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勇者現る
第24話 フィリスからの相談事
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城下町から城までは歩いたら結構時間が掛かりそうだが、飛べばすぐだ。
城のバルコニーに降り立つ俺。城内に入って廊下を歩くとすぐに声を掛けられた。
「魔王様、お帰りになっておられたのですね」
「ひゃい!」
俺は恐る恐る振り返る。そこに立っている美貌の少女は生徒会長のフィリスだ。妹のフェリアと違ってとても真面目そうな顔をしている。
今日の彼女はいつになく迫力が感じられた。俺が後ろめたいことを感じているせいかもしれないが。
「少しお時間を戴いてよろしいでしょうか。話したいことがあるのです」
「は……話したいこと……ね」
それって昨日彼女の妹を家に泊めて一緒に寝たことだろうか。それとも彼女の妹と一緒にお風呂に入ったことだろうか。まずいと思いながらも俺はお姉ちゃんの方はどんな体してるんだろうと想像してしまって……
「!!」
慌てて自分の目を両手で抑えた。
「いや、透視の能力なんて無いから! そんな都合の悪い物は無いから!」
「魔王様? 仰ってる意味が……」
異世界は俺を殺す気か! 手を離すと発動しようとしていた能力は収まっていた。
フィリスが怪訝に心配したように問うてくる。
「忙しいのでしたらやはり後でも」
「いや、今すぐ。今すぐ伺いましょう」
嫌な用事はすぐ片づけるに限る。出来ればフェリアやヒナミ達が嗅ぎ付けてくる前に。
俺はフィリスと一緒に生徒会長の部屋へと移動した。
フィリスが仕事に使っている部屋は彼女の性格が現れたような几帳面に整った部屋だった。
さて、俺はここで何を言い渡されるのだろうか。
妹にしたことが知れたらここで土下座させられて、頭を足で踏まれて、ムチでしばかれても文句は言えないかもしれない。
それってご褒美か? 違うよな。痛いのやだもん。
フィリスは何かを考えているかのように沈黙している。
部屋には他に人がいなくて二人きりだった。
愛の告白? なんて思えるほど俺は自意識過剰じゃありません。
思えば彼女と最初に会った時は生徒会室に堂々と乗り込んで攻撃魔法をぶっぱして驚かせたっけ。何だか懐かしい。
フェリアやみんなに生徒会長をギャフンと言わせてくれと頼まれたからと言って、少々やりすぎたかもしれない。
などと考えていると、考えを決めたのかフィリスが顔を上げた。
「やはり魔王様には言っておきますね」
そう前置きして、フィリスが話したことは俺にとっては全く予想外のことだった。
「あの国王がそんなことを?」
「はい、魔王様の耳に入れるべきか迷ったのですが……」
「いや、よく言ってくれた。ありがとう」
フィリスの迷いは俺にも分かる。誰だって当人同士の問題を上に告るのは勇気がいるだろう。
よくもチクりやがったなと後で陰湿ないじめに合う危険もある。
そういう問題だろうか。俺の今ある知識ではそう判断するしか無かった。
「さて、この問題の対処だが……」
「はい」
元国王クビな。と言ったら明日からこの国は困るだろう。
校長と生徒会長に明日からお前らが国王になってね。と言っても二人も困るだろう。
俺に任されてももちろん困るよ。俺には国王どころか校長や生徒会長の仕事も出来ませんから。
何で魔王やってるんだろうな俺。今更ながらに今更過ぎる疑問を感じてしまう。
ともあれ、今の俺に出来るのは現状を維持しながら状況の改善を図ることだけだった。
「元国王には俺が話しておく。君は君の仕事を果たしなさい」
「はい、よろしくお願いします」
礼儀正しく頭を下げる生徒会長。俺は部屋を退室する。
廊下を歩きながら考える。
生徒会長からお願いされても俺に出来ることはあるのだろうか。
「いつまで続くんだろうな。今の生活」
俺はいつまでも続きそうな今の生活を思って、そっとため息を吐くのだった。
城のバルコニーに降り立つ俺。城内に入って廊下を歩くとすぐに声を掛けられた。
「魔王様、お帰りになっておられたのですね」
「ひゃい!」
俺は恐る恐る振り返る。そこに立っている美貌の少女は生徒会長のフィリスだ。妹のフェリアと違ってとても真面目そうな顔をしている。
今日の彼女はいつになく迫力が感じられた。俺が後ろめたいことを感じているせいかもしれないが。
「少しお時間を戴いてよろしいでしょうか。話したいことがあるのです」
「は……話したいこと……ね」
それって昨日彼女の妹を家に泊めて一緒に寝たことだろうか。それとも彼女の妹と一緒にお風呂に入ったことだろうか。まずいと思いながらも俺はお姉ちゃんの方はどんな体してるんだろうと想像してしまって……
「!!」
慌てて自分の目を両手で抑えた。
「いや、透視の能力なんて無いから! そんな都合の悪い物は無いから!」
「魔王様? 仰ってる意味が……」
異世界は俺を殺す気か! 手を離すと発動しようとしていた能力は収まっていた。
フィリスが怪訝に心配したように問うてくる。
「忙しいのでしたらやはり後でも」
「いや、今すぐ。今すぐ伺いましょう」
嫌な用事はすぐ片づけるに限る。出来ればフェリアやヒナミ達が嗅ぎ付けてくる前に。
俺はフィリスと一緒に生徒会長の部屋へと移動した。
フィリスが仕事に使っている部屋は彼女の性格が現れたような几帳面に整った部屋だった。
さて、俺はここで何を言い渡されるのだろうか。
妹にしたことが知れたらここで土下座させられて、頭を足で踏まれて、ムチでしばかれても文句は言えないかもしれない。
それってご褒美か? 違うよな。痛いのやだもん。
フィリスは何かを考えているかのように沈黙している。
部屋には他に人がいなくて二人きりだった。
愛の告白? なんて思えるほど俺は自意識過剰じゃありません。
思えば彼女と最初に会った時は生徒会室に堂々と乗り込んで攻撃魔法をぶっぱして驚かせたっけ。何だか懐かしい。
フェリアやみんなに生徒会長をギャフンと言わせてくれと頼まれたからと言って、少々やりすぎたかもしれない。
などと考えていると、考えを決めたのかフィリスが顔を上げた。
「やはり魔王様には言っておきますね」
そう前置きして、フィリスが話したことは俺にとっては全く予想外のことだった。
「あの国王がそんなことを?」
「はい、魔王様の耳に入れるべきか迷ったのですが……」
「いや、よく言ってくれた。ありがとう」
フィリスの迷いは俺にも分かる。誰だって当人同士の問題を上に告るのは勇気がいるだろう。
よくもチクりやがったなと後で陰湿ないじめに合う危険もある。
そういう問題だろうか。俺の今ある知識ではそう判断するしか無かった。
「さて、この問題の対処だが……」
「はい」
元国王クビな。と言ったら明日からこの国は困るだろう。
校長と生徒会長に明日からお前らが国王になってね。と言っても二人も困るだろう。
俺に任されてももちろん困るよ。俺には国王どころか校長や生徒会長の仕事も出来ませんから。
何で魔王やってるんだろうな俺。今更ながらに今更過ぎる疑問を感じてしまう。
ともあれ、今の俺に出来るのは現状を維持しながら状況の改善を図ることだけだった。
「元国王には俺が話しておく。君は君の仕事を果たしなさい」
「はい、よろしくお願いします」
礼儀正しく頭を下げる生徒会長。俺は部屋を退室する。
廊下を歩きながら考える。
生徒会長からお願いされても俺に出来ることはあるのだろうか。
「いつまで続くんだろうな。今の生活」
俺はいつまでも続きそうな今の生活を思って、そっとため息を吐くのだった。
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