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第8話
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「……以上で報告を終わります」
そう言って話を締め括った男に対し、私は拍手を送った。男は照れ臭そうにしていたが、やがて姿勢を正すと頭を下げた。
「ありがとうございました」
そんな彼を見つめながら微笑むと、椅子から立ち上がって尋ねた。
「それで、どうだったかしら?」
すると、彼は顔を上げて答えた。
「はい、とても素晴らしいお話でした」
「そう、それならよかったわ」
満足気に頷くと、今度はこちらから質問してみることにした。
「他に何か聞きたいことはあるかしら?」
すると、彼は少し考えた後で言った。
「そうですね……」
そこで言葉を切ると黙り込んでしまった。どうやら何も思いつかなかったようだ。仕方がないので私から話す事にした。
「それじゃあ一つだけ教えてあげるわね」
「はい、なんでしょうか?」
期待に満ちた眼差しを向けてくる彼に、私は微笑みながら言った。
「この世界には私達以外にも沢山の種族が存在しているのよ」
「そうなんですか!?」
驚く彼を見ながら頷いた。
「ええ、そうよ」
それからしばらくの間、私と彼は色々な話をした。お互いのことや、それぞれの世界のことなど、様々なことを話した。その時間はあっという間に過ぎていき、気がつけば夜になっていた。
「あら、もうこんな時間なのね」
「本当だ、いつの間に……」
彼は驚いていたが、私も同じ気持ちだった。こんなに時間が経つのが早いと感じたのは初めてだったからだ。それだけ楽しかったということなのだろう。
そう考えるとなんだか嬉しくなってきた。そして、同時に名残惜しくもあった。できることならいつまでも一緒にいたかったのだが、そういうわけにもいかないだろう。だから、最後に別れの言葉を告げた。
「今日はありがとう、お陰で楽しい時間を過ごせたわ」
「こちらこそありがとうございます」
お互いにお礼を言い合ったところで会話が途切れた。私達は無言のまま見つめ合っていたが、しばらくすると彼が先に口を開いた。
「それでは僕はこれで失礼します」
「待って」
立ち去ろうとした彼を引き止めると、私は言った。
「また会いましょうね」
すると、彼は笑顔で頷いてから去って行った。一人残された部屋で物思いに耽っていると、自然と涙が溢れ出てきた。それが悲しみなのか喜びなのかは分からないが、いずれにしても悪い感情ではないことだけは確かだった……
あれから数日が経過したある日のこと、俺は一人で街を歩いていた。特に目的があるわけではないのだが、なんとなく歩きたくなったのだ。
しばらく歩いていると、前方に人だかりが見えてきた。なんだろうと思いながら近づいてみると、そこには見慣れない服装をした男女の姿があった。
彼らの会話に耳を傾けていると、どうやら二人は夫婦のようだということが分かり、さらに詳しく話を聞いているとどうやら喧嘩をしているらしいことが分かった。
それを聞いて他人事とは思えなかったので、ついつい口を挟んでしまった。
「何があったか知らないけど、ちゃんと仲直りした方がいいと思うよ」
そう言うと彼らは驚いた表情を浮かべた後に顔を見合わせて笑った。そして、俺に礼を言って立ち去っていった。
それを見送った後、俺もその場を後にしたのだった……
その後、俺は再び街を歩き始めたのだが、途中で気になる店を発見した。興味本位で入ってみたところ、店内には不思議な品物がたくさん並んでいた。
しばらく眺めていると店主らしき人物がやってきたので話しかけてみる事にした。
「すみません、これはなんですか?」
俺が指差したのは一冊の絵本だった。表紙には可愛らしい絵が描かれているが、中身は読めない文字で書かれていた。
気になって聞いてみると、この店では世界中のありとあらゆる物語を取り扱っているらしい。試しに読みましょうかと言われたのでお願いすることにした。
読み終わるまで時間がかかるということだったので待っている間に他の商品を眺めていると、あることに気づいた。どれもこれも見たことがないものばかりなのだが値段が高くて驚いた。というのも、ここにあるものは全てが高級品なのだということが判明したからだ。
中には数億もするものもあるようで、一体いくらくらいするのか気になったが怖くて聞くことはできなかった。
それからしばらくしてようやく最後のページを読み終えると、店員が声をかけてきた。どうやら終わったようなので代金を支払おうとしたのだが、その前に一つ提案を持ちかけられた。
「もしよろしければ、貴方様の作品を読ませてもらえないでしょうか?」
突然の申し出に戸惑ったが、とりあえず了承した。
「ありがとうございます、楽しみにしております」
そう言って頭を下げると、早速準備に取りかかった。何をするのかと思って見ていると、懐から小さな箱を取り出した。蓋を開けると中から一枚の紙を取り出し、それを床に置いた。そして、呪文を唱えると突然煙が上がり始めた。
驚いて見つめていると、徐々に形を変えていき人型になっていった。やがて完全に元の姿に戻るとこちらに向かって話しかけてきた。
『初めまして、ご主人様』
いきなり話しかけられたことに驚いていると、さらに続けて言った。
『私の名前はココロと申します、以後お見知りおきください』
丁寧にお辞儀をする彼女に困惑していると、彼女は顔を上げて微笑んだ。
『よろしくお願いしますね』
そう言われて我に返った俺は慌てて自己紹介をした。すると、彼女も名前を教えてくれたのだが、聞いたことのない名前だったのでどう呼ぶべきか考えていると、向こうから提案された。
『私の事は好きなようにお呼びくださって構いませんよ』
その言葉に甘えることにした。
「それじゃあ、よろしく頼むな」
『はい!』
元気よく返事をした彼女を見ていると微笑ましく思えた。それからしばらくの間会話を楽しんだ後で帰ることにした。その際、お土産として何冊か購入してから店をあとにした。外に出ると辺りはすっかり暗くなっていたので急いで家路についた。
帰宅して一息ついたところでふと思い出したことがあったので鞄の中から例の絵本を取り出すと、もう一度読んでみることにした。内容はこうだ……
『この世界の人間が異世界から来た転生者達と戦う。神を倒して全能の力を手に入れる為に……』
という内容だった。そこまで読んだ時、突然頭痛に襲われた。あまりの痛さに耐えきれずその場に倒れ込むと、頭の中に映像が流れ込んできた。それは、自分が経験した記憶の全てであった。
「……ここは……」
目を覚ますと見知らぬ場所に立っていた。ここはどこだろうと周囲を見回してみると、そこはどこかの建物の中のようだった。しかも、かなり広い場所のようで端から端まで移動するだけでもかなりの時間がかかりそうだった。
その時、不意に声をかけられたので振り向くとそこには一人の女性が立っていた。彼女は微笑みながらこちらを見つめていた。
「こんにちは」
そう言って挨拶してきた彼女に戸惑いながらも返事をすると、嬉しそうな表情を浮かべながら近づいてきた。そして、そのまま抱きしめられたかと思うと優しく頭を撫でられた。
突然の事に混乱しながらもなんとか抜け出そうと試みたが、どういうわけか力が入らなかったので大人しくしているしかなかった。すると、彼女は嬉しそうに言った。
「いい子ね~」
まるで子供をあやすような口調だったが不思議と嫌な気分にはならなかった。むしろ心地良ささえ感じていたくらいだ。
それからしばらくの間されるがままになっていると、ようやく満足したのか解放された。それと同時に体に力が戻ってきたので起き上がると改めて目の前の女性を見た。
年齢は二十代前半といったところだろうか? 見た目はどこにでもいる普通の女性のように見えるが、何故か妙な違和感を覚えるような気がした。その正体を確かめようとじっと見つめていると、彼女が微笑みながら話しかけてきた。
「どうしたのかな?」
「え!? いや、別に……」
慌てて誤魔化そうとしたが上手くいかず言葉に詰まってしまった。そんな俺を見て不思議そうに首を傾げていたがすぐに笑顔になると再び抱きついてきた。
今度は正面から抱きつかれたので身動きが取れなくなってしまった。何とか離れようとしたが無駄だった。どうすることもできずにいると、耳元で囁かれた。
「大丈夫だよ」
優しい声音で言われた瞬間、全身の力が抜けていくのを感じた。抵抗する気力すら失いかけていると、彼女はさらに続けた。
「君は何も考えなくていいんだよ」
その言葉を聞いた途端、頭の中が真っ白になった。そして、気がつくと彼女の背中に腕を回していた。
「それでいいの、もっと甘えていいんだよ」
そう言われた瞬間、心の中にあった何かが弾け飛んだ気がした。そして、次の瞬間には彼女を押し倒していた。
そして、そのまま唇を重ねようとしたところで目が覚めた……
そう言って話を締め括った男に対し、私は拍手を送った。男は照れ臭そうにしていたが、やがて姿勢を正すと頭を下げた。
「ありがとうございました」
そんな彼を見つめながら微笑むと、椅子から立ち上がって尋ねた。
「それで、どうだったかしら?」
すると、彼は顔を上げて答えた。
「はい、とても素晴らしいお話でした」
「そう、それならよかったわ」
満足気に頷くと、今度はこちらから質問してみることにした。
「他に何か聞きたいことはあるかしら?」
すると、彼は少し考えた後で言った。
「そうですね……」
そこで言葉を切ると黙り込んでしまった。どうやら何も思いつかなかったようだ。仕方がないので私から話す事にした。
「それじゃあ一つだけ教えてあげるわね」
「はい、なんでしょうか?」
期待に満ちた眼差しを向けてくる彼に、私は微笑みながら言った。
「この世界には私達以外にも沢山の種族が存在しているのよ」
「そうなんですか!?」
驚く彼を見ながら頷いた。
「ええ、そうよ」
それからしばらくの間、私と彼は色々な話をした。お互いのことや、それぞれの世界のことなど、様々なことを話した。その時間はあっという間に過ぎていき、気がつけば夜になっていた。
「あら、もうこんな時間なのね」
「本当だ、いつの間に……」
彼は驚いていたが、私も同じ気持ちだった。こんなに時間が経つのが早いと感じたのは初めてだったからだ。それだけ楽しかったということなのだろう。
そう考えるとなんだか嬉しくなってきた。そして、同時に名残惜しくもあった。できることならいつまでも一緒にいたかったのだが、そういうわけにもいかないだろう。だから、最後に別れの言葉を告げた。
「今日はありがとう、お陰で楽しい時間を過ごせたわ」
「こちらこそありがとうございます」
お互いにお礼を言い合ったところで会話が途切れた。私達は無言のまま見つめ合っていたが、しばらくすると彼が先に口を開いた。
「それでは僕はこれで失礼します」
「待って」
立ち去ろうとした彼を引き止めると、私は言った。
「また会いましょうね」
すると、彼は笑顔で頷いてから去って行った。一人残された部屋で物思いに耽っていると、自然と涙が溢れ出てきた。それが悲しみなのか喜びなのかは分からないが、いずれにしても悪い感情ではないことだけは確かだった……
あれから数日が経過したある日のこと、俺は一人で街を歩いていた。特に目的があるわけではないのだが、なんとなく歩きたくなったのだ。
しばらく歩いていると、前方に人だかりが見えてきた。なんだろうと思いながら近づいてみると、そこには見慣れない服装をした男女の姿があった。
彼らの会話に耳を傾けていると、どうやら二人は夫婦のようだということが分かり、さらに詳しく話を聞いているとどうやら喧嘩をしているらしいことが分かった。
それを聞いて他人事とは思えなかったので、ついつい口を挟んでしまった。
「何があったか知らないけど、ちゃんと仲直りした方がいいと思うよ」
そう言うと彼らは驚いた表情を浮かべた後に顔を見合わせて笑った。そして、俺に礼を言って立ち去っていった。
それを見送った後、俺もその場を後にしたのだった……
その後、俺は再び街を歩き始めたのだが、途中で気になる店を発見した。興味本位で入ってみたところ、店内には不思議な品物がたくさん並んでいた。
しばらく眺めていると店主らしき人物がやってきたので話しかけてみる事にした。
「すみません、これはなんですか?」
俺が指差したのは一冊の絵本だった。表紙には可愛らしい絵が描かれているが、中身は読めない文字で書かれていた。
気になって聞いてみると、この店では世界中のありとあらゆる物語を取り扱っているらしい。試しに読みましょうかと言われたのでお願いすることにした。
読み終わるまで時間がかかるということだったので待っている間に他の商品を眺めていると、あることに気づいた。どれもこれも見たことがないものばかりなのだが値段が高くて驚いた。というのも、ここにあるものは全てが高級品なのだということが判明したからだ。
中には数億もするものもあるようで、一体いくらくらいするのか気になったが怖くて聞くことはできなかった。
それからしばらくしてようやく最後のページを読み終えると、店員が声をかけてきた。どうやら終わったようなので代金を支払おうとしたのだが、その前に一つ提案を持ちかけられた。
「もしよろしければ、貴方様の作品を読ませてもらえないでしょうか?」
突然の申し出に戸惑ったが、とりあえず了承した。
「ありがとうございます、楽しみにしております」
そう言って頭を下げると、早速準備に取りかかった。何をするのかと思って見ていると、懐から小さな箱を取り出した。蓋を開けると中から一枚の紙を取り出し、それを床に置いた。そして、呪文を唱えると突然煙が上がり始めた。
驚いて見つめていると、徐々に形を変えていき人型になっていった。やがて完全に元の姿に戻るとこちらに向かって話しかけてきた。
『初めまして、ご主人様』
いきなり話しかけられたことに驚いていると、さらに続けて言った。
『私の名前はココロと申します、以後お見知りおきください』
丁寧にお辞儀をする彼女に困惑していると、彼女は顔を上げて微笑んだ。
『よろしくお願いしますね』
そう言われて我に返った俺は慌てて自己紹介をした。すると、彼女も名前を教えてくれたのだが、聞いたことのない名前だったのでどう呼ぶべきか考えていると、向こうから提案された。
『私の事は好きなようにお呼びくださって構いませんよ』
その言葉に甘えることにした。
「それじゃあ、よろしく頼むな」
『はい!』
元気よく返事をした彼女を見ていると微笑ましく思えた。それからしばらくの間会話を楽しんだ後で帰ることにした。その際、お土産として何冊か購入してから店をあとにした。外に出ると辺りはすっかり暗くなっていたので急いで家路についた。
帰宅して一息ついたところでふと思い出したことがあったので鞄の中から例の絵本を取り出すと、もう一度読んでみることにした。内容はこうだ……
『この世界の人間が異世界から来た転生者達と戦う。神を倒して全能の力を手に入れる為に……』
という内容だった。そこまで読んだ時、突然頭痛に襲われた。あまりの痛さに耐えきれずその場に倒れ込むと、頭の中に映像が流れ込んできた。それは、自分が経験した記憶の全てであった。
「……ここは……」
目を覚ますと見知らぬ場所に立っていた。ここはどこだろうと周囲を見回してみると、そこはどこかの建物の中のようだった。しかも、かなり広い場所のようで端から端まで移動するだけでもかなりの時間がかかりそうだった。
その時、不意に声をかけられたので振り向くとそこには一人の女性が立っていた。彼女は微笑みながらこちらを見つめていた。
「こんにちは」
そう言って挨拶してきた彼女に戸惑いながらも返事をすると、嬉しそうな表情を浮かべながら近づいてきた。そして、そのまま抱きしめられたかと思うと優しく頭を撫でられた。
突然の事に混乱しながらもなんとか抜け出そうと試みたが、どういうわけか力が入らなかったので大人しくしているしかなかった。すると、彼女は嬉しそうに言った。
「いい子ね~」
まるで子供をあやすような口調だったが不思議と嫌な気分にはならなかった。むしろ心地良ささえ感じていたくらいだ。
それからしばらくの間されるがままになっていると、ようやく満足したのか解放された。それと同時に体に力が戻ってきたので起き上がると改めて目の前の女性を見た。
年齢は二十代前半といったところだろうか? 見た目はどこにでもいる普通の女性のように見えるが、何故か妙な違和感を覚えるような気がした。その正体を確かめようとじっと見つめていると、彼女が微笑みながら話しかけてきた。
「どうしたのかな?」
「え!? いや、別に……」
慌てて誤魔化そうとしたが上手くいかず言葉に詰まってしまった。そんな俺を見て不思議そうに首を傾げていたがすぐに笑顔になると再び抱きついてきた。
今度は正面から抱きつかれたので身動きが取れなくなってしまった。何とか離れようとしたが無駄だった。どうすることもできずにいると、耳元で囁かれた。
「大丈夫だよ」
優しい声音で言われた瞬間、全身の力が抜けていくのを感じた。抵抗する気力すら失いかけていると、彼女はさらに続けた。
「君は何も考えなくていいんだよ」
その言葉を聞いた途端、頭の中が真っ白になった。そして、気がつくと彼女の背中に腕を回していた。
「それでいいの、もっと甘えていいんだよ」
そう言われた瞬間、心の中にあった何かが弾け飛んだ気がした。そして、次の瞬間には彼女を押し倒していた。
そして、そのまま唇を重ねようとしたところで目が覚めた……
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