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第6話 折原家襲撃
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それからしばらくして……
ターゲットを確定した光一の行動は早かった。
「ここか、音羽をたぶらかしたくだらん男のいる家は」
運転手をせかしてタクシーで乗り付け、光一と千砂はその家の前に立っていた。
「折原正(おりはらただし)。1年3組。趣味は犬の散歩、好きな物は犬。ちょっと運動のできるまあ普通の生徒よ。この時間なら親は仕事に行っていて、家は彼一人と犬だけのはず」
クラスと名前が分かれば千砂にとって彼のことを調べることなど造作もないことだった。光一は怒りに燃えている。
「そんなことはどうでもいい。とにかく奴に音羽のことをあきらめさせる!!」
普段の冷静さをかなぐりすて、光一は鼻息も荒くその家の玄関へと向かおうとする。
「待って。わたしが誘い出す」
このままだと物理で扉を破壊しかねない。危機感を感じた千砂は彼に代わってピンポンを押した。
「あはは、ミレモでポンだって。面白いなあ、ジョン」
「ワン!」
折原正が自宅の部屋で愛犬ジョンと一緒に笑ってテレビを見ていると、ピンポンがなった。
「はあい」
親はまだ仕事から帰ってきていない。正は自分から玄関へと行ってドアを開けた。
そこにいたのは正の知らない上級生の少女だった。その少女、真壁千砂はとりあえず調べたことの確認をした。
「こんにちは、正君。今お家の方はおられますか?」
「い……いないけど。まだ仕事から帰ってきてません」
自分の名前を知っている少女に不信感を抱きながら正が答えると、少女はにっこりと微笑んだ。
「それは良かった。実はあなたに話がある人がいるの。驚かないで聞いてあげてね」
「は……はい。話なら」
現れたのは物凄く恐い顔をした上級生の少年だった。
「お前か! 音羽をたぶらかした男というのは!!」
突然胸倉を掴まれ、わけもわからないまま締め上げられる正。笑っていた顔が今ではひきつっている。
あの日から人を驚かせないように厳しくしつけられた愛犬ジョンは、じっと座って状況を見つめている。
「ひええ、僕は知りません! いったいなんのことですかあ!!」
正と音羽はあの出会いの日以来口を聞いたこともなければ、会ったこともない。名前を名乗りあったわけでもない。
ただ、音羽が遠くから見つめていただけだ。
正が知らないのも当然と言えた。
だが、そんなことは光一には関係ない。
襟首を締め上げる力を強め、地獄の鬼のように燃え盛る目で憎たらしい小僧の顔を睨みつける。
「いいか、金輪際音羽には近づくな。チョコも受け取るな。分かったな!?」
「は、はい~」
おびえる顔でただがくがくと首を縦に振る正。さらに横に立っている少女が補足させるように付け加えてくる。
「誓いなさい。折原正は音羽さんに近づかない。チョコも受け取らないと」
「は、はい! わたくし折原正は音羽さんに近づきません!チョコも受け取りません! ですから、命ばかりは~! ひええ~!」
「よろしい。光一君もういいでしょう。彼は誓ったのだから」
「ふん!」
千砂に促され、光一は鼻息を鳴らして彼の体から手を放した。どさりと無造作に倒れ込む正の体に犬が擦り寄る。
「今の誓い、録音したからね。情けない声を校内放送で流されたくなかったら、今夜のことは誰にも話しては駄目よ」
「は、はい~~~」
千砂に念を押されるまでもなく正には今夜のことを誰にも話すつもりはなかった。
なおも鬼のように鼻息荒く自分を睨みつけてくる男の姿を見ては言えるはずもなかった。
「彼は十分に分かったみたいよ。帰りましょう」
「……ああ」
少女が鬼を連れて帰ってくれる。
二人が去って暴風雨が抜けた後のような静けさが戻ってきた玄関で、正はただわけも分からず茫然自失と座りこんでいた。
部屋の中でただテレビだけが楽しげな笑いの音を奏でている。
ターゲットを確定した光一の行動は早かった。
「ここか、音羽をたぶらかしたくだらん男のいる家は」
運転手をせかしてタクシーで乗り付け、光一と千砂はその家の前に立っていた。
「折原正(おりはらただし)。1年3組。趣味は犬の散歩、好きな物は犬。ちょっと運動のできるまあ普通の生徒よ。この時間なら親は仕事に行っていて、家は彼一人と犬だけのはず」
クラスと名前が分かれば千砂にとって彼のことを調べることなど造作もないことだった。光一は怒りに燃えている。
「そんなことはどうでもいい。とにかく奴に音羽のことをあきらめさせる!!」
普段の冷静さをかなぐりすて、光一は鼻息も荒くその家の玄関へと向かおうとする。
「待って。わたしが誘い出す」
このままだと物理で扉を破壊しかねない。危機感を感じた千砂は彼に代わってピンポンを押した。
「あはは、ミレモでポンだって。面白いなあ、ジョン」
「ワン!」
折原正が自宅の部屋で愛犬ジョンと一緒に笑ってテレビを見ていると、ピンポンがなった。
「はあい」
親はまだ仕事から帰ってきていない。正は自分から玄関へと行ってドアを開けた。
そこにいたのは正の知らない上級生の少女だった。その少女、真壁千砂はとりあえず調べたことの確認をした。
「こんにちは、正君。今お家の方はおられますか?」
「い……いないけど。まだ仕事から帰ってきてません」
自分の名前を知っている少女に不信感を抱きながら正が答えると、少女はにっこりと微笑んだ。
「それは良かった。実はあなたに話がある人がいるの。驚かないで聞いてあげてね」
「は……はい。話なら」
現れたのは物凄く恐い顔をした上級生の少年だった。
「お前か! 音羽をたぶらかした男というのは!!」
突然胸倉を掴まれ、わけもわからないまま締め上げられる正。笑っていた顔が今ではひきつっている。
あの日から人を驚かせないように厳しくしつけられた愛犬ジョンは、じっと座って状況を見つめている。
「ひええ、僕は知りません! いったいなんのことですかあ!!」
正と音羽はあの出会いの日以来口を聞いたこともなければ、会ったこともない。名前を名乗りあったわけでもない。
ただ、音羽が遠くから見つめていただけだ。
正が知らないのも当然と言えた。
だが、そんなことは光一には関係ない。
襟首を締め上げる力を強め、地獄の鬼のように燃え盛る目で憎たらしい小僧の顔を睨みつける。
「いいか、金輪際音羽には近づくな。チョコも受け取るな。分かったな!?」
「は、はい~」
おびえる顔でただがくがくと首を縦に振る正。さらに横に立っている少女が補足させるように付け加えてくる。
「誓いなさい。折原正は音羽さんに近づかない。チョコも受け取らないと」
「は、はい! わたくし折原正は音羽さんに近づきません!チョコも受け取りません! ですから、命ばかりは~! ひええ~!」
「よろしい。光一君もういいでしょう。彼は誓ったのだから」
「ふん!」
千砂に促され、光一は鼻息を鳴らして彼の体から手を放した。どさりと無造作に倒れ込む正の体に犬が擦り寄る。
「今の誓い、録音したからね。情けない声を校内放送で流されたくなかったら、今夜のことは誰にも話しては駄目よ」
「は、はい~~~」
千砂に念を押されるまでもなく正には今夜のことを誰にも話すつもりはなかった。
なおも鬼のように鼻息荒く自分を睨みつけてくる男の姿を見ては言えるはずもなかった。
「彼は十分に分かったみたいよ。帰りましょう」
「……ああ」
少女が鬼を連れて帰ってくれる。
二人が去って暴風雨が抜けた後のような静けさが戻ってきた玄関で、正はただわけも分からず茫然自失と座りこんでいた。
部屋の中でただテレビだけが楽しげな笑いの音を奏でている。
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