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第22話 魔界に来た
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乾いた風が頬を撫でる。あたし達がゲートを抜けて出て来た先は何も無い薄暗い荒野だった。
空を見上げると一面黒い雲に覆われている。ここは魔界だろうか。そんな雰囲気がした。
「まずはあそこを目指すか?」
「あそこ? そうね、あそこを目指しましょ」
天馬の言ったその場所はすぐに分かった。
荒野の向こうに禍々しく屋根の尖った不気味な城が建っている。いかにも魔王が住んでいそうな感じ。
ここは初めて来た知らない場所だったが、あたし達が行く場所を探す必要は無さそうだ。
「お姉ちゃん、あそこに魔王がいるのかな」
「そうね、ちょっと行って訊ねてみましょ」
美月の質問に答え、あたしはあの城へ行く前にゲートが閉じるのを防ぐつっかえ棒にしていた聖剣を取る。邪魔な棒から解放されたゲートはすぐに閉じて消滅していった。
「後戻りは出来ない……なんてことは無いよね?」
ちょっと焦る。ゲームではたまにある光景だが、これからの生活もあるあたし達は家に帰れないと困ってしまう。
天馬は焦ることなく冷静に言った。
「お前の式神なら知っているんじゃないか?」
「そうか、セラならこの世界の事も知っているかも」
セラは式神ではなく精霊なのだが、今はどうでもいいことだ。
あたしは聖剣を掲げてセラを呼ぼうとする。だが、美月の声が呼び止めた。
「その前にお迎えが来たよ」
「ん? どれどれ」
美月の声に振り向くと城の方からモンスターの軍団が押し寄せてきていた。どう見ても好意的な雰囲気ではない。戦いは避けられなさそうだ。
あたしは聖剣を武器に構えた。
「いい運動が出来そうね」
「セラを呼び出すのは後にした方が良さそうだな。うっかり流れ弾にやられて喋れなくなられては困る」
「まずはこいつらを片付けるのが先決だね」
天馬と美月も武器を構える。今度はあたしも派手な技は使わないでとは言わなかった。
それでも天馬はこんな時だからこそか訊いてくる。
「もう思いっきりやっても構わんのだろう」
「当然。ここはもうあたしのお家じゃないからね」
「じゃあ、思いっきりやっちゃおう!」
天馬と美月がやる気を出す。当然あたしもやる気を出す。
あたし達のやる気をモンスターの軍団も感じ取ったようだ。勢いを増して襲い掛かってきた。
さあ、戦いのゴングが鳴るよ。戦闘開始だ。
本気で掛かってくる相手に手加減はいらない。本気同士の戦いが今始まった。
その頃、静寂に包まれた魔王城ではラキュアが外の世界に行った報告を行う為に魔王のいる玉座の間を訪れていた。
空間に漂う圧倒的な魔力。玉座に腰掛ける暗いマントをはおった鋭い目をした青年は魔王だ。彼は全てを見通すかのような深い瞳でひざまずく部下を見る。
魔王の隣では軍団で最強の力を持つ将軍のサイクロプスが守護するように立っている。
やられて帰ってきたラキュアはただ魔王の力に震えながら報告を行うのみだった。聞き終えて魔王は深い声で囁いた。
「ともあれ、向こうの世界に渡ることには成功したのだな」
「はい、魔王様にふさわしい城もあちらに用意しようとしたのですが、思わぬところで邪魔されまして。ドラゴンも見つけられず……」
「それはもうよい。世界の場所が特定できたのなら後は余自らが行おう」
「へ? 魔王様が自ら向こうの世界へ行かれるのですか?」
「そうだ。ドラゴンは余を呼んでいるのだからな。ラキュアよ、お前の魔力を余の魔力に同調させよ。お前の得た情報を元に向こうの世界にゲートを開く」
「はい、ただいま」
ラキュアの魔力では小さいゲートしか開けない。だが、魔王の力では大きすぎて回りに与える影響が計り知れない。
だから、魔王はまず部下を使ってゲートを開く場所を調べさせていた。場所の情報を特定することで不必要な力の拡散を減らし、世界に与える影響を最小限にする事ができる。
ラキュアは立ち上がって精神を集中し、玉座に腰掛ける魔王の元に自分の魔力を送る。
魔王は手を開いてその魔力から情報を受け取って自分の術を発動させようとしたが、不意にその手を止めて術を打ち切った。
いきなり流れを止められてラキュアはつまづきそうになって驚いた。改めて玉座に座り直した魔王の顔には笑みが浮かんでいた。
「お前の客人が来たようだな」
「え?」
客人と言われてもラキュアには誰も呼んだ覚えはない。
うろたえていると突然外から大きな爆発音がした。
「んきゃあ、何事!? 何事があったんでしょう?」
驚いているのはラキュアだけで魔王とサイクロプスの態度は落ち着いたものだった。
すぐに警備をしていたモンスター、ガーゴイルが入ってきて報告を行った。
「報告します! 人間が三名魔王城の前に現れて我らの軍と交戦を行っています! 奴らはとんでもない強さで我々では全く歯が立たず、将軍の力添えをお願いします!」
「ほう? 勇者でも来たのか?」
魔王は玉座に座ったまま指を鳴らす。すると部屋の真ん中に映像が映し出された。その画面には外で戦っている者達の姿が映されている。
戦っているのはラキュアとサイクロプスの知っている奴らだった。
「あいつら、わたくしの後をつけてきましたの?」
「すぐに俺が行って片付けて参りましょう」
「いや、それには及ばん」
サイクロプスが行こうとするのを魔王は手を振って止めた。彼は面白い玩具を見つけたように笑っていた。
「ラキュアよ、奴らはお前の行った世界から来た者達なのだろう?」
「はい、恐れ多くも魔王様に歯向かう連中です」
苦い思い出が蘇って良い顔をしないラキュア。魔王は機嫌が良さそうに微笑んでいた。
「余も奴らに興味が湧いてきたぞ。ちょうどいい、ラキュア。奴らをここへ連れてこい。少し見てみたくなった」
「え? 連れてくるんですか!?」
ラキュアはびっくりするが魔王の命令に二言は無い。
あの人間達がいくら強くても、まさかここで大きな事は出来ないだろう。
ラキュアは不満に思いながらも客を迎える為に外に向かうのだった。
空を見上げると一面黒い雲に覆われている。ここは魔界だろうか。そんな雰囲気がした。
「まずはあそこを目指すか?」
「あそこ? そうね、あそこを目指しましょ」
天馬の言ったその場所はすぐに分かった。
荒野の向こうに禍々しく屋根の尖った不気味な城が建っている。いかにも魔王が住んでいそうな感じ。
ここは初めて来た知らない場所だったが、あたし達が行く場所を探す必要は無さそうだ。
「お姉ちゃん、あそこに魔王がいるのかな」
「そうね、ちょっと行って訊ねてみましょ」
美月の質問に答え、あたしはあの城へ行く前にゲートが閉じるのを防ぐつっかえ棒にしていた聖剣を取る。邪魔な棒から解放されたゲートはすぐに閉じて消滅していった。
「後戻りは出来ない……なんてことは無いよね?」
ちょっと焦る。ゲームではたまにある光景だが、これからの生活もあるあたし達は家に帰れないと困ってしまう。
天馬は焦ることなく冷静に言った。
「お前の式神なら知っているんじゃないか?」
「そうか、セラならこの世界の事も知っているかも」
セラは式神ではなく精霊なのだが、今はどうでもいいことだ。
あたしは聖剣を掲げてセラを呼ぼうとする。だが、美月の声が呼び止めた。
「その前にお迎えが来たよ」
「ん? どれどれ」
美月の声に振り向くと城の方からモンスターの軍団が押し寄せてきていた。どう見ても好意的な雰囲気ではない。戦いは避けられなさそうだ。
あたしは聖剣を武器に構えた。
「いい運動が出来そうね」
「セラを呼び出すのは後にした方が良さそうだな。うっかり流れ弾にやられて喋れなくなられては困る」
「まずはこいつらを片付けるのが先決だね」
天馬と美月も武器を構える。今度はあたしも派手な技は使わないでとは言わなかった。
それでも天馬はこんな時だからこそか訊いてくる。
「もう思いっきりやっても構わんのだろう」
「当然。ここはもうあたしのお家じゃないからね」
「じゃあ、思いっきりやっちゃおう!」
天馬と美月がやる気を出す。当然あたしもやる気を出す。
あたし達のやる気をモンスターの軍団も感じ取ったようだ。勢いを増して襲い掛かってきた。
さあ、戦いのゴングが鳴るよ。戦闘開始だ。
本気で掛かってくる相手に手加減はいらない。本気同士の戦いが今始まった。
その頃、静寂に包まれた魔王城ではラキュアが外の世界に行った報告を行う為に魔王のいる玉座の間を訪れていた。
空間に漂う圧倒的な魔力。玉座に腰掛ける暗いマントをはおった鋭い目をした青年は魔王だ。彼は全てを見通すかのような深い瞳でひざまずく部下を見る。
魔王の隣では軍団で最強の力を持つ将軍のサイクロプスが守護するように立っている。
やられて帰ってきたラキュアはただ魔王の力に震えながら報告を行うのみだった。聞き終えて魔王は深い声で囁いた。
「ともあれ、向こうの世界に渡ることには成功したのだな」
「はい、魔王様にふさわしい城もあちらに用意しようとしたのですが、思わぬところで邪魔されまして。ドラゴンも見つけられず……」
「それはもうよい。世界の場所が特定できたのなら後は余自らが行おう」
「へ? 魔王様が自ら向こうの世界へ行かれるのですか?」
「そうだ。ドラゴンは余を呼んでいるのだからな。ラキュアよ、お前の魔力を余の魔力に同調させよ。お前の得た情報を元に向こうの世界にゲートを開く」
「はい、ただいま」
ラキュアの魔力では小さいゲートしか開けない。だが、魔王の力では大きすぎて回りに与える影響が計り知れない。
だから、魔王はまず部下を使ってゲートを開く場所を調べさせていた。場所の情報を特定することで不必要な力の拡散を減らし、世界に与える影響を最小限にする事ができる。
ラキュアは立ち上がって精神を集中し、玉座に腰掛ける魔王の元に自分の魔力を送る。
魔王は手を開いてその魔力から情報を受け取って自分の術を発動させようとしたが、不意にその手を止めて術を打ち切った。
いきなり流れを止められてラキュアはつまづきそうになって驚いた。改めて玉座に座り直した魔王の顔には笑みが浮かんでいた。
「お前の客人が来たようだな」
「え?」
客人と言われてもラキュアには誰も呼んだ覚えはない。
うろたえていると突然外から大きな爆発音がした。
「んきゃあ、何事!? 何事があったんでしょう?」
驚いているのはラキュアだけで魔王とサイクロプスの態度は落ち着いたものだった。
すぐに警備をしていたモンスター、ガーゴイルが入ってきて報告を行った。
「報告します! 人間が三名魔王城の前に現れて我らの軍と交戦を行っています! 奴らはとんでもない強さで我々では全く歯が立たず、将軍の力添えをお願いします!」
「ほう? 勇者でも来たのか?」
魔王は玉座に座ったまま指を鳴らす。すると部屋の真ん中に映像が映し出された。その画面には外で戦っている者達の姿が映されている。
戦っているのはラキュアとサイクロプスの知っている奴らだった。
「あいつら、わたくしの後をつけてきましたの?」
「すぐに俺が行って片付けて参りましょう」
「いや、それには及ばん」
サイクロプスが行こうとするのを魔王は手を振って止めた。彼は面白い玩具を見つけたように笑っていた。
「ラキュアよ、奴らはお前の行った世界から来た者達なのだろう?」
「はい、恐れ多くも魔王様に歯向かう連中です」
苦い思い出が蘇って良い顔をしないラキュア。魔王は機嫌が良さそうに微笑んでいた。
「余も奴らに興味が湧いてきたぞ。ちょうどいい、ラキュア。奴らをここへ連れてこい。少し見てみたくなった」
「え? 連れてくるんですか!?」
ラキュアはびっくりするが魔王の命令に二言は無い。
あの人間達がいくら強くても、まさかここで大きな事は出来ないだろう。
ラキュアは不満に思いながらも客を迎える為に外に向かうのだった。
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