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第32話 異世界のメイドは超優秀

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 その後、俺たちは戦後処理を済ませた。そしてアルパカ領をアイリーンに任せて、俺とノアールとネーラはマリーヌの屋敷に一度戻ることにした。
 俺たちが屋敷に着いた時には午後三時を回っていた。
 色々あって疲れたが、屋敷でのんびりする間もない。

「お帰りなさいませ、マモル様。ネーラさんそして、ノアール」

 俺たちが屋敷に戻ると、メイド姿のメイが出迎えてくれた。
 うん、可愛い。これで一児の母というのは反則だ。
 いやいや、見とれている暇はない。

「メイさん、すぐに出かける準備をしてください。魔王城へ行きます」
「魔王城? わたしも……ですか?」
「メイさんのその首輪を外しに行きます」
「え、これを外せるのですか?」

 メイはその真っ白な首に付けられた金属製の首輪をそっと触る。
 おや、もっと喜ぶのかと思ったが、少し動揺しているように見える。
 突然、首輪を外せると聞いて心の整理が出来ていないだけかも知れない、そこは移動中に整理して貰おう。
 ここでのんびりしてしまうと俺の性格上、動くのがめんどくさくなる可能性もなる。
 俺はメイの手を取ると、有無を言わせずに言った。

「ええ、それを外しに行きましょう。準備をしてください。朝一番に魔王城へ向かいます」
「分かりました。至急準備します。その前に、食事とお風呂の準備をしてまいります」
「わたくしも準備を手伝います」
「長旅でお疲れでしょう。姫様はお休みください」

 メイの体を気遣ったその言葉に、ノアールは怒った。

「お母様、わたくしはもう王女じゃありません! それにわたくしは少しでもお母様と一緒に居たいのです」
「ノアール……」

 ノアールの言葉に、メイはそっと我が子を抱きしめた。

「それでは、俺は自分の部屋に戻っているので、何かあれば言ってください」
「じゃあ、あたいもマモルの部屋に行くニャ」
「お前は風呂の準備な」
「ニャ~!」

 文句を言うネーラを置いて、俺は自分の部屋に戻った。
 とりあえず一服して、美しい女性の肖像画に話しかける。

「マリーヌ、ちょっと話があるのだが、いいかい?」
 
 俺がそう言うと、肖像画の女性は俺に目線を合わせると絵画から出てきた。
 半透明の姿。透明感のある肌じゃなくて実際に向こう側がうっすらと見える半透明さ。重さがなさそうにふんわりと床に立つ。

「おかえりなさい、ご主人様。何か御用ですか?」
「留守中に何か変わったことはあったか?」
「特に何もありませんが、なぜそれをわざわざ私に聞くのですか? 先ほどのメイドに聞けばよろしかったのでは?」

 マリーヌは不思議そうに尋ねる。

「メイさんとノアールの親子の時間を邪魔したくなかったし、何よりもそのメイさんにおかしな動きはなかったか聞きたいのだが」
「あのメイドのことですか? 誰もいないこの屋敷を朝から晩までずっと掃除をしていましたわ。使ってもいないベッドのシーツを洗ったり、壊れている椅子やドアも綺麗に直したり、通常三、四人でやることを一人で休みなくやっていましたわ。その働きっぷりと言ったら、驚くほどでした」

 マリーヌは目を大きく開けて、驚きの声を上げた。

「いやいや、俺が聞きたいのはそういうことじゃないんだ。俺がいない間に、ここに誰が訪ねてこなかったか? 王国側の人間とか」

 首輪を外せるといった時のメイの反応が気になった。水の勇者はヤマタノオロチを退治するためにガルド村に来たタイミング、ノラリス軍がアルパカ領への侵攻も早かった。ノアールが王国とつながっているとは考えづらい。ノラリス軍侵攻の時にアイリーンが裏切る様子もなかった。王国軍のあまりにもタイミングの良さに、メイが王国に情報を流している可能性があるのではないかと疑っている。本当は疑いたくもないのだが。

「特にありませんね。食料などの買い出しに行っているときはわかりませんが、特に怪しい動きはなかったです」
「……そうか、ありがとう」

 俺の考えが杞憂に終わればいいのだが、そんな願いと共に俺たちは再び魔王城を訪れることにしたのだった。
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