【R18】不本意な婚約者

やまだ

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不本意な婚約者

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「結婚してください♡」

「––––––––は?」

朝見覚えない場所で目が覚めて、そうだクソ男にムカついてその辺の男ナンパしたんだって思い返してたら起きてきた男に求婚された。裸のまま両手を握りこまれて。

「んん?」

「世良弘毅15歳です、真鍋綾乃さんに惚れましたっ」

結婚も意味わかんないけど…なに、今なんてゆった?

「15歳…15ぉ?!その見た目で?!」

20こえてると思ってたのに!

「良く言われるけどー、ごめんねぇ」

あ、でも喋ると表情も幼くなって子供っぽいな…いや子供なのか。

「詐欺じゃん!えっ、条例とか」

「大丈夫ひっかかんない」

「そうなの?よく知らないから」

「大丈夫大丈夫、本気の付き合いならおっけーだから」

「本気の付き合い?」

「うん、だから婚約しちゃおーよ。オレの保護者兄貴なんだけどー、連絡したらいいよ~って言ってたし」

「は?」

それってさっきの結婚してくださいってやつの話?

「ねっ、だから婚約して♡」

「はぁ?!」

「幼気な少年食べちゃったことだし貰ってください、綾乃さん♡じゃないと条例違反になっちゃうかもしんないね?」

にこにこ言ってくるけどさ、年確認しなかった自分も悪いけどさ、

「それ、脅迫だよね?!」


条例違反の言葉に怯えて不本意ながら婚約するって言っちゃったけど、落ち着いて考えたら中学生なんてそのうち冷めるだろうと思い直してその日は一緒にお昼ご飯食べて帰った。





––––––––––––それなのに。


「綾乃さん今日は帰り暇~?!」

毎日毎日、世良は懲りずにやってくる。
どこから見てるのか元気に騒がしく、でっかい体で今日も私の進路を塞ぐ。

「…バイト」

「マジ?じゃオレ終わるまで店で待っとこ~」

「だめ」

あんた昨日も閉店まで粘ったろ。最近店長の嫌味が私に来るんだからほんとやめて。

「だって外で待ってたら逃げんじゃん。オレが表と裏どっちで待ってるか何でわかんの」

騒がしいからだよ。

「……毎日こっちくんのやめてくんない?」

「え、無理でしょ。会いたいから来てんのに」

「も~~…自分の学校行きなよ」

他の学生が通りがかって世良が避けたタイミングで私も横を通り抜ける。

「ちょ、綾乃さんっ!夜行くからね!」

「あー…まさかのしつこさ~」

めんどくさいことに現在も世良の熱は冷めていないらしい。

席について、ため息を吐く。

「綾乃おっはよ。今日も朝から世良くん元気だったねー」

「おはよ…あの子何考えてんだろね。意味わかんない」

身体に残るクソ男の感触を誰かに塗り替えて欲しかっただけなのに。そっから追いかけ回されるなんて思いもしなかった。

「もう一年?…子供に酷いことしちゃって」

「酷いことされてるの私もじゃない?はぁー、一番軽そうなヤツに声かけたのに…中学生が夜遊びなんかしてんじゃないよもぉ~」

「わざわざ越県して綾乃追いかけてきたんでしょ?もーちょっと優しくしてあげたらいいのに」

人ごとだと思って適当言わないで欲しい。

「オレら婚約者だぜーって言う子供に?」

「あの子見た目大人だし」

「あの言動見てよ…子供じゃん」

最初の印象は綺麗さっぱり消えて、もう大人には見えない。

「その子供に手を出したあんたは」

「うぅ…それ言わないで」

「そうだよちゃんと最後までもらってよ!」

後ろから肩を叩かれてビクーってなった。なんでここに入ってきてるんだ。

「どっから聞いてたのよ!いきなりびっくりするわ!」

「綾乃さんの好みとか聞けるかなーって入ってみた。綾乃さんどんな男すき?」

「……寡黙な男」

「嘘つけ前カレ口が閉じる暇もないくらい喋ってたじゃん」

友よ、今は余計なことを言わないでくれ。

「だから喋る男キライになったの、ペラペラ心にもないこと言うから」

「オレ思ったことしか言ってないよ?ちょー素直」

「……あんた、最初からそんなキャラだったっけ?」

声かけた時はもっとクール~って感じだったのに。

「ホラ、それは綺麗なおねーさんにお誘いされてカッコつけたくて」

「声かける前は?しばらく誰にするか見てたんだけど」

「眠かったから省エネしてた。ちゃんと寝とけば二回戦出来たなってちょー後悔した」

「……マジ人選ミス」

「えー、大正解でしょ。なんでイヤなのオレ?」

「寝てる間に個人情報引っこ抜いたり条例盾に婚約迫ったりするところ」

「ナイス機転だよね」

「どこがよ」

「オレ将来有望よ?好きなだけ楽させてあげるよ、弁護士でも医者でも綾乃さんが旦那にしたい職につくよ?」

「何年後の話…」

「近い未来の話じゃん。オレの純情奪っといてイヤとか言ってもダメよ?」

「純情?!めっちゃ手慣れてたでしょあんた!」

純情な少年の手練手管じゃなかった、あれで中学生だなんて看破出来るはずがない!

「気持ちかったっしょ♡ねぇ綾乃さんさー、今日バイトなら明日でいんだけど兄貴のとこ一緒いこーね?」

「なんでよ。てかあんたはどーしてそんなに話があちこち飛ぶの」

「えー?はいこれ」

プリントを渡される。


『私たちは互いに結婚することを約束し、夫婦になることを誓います』


「なにこの文面?!」

「婚約証明。ちゃんと印鑑持ってきてね?」

「こんなのマジ婚約になっちゃうんじゃないの?!」

「最初からマジですけど。ほらコレ見て綾乃さん、去年の記事だけど…19歳女性が中学生男子を買春で逮捕」

また脅迫するつもり?!

「私買ってないし!」

「あん時ジュースくれたじゃん。アレが報酬と言えなくもない」

万札しかないから貸してくれって言ったの世良じゃん!

「そんなわけないしっ、大体私だって高校生で」

「でも18だったじゃん。高校生と中学生、可能性はゼロじゃなくない?」

「そっ……」

「逃さないよ?」

ニヤッと目を細めて宣言され、顔が引きつる。



「いっ…いつか婚約破棄してやるんだからーー!!」


捨て台詞を吐いて、教室から逃げ出した。
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