3 / 13
第3話 語るえんぴつ
しおりを挟む
今私はえんぴつを使ってこれを書いている。えんぴつは長年親しんできた私の心強い相棒だ。こんな具合にすらすらと書ける道具を私は他に知らない。削りを使えばすぐにまた続きが書ける。
「今日は」の次に何を書くか、迷ったことはない。その日の出来事をそのまま書くだけだから、思いつくままでいいのだ。
だから私の日記には、その日の出来事以外には何も書かれていないことが多い。こうして毎日毎日日記を書いている。
日記帳は何冊も使っているけれど、読み返してみて自分が何を思って書いていたのか、思い出せなくなったことがある。
私は何を思ってこれを書いたのだろう?
この日記を読み返すたびに、私は自分自身について考えさせられる。
私が私の目を通して見たものを書き残すために始めたこの日記だが、書いたものが全てではない。何かの前提があって書いている以上、そこには当然物書きとしての心情が含まれているからだ。
なら、それは何なのか。私は私がこの文章を記したえんぴつに訊ねてみる。するとえんぴつはこう答える。
「私はただあなたが見たものを記しているだけです」
では、私は何を思ってこれを書いたのだろうか。私は自分の心を正しく認識できない。私の心は常にぐらついている。
その日その時、私の心に浮かんだものをただありのままに書き連ねるだけだ。そこに書かれていることは全て嘘偽りのない真実である。だが、そこに意味はあるのだろうか。
いや、意味などないのかもしれない。それはこのえんぴつの削りカスと同じである。
書くほどに現れて、溢れれば捨ててしまう。無駄な物として。
ならばなぜ、私はえんぴつを使ってこれを書こうとするのか。
私の心に浮かぶものは、いつも同じだ。そしてそれを言葉にすることは難しい。それでも、私は言葉を紡ぐことを止められない。それがたとえ不格好なものであったとしても、私はそれを記さずにはいられない。
なぜなら、それが私の本性なのだから。
私にとって、この世界はあまりにも美しく、あまりにも残酷だった。
それはこのえんぴつと同じ。消えゆく運命にあるのだ。
そのともしびを私は今もこうして綴っていく。
「今日は」の次に何を書くか、迷ったことはない。その日の出来事をそのまま書くだけだから、思いつくままでいいのだ。
だから私の日記には、その日の出来事以外には何も書かれていないことが多い。こうして毎日毎日日記を書いている。
日記帳は何冊も使っているけれど、読み返してみて自分が何を思って書いていたのか、思い出せなくなったことがある。
私は何を思ってこれを書いたのだろう?
この日記を読み返すたびに、私は自分自身について考えさせられる。
私が私の目を通して見たものを書き残すために始めたこの日記だが、書いたものが全てではない。何かの前提があって書いている以上、そこには当然物書きとしての心情が含まれているからだ。
なら、それは何なのか。私は私がこの文章を記したえんぴつに訊ねてみる。するとえんぴつはこう答える。
「私はただあなたが見たものを記しているだけです」
では、私は何を思ってこれを書いたのだろうか。私は自分の心を正しく認識できない。私の心は常にぐらついている。
その日その時、私の心に浮かんだものをただありのままに書き連ねるだけだ。そこに書かれていることは全て嘘偽りのない真実である。だが、そこに意味はあるのだろうか。
いや、意味などないのかもしれない。それはこのえんぴつの削りカスと同じである。
書くほどに現れて、溢れれば捨ててしまう。無駄な物として。
ならばなぜ、私はえんぴつを使ってこれを書こうとするのか。
私の心に浮かぶものは、いつも同じだ。そしてそれを言葉にすることは難しい。それでも、私は言葉を紡ぐことを止められない。それがたとえ不格好なものであったとしても、私はそれを記さずにはいられない。
なぜなら、それが私の本性なのだから。
私にとって、この世界はあまりにも美しく、あまりにも残酷だった。
それはこのえんぴつと同じ。消えゆく運命にあるのだ。
そのともしびを私は今もこうして綴っていく。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
アレンジ可シチュボ等のフリー台本集77選
上津英
大衆娯楽
シチュエーションボイス等のフリー台本集です。女性向けで書いていますが、男性向けでの使用も可です。
一人用の短い恋愛系中心。
【利用規約】
・一人称・語尾・方言・男女逆転などのアレンジはご自由に。
・シチュボ以外にもASMR・ボイスドラマ・朗読・配信・声劇にどうぞお使いください。
・個人の使用報告は不要ですが、クレジットの表記はお願い致します。
紺坂紫乃短編集-short storys-
紺坂紫乃
大衆娯楽
2014年から2018年のSS、短編作品を纏めました。
「東京狂乱JOKERS」や「BROTHERFOOD」など、完結済み長編の登場人物が初出した作品及び未公開作品も収録。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる