる様子ではなければ、余計にこの人は苛つくのは分かってる。
「智美、話がある。復讐なんてもうやめよう。そんなことをしても傷つくのは智美自身だ。」
カッと目を見開く。これはかなり怒っている証拠だ。何時も見ていた僕にはわかる。パシッと叩かれる音がした。木根さんの頬が赤い。
「知った口叩くんじゃないわよ。どれだけ私が傷ついたと思ってるの?ねぇ、隆司さんだけは私の味方でしょ。そんなこと言わないで。」
と、涙を流す。嘘泣き…これで皆騙されてきた。木根さんはその涙を見ても全く動じなかった。
「もう、協力はしない。でも、僕は智美の味方だよ。だめかい?ずっと側にいる。僕が守ってあげるから。」
「じゃあ要らないわ、隆司さんなんて。他の人に頼むから。」
さっきの涙なんてどこにいったんだろう。けろっとした感じでそう告げる。
「智美、じゃあ僕は優くんを連れて帰る。これ以上ここには置けない。」
僕の手を引いて出ていこうとすると、ガシュと音がした。木根さんの後ろにあの人が見える。木根さんの肩にはあのナイフが刺さっていた。
「駄目よ。それは復讐に欠かせない物なんだから。」
木根さんは蹲り肩を押さえているが、血が溢れて服が真っ赤に染まっている。深く刺さっている。このままじゃ死んでしまうかもしれない。身体が震えて動かない。虐待され続けている僕には、この人の行動一つで動けなくなる。
「ねぇ~優。隆司さんと出ていきたいの?それとも私と一緒にいる?」
ガタガタと身体が震える。僕には逆らえるはずがない。
「優は、お母さんと一緒がいいです…この人とは、行きません。お願い…打たないで…」
身体を丸めて小さくなる。きっと次は僕が刺される。
「あらあら、優はお利口さんね。隆司さん優は行かないって。」
はははははっと笑い僕の鎖を何時もの場所に付ける。
「優、あんた部屋に入ってなさい。一歩も出ないでね。出ちゃうと間違って刺しちゃうかも。」
と木根さんの肩からナイフを抜いた。血が飛び散る。あの人の顔にもかかった。木根さんはその場に倒れこんだ。僕は怖くて部屋に戻り布団を被って泣いた。あの人に逆らえる人はいない。僕を助けられる人はいない…。
いつの間にか眠っていた。ドアの向こうの様子を伺うが物音一つしない。部屋から出ることは許されないので開けることも出来ない。しかも開けて木根さんの死体でもあったらと思うと、開けられない。
引き出しからヒールのキーホルダーを出して握りしめた。もしかしたらあの人は晴一も刺すかもしれない。僕が不幸になることが一番の喜びだから。僕が好きになったばっかりに、晴一が危険な目に合ってしまう。
「晴一…晴一…無事でいて。」
何時間経ったかわからない。いきなりドアが開いた。
「隆司さん具合悪くなって病気に運ばれたわ。フローリングも汚れたし最悪。優も言うこと聞かないと飛田先輩も具合悪くなっちゃうかもよ。わかった?」
身体が震える。僕の返答次第で晴一に危険が及ぶ。はい分かりましたと返事をした。
「隆司さんちゃんと中出ししてくれた?妊娠したかしら?」
木根さんは薬を飲んだら子供は出来ないって言っていた。薬を飲んだと言ったらきっと酷い目にあう。
「…中に出してました。」
そう。じゃあ様子をみましょと言ってまた出ていった。あの人が出ていったのでリビングに出ると大量の血痕がそのままになっていた。血の臭いもする。
…気持ち悪い。トイレに駆け込み吐き続けた。何も食べてないので胃液しか出てこない。胃液の臭いにも気持ち悪くなり吐き気が収まらなかった。
何日か経ちいつの間にかリビングは綺麗になっていた。木根さんは病院に運ばれたと言っていたが大丈夫だろうか…不審に思われないの?明らかに刺された傷のはずなのに。実家の病院に運ばれたのかもしれない。
晴一は無事なんだろうか。連絡を取る手段も聞ける相手もいない。学校にも行けないのだろうか。藤崎はあの優斗さんの子供なのか。一気に得た情報が頭で整理できない。あの人の妹はどう思っているんだろうか。あの人と会っていることを知っているんだろうか。
あれから3ヶ月経った。僕はマンションから一歩も出れなくなった。学校にも行っていない。日付を見ると3年生になっていた。今回はホテルにも連れて行かれなかった。そして、一つ変わったこともある。毎日3食ご飯が出るようになった。もしかしたら妊娠していると思っているのかもしれない。
晴一の無事を確かめたかった。あの人が帰ってくると僕は発情期に入る。妊娠しているとヒートは起きない。妊娠していないことがバレてしまう。それが怖かった。
「晴一…もっともっと。」
『優、好きだよ』
目が覚めると晴一はいない。キーホルダーが手の中にある。こっちが現実。
あれからお互いに部屋に籠っていて木根さんも入って来てない。そろそろ発情期も終わりだろう。薬を飲むと眠くなるらしく、ヒートも和らぐ。しかし完全に収まることはなく自分で慰めることをしていた。木根さんの精を受けたことも大きいのだろう。ヒートも酷くなることはなかった。
「優くん起きてるかい?智美が帰ってくる。」
出てくるように言われた。トイレ以外はこの部屋から出ていない。正直怖かった。
「もう、優くんのフェロモンも感じない。大丈夫だから。」
本棚をどかしドアを開ける。ほっとした表情でリビングであの人の帰りを待つ。
浮かれた様子のあの人が帰ってきた。すぐに眉間に皺が寄る。
「何でここにいるの?鎖外れてるじゃない。ベッドに繋いでたハズでしょ。もしかして激しくて外れちゃった?」
お互いに身綺麗で待っていれば、おかしいことに気付いて当たり前だった。しかも僕が傷ついてる様子ではなければ、余計にこの人は苛つくのは分かってる。
「智美、話がある。復讐なんてもうやめよう。そんなことをしても傷つくのは智美自身だ。」
カッと目を見開く。これはかなり怒っている証拠だ。何時も見ていた僕にはわかる。パシッと叩かれる音がした。木根さんの頬が赤い。
「知った口叩くんじゃないわよ。どれだけ私が傷ついたと思ってるの?ねぇ、隆司さんだけは私の味方でしょ。そんなこと言わないで。」
と、涙を流す。嘘泣き…これで皆騙されてきた。木根さんはその涙を見ても全く動じなかった。
「もう、協力はしない。でも、僕は智美の味方だよ。だめかい?ずっと側にいる。僕が守ってあげるから。」
「じゃあ要らないわ、隆司さんなんて。他の人に頼むから。」
さっきの涙なんてどこにいったんだろう。けろっとした感じでそう告げる。
「智美、じゃあ僕は優くんを連れて帰る。これ以上ここには置けない。」
僕の手を引いて出ていこうとすると、ガシュと音がした。木根さんの後ろにあの人が見える。木根さんの肩にはあのナイフが刺さっていた。
「駄目よ。それは復讐に欠かせない物なんだから。」
木根さんは蹲り肩を押さえているが、血が溢れて服が真っ赤に染まっている。深く刺さっている。このままじゃ死んでしまうかもしれない。身体が震えて動かない。虐待され続けている僕には、この人の行動一つで動けなくなる。
「ねぇ~優。隆司さんと出ていきたいの?それとも私と一緒にいる?」
ガタガタと身体が震える。僕には逆らえるはずがない。
「優は、お母さんと一緒がいいです…この人とは、行きません。お願い…打たないで…」
身体を丸めて小さくなる。きっと次は僕が刺される。
「あらあら、優はお利口さんね。隆司さん優は行かないって。」
はははははっと笑い僕の鎖を何時もの場所に付ける。
「優、あんた部屋に入ってなさい。一歩も出ないでね。出ちゃうと間違って刺しちゃうかも。」
と木根さんの肩からナイフを抜いた。血が飛び散る。あの人の顔にもかかった。木根さんはその場に倒れこんだ。僕は怖くて部屋に戻り布団を被って泣いた。あの人に逆らえる人はいない。僕を助けられる人はいない…。
いつの間にか眠っていた。ドアの向こうの様子を伺うが物音一つしない。部屋から出ることは許されないので開けることも出来ない。しかも開けて木根さんの死体でもあったらと思うと、開けられない。
引き出しからヒールのキーホルダーを出して握りしめた。もしかしたらあの人は晴一も刺すかもしれない。僕が不幸になることが一番の喜びだから。僕が好きになったばっかりに、晴一が危険な目に合ってしまう。
「晴一…晴一…無事でいて。」
何時間経ったかわからない。いきなりドアが開いた。
「隆司さん具合悪くなって病気に運ばれたわ。フローリングも汚れたし最悪。優も言うこと聞かないと飛田先輩も具合悪くなっちゃうかもよ。わかった?」
身体が震える。僕の返答次第で晴一に危険が及ぶ。はい分かりましたと返事をした。
「隆司さんちゃんと中出ししてくれた?妊娠したかしら?」
木根さんは薬を飲んだら子供は出来ないって言っていた。薬を飲んだと言ったらきっと酷い目にあう。
「…中に出してました。」
そう。じゃあ様子をみましょと言ってまた出ていった。あの人が出ていったのでリビングに出ると大量の血痕がそのままになっていた。血の臭いもする。
…気持ち悪い。トイレに駆け込み吐き続けた。何も食べてないので胃液しか出てこない。胃液の臭いにも気持ち悪くなり吐き気が収まらなかった。
何日か経ちいつの間にかリビングは綺麗になっていた。木根さんは病院に運ばれたと言っていたが大丈夫だろうか…不審に思われないの?明らかに刺された傷のはずなのに。実家の病院に運ばれたのかもしれない。
晴一は無事なんだろうか。連絡を取る手段も聞ける相手もいない。学校にも行けないのだろうか。藤崎はあの優斗さんの子供なのか。一気に得た情報が頭で整理できない。あの人の妹はどう思っているんだろうか。あの人と会っていることを知っているんだろうか。
あれから3ヶ月経った。僕はマンションから一歩も出れなくなった。学校にも行っていない。日付を見ると3年生になっていた。今回はホテルにも連れて行かれなかった。そして、一つ変わったこともある。毎日3食ご飯が出るようになった。もしかしたら妊娠していると思っているのかもしれない。
晴一の無事を確かめたかった。あの人が帰ってくると僕は発情期に入る。妊娠しているとヒートは起きない。妊娠していないことがバレてしまう。それが怖かった。
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