合法ロリと獣耳公爵の苦悩

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お散歩してたら思い出してしまった。私になる前の私の記憶。
ちょっとだらしない女子高生だった。
きっと気のせいだと思うけど…なんだか周囲に残念な娘って目で見られている、オタクな女子だった様な気がするけど…そんなはずないよね?前世の自分の名前や家族の顔もほとんどぼんやりした画像みたいに不鮮明で朧げな記憶はこの世界で全ての学業もダンスレッスンも終わった私にはさほどチートにはならないよな?と少しばかり残念に思うくらいに算術以外のチートが見当たらない平凡以下の私の記憶だった。

そんな感じで前世を極普通に思い出してしまった私だけど、今の私には、この記憶が戻ったからと言ってどうと言うことも無い。


私はひとまず、お散歩を再開した。
なぜなら今、私は世界最大のお見合いパーティ強制参加から逃れる為にはどうすれば良いだろうと言う人生最大の難問にぶち当たっているのだ。
よって、前世を思い出しちゃいました☆異世界転生やっほーい☆なんて思っている場合では無い。

今現在の私は割と大変な時期なのである。
両親の死後、私の後見人としてこの屋敷に居座っている叔父とその家族だが、ついにフェブラージ侯爵の爵位や領地を手に入れる手段を思いついた様で、すぐにでも実行に移すと数日前に叔母と話していたらしい。
らしい、と言うのはそんな事をわざわざラヴィーニアの元に来て嘲笑ながら話すいとこのマリアナから聞かされたからだ。

この国の爵位は、息子が継ぐ事になっているが男児のいない家は娘に継承する権利が発生する。
後継者が隣国の貴族に嫁ぐ場合には血縁の親族から後継者を、もしくは後見人がその爵位と領地を継承する。というきまりがある。

「早く気づくべきだった。早々に隣国で支度金を支払ってくれる裕福な独身貴族を当たろう。」
そう言っていたと満面の笑みで教えられた。
継承する年齢は16歳。今ラヴィーニアは15歳であり16歳の誕生日まで後五ヶ月。それが待てないのかと思ったがどうやら全てを手にする事にしたようだ。

祖父から勘当されフェブラージ侯爵家から除籍されている叔父は現在莫大な借金があるだけで文無しなのである。
侯爵家の次男として幼い頃に亡き祖母より受け継いだ土地や屋敷は既に全て手放した様だった。詰まるところ一文無しなので叔父はラヴィーニアの父からなんとかお金を融資して欲しいと頼みに来たのだが、既にラヴィーニアの両親はこの世を去った後だった。
現在はラヴィーニアが継承する年齢になるまで国の管轄に置かれ財産管理機構が管理運営をしているので財産管理機構に申請し、承諾を得なければ財産を使うことが出来ない。
叔父は弁護人に必死に食い付いたが借金返済の了承を得られなかったらしくそこからお金を引き出せずに発狂し騒ぎ立てる程には切羽詰まった状況の様だ。

そして叔父とその家族がその日からラヴィーニアの後見人としてなんとか金を引き出そうと居座っているのだ。
しかし叔父はどうやら金だけでは無く爵位や領地全てを手に入れる手段を思いついた様で先週からせかせかとラヴィーニアを連れて隣国に向かう準備をしている。
ラヴィーニアはこのピンチをどう切り抜けたら良いのか全くわからず庭をうろうろとさ迷っていた。

隣国に向かうのはとうとう明日に迫っていた。
隣国にはエルローテガーデンと言われる広大な敷地を持つ聖地がありその聖地の神殿では祈りと感謝を捧げる豊穣祭がある。その祭りの行われる期間、夜は世界一の規模を誇るお見合いパーティとも密かに言われている舞踏会が催されるのでそれに潜り込む為に弁護人にラヴィーニアや付き添いの叔母のドレスや装飾品の新調や旅費などを申請して先週から旅支度が進められていた。


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