サイクリングストリート

けろよん

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第三章 勇者の挑戦

第58話 テストの終わり

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 長かったテストがやっと終わった。
 結菜はすっかり戦い終わって疲れ切った兵士の気分で机に両腕を投げ出して倒れ伏した。
 今回は翼に言われた通りに頑張ったおかげで前のテストより一層疲れた気がする。
 でも、そのかいはあって心地の良い手ごたえは感じられた。
 後は結果が答えてくれればいいのだが。
 そう思っていると美久が近づいてきて声を掛けてきた。

「お疲れさまです、結菜様」
「うん、本当に疲れたよ」

 結菜は顔を上げて答える。

「何とか終わったね。これでしばらく勉強しなくて済むよ。もうすぐ夏休みだし」

 結菜の気分はすっかり遊びモードに移行している。
 それは他のクラスメイト達も同じだ。
 そう緩んだ気分に浸っていると、いつもの真面目ぶった顔をして麻希がやってきた。

「それで勇者としては今回の導いてくださる賢者様の助言は役に立っていたのかしら」

 結菜の答えは考えるまでも無かった。

「うん、やっぱり翼さんは凄いね」
「そう、伊達に賢者と名乗っているわけじゃないのね」

 翼を認めるような二人の発言に美久は黙っていられないと思った。
 思い切って結菜を遊びに誘うことにした。
 翼のいないところで結菜に良い気分になってもらうために。

「それじゃあ、今夜星を見に行きませんか? もうすぐ綺麗な流星群が見れるそうですよ」

 テレビでそうしたニュースをやっていたことを結菜も知っていた。
 数十年に一度の流星群が来るとか話題になっていた。
 星なんて自分とは縁が無いと思っていたが……結菜は考える。
 出かけるよりも自宅でごろごろしている方が自分にとっては一番楽だ。
 でも、翼は学校生活を楽しむようにと言った。
 賢者は勇者を導いてくれる。今回のテストでも翼の助言のおかげで助けられた。
 ならば結論は一つだった。
 クラスメイトと積極的に過ごす。そう決める。

「うん、行こう」

 その結菜の決定に、

「あの星を見に行くの?」
「じゃあ、わたし達も行くー」
「近所の山の展望台からならきっと綺麗に見えるよ」

 みんなの声が答え、

「興味はあるわね」

 麻希が静かな笑みを浮かべて答え、

「では、みんなで行きましょうか」

 委員長である美久が明るく決断した。



 町のどこかにある薄暗い広間に、再び怪しい集団が集まっていた。
 集まっている者達はみんな一様に黒いローブを見にまとっている。
 それはさながら邪教の集会のようであった。
 赤い炎が照らす前面の祭壇で、竜の杖を持った竜の仮面の人物が集まった信徒達に向かって声を上げた

「賢者は動き出した。勇者は導かれ、それは我らの道にもやがて通じることとなるだろう」

 その威厳のある声に信徒が答えた。

「マスター、何も翼に頼らずとも、あたしらでそいつを良いように使ってやることは出来ませんかね」
「もちろんわたしらのやり方でね」
「可愛がってやりますぜ。クックックッ……」

 そんな浅はかさを感じさせる信徒達の声にマスターは叱責を飛ばした。

「その必要はない。計画は順調に推移している。後はただ時が来るのを待てばよい」
「分かりました……」

 集会は予定通りに終わり、マスターは立ち去っていった。
 その姿が見えなくなってから、信徒達の間では不満の声が上がっていた。

「リーダー、いつまであいつの言うことを聞くんですか?」
「我ら闇烏隊は腰抜けの集団じゃありませんぜ」
「待っているだけで良いと言っているんだ。楽でいいじゃねえか」

 リーダーと呼ばれた黒ローブは祭壇の前まで歩いていって、そこで行儀悪く座ってみんなを見渡した。

「だが、面白くないのは確かだな。我ら闇烏隊は恐れを知らない勇気あるグループだ」
「その通り。我々には勇気がある」
「では」

 血気に逸ろうとする者達をリーダーは人差し指を立てただけで制した。

「潰すのは駄目だ。目的から遠ざかる行為をするのは愚か者のすることだからな。だが、挨拶ぐらいなら……しても問題は無いだろうな」
「挨拶ですか」
「それは面白い」

 信徒の一人が手から鎖のチェーンを垂らし、一人がハサミを炎の明かりで照らし出させる。
 リーダーは立ち上がった。

「これは狩りではなくちょっとしたお遊戯だ。余計な手を出す奴はあたしがぶっ飛ばす。いいな?」
「へい」
「せいぜい遊んでやりましょう」
「行くぜ」

 そして、信徒達は行動を開始した。
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