合法ロリと獣耳公爵の苦悩

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誤解は続くよどこまでも

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ラヴィーニアは豚獣人のジョバンニにダンスフロアで捕まってしまった。令嬢達から情報収集しようとキョロキョロしたのがいけなかった。
「ラヴィーニア様、僕をお探しですね?そうでしょう!」
お呼びでない男代表ジョバンニは嬉々とした顔でラヴィーニアの手を掴むとにやりと気味の悪い笑顔になった。

いやー!気持ち悪いー!

「いいえ、いいえ!違います!わたくし、あ、あちらのご令嬢方とぜひともお話し…ちょ、ちょっと!?」
「分かってるよ?僕のことが気になって仕方ないんだね?僕の噂話をあのご令嬢方に聞くつもりだったんだろう?大丈夫だよ?」
何が大丈夫なのだ!全然大丈夫じゃないから!だから、この手を離せ!
「て、手を離して下さい!」
「恥ずかしいのかい?可愛いな。可愛すぎる!はぁはぁ。早く裸を見たいな。」
ひぇ!?
「やめ、離してー!やっ…むぐぅ…ぅぅ」
ラヴィーニアは口を手で覆われ暴れるも巨漢の豚獣人の前では為す術もなくずるずると引きずられて客室のフロアに来てしまった。
豚獣人のジョバンニは体格がよくラヴィーニアが小さな幼児のように感じる程の巨漢だ。
ぴんくの髪と緑のつぶらな瞳、真っ白な肌に2メートルは超えてそうな身長と、がっしりした身体だ。
対してラヴィーニアは1メートル50くらい。華奢で、ボンキュッボンとは無縁の、きゅっきゅっきゅっ…である。
比較的長身な者が多い獣人の国ならば同い年の令嬢は160を優に超えるだろう。
部屋に入るとラヴィーニアは、はぁ、はぁ、と息を整え渾身の力でジョバンニの腕から抜け出した。しかし、すぐに捕まり拘束される前にジョバンニにドレスと下着を一緒に引き裂かれた。
ビリッと絹の裂ける音がした直後、扉が爆破した。








「名前は?」

目の前に扉を吹っ飛ばした張本人であるチョーイケメンが立っていた。
金髪碧眼の王子様の様な…いや、王子様にしては野性的でワイルドな気もするが…
ラヴィーニアの引き裂かれたドレスの破片を握り締め。ラヴィーニアは真っ裸に近い姿でもうひとつの引き裂かれたドレスを胸に抱え戸惑う。
こんな恰好でこんなにカッコイイお兄さんにはじめましてのあのご挨拶を?え?マジで?

ラヴィーニアが戸惑い口を開け閉めしながらもじもじしているとお兄さんがハットした顔で自らのジャケットを脱ぎラヴィーニアに「大丈夫だよ?怖くないからね?」と怪しい人の常套句を口にしながらジャケットを広げ近づいてきた。

え?
めちゃくちゃ怪しいんだけど…と思ったが、お兄さんの目には下心よりも心配する様な色か浮かんでいるように感じ、ラヴィーニアはされるがままに大人しくしていた。
どうやらジャケットでラヴィーニアのみすぼらしい身体を隠してくれたようだ。
有難い。が、カッコイイお兄さんの顔に惚けてラヴィーニアはぽーっとしていた。

よし。とお兄さんが呟くとラヴィーニアを横抱きにして部屋を出た。

「ひとまず、私の部屋に行こう。大丈夫だよ。私は子供には優しいから。怖くないからね?侍女にお菓子を出してもらおう。喋れる様になったらご両親を探して引き合せるからそれまでゆっくりしてなさい。」

ん?
ラヴィーニアはあれ?と首を傾げる。私、喋れるけど?
「ぁ、の、……ぃ!?」
しかし、巨漢のジョバンニと変わらない、いや、若しかすると細身だが彼の方が筋肉質かも?な、お兄さんの姫抱きによってゆらゆら揺れていたラヴィーニアは思いっきり舌を噛んだ。
悶えるラヴィーニアをお兄さんは痛ましげに見遣り「無理するものじゃないよ。すまなかったね。私の部下が君を酷い目に…」
お兄さんはラヴィーニアを抱え直すとよしよしと頭を撫でまた姫抱きに戻り歩き出した。

やばい。カッコイイ…


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