2 / 13
第2話 僕と彼女の缶コーヒー
しおりを挟む
缶コーヒーを一本買った。
そしてちょっと公園のベンチに座って飲もうとした時だった。人の気配を感じた。目を上げると、そこに立っていたのは美緒さんだった。彼女は僕を見つめながら言った。
「……どうして?」
「えっ? 何がですか?」
「どうしてあなたが私と同じ缶コーヒーを買っているのよ?」
「ああ、偶然ですね。びっくりしました」
僕はそう言って笑ったが、内心では冷や汗を流していた。美緒さんは僕の手の中にある缶コーヒーを見て、それから自分の手元にある缶コーヒーを見た。それから顔を上げて、もう一度僕の顔をじっと見つめた。
「偶然じゃないわね。これは計画的犯行だわ」
「なんのことですかね?」
「とぼけないで。あなたは私があの自動販売機を使う事を知っていた。それでわざと先回りをしてあの自動販売機で同じ缶コーヒーを買ったんでしょ?」
僕は首を横に振った。
「そんなことしませんよ。あの自動販売機はこの缶コーヒーが100円なんです。缶コーヒー如きで130円も払いたくないでしょう? ですからあそこで買ったに過ぎないのです」
「嘘つきなさい!」
美緒さんは語気を強めた。彼女の持っている缶コーヒーは震えていた。
「あなたが私をつけていたことには気づいていたんだから! だから私はわざと今日あの自動販売機の前を通ったのよ。そしたら案の定、あなたは私と同じように缶コーヒーを買っていた。しかも私と同じように財布を出してお金を入れてボタンまで押して。つまり、あなたの目的は最初から缶コーヒーなんかじゃなかったって事よ!」
美緒さんの指摘に僕は観念した。
「おみそれいたしました」
僕は素直に謝った。ここで自販機を使うのに財布を出してお金を入れてボタンを押すのは普通だろうと指摘するほど僕は野暮では無い。
事はもうそうした事を指摘する段階ではないのだ。認めようじゃないか。すると美緒さんは深いため息をついた。
「……どうしてこんなことをするわけ?」
「美緒さんと一緒にいたかったんですよ」
「…………」
「昨日は本当に楽しかったです。でも、それだけじゃ足りなくなってしまったんです。もっと美緒さんと一緒にいたいと思うようになってしまった……昨日は30円貸してくれてありがとうございます。」
「缶コーヒーなんてスーパーに行けば70円で買えるでしょ?」
「だって、それじゃめんどくさいじゃないですか」
「生ぬるい事を」
僕達はベンチに座りながらしみじみと缶コーヒーを飲むのだった。
そしてちょっと公園のベンチに座って飲もうとした時だった。人の気配を感じた。目を上げると、そこに立っていたのは美緒さんだった。彼女は僕を見つめながら言った。
「……どうして?」
「えっ? 何がですか?」
「どうしてあなたが私と同じ缶コーヒーを買っているのよ?」
「ああ、偶然ですね。びっくりしました」
僕はそう言って笑ったが、内心では冷や汗を流していた。美緒さんは僕の手の中にある缶コーヒーを見て、それから自分の手元にある缶コーヒーを見た。それから顔を上げて、もう一度僕の顔をじっと見つめた。
「偶然じゃないわね。これは計画的犯行だわ」
「なんのことですかね?」
「とぼけないで。あなたは私があの自動販売機を使う事を知っていた。それでわざと先回りをしてあの自動販売機で同じ缶コーヒーを買ったんでしょ?」
僕は首を横に振った。
「そんなことしませんよ。あの自動販売機はこの缶コーヒーが100円なんです。缶コーヒー如きで130円も払いたくないでしょう? ですからあそこで買ったに過ぎないのです」
「嘘つきなさい!」
美緒さんは語気を強めた。彼女の持っている缶コーヒーは震えていた。
「あなたが私をつけていたことには気づいていたんだから! だから私はわざと今日あの自動販売機の前を通ったのよ。そしたら案の定、あなたは私と同じように缶コーヒーを買っていた。しかも私と同じように財布を出してお金を入れてボタンまで押して。つまり、あなたの目的は最初から缶コーヒーなんかじゃなかったって事よ!」
美緒さんの指摘に僕は観念した。
「おみそれいたしました」
僕は素直に謝った。ここで自販機を使うのに財布を出してお金を入れてボタンを押すのは普通だろうと指摘するほど僕は野暮では無い。
事はもうそうした事を指摘する段階ではないのだ。認めようじゃないか。すると美緒さんは深いため息をついた。
「……どうしてこんなことをするわけ?」
「美緒さんと一緒にいたかったんですよ」
「…………」
「昨日は本当に楽しかったです。でも、それだけじゃ足りなくなってしまったんです。もっと美緒さんと一緒にいたいと思うようになってしまった……昨日は30円貸してくれてありがとうございます。」
「缶コーヒーなんてスーパーに行けば70円で買えるでしょ?」
「だって、それじゃめんどくさいじゃないですか」
「生ぬるい事を」
僕達はベンチに座りながらしみじみと缶コーヒーを飲むのだった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
アレンジ可シチュボ等のフリー台本集77選
上津英
大衆娯楽
シチュエーションボイス等のフリー台本集です。女性向けで書いていますが、男性向けでの使用も可です。
一人用の短い恋愛系中心。
【利用規約】
・一人称・語尾・方言・男女逆転などのアレンジはご自由に。
・シチュボ以外にもASMR・ボイスドラマ・朗読・配信・声劇にどうぞお使いください。
・個人の使用報告は不要ですが、クレジットの表記はお願い致します。
紺坂紫乃短編集-short storys-
紺坂紫乃
大衆娯楽
2014年から2018年のSS、短編作品を纏めました。
「東京狂乱JOKERS」や「BROTHERFOOD」など、完結済み長編の登場人物が初出した作品及び未公開作品も収録。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる