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にじゅうろく
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精霊教会─
未だに修復が終わっていない教会に着くとエミルは複雑で繊細な箇所の修復を行い時折複雑な魔法を施している。
「精霊王スフィアよ、雪の精霊姫ネージュを見つけました。」
ネージュが囚われている精霊水晶を祭壇の上に置くとミーアは一歩下がり両膝を着くと頭を下げ精霊王の言葉を待つ。
『ネージュ、そうか、精霊水晶に囚われ力を奪われていたか。精霊水晶に居るのは感じていた。無事助け出してくれたこと礼を言う。ありがとう我が愛し子よ。』
精霊王の姿は薄くまるで蜃気楼の様だったのが次第に姿がしっかりと認識できるまでに存在感を増していた。
精霊王がサラリと長い裾を揺らし歩いて祭壇に近づく。ネージュの入っている水晶に手をかざすと水晶が激しく発光しだした。
光が収束すると精霊王の腕の中にはキョトンとした表情の雪の精霊姫ネージュがミーアを、彼女の青みを帯びた紫の瞳を見つめていた。
『カトリーヌ?』
「ネージュ、貴方にわたくしはとんでもない無茶をさせてしまったのですね?ごめんなさい。貴方にはなんと言っていいか…」
ミーアは不思議な気分だった。でも自然とそう口にしていた。
「でも、今は貴方のおかげでわたくしは私に、カトリーヌの生を終え、ミーアとしてまたこうして生まれ変わる事ができたわ。私の魂が闇に囚われること無く生まれ変わる事が出来たのはネージュと精霊王スフィアのおかげです。ありがとうございます。それなのに、早く助けてあげられなくて、私に勇気が無くてごめんなさい。」
ミーアは謝罪と感謝を伝えたかった。自分が足を引っ張りネージュが闇に囚われてしまったのは明白だった。
☆
カトリーヌと言う名前を聞いてルーカは困惑していた。なぜ今その名前が出るのだと。
しかしミーアの話を聞く内に理解する。
ミーアはあのカトリーヌ・アリプランディーニの生まれ変わりだと言う事が。
そんなことありうるのか?しかしあんなやり取りを聞いたら、あんな話し方を当たり前の様にするミーアを見ていたら納得するしかなかった。
あぁ、なんという事だ。あの悲劇の少女がミーアだったなんて。
カトリーヌ・アリプランディーニの再捜査にはエミルと共に携わりことの経緯や令嬢にありえない程の扱いを受けていた記録や記述を全て押収したのだ。
脳が焼ける様な爆発しそうな怒りが沸き起こる。こんな事なら、アベルディンを一瞬で屠るのではなかった。
あぁ、なんてことを。
君はなんて思いをしてきたんだ。
ミーア。
☆
「ルーカさん?」
ミーアはキョトンとしてルーカを見た。しかしその目尻から透明な雫が落ちるのを見て慌てた。
「え、え、ルーカさん?どうしたんです!?」
「ミーア」
ルーカがゆっくりと近づきミーアをその胸に抱きしめた。
ぎゅっと、けれど優しくミーアを抱きしめるルーカは自分の手のひらをぎゅっと力いっぱいに握りしめ血を滲ませていた。
やるせない。
けれど、悲惨なカトリーヌの記憶を持っていても心を壊していない様子にホッとする。
ミーア、俺は君に何をしてあげられる?
未だに修復が終わっていない教会に着くとエミルは複雑で繊細な箇所の修復を行い時折複雑な魔法を施している。
「精霊王スフィアよ、雪の精霊姫ネージュを見つけました。」
ネージュが囚われている精霊水晶を祭壇の上に置くとミーアは一歩下がり両膝を着くと頭を下げ精霊王の言葉を待つ。
『ネージュ、そうか、精霊水晶に囚われ力を奪われていたか。精霊水晶に居るのは感じていた。無事助け出してくれたこと礼を言う。ありがとう我が愛し子よ。』
精霊王の姿は薄くまるで蜃気楼の様だったのが次第に姿がしっかりと認識できるまでに存在感を増していた。
精霊王がサラリと長い裾を揺らし歩いて祭壇に近づく。ネージュの入っている水晶に手をかざすと水晶が激しく発光しだした。
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『カトリーヌ?』
「ネージュ、貴方にわたくしはとんでもない無茶をさせてしまったのですね?ごめんなさい。貴方にはなんと言っていいか…」
ミーアは不思議な気分だった。でも自然とそう口にしていた。
「でも、今は貴方のおかげでわたくしは私に、カトリーヌの生を終え、ミーアとしてまたこうして生まれ変わる事ができたわ。私の魂が闇に囚われること無く生まれ変わる事が出来たのはネージュと精霊王スフィアのおかげです。ありがとうございます。それなのに、早く助けてあげられなくて、私に勇気が無くてごめんなさい。」
ミーアは謝罪と感謝を伝えたかった。自分が足を引っ張りネージュが闇に囚われてしまったのは明白だった。
☆
カトリーヌと言う名前を聞いてルーカは困惑していた。なぜ今その名前が出るのだと。
しかしミーアの話を聞く内に理解する。
ミーアはあのカトリーヌ・アリプランディーニの生まれ変わりだと言う事が。
そんなことありうるのか?しかしあんなやり取りを聞いたら、あんな話し方を当たり前の様にするミーアを見ていたら納得するしかなかった。
あぁ、なんという事だ。あの悲劇の少女がミーアだったなんて。
カトリーヌ・アリプランディーニの再捜査にはエミルと共に携わりことの経緯や令嬢にありえない程の扱いを受けていた記録や記述を全て押収したのだ。
脳が焼ける様な爆発しそうな怒りが沸き起こる。こんな事なら、アベルディンを一瞬で屠るのではなかった。
あぁ、なんてことを。
君はなんて思いをしてきたんだ。
ミーア。
☆
「ルーカさん?」
ミーアはキョトンとしてルーカを見た。しかしその目尻から透明な雫が落ちるのを見て慌てた。
「え、え、ルーカさん?どうしたんです!?」
「ミーア」
ルーカがゆっくりと近づきミーアをその胸に抱きしめた。
ぎゅっと、けれど優しくミーアを抱きしめるルーカは自分の手のひらをぎゅっと力いっぱいに握りしめ血を滲ませていた。
やるせない。
けれど、悲惨なカトリーヌの記憶を持っていても心を壊していない様子にホッとする。
ミーア、俺は君に何をしてあげられる?
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