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第5話 とりん先生と量子力学の授業
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「量子力学の面白いところは、粒子と波動という二つの状態が重なりあっていることだ。つまり、粒子と波動が同じ数だけ存在する」
「それはわかるけど……」
「粒子も波動も同じ数だけある。しかし、それらは観測すると必ず同時に存在することになるんだ。だから、粒子を観測することによって波が観測されるし、その逆もある。つまり、一つの観測で別の現象が発生する」
「それってどういうこと?」
「つまり、光子を観測すれば電子が見つかるし、逆に電子を観測すれば光子を見つけることができるってことだ。そして、これは時間についても同様だ。光や電磁波のように波として存在しているものを観測すれば、その瞬間に時間が現れる。量子コンピューターを使えば、過去に起こったことを計算によって正確に再現することができるようになるだろう」
「なるほどね」
理屈としては納得できるが、それが本当なら大変なことである。
「でもさ、そんなことが可能なの? 時間を自由に操れるなんて、まるで神様みたいじゃない」
「確かにそうだな」
とりん先生は笑って答えた。
「だが、この理論には致命的な欠陥がある。どんなに優秀なコンピュータを使っても、過去に起きた出来事を再現することはできないんだ。たとえば、一九七〇年にニクソン大統領がウォーターゲート事件で辞任に追い込まれたとき、それを予測できた人は誰もいなかった。だから、あのとき、誰がどう行動したのかを正確に知ることは誰にもできない。しかし、過去の出来事を知るためには、その人物の行動をすべて知る必要がある。つまり、過去に何が起きたかを知るために、その人物が何をしてきたかを知らなければならない。そして、その人がこれから何をしようとしているかも知っていなければならない。ところが、未来の出来事についてはまったくわからない。どんな天才であっても、人間が未来を完全に予知することは不可能なんだ」
「そうよね……」
とりん先生の話を聞いているうちに、わたしは自分の頭が混乱してくるのを感じた。
「えーっと、じゃあさ、今から五秒後に、この部屋に誰かが飛び込んでくるかどうか、予言してみてよ」
「いいとも」
とりん先生は即答したが、すぐに困った顔になった。
「うむ……なかなか難しい質問だな。その前に、おまえはどうして五秒間と定義したんだ?」
「だって、ほら、時計を見てごらんなさい。あと三秒で授業時間が終わるわ」
「ああ、そういうことか。では、起立」
「それはわかるけど……」
「粒子も波動も同じ数だけある。しかし、それらは観測すると必ず同時に存在することになるんだ。だから、粒子を観測することによって波が観測されるし、その逆もある。つまり、一つの観測で別の現象が発生する」
「それってどういうこと?」
「つまり、光子を観測すれば電子が見つかるし、逆に電子を観測すれば光子を見つけることができるってことだ。そして、これは時間についても同様だ。光や電磁波のように波として存在しているものを観測すれば、その瞬間に時間が現れる。量子コンピューターを使えば、過去に起こったことを計算によって正確に再現することができるようになるだろう」
「なるほどね」
理屈としては納得できるが、それが本当なら大変なことである。
「でもさ、そんなことが可能なの? 時間を自由に操れるなんて、まるで神様みたいじゃない」
「確かにそうだな」
とりん先生は笑って答えた。
「だが、この理論には致命的な欠陥がある。どんなに優秀なコンピュータを使っても、過去に起きた出来事を再現することはできないんだ。たとえば、一九七〇年にニクソン大統領がウォーターゲート事件で辞任に追い込まれたとき、それを予測できた人は誰もいなかった。だから、あのとき、誰がどう行動したのかを正確に知ることは誰にもできない。しかし、過去の出来事を知るためには、その人物の行動をすべて知る必要がある。つまり、過去に何が起きたかを知るために、その人物が何をしてきたかを知らなければならない。そして、その人がこれから何をしようとしているかも知っていなければならない。ところが、未来の出来事についてはまったくわからない。どんな天才であっても、人間が未来を完全に予知することは不可能なんだ」
「そうよね……」
とりん先生の話を聞いているうちに、わたしは自分の頭が混乱してくるのを感じた。
「えーっと、じゃあさ、今から五秒後に、この部屋に誰かが飛び込んでくるかどうか、予言してみてよ」
「いいとも」
とりん先生は即答したが、すぐに困った顔になった。
「うむ……なかなか難しい質問だな。その前に、おまえはどうして五秒間と定義したんだ?」
「だって、ほら、時計を見てごらんなさい。あと三秒で授業時間が終わるわ」
「ああ、そういうことか。では、起立」
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