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王都へ
昼寝の途中で
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人間の姿でのんびり行こうと思ったのだが、馬車の行き交いが激しく、土埃が凄すぎて草原へとやってきた。
この辺りの道の近くは畑がポツポツとあり、人の姿も確認出来る。
畑より奥の方へ行こうとする俺に、麦わら帽子を被ったおじさんが声を掛けてきた。
「あんたらハンターか? 最近はハンターがめっきり減ってたんだが、魔物も増えてきてるからありがたい。どんどん狩ってくれよ!」
ドリスが指示していたハンター狩りももう行われることはないため、今後はハンター達も戻ってくるだろうが、増えていると聞いたら倒すしかないんじゃないか?
俺(猫)、少しは強くなってることだし、この辺りに出る魔物は簡単に倒せるやつばかりだし。
『魔物狩りをするのか?』
「いいですねぇ! ちょっと体を動かしたかったんです!」
「いや、ギースが暴れたらこの辺吹っ飛ぶんじゃないのか!?」
「さすがにそんなことにはなりませんよぉ! ちょっとこの辺り一帯が氷漬けになることはあるでしょうが」
「駄目だ駄目だ、氷漬けは駄目だ! 作物枯れちゃうだろ!」
実に危険だ。可愛い顔をしているがこいつは地龍。暴れられては大惨事だ。
『魔力のコントロールを覚える訓練をすれば良いのではないか? ギースはそこがまだ未熟だしの』
「訓練ですか!? やりたいです!」
ということでギースはシャンテと魔力コントロールの訓練をすることになり、その間に俺はこの周囲の魔物を狩ることにした。
人目に触れないところで猫の姿になり、草原を駆け回りながら魔物を狩っていく。
この辺りは昼間にはチューチルが多いようで、走っているとあっちの方から飛びかかってきて勝手に死んでくれる。
しばらく走り回っているだけでチューチルの姿が激減したのだが、こっちとしては戦った実感がない。
実につまらない。これ、狩りとは言わないだろう!
チューチルの尻尾だけが束になり増えていく。
貧乏性なので全部回収しているが、こんなに持っていっても買い取ってもらえないだろうな……。
この体は本当にすぐ眠くなる。
【猫の語源は「寝るのを好む」の「寝」と「好」の文字を組み合わせ「ねこむ」から変化して「ねこ」となったと考えられています】
猫図鑑の猫豆知識が思い出される。
ギースの訓練はまだ終わりそうもないし、少し休んでも罰は当たらないだろう。
近くにあった木に上り、適度に日が当たり太い枝の上で寝転がると、すぐに睡魔が襲ってきて、俺は微睡みの中に落ちていった。
激しい揺れで目が覚めた。枝がグラグラ揺れていて今にも振り落とされてしまいそうだ。
木に爪を立ててしがみつく。
「ブモーッ!」
どうやら魔物が木に何度も体をぶつけているようだが、揺れが激しいためまともに見えない。
『あー、もう!』
揺れが収まった瞬間を狙って木から飛び降りると、木の下には「モーモーギュー」の子供がいた。
モーモーギューは魔物だが、家畜として飼われることが多い。
よく見ると首に紐が付いているため、家畜として飼われていた、もしくは飼われていたやつから生まれたモーモーギューだろう。
モーモーギューは食肉として食われるというよりは、土地を耕したり、馬などでは引けない重い荷物や荷馬車を引くために飼われている。
引退したら殺処分されて市場に出回ることもあるようだが、牛よりも癖が強く身が固いため、鶏ガラなどと同じようにスープなどの出汁を取るために使われている。
「ニャー(どうした?)」
通じるはずがないと思いつつ、モーモーギューに声をかけた。
俺の鳴き声に気付いたモーモーギューは木に体を打ち付けるのをやめこちらを見た。
「ニャー(迷子か?)」
「ブモー……」
物悲しそうに鳴くモーモーギューだが、やはり言ってることは分からない。
「ニャー(俺の言葉、分かるか?)」
「ブモー! ブモー!」
何かを伝えたいようだが全く分からない。
しばらくニャーブモーと鳴きあっていたがさっぱり伝わらない。
異種間なんてこんなもんか? と諦め始めた頃
『……たの……』
と声が聞こえた。
気のせいかと思ったが所々聞こえ始めたモーモーギューの言葉。
「ニャー(分かるか?)」
何度目の問いかけなのかもう分からなくなっていたが諦めずに声をかけ続けていたら、遂にモーモーギューの言っていることが分かるようになった。
『知らない人間から逃げてきたの……ママはどこ?』
モーモーギューにしておくには実に勿体ないほど可愛い声をしている。頭に響いてくる声は十代半ばの女の子の声だ。
見た目は毛がなく、中途半端に長い鼻と半分皮膚で埋もれた座った目をしているのだが、声は可愛らしい。
実に勿体ない!
『知らない人間?』
『うん……だから音を出してればママが気付いて迎えに来てくれると思って……』
詳しく話を聞いてみると、どうやら家畜泥棒にここまで連れてこられたようである。
母親モーモーギューと家(おそらく牛舎)で寝ていたら、突然三人の男達が現れ、母親に何かを嗅がせて眠らせ、この子だけが家から連れ出されてきたそうだ。
柵付きの荷馬車に乗せられてこの辺りまで来た時、荷馬車にドスベアーが激突してきて、その衝撃で柵が壊れたので逃げてきたと言っていた。
子だけを売りに出した可能性も考えたが、それならこんな魔物がウヨウヨいる道もない場所を通る必要なんてない。
こんなところを走るなんて普通では考えられない。
『ママァァ!』
モーモーギューの子は泣き始めたのだが、これはどうしたものか。
『おい、泣くなよ。あまり騒いでるとお前を連れてったやつらが戻ってくるかもしれないぞ?』
そう言うとモーモーギューは泣き止んだ。
『お前、名前は?』
『名前? 何?』
名前を知らないらしい。とりあえず「モー」と呼ぶことにし、モーをシャンテの元へと連れて行ったのだが……。
『出来した! 我の好みを把握していたのだな!』
と、食う気満々な反応をされてしまって焦った。
この辺りの道の近くは畑がポツポツとあり、人の姿も確認出来る。
畑より奥の方へ行こうとする俺に、麦わら帽子を被ったおじさんが声を掛けてきた。
「あんたらハンターか? 最近はハンターがめっきり減ってたんだが、魔物も増えてきてるからありがたい。どんどん狩ってくれよ!」
ドリスが指示していたハンター狩りももう行われることはないため、今後はハンター達も戻ってくるだろうが、増えていると聞いたら倒すしかないんじゃないか?
俺(猫)、少しは強くなってることだし、この辺りに出る魔物は簡単に倒せるやつばかりだし。
『魔物狩りをするのか?』
「いいですねぇ! ちょっと体を動かしたかったんです!」
「いや、ギースが暴れたらこの辺吹っ飛ぶんじゃないのか!?」
「さすがにそんなことにはなりませんよぉ! ちょっとこの辺り一帯が氷漬けになることはあるでしょうが」
「駄目だ駄目だ、氷漬けは駄目だ! 作物枯れちゃうだろ!」
実に危険だ。可愛い顔をしているがこいつは地龍。暴れられては大惨事だ。
『魔力のコントロールを覚える訓練をすれば良いのではないか? ギースはそこがまだ未熟だしの』
「訓練ですか!? やりたいです!」
ということでギースはシャンテと魔力コントロールの訓練をすることになり、その間に俺はこの周囲の魔物を狩ることにした。
人目に触れないところで猫の姿になり、草原を駆け回りながら魔物を狩っていく。
この辺りは昼間にはチューチルが多いようで、走っているとあっちの方から飛びかかってきて勝手に死んでくれる。
しばらく走り回っているだけでチューチルの姿が激減したのだが、こっちとしては戦った実感がない。
実につまらない。これ、狩りとは言わないだろう!
チューチルの尻尾だけが束になり増えていく。
貧乏性なので全部回収しているが、こんなに持っていっても買い取ってもらえないだろうな……。
この体は本当にすぐ眠くなる。
【猫の語源は「寝るのを好む」の「寝」と「好」の文字を組み合わせ「ねこむ」から変化して「ねこ」となったと考えられています】
猫図鑑の猫豆知識が思い出される。
ギースの訓練はまだ終わりそうもないし、少し休んでも罰は当たらないだろう。
近くにあった木に上り、適度に日が当たり太い枝の上で寝転がると、すぐに睡魔が襲ってきて、俺は微睡みの中に落ちていった。
激しい揺れで目が覚めた。枝がグラグラ揺れていて今にも振り落とされてしまいそうだ。
木に爪を立ててしがみつく。
「ブモーッ!」
どうやら魔物が木に何度も体をぶつけているようだが、揺れが激しいためまともに見えない。
『あー、もう!』
揺れが収まった瞬間を狙って木から飛び降りると、木の下には「モーモーギュー」の子供がいた。
モーモーギューは魔物だが、家畜として飼われることが多い。
よく見ると首に紐が付いているため、家畜として飼われていた、もしくは飼われていたやつから生まれたモーモーギューだろう。
モーモーギューは食肉として食われるというよりは、土地を耕したり、馬などでは引けない重い荷物や荷馬車を引くために飼われている。
引退したら殺処分されて市場に出回ることもあるようだが、牛よりも癖が強く身が固いため、鶏ガラなどと同じようにスープなどの出汁を取るために使われている。
「ニャー(どうした?)」
通じるはずがないと思いつつ、モーモーギューに声をかけた。
俺の鳴き声に気付いたモーモーギューは木に体を打ち付けるのをやめこちらを見た。
「ニャー(迷子か?)」
「ブモー……」
物悲しそうに鳴くモーモーギューだが、やはり言ってることは分からない。
「ニャー(俺の言葉、分かるか?)」
「ブモー! ブモー!」
何かを伝えたいようだが全く分からない。
しばらくニャーブモーと鳴きあっていたがさっぱり伝わらない。
異種間なんてこんなもんか? と諦め始めた頃
『……たの……』
と声が聞こえた。
気のせいかと思ったが所々聞こえ始めたモーモーギューの言葉。
「ニャー(分かるか?)」
何度目の問いかけなのかもう分からなくなっていたが諦めずに声をかけ続けていたら、遂にモーモーギューの言っていることが分かるようになった。
『知らない人間から逃げてきたの……ママはどこ?』
モーモーギューにしておくには実に勿体ないほど可愛い声をしている。頭に響いてくる声は十代半ばの女の子の声だ。
見た目は毛がなく、中途半端に長い鼻と半分皮膚で埋もれた座った目をしているのだが、声は可愛らしい。
実に勿体ない!
『知らない人間?』
『うん……だから音を出してればママが気付いて迎えに来てくれると思って……』
詳しく話を聞いてみると、どうやら家畜泥棒にここまで連れてこられたようである。
母親モーモーギューと家(おそらく牛舎)で寝ていたら、突然三人の男達が現れ、母親に何かを嗅がせて眠らせ、この子だけが家から連れ出されてきたそうだ。
柵付きの荷馬車に乗せられてこの辺りまで来た時、荷馬車にドスベアーが激突してきて、その衝撃で柵が壊れたので逃げてきたと言っていた。
子だけを売りに出した可能性も考えたが、それならこんな魔物がウヨウヨいる道もない場所を通る必要なんてない。
こんなところを走るなんて普通では考えられない。
『ママァァ!』
モーモーギューの子は泣き始めたのだが、これはどうしたものか。
『おい、泣くなよ。あまり騒いでるとお前を連れてったやつらが戻ってくるかもしれないぞ?』
そう言うとモーモーギューは泣き止んだ。
『お前、名前は?』
『名前? 何?』
名前を知らないらしい。とりあえず「モー」と呼ぶことにし、モーをシャンテの元へと連れて行ったのだが……。
『出来した! 我の好みを把握していたのだな!』
と、食う気満々な反応をされてしまって焦った。
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