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第1話 猫だと思って拾ったら
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私は仕事のデスマ―チで疲れていたのかもしれない。
いつものように終電近くまで働いて帰宅している途中、空地でダンボールに入れられて捨てられている猫のような動物を見つけた。
なんだかニャーニャー鳴いてるぞ。こいつも行き場がないのかな。
「よし、私が連れ帰って育ててやるか」
私は疲れた頭でたいして考えもせず、そいつを家に連れ帰ったのだった。
狭いボロアパートの一室。そこが現在の我が家である。
住めば都というがここは都なのだろうか。私にはよく分からない。
そして夜が明けて朝になった現在、起きた私の前には炎を吐いているトカゲみたいな奴が座っていた。
「あれ? 私が拾ったのって猫じゃなかったっけ?」
眼鏡を掛けてよく目を凝らしてみてもやはりそいつは炎を吐いている大きなトカゲにしか見えない。
するとそいつは「ニャーニャー」と鳴いた。
どうやら私は猫と間違えてサラマンダーを拾ってきてしまったようだ。
「まあ、いいか。とりあえず餌をあげてみよう」
深く考えるのは止めにした。頭を使うのは仕事だけで十分なのだ。
私はとりあえず野菜を与えてみる。すると、そいつはそれをガツガツ食べ始めた。
「おいしいかい?」
何となくそう尋ねてみたが返事はない。食べるのに夢中になっているようだ。
ガシガシと食べている姿は愛くるしく見える。野菜なんて美味しいのかな。食べ物が旨いなんて感情は久しく忘れていた。
食事に掛ける時間がもったいなくて、私はとにかく手軽で時間の掛からない物をとしか意識しなくなっていた。
だが、食事は美味しいようだった。それを思い出させてくれた。
「まだあるからお食べ」
私は冷蔵庫から新しい野菜を出してそいつに与えてやる。サラマンダーはまたガツガツとそれを食べ始める。
ふむ……しかし、これからどうしようか。私にはペットを飼った経験も無ければ相談できる友達もいない。
うかつに拾ってきた事を後悔し始めても遅い。また元の場所に捨てるのも可哀想だし……
「しばらく様子を見るしかないか。お前、名前はあるの?」
訊いてみてもそいつは円らな瞳で見上げてきて、よく分かっていないように首を傾げるだけだ。
「無いなら私が付けてあげようか?」
そう言うとそいつはこちらを見て何かを言おうとしたが、言葉が通じていないのかニャーと鳴くだけだった。
どうやら自分で付けるしかないようだ。
さて、名前を付けると言ったものの、どんな名前がいいだろう。サラマンダーだから……サラマンちゃんとか?
うーん、自分のネーミングセンスの無さに絶望する。ゲームでも私は名前を付けるのが苦手なのだ。
だが、いつまでもこいつ呼ばわりでは不便なので名前を考えてみる。
「う~ん……そうだ! 君の名前は今から"リューちゃん"だ!」
我ながら良い名だと思う。男の子っぽい響きだが、女の子でも通じそうだ。
私はサラマンダー鑑定士ではないので、こいつがオスなのかメスなのか分からない。そういう意味でも便利だと思った。
『リュー』という名前を聞いてサラマンダーは嬉しかったのか尻尾を振る。気に入ってくれたようで良かった。
こうして私はサラマンダー改めリューちゃんを飼い始めたのであった。
いつものように終電近くまで働いて帰宅している途中、空地でダンボールに入れられて捨てられている猫のような動物を見つけた。
なんだかニャーニャー鳴いてるぞ。こいつも行き場がないのかな。
「よし、私が連れ帰って育ててやるか」
私は疲れた頭でたいして考えもせず、そいつを家に連れ帰ったのだった。
狭いボロアパートの一室。そこが現在の我が家である。
住めば都というがここは都なのだろうか。私にはよく分からない。
そして夜が明けて朝になった現在、起きた私の前には炎を吐いているトカゲみたいな奴が座っていた。
「あれ? 私が拾ったのって猫じゃなかったっけ?」
眼鏡を掛けてよく目を凝らしてみてもやはりそいつは炎を吐いている大きなトカゲにしか見えない。
するとそいつは「ニャーニャー」と鳴いた。
どうやら私は猫と間違えてサラマンダーを拾ってきてしまったようだ。
「まあ、いいか。とりあえず餌をあげてみよう」
深く考えるのは止めにした。頭を使うのは仕事だけで十分なのだ。
私はとりあえず野菜を与えてみる。すると、そいつはそれをガツガツ食べ始めた。
「おいしいかい?」
何となくそう尋ねてみたが返事はない。食べるのに夢中になっているようだ。
ガシガシと食べている姿は愛くるしく見える。野菜なんて美味しいのかな。食べ物が旨いなんて感情は久しく忘れていた。
食事に掛ける時間がもったいなくて、私はとにかく手軽で時間の掛からない物をとしか意識しなくなっていた。
だが、食事は美味しいようだった。それを思い出させてくれた。
「まだあるからお食べ」
私は冷蔵庫から新しい野菜を出してそいつに与えてやる。サラマンダーはまたガツガツとそれを食べ始める。
ふむ……しかし、これからどうしようか。私にはペットを飼った経験も無ければ相談できる友達もいない。
うかつに拾ってきた事を後悔し始めても遅い。また元の場所に捨てるのも可哀想だし……
「しばらく様子を見るしかないか。お前、名前はあるの?」
訊いてみてもそいつは円らな瞳で見上げてきて、よく分かっていないように首を傾げるだけだ。
「無いなら私が付けてあげようか?」
そう言うとそいつはこちらを見て何かを言おうとしたが、言葉が通じていないのかニャーと鳴くだけだった。
どうやら自分で付けるしかないようだ。
さて、名前を付けると言ったものの、どんな名前がいいだろう。サラマンダーだから……サラマンちゃんとか?
うーん、自分のネーミングセンスの無さに絶望する。ゲームでも私は名前を付けるのが苦手なのだ。
だが、いつまでもこいつ呼ばわりでは不便なので名前を考えてみる。
「う~ん……そうだ! 君の名前は今から"リューちゃん"だ!」
我ながら良い名だと思う。男の子っぽい響きだが、女の子でも通じそうだ。
私はサラマンダー鑑定士ではないので、こいつがオスなのかメスなのか分からない。そういう意味でも便利だと思った。
『リュー』という名前を聞いてサラマンダーは嬉しかったのか尻尾を振る。気に入ってくれたようで良かった。
こうして私はサラマンダー改めリューちゃんを飼い始めたのであった。
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