当たり前の幸せ

ヒイロ

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動物園に着くと快晴でうーん動物園日和。夜からは雨になるらしいけどそんな感じは今のところはない。

9月でちょっと暑い位で半袖だったのにお母さんと僕は上から薄手のパーカーを着せられた。まぁ、日焼けすると赤くなり痛くなるので暑いけど仕方ない。

「何から見る~」

「ぞうさん~」
真弥ちゃんの抱っこ権利を手に入れた姉ちゃんは何でもなく歩いているが真弥ちゃんは来年小学生20キロ位ある。僕だったらすでにヘトヘトになっているはずだ。

「ぞうさん見たら中央の公園でお昼にするから。」

張り切ったお弁当作りで動物園に着いたときには13時を回ってしまったので仕方ない。先にお弁当を食べてのんびりした後食後の運動として動物園を見て回った。
コアラのコーナーで木にしがみついているコアラを見た兄ちゃんが

「拓だな。」

と言う発言で家族全員が頷く。

「えーっ。何でコアラ?」

「小さい時に拓はいーつもお母さんにあんな感じでしがみついてたわよ。ねー。」

確かに~ってお母さんも笑ってた。

「そうだっけ?」

「そうそう洗濯干してるのに絶対前にしがみつくし料理してるときなんか危ないって言っても抱っこしないと泣くし」

大変だったと。全く覚えてない。

「お父さん拓に真剣に話し合いをしてたの覚えてるよ~春人は拓のお母さんだけど俺の奥さんでもあるんだ。いつまでも一人占めしていいものではないんだよとか」

みんな爆笑した。お母さんは顔を真っ赤にしながら

「拓が急に抱きつかなくなったの真幸さんのせいだったの。しかも説得の内容おかしくない?」

「おかしくないさ。四六時中抱きついてるんだからそりゃ話し合いは必要だろ。」

「まだ5歳の子供相手に真剣に話してるんだもん。お兄ちゃんとアルファって怖いねって言ってた。」

「今の俺だったら父さんの気持ち分かるわ~」

だよなぁ~ってお父さんが言うと兄ちゃんもうんうんって。また、お母さんと奈美さんと僕は理解出来なかった。

一通り回ってお土産を買おうとショップに入ったときにずっと携帯を見てないことに気づいた。煇からメール来てるかもと開くと電話マークの所にありえない数字が見えた。25?慌てて履歴を確認すると大学時代の先輩の矢野徹やのとおるからだった。今は仕事相手でもある。マナーモードにしていたので全く気づかなかった。

姉ちゃんに声をかけてからショップの外に出て電話を掛けるとワンコールで出た。

「よかった~電話出た~」

もしもしと言う暇もなくほっとした声で先輩が喋りだす。

「拓大変なんだよー。助けてくれ~。」

「何かあったんですか?」

「半年前に導入したアプリ急に今日使えなくなってクレームの電話が鳴りっぱなしでずっと対応に追われているんだ。原因調べてほしい。」

半年前に導入したアプリ。それは僕が携わった仕事だった。その仕事のせいで睡眠不足にもなり体調不良で煇にも迷惑をかけてしまった。先輩は百貨店に勤めていて結構上の立場でもある。今の時代若者の百貨店離れを阻止するべく便利なアプリお得なアプリということで計画が進みそのアプリの立ち上げの依頼がきた。プログラムを組んでバクが出ないよう何度もやってみた。なかなか大変で最初の方など何故か関東だけ使えなかったりポイント付与できなかったりなど色々問題が出た。その一つ一つを組み直したりどこが悪いのか問題点などずっとパソコンとにらめっこしていたらご飯を食べるのを忘れたり睡眠を削ったりしてたら僕が倒れた。
ただの睡眠不足だったんだけど煇が本当に心配して自分も忙しいのに付きっきりで看病してくれた。まぁ、ぐっすり眠ったら回復はしたんだけど体重が落ちたせいでしばらくパソコン触るの禁止され先輩もかなり煇に怒られたらしい。

でも、最後までやり遂げたいと説得して体調の様子みながら何とかやり遂げたのが3ヶ月前。それから煇に先輩の依頼は必ず報告するように言われている。

「昨日から実家に帰ってきててパソコン家なんです。しかも今動物園ですし。」

申し訳ないんですがと続けると

「他の人にも依頼はしてはあるんだ。このアプリに携わった関係者にもそれでも原因が分からなくて拓の方でも調べてくれないか?」

「それは全国なんですか?」

「いや、新宿店だけなんだ。」

それは。先輩が勤めていている百貨店の中でも全国1位2位の売り上げ集客の多い店舗だ。そりゃ大事にもなる。

「わかりました。でも出先なので一旦実家に寄ってから家に帰りますのでかなり遅くなると思います。いいですか?」

「助かる。」

また連絡します。と電話を切る。僕も社会人としてお金を貰った以上責任がある。さすがに知りませんよとは言えない。ショップの方を見るとみんなが買い物が終わり出てきていた。

「何かあったの?」

と、心配そうにお母さんが声をかけてきた。

「仕事でトラブル発生かな。本当申し訳ないだけど今日帰るよ。」

仕事と言うとさすがにみんな責めることは言わなかった。真弥ちゃんだけはやだーって言ってくれたけど。

実家に帰り荷物をまとめて駅まで見送ってくれた。家までお父さんが送るって言ってくれたけどせっかくの家族団欒を水を差すことは出来なくて断った。最後に真弥ちゃんをぎゅって抱き締めてバイバイと手を振り改札に入る。

煇に心配かけることになりそうなので電車でメールを送ろうと打っていると急に電話が鳴った。先輩からだった。また着信履歴が先輩で埋め尽くされることにちょっと不満になったが電車の中なので小声で電車の中ですと言って電話を切る。
もしかしたら原因が分かったかもと喜んだがメールがきて何時位に家に着くのかという内容だった。お客様からいつ原因がわかるのかしつこく聞かれてるらしく明確な答えがほしいらしい。
憂鬱になってきた。原因がわからなかったらどうすればいいのかという不安が押し寄せる。

最寄り駅に着いたけど家に食料が何もないことに気付き近くのスーパーに寄って帰ることに決め横断歩道を渡る。家にから徒歩10分位のスーパーでよく利用する。手早く買い物をして外に出ると雨が降っていた。暗くなってたので空模様で雨が降るかどうかなんて分からなかった。

あーしまったなぁ~あのまま帰ってたらきっと雨に濡れなかったのに。傘を買うか?と思ったけどすぐそこだし走ればそんなに濡れないかも。迷ったけどフードを被りスーパーから横断歩道の信号が変わるのを見て青になった瞬間走り出した。しかしすぐに後悔した。暗くて分からなかったがかなりのどしゃ降りだった。それでも止まるわけにはいかない。走り続け家が見えたと油断したとき水溜まりに右足が入った。下を見てなかった。

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