当たり前の幸せ

ヒイロ

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後日談

その後.4

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発情期も終わり日常が戻ってきた。朝食とお弁当を作り洗濯、掃除をし夕食の準備をする。仕事は依頼がきたら煇に相談をし長期にならないものばかり選んだ。

そして煇からびっくりすることを言われた。煇の会社で働かないかと。考えたことがなかったので驚いた。ただ、子供が出来たら難しいので保留となった。あの三人が僕をスカウトしたいと煇に言ったらしい。必要とされることが嬉しかったので前向きに考えたいと思った。

発情期から2ヶ月経った頃朝食の準備をしているとご飯の炊ける匂いで気持ち悪くなった。座り込んでると顔を洗って出てきた煇が慌てて走ってきた。

「拓!!どうした?」

すぐに抱き抱えられソファーに横になる。

「急に気持ち悪くなったんだ。もしかしたら…煇、僕妊娠したと思う。」

煇がえっ?と驚いたが、すぐに照れてるような恥ずかしような顔をした。

「病院いかないと分からないけどきっと悪阻だと思う。時期的にも。」

「そっ…そうか…つわりね。こどもできた…俺たちの…」

ふふっ戸惑ってる。煇がこんなに動揺するなんて思わなかった。

「拓ちょっと待ってて。うん。あっ、そのままでいいからな。」

と慌てて寝室に行ったかと思ったら休みを取ったみたいで病院行くことになった。移動も危ないからと抱き抱えるしまつ。いくら大丈夫と言っても聞かない。病院でも同じ調子なのでみんなの視線が自分たちに向いていて恥ずかしのでずっと下を向いていた。

「おめでとうございます。妊娠6週目です。」

と先生に言われて二人で喜んだ。僕は何だか胸いっぱいで泣いてしまった。初めてのことだったので先生に色々注意することなど出産までのことを僕以上に煇が前のめりで聞いていた。

「お父さんお母さん大変ですがこれから頑張りましょう。お父さんも支えてあげて下さいね。一番大変なのはお母さんですから。」

「はい。」

と煇が返事してその日帰ってからお互いの両親に連絡をした。どちらともとても喜んでくれて何かあったら協力するからと言ってくれた。お兄ちゃんの所も妊娠したと報告があったので同じ歳になる。奈美さんはお母さん先輩だし何と言っても今同じ状況なのだ色々相談に乗ってもらえると心強かった。

妊娠してからの煇は過保護…超過保護になってしまった。僕が悪阻で苦しんでるので心配なのはわかるけど歩くだけでも心配するし。お風呂も1人では入らせてもらえず買い物も必ず煇と一緒じゃないと行かせてもらえない。仕事もなかなか行きたがらず毎日何とか送り出している。一時間置きに電話してくるし。まさかここまでとは…。帰ってきてもネットで調べて子供の為にはとサプリメントや子供にいい音楽とか言っては毎日掛けている。

男性の妊娠の場合あまりお腹は膨らんでこない。子宮が結腸の所にあるからなんだけど何故か僕はかなり大きくなった。診察で分かったんだけど双子だった。二人で愛の結晶は2倍だねって喜んだ。性別も教えてもらい何と男の子と女の子だった。

30週になりかなり大きなお腹で歩くのもしんどい。煇がお風呂など全身洗ってくれる。お腹が邪魔して届かない所があるので助かってるけど…。そして、必ず家にいるときは隣にいてくれる。先回りして煇が動いてくれるのはいいけど、こんなに楽していいのかと心配になる。

「煇今日なに食べたい?」

朝食の時に晩御飯のリクエストを聞く。

「筍がおいしい季節だからね。筍ごはんとか?空豆とかも食べたいかな。」

4月だし、確かに美味しい季節。

「帰ってきてから買い物行こうね。」

じゃあ行ってきますという煇を見送って洗濯や掃除をするけどすぐに疲れてしまう。

「ママちょっと休憩。」

子供に話しかけるのが癖になっている。先生にも適度に動いて子供には話しかけるように言われている。煇が悩みに悩んで名前も決めた。最初に候補が20あると言われた時にはいつ決まることやらと心配だったが毎日本を読んだり候補の名前を書いた紙を見てはあーでもないこーでもないと悩んでいるのを見てあーこの人は本当に子供のことを考えてくれてるんだなと思うと心が温かくなった。子供が産まれたら話してあげようと思った。隈が出来た顔で名前が決まったと朝一に報告してきた煇の話をしてあげようと。

「すみちゃん、たいしくんに会えるのが楽しみだよ~。今日は筍ごはんだからね~パパ帰ってくるまでお昼寝しようか。」

元気よくお腹を蹴られ返事が返ってきた。

37週になりいつ産まれてもおかしくない。
煇も最近家で仕事をするようになった。すぐに病院に行けるようにと。お腹が張ることあって、うっと言うとすぐに煇が慌てるので僕は逆に安心する。一人じゃないと思えるから。

朝起きると痛みがあった。お腹の張りもあり、そろそろ陣痛始まるかもと思っていたら痛みの間隔が短くなってきた。

「いたっ。煇病院行こう。間隔短くなってきたみたい。」

先生にも慌てずに余裕を持って来てくださいと言われている。もし違っても構わないからと言われてる。入院の準備もしてある。

「わかった。荷物先に車に入れてくるからソファーで座ってて。」

と、言うと車に荷物を入れに行った。うっ、結構痛いかも。でもそれは子供たちが出て来たがってる証拠。

「澄ちゃん大志くんママ頑張るからね。もう少し待っててね。」


そして僕は子供を産んだ。6月21日。病院ついてその日のうちに。すごく辛く苦しかった。いつまでも痛みが続き痛みでどうにかなってしまうと思っていた。先生がいくら頑張ってもう少しと言われても何をどう頑張ってるのか頑張れているのか分からなかった。ずっと痛くて、泣きすぎて酷い顔だったと思う。煇の声も聞こえなくなった時、おぎゃあ~と聞こえた。そして今までの痛みや苦しかったことが全てなくなった。


「拓、お疲れさま。…ありがとう。」

目を真っ赤にした煇がキスを目蓋に鼻に唇にしてくれた。そして始めて我が子を抱いた。出産で体力を使ってくたくただったが二人の子供を抱き抱えると不思議と力が漲った。


「煇~澄ちゃん見てて。大志のおむつ替えるから。澄ちゃん下ろすと泣いちゃうし。」

「わかった。澄ちゃんパパが抱っこしてあげる。おいで。」

澄ちゃんを煇に預けると泣いてる大志のオムツを替える。どちらかが泣くともう1人も泣く。幸せも2倍だけど大変さも2倍だった。

それと子育てが一番大変なのが…

「煇…お乳あげたいの。治療お願いします。」

そう、お乳をあげるには煇のが必要なのだ。男のせいなのかあまり量は出ないが出さないと乳が張る。でも自分で揉んでも乳首が出てこないのだ。煇がいるときは必ず治療して乳首を出してもらう。煇が仕事がある時は帰ってくるまで粉ミルクで代用するがまず煇が帰ってきたら治療からお願いして子供たちにお乳をあげる。面倒くさいと思われていないかと心配に思ったが面倒くさいのが好きな煇なのだ。嬉しいらしい。

「お義父さんが言っていたのはこういうことか。そりゃ子供欲しがるわけだ。」

と、意味のわからないことを言っていた。

別れようと思ったこともあった、死んでしまう可能性もあった。でもこの子供たちを産んで僕はオメガで本当に良かったと思った。オメガじゃないと絶対に知ることの出来ない幸せがここにある。煇がいて僕がいて子供たちがいる。僕の当たり前の幸せがここにある。

今までもこれからも。
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