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第52話 エピローグ 異世界の国王の最後
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「なぜ、こんなことになった! 儂は誇り高き国王として、六勇者の召喚まで成功したのだ。何が、何が悪かったというのだ」
土の勇者の暴走により、王城から逃げ出した国王は、降り注ぐガレキに怯えながら、逃げ出していた。
王として、王国を守るために魔王軍に対して戦う選択をした。
そして、長年の歴史の中で、一つの時代に六勇者を全て召喚するという偉業も成し遂げた。嫌、五勇者だ。奴は偽勇者だ。裏切り者だ。魔王軍の手先に違いない。やはり、アイツか。ノアールか。魔族との間の子をなせば、魔王軍も戦いの手を緩めるかも知れないと考えて作った子だった。
奴自体失敗作だった。
奴自体がこの惨劇の原因だ。やはり、早々に殺しておけば良かった。
国王は呪詛を吐きながら逃げていた先に、女性が待っていた。
艶やかな黒髪に大人しそうだが、あふれる色気と抜群のプロポーションを持つ女。
その能力を封印するまで、国王が狂ったように身体を求めたその女は、あのときと同様、嫌、あのとき以上の女の香りをまき散らして立っていた。
「おお、メイよ」
その女が魔族であり、あがないがたいその感情は魔族の能力のものだと分かっていても、何かにすがりたいこの状況で国王は真っ直ぐに、メイの胸に飛び込んでしまった。
その油ぎって太った国王をメイは優しく抱きしめた。
「ああ、あなた。可哀想で可愛いあなた」
「メイ、もう、儂にはお前しか残っていない。儂を助けてくれ」
「ええ、あなたは私の愛しい人」
国王はメイの甘い匂いを嗅ぎながら全てを委ねる。
メイもそれに答えるように、ぎゅっと強く抱きしめた。
そして、国王の背中に熱い火が、真っ赤な火が小さなナイフによって噴き出した。
「な、なぜだ……」
「なぜと問いたいの私の方です。なぜ、あなたは自分の娘であるノアールを殺そうとしたのですか? たとえ私が殺されたとしても、その瞬間まであなたを愛してあげたのに。でも最愛の娘を殺そうとしたことは、百回人生をやり直したとしても許しません」
「そ、そんな……」
口から血を流す国王の唇に、メイは自分の唇を重ねた。
その後、マモル達が捜索したにもかかわらず、国王とメイの姿を見つけることは出来なかった。
~*~*~
王都から離れた海が見える丘の上。海から新しい風は吹いていた。
白波立つ水面に数隻の真っ黒な軍艦が浮かんでいた。
「黒船が……来たか。思ったより、早かったな」
「いや、遅かったんじゃないのか? あいつらが間に合っていれば、魔王軍を押し返せたんじゃないのか? そもそも、あんたが間違って、天上天下唯我独尊を使っちゃうからだろう」
ファイアマークのような真っ赤な逆立つ髪の男が、海を見ながらあきれ顔で立っていた。
その隣で草むらに乱暴に腰掛けた、黒い髪を後ろ手にまとめた男が楽しそうに笑っていた。
「まあ、良いじゃないか。逆境からの大逆転なんて、前の世界でも何でも経験してる。王国が混乱状態の方が、乗っ取りやすいと考えれば、いいんじゃよ」
「まあ、オレはもう、あんたについて行くしかないんだ。ただ、あの闇野郎だけはぶっ殺してやりたい」
「安心しろ、あいつどころか、魔王まで平らげるぞ。そのための外の連中だ」
「でも、大丈夫なのか? 逆に俺たちがあいつらに利用されないか?」
「一癖も二癖もある戦国武将をまとめてきた儂に任せろ」
光と火の勇者の企みが、アルパカ、ローヤル、魔王軍を再度戦火に巻き込むことになるのは、もう少し先のことになるのだった。
土の勇者の暴走により、王城から逃げ出した国王は、降り注ぐガレキに怯えながら、逃げ出していた。
王として、王国を守るために魔王軍に対して戦う選択をした。
そして、長年の歴史の中で、一つの時代に六勇者を全て召喚するという偉業も成し遂げた。嫌、五勇者だ。奴は偽勇者だ。裏切り者だ。魔王軍の手先に違いない。やはり、アイツか。ノアールか。魔族との間の子をなせば、魔王軍も戦いの手を緩めるかも知れないと考えて作った子だった。
奴自体失敗作だった。
奴自体がこの惨劇の原因だ。やはり、早々に殺しておけば良かった。
国王は呪詛を吐きながら逃げていた先に、女性が待っていた。
艶やかな黒髪に大人しそうだが、あふれる色気と抜群のプロポーションを持つ女。
その能力を封印するまで、国王が狂ったように身体を求めたその女は、あのときと同様、嫌、あのとき以上の女の香りをまき散らして立っていた。
「おお、メイよ」
その女が魔族であり、あがないがたいその感情は魔族の能力のものだと分かっていても、何かにすがりたいこの状況で国王は真っ直ぐに、メイの胸に飛び込んでしまった。
その油ぎって太った国王をメイは優しく抱きしめた。
「ああ、あなた。可哀想で可愛いあなた」
「メイ、もう、儂にはお前しか残っていない。儂を助けてくれ」
「ええ、あなたは私の愛しい人」
国王はメイの甘い匂いを嗅ぎながら全てを委ねる。
メイもそれに答えるように、ぎゅっと強く抱きしめた。
そして、国王の背中に熱い火が、真っ赤な火が小さなナイフによって噴き出した。
「な、なぜだ……」
「なぜと問いたいの私の方です。なぜ、あなたは自分の娘であるノアールを殺そうとしたのですか? たとえ私が殺されたとしても、その瞬間まであなたを愛してあげたのに。でも最愛の娘を殺そうとしたことは、百回人生をやり直したとしても許しません」
「そ、そんな……」
口から血を流す国王の唇に、メイは自分の唇を重ねた。
その後、マモル達が捜索したにもかかわらず、国王とメイの姿を見つけることは出来なかった。
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王都から離れた海が見える丘の上。海から新しい風は吹いていた。
白波立つ水面に数隻の真っ黒な軍艦が浮かんでいた。
「黒船が……来たか。思ったより、早かったな」
「いや、遅かったんじゃないのか? あいつらが間に合っていれば、魔王軍を押し返せたんじゃないのか? そもそも、あんたが間違って、天上天下唯我独尊を使っちゃうからだろう」
ファイアマークのような真っ赤な逆立つ髪の男が、海を見ながらあきれ顔で立っていた。
その隣で草むらに乱暴に腰掛けた、黒い髪を後ろ手にまとめた男が楽しそうに笑っていた。
「まあ、良いじゃないか。逆境からの大逆転なんて、前の世界でも何でも経験してる。王国が混乱状態の方が、乗っ取りやすいと考えれば、いいんじゃよ」
「まあ、オレはもう、あんたについて行くしかないんだ。ただ、あの闇野郎だけはぶっ殺してやりたい」
「安心しろ、あいつどころか、魔王まで平らげるぞ。そのための外の連中だ」
「でも、大丈夫なのか? 逆に俺たちがあいつらに利用されないか?」
「一癖も二癖もある戦国武将をまとめてきた儂に任せろ」
光と火の勇者の企みが、アルパカ、ローヤル、魔王軍を再度戦火に巻き込むことになるのは、もう少し先のことになるのだった。
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