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お城での生活二日目。
朝、少し早い時間に目が覚めてしまった。
もう一度寝ようとするが、すっかり目が覚めてしまった為起き出すと、ミラがいる使用人部屋で音がした。
「アリアンナ様もう目が覚めてらしたんですか?」
ミラはそう言って、少しだけ驚いた顔をしてやって来た。
私は申し訳ない気持ちで目を彷徨わせる。
「……目が覚めてしまって」
いつもはお寝坊な私がソワソワとベッドから降りた為ミラがいる使用人部屋に音が響いたのだろうか。
「ごめんね?ミラ、起こしてしまった?」
しょんぼりとミラの睡眠時間を削った謝罪をする。
「いえ、実は私もいつもよりも早くに目が覚めてしまったので大丈夫です」
なんて優しい侍女なの!?
アリアンナはいつもなら寝るのが大好きなのでこんなに早い時間に目を覚ます事などまず有り得ない。それに、理由無く早朝に起こされたら不貞腐れる自信があった。
ミラにはそのまま身支度を手伝っもらい、今日のドレスを二人で決める。
まぁ、これはいつも通りね。
二人で、とは言っても私が「黄色のドレスが良いわ。」と言って、ミラが「ではこちらのドレスは如何ですか?」とミラがおすすめのドレスを持って来てくれて私は「それがいいわ。」と言っただけである。
次は装飾品選びに移り。
「このドレスでしたら同じ生地で仕立てた物が御座います。このリボンの髪飾りは如何ですか?」
そう言ってミラが可愛らしい小ぶりなリボンの付いたピンを見せてくれた。
「可愛いわ!それにするわ」
「では編み込みに致しましょう」
ミラにアップにして貰ってリボンをサイドに付けてもらう、と言った感じで決めていくのでほぼミラに頼りっきりだ。
今日のドレスは昼間のドレスらしく露出の少ないデザインで、裾がフリフリの淡いレモンイエロー。髪には同じ生地で仕立てたリボンを左右に付けてもらって編み込みにして貰っている。
「大奥様はアリアンナ様が癒しの聖女様に選ばれたとお知りになり、さぞ喜ばれているでしょうね。」
「でもお父様は何だかしょんぼりなさっていたわ?」
母サフィリアはそれはもう凄い喜びようだった。声を聞いても聞かなくても同じだと分かるくらい。アリアンナが落ち着いてと言った位には、凄く興奮していた。
けれど父は悲愴な顔でアリアンナを抱きしめてなんて事だと嘆いていた。かなり絶望していることが声を聞かなくてもわかったくらいだ。
「あの嘆きようは凄かったですね」
とミラは思い出したのかくるりと壁を向き肩を震わせている。
アリアンナもそれを見て思い出し一緒にクスクスと笑った。
コンコン
『おはようございます。エレンです』
扉の外からエレンの声がしてアリアンナはミラに頷く。
ミラは扉に近づくとカチャリと扉開き「おはようございます」とエレンに挨拶をした。
「おはようミラ。アリアンナ様失礼致します」
「あっ、どうぞもう起きてるのでこちらに入っても構わないわ」
アリアンナはドレッサーから立ち上がると居間に移動した。
「失礼致します。」
エレンの後に続きリリーも入室した。
リリーはアリアンナに「おはようございますアリアンナ様。おはようミラ」と挨拶をすると身支度を終わらせた事を理解し
「申し訳ございません。アリアンナ様。実は朝食をご一緒したいと。今─」
「失礼。おはようアリアンナ随分と久しぶりだね」
リリーの後ろにいた大きな人影がスっと現れた。
「ジョバンニ殿下!」
アリアンナが必死に避けて逃げ回っている王子様。
だと言うのに、なぜか未だにジョバンニ殿下は度々アリアンナに手紙を送って来たりする変わった方だ。
ヒマ潰しにしろ嫌がらせにしろ、大変迷惑な話だ。
「ジョバンニ殿下、レディの部屋に勝手に入って来ないで下さいませ!」
プリプリと少しだけ唇を突き出したアリアンナはすっかり以前とは違い肉付きが良く、どこからどう見ても以前とは別人の様に肉感的に成長していた。
身長は平均に近いが胸は平均以上に成長したのだ。
嬉し恥ずかしでアリアンナは今日も豊満な胸が悩ましげに押しつぶされる様な腕組みをして困った顔をジョバンニへ向けた。
「……(なんで今日に限ってそんな身体のラインが分かるドレスにしたんだ?)なんとも、反則級の成長をとげたね」
ジョバンニはしみじみとアリアンナの全身を見た。
一方、アリアンナはおや?と首を傾げてジョバンニを注視する。何やら今……
「……ザック先生?え?………まさか、そんなはずないわ。」
アリアンナはパニックを起こし後退る。
先程の声にはザカリの声と同じ様な副声音が聞こえた。アレは腹黒さが滲んだ独特のもので。ザカリ以外に有り得ない。
これはザカリだ。
そうアリアンナの感が告げてくる。
でも、そんな訳無い。あるはずが無い。
忙しい第一王子殿下がザカリとして私の先生をしてたなんて、そんなはず無い。だって不可能だもの。
第一王子殿下は近頃は政務でも活躍なさっていて多忙を極める忙しさだと伺っている。
王太子にまもなく立太子なさるだろうと、ほとんどの貴族達は確信している。
後ろ盾としては既に二公爵、三侯爵が着いており隣国の王女様だったパウラ王妃のお子である第二王子殿下にも負けないほど、この国の貴族達を手中に治めている。
その為第王子殿下は前回よりも自由に動けなくなっていた。第一王子派の勢力が広大になり、第二王子も、王妃様も最早監視されてる状態なのだとか。
第一王子であるジョバンニは前回と変わらぬ武勇に優れた王子に成長され騎士団を取り仕切る勇猛な騎士様として、第二騎士団の団長として数々の武功を上げたと聞いている。前回以上の有能さと猛進ぶりだ。
だから、ジョバンニにはアリアンナの子守りなどしている様な暇など無かったはずだ。
「まさか、ここでバレるなんて思わなかったな。アリアンナ」
だから、先生?嘘だよね?
朝、少し早い時間に目が覚めてしまった。
もう一度寝ようとするが、すっかり目が覚めてしまった為起き出すと、ミラがいる使用人部屋で音がした。
「アリアンナ様もう目が覚めてらしたんですか?」
ミラはそう言って、少しだけ驚いた顔をしてやって来た。
私は申し訳ない気持ちで目を彷徨わせる。
「……目が覚めてしまって」
いつもはお寝坊な私がソワソワとベッドから降りた為ミラがいる使用人部屋に音が響いたのだろうか。
「ごめんね?ミラ、起こしてしまった?」
しょんぼりとミラの睡眠時間を削った謝罪をする。
「いえ、実は私もいつもよりも早くに目が覚めてしまったので大丈夫です」
なんて優しい侍女なの!?
アリアンナはいつもなら寝るのが大好きなのでこんなに早い時間に目を覚ます事などまず有り得ない。それに、理由無く早朝に起こされたら不貞腐れる自信があった。
ミラにはそのまま身支度を手伝っもらい、今日のドレスを二人で決める。
まぁ、これはいつも通りね。
二人で、とは言っても私が「黄色のドレスが良いわ。」と言って、ミラが「ではこちらのドレスは如何ですか?」とミラがおすすめのドレスを持って来てくれて私は「それがいいわ。」と言っただけである。
次は装飾品選びに移り。
「このドレスでしたら同じ生地で仕立てた物が御座います。このリボンの髪飾りは如何ですか?」
そう言ってミラが可愛らしい小ぶりなリボンの付いたピンを見せてくれた。
「可愛いわ!それにするわ」
「では編み込みに致しましょう」
ミラにアップにして貰ってリボンをサイドに付けてもらう、と言った感じで決めていくのでほぼミラに頼りっきりだ。
今日のドレスは昼間のドレスらしく露出の少ないデザインで、裾がフリフリの淡いレモンイエロー。髪には同じ生地で仕立てたリボンを左右に付けてもらって編み込みにして貰っている。
「大奥様はアリアンナ様が癒しの聖女様に選ばれたとお知りになり、さぞ喜ばれているでしょうね。」
「でもお父様は何だかしょんぼりなさっていたわ?」
母サフィリアはそれはもう凄い喜びようだった。声を聞いても聞かなくても同じだと分かるくらい。アリアンナが落ち着いてと言った位には、凄く興奮していた。
けれど父は悲愴な顔でアリアンナを抱きしめてなんて事だと嘆いていた。かなり絶望していることが声を聞かなくてもわかったくらいだ。
「あの嘆きようは凄かったですね」
とミラは思い出したのかくるりと壁を向き肩を震わせている。
アリアンナもそれを見て思い出し一緒にクスクスと笑った。
コンコン
『おはようございます。エレンです』
扉の外からエレンの声がしてアリアンナはミラに頷く。
ミラは扉に近づくとカチャリと扉開き「おはようございます」とエレンに挨拶をした。
「おはようミラ。アリアンナ様失礼致します」
「あっ、どうぞもう起きてるのでこちらに入っても構わないわ」
アリアンナはドレッサーから立ち上がると居間に移動した。
「失礼致します。」
エレンの後に続きリリーも入室した。
リリーはアリアンナに「おはようございますアリアンナ様。おはようミラ」と挨拶をすると身支度を終わらせた事を理解し
「申し訳ございません。アリアンナ様。実は朝食をご一緒したいと。今─」
「失礼。おはようアリアンナ随分と久しぶりだね」
リリーの後ろにいた大きな人影がスっと現れた。
「ジョバンニ殿下!」
アリアンナが必死に避けて逃げ回っている王子様。
だと言うのに、なぜか未だにジョバンニ殿下は度々アリアンナに手紙を送って来たりする変わった方だ。
ヒマ潰しにしろ嫌がらせにしろ、大変迷惑な話だ。
「ジョバンニ殿下、レディの部屋に勝手に入って来ないで下さいませ!」
プリプリと少しだけ唇を突き出したアリアンナはすっかり以前とは違い肉付きが良く、どこからどう見ても以前とは別人の様に肉感的に成長していた。
身長は平均に近いが胸は平均以上に成長したのだ。
嬉し恥ずかしでアリアンナは今日も豊満な胸が悩ましげに押しつぶされる様な腕組みをして困った顔をジョバンニへ向けた。
「……(なんで今日に限ってそんな身体のラインが分かるドレスにしたんだ?)なんとも、反則級の成長をとげたね」
ジョバンニはしみじみとアリアンナの全身を見た。
一方、アリアンナはおや?と首を傾げてジョバンニを注視する。何やら今……
「……ザック先生?え?………まさか、そんなはずないわ。」
アリアンナはパニックを起こし後退る。
先程の声にはザカリの声と同じ様な副声音が聞こえた。アレは腹黒さが滲んだ独特のもので。ザカリ以外に有り得ない。
これはザカリだ。
そうアリアンナの感が告げてくる。
でも、そんな訳無い。あるはずが無い。
忙しい第一王子殿下がザカリとして私の先生をしてたなんて、そんなはず無い。だって不可能だもの。
第一王子殿下は近頃は政務でも活躍なさっていて多忙を極める忙しさだと伺っている。
王太子にまもなく立太子なさるだろうと、ほとんどの貴族達は確信している。
後ろ盾としては既に二公爵、三侯爵が着いており隣国の王女様だったパウラ王妃のお子である第二王子殿下にも負けないほど、この国の貴族達を手中に治めている。
その為第王子殿下は前回よりも自由に動けなくなっていた。第一王子派の勢力が広大になり、第二王子も、王妃様も最早監視されてる状態なのだとか。
第一王子であるジョバンニは前回と変わらぬ武勇に優れた王子に成長され騎士団を取り仕切る勇猛な騎士様として、第二騎士団の団長として数々の武功を上げたと聞いている。前回以上の有能さと猛進ぶりだ。
だから、ジョバンニにはアリアンナの子守りなどしている様な暇など無かったはずだ。
「まさか、ここでバレるなんて思わなかったな。アリアンナ」
だから、先生?嘘だよね?
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