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第19話 異世界のポンプのエネルギー
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モーターが勢いよく回り始めた。
「なにも起こらないわよ」
「ちょっと待っていろ」
ノアールの疑問に、俺がそう言うが早いか、ポンプから勢いよく水が吹き上がった。
「よし、これで魔力をもつ者が一人いたら水問題は解決だろう。このポンプから配管をつないで、水を村と畑に回せば村人の負担も減って、農作業もできるだろう。必要だったら、ポンプはまだ作れるからな」
俺は村長を見ると口を開けてびっくりしていた。
ノアールもネーラも同じ顔をしていた。
「おーい。三人とも、俺の話を聞いているか?」
「あ、すまん、すまん。確かに、これがあれば水問題は解決だ。水くみの時間が減った分、畑の開墾に人手を回せる。なんとかしてみよう」
「分かってくれましたか。村長」
村長とノアールが仲直りをしている時、俺たちを非難する声が聞こえた。
「なんだ、これは! 高貴な私に水をかけるなんて!」
その声は上から聞こえてきた。俺は上の道路の方を見ると、男が馬に乗ったままこちらを見ていた。
そして同じようにその男を見た村長が、声を上げた。
「げっ!」
「村長、知り合いか?」
それまで喜びに満ちていた顔が、一瞬にして苦虫を潰したような顔に変わる。
「ええ、ここアルパカ領主……いや、元領主の税収者だ。儂らから税金を搾り取るだけ搾り取って、儂らに何にも残さない最悪の輩じゃ」
「そうか」
俺は垂れ目の税収者の方を向き直った。
「おーい。悪かったな。そんなところに人がいたなんて、思わなかったからな」
「貴様、高貴な私のそんな下から話をするのは見上げた心持ちだが、あまりにも遠い。ここに来て、金と土下座を持って許しを請うべきだ。そうしなければ、この村の税金をこれまでの三割増しにする。まあ、土下座をしたとしても高貴な私に水をかけた事で二割増しは決定だがな」
金色の長い髪を後ろにまとめた男は、意地悪そうにそう言った。
ああ、こういう奴か。俺は村長が行った言葉を理解した。
元領主の使いの者。つまりは現王国からの独立した俺たちにとって敵対する存在。つまり、ここから追い出すべき存在。
俺はとりあえず、税収者と話し合いをするために川の上の道路に移動する。まあ、道路を歩いていて急に水をかけられたら、俺も怒るだろう。お帰り願うにしても、そこは謝っておくべきだろう。
「すみませんね。水をかけて」
俺は馬上の男に素直に頭を下げる。
男の後ろには護衛らしく防具を着けた剣士が二人、同じように馬に乗っていた。
「お前は私の言葉が聞こえていなかったのか? 下賤な者。私は土下座と言ったのですよ」
嫌みったらしく、傲慢に言い放った男の言葉にネーラがかみついた。
「あんた、マモルに何を言っているニャ」
「あなたはなにを……お、お前は魔族! なんでこんな所に! お前達、こいつを殺せ!」
あ、忘れていた。ネーラは人間に敵対する魔族だった。この村では俺の仲間だったため、特に周りから敵意を向けられることがなかったから、すっかり忘れていた。
馬に乗ったまま、剣士達は抜刀して、ネーラに襲いかかる。
「ちょっと待て、って言っても聞かないか。蒸着!」
俺はコンバットスーツを装着すると剣士二人を殴り飛ばした。縦にくるくる回りながら飛んでいく二人の剣士。
「大丈夫か? ネーラ?」
「マモル、ありがとうニャ」
「お、この馬、良い馬じゃないのか? もらっておこうぜ。家とここを行き来するのに馬があった方が便利だろう」
「そうニャ。何かと便利だニャ」
「き、きさま!」
俺とネーラが残った馬のことを穏やかに話し合っていると一人残った税収者が俺たちに叫んだ。
「ああ、あんた。まだいたんだ。それで、なんだったけ?」
「私は領主の代行者にて税を徴収する高貴なる者。貴様ら下郎が、簡単に話をしていい存在じゃないぞ! 村長! この無礼な輩のクビを跳ねろ! さもなくば、今年の税金は倍にするぞ」
男は自ら俺をどうしようとするのではなく、村長の力を借りようとする。先ほども吹き飛ばされた剣士にやらせろうとしただけだった。つまり、こいつ自身なんの力も無い。
「おい、このネーラもこの村も、俺の仲間だ。帰って領主に伝えろ。この村はもう、お前達に税金を払うつもりはない!」
「貴様、そんなことで引き下がれるか。私がただの税収者だと思うな! アグ、レル、ト、来たれアング、レミ、ローダン!!」
男の手のひらには炎の玉が現れた。
「あんた、魔法使いか?」
「ふふふ、今更、泣いて命乞いをしても無駄だぞ。骨の髄まで焼き尽くせ~~~!!!」
男は炎の玉を俺に投げつけてきた。子供のキャッチボールくらいの速度で。
その炎の玉を俺は左手で受け取り、吸収する。
ナイスキャッチ!
『エネルギー充填率972%』
エネルギー上昇率0%か。なんだ、こいつの魔法は弱くないか?
まあいいか……あ! そうだ、貴重な魔法使い。こいつを使わない手はない。
「な、なんだ、貴様は……ゲッフ!」
俺はパンチ一発、腹にたたき込んで気絶をさせる。
「村長、ポンプの動力を確保したぞ。生かさず殺さず、上手く搾り取ってくれ」
こうして、俺たちは村の水問題を一気に解決したのだった。
「なにも起こらないわよ」
「ちょっと待っていろ」
ノアールの疑問に、俺がそう言うが早いか、ポンプから勢いよく水が吹き上がった。
「よし、これで魔力をもつ者が一人いたら水問題は解決だろう。このポンプから配管をつないで、水を村と畑に回せば村人の負担も減って、農作業もできるだろう。必要だったら、ポンプはまだ作れるからな」
俺は村長を見ると口を開けてびっくりしていた。
ノアールもネーラも同じ顔をしていた。
「おーい。三人とも、俺の話を聞いているか?」
「あ、すまん、すまん。確かに、これがあれば水問題は解決だ。水くみの時間が減った分、畑の開墾に人手を回せる。なんとかしてみよう」
「分かってくれましたか。村長」
村長とノアールが仲直りをしている時、俺たちを非難する声が聞こえた。
「なんだ、これは! 高貴な私に水をかけるなんて!」
その声は上から聞こえてきた。俺は上の道路の方を見ると、男が馬に乗ったままこちらを見ていた。
そして同じようにその男を見た村長が、声を上げた。
「げっ!」
「村長、知り合いか?」
それまで喜びに満ちていた顔が、一瞬にして苦虫を潰したような顔に変わる。
「ええ、ここアルパカ領主……いや、元領主の税収者だ。儂らから税金を搾り取るだけ搾り取って、儂らに何にも残さない最悪の輩じゃ」
「そうか」
俺は垂れ目の税収者の方を向き直った。
「おーい。悪かったな。そんなところに人がいたなんて、思わなかったからな」
「貴様、高貴な私のそんな下から話をするのは見上げた心持ちだが、あまりにも遠い。ここに来て、金と土下座を持って許しを請うべきだ。そうしなければ、この村の税金をこれまでの三割増しにする。まあ、土下座をしたとしても高貴な私に水をかけた事で二割増しは決定だがな」
金色の長い髪を後ろにまとめた男は、意地悪そうにそう言った。
ああ、こういう奴か。俺は村長が行った言葉を理解した。
元領主の使いの者。つまりは現王国からの独立した俺たちにとって敵対する存在。つまり、ここから追い出すべき存在。
俺はとりあえず、税収者と話し合いをするために川の上の道路に移動する。まあ、道路を歩いていて急に水をかけられたら、俺も怒るだろう。お帰り願うにしても、そこは謝っておくべきだろう。
「すみませんね。水をかけて」
俺は馬上の男に素直に頭を下げる。
男の後ろには護衛らしく防具を着けた剣士が二人、同じように馬に乗っていた。
「お前は私の言葉が聞こえていなかったのか? 下賤な者。私は土下座と言ったのですよ」
嫌みったらしく、傲慢に言い放った男の言葉にネーラがかみついた。
「あんた、マモルに何を言っているニャ」
「あなたはなにを……お、お前は魔族! なんでこんな所に! お前達、こいつを殺せ!」
あ、忘れていた。ネーラは人間に敵対する魔族だった。この村では俺の仲間だったため、特に周りから敵意を向けられることがなかったから、すっかり忘れていた。
馬に乗ったまま、剣士達は抜刀して、ネーラに襲いかかる。
「ちょっと待て、って言っても聞かないか。蒸着!」
俺はコンバットスーツを装着すると剣士二人を殴り飛ばした。縦にくるくる回りながら飛んでいく二人の剣士。
「大丈夫か? ネーラ?」
「マモル、ありがとうニャ」
「お、この馬、良い馬じゃないのか? もらっておこうぜ。家とここを行き来するのに馬があった方が便利だろう」
「そうニャ。何かと便利だニャ」
「き、きさま!」
俺とネーラが残った馬のことを穏やかに話し合っていると一人残った税収者が俺たちに叫んだ。
「ああ、あんた。まだいたんだ。それで、なんだったけ?」
「私は領主の代行者にて税を徴収する高貴なる者。貴様ら下郎が、簡単に話をしていい存在じゃないぞ! 村長! この無礼な輩のクビを跳ねろ! さもなくば、今年の税金は倍にするぞ」
男は自ら俺をどうしようとするのではなく、村長の力を借りようとする。先ほども吹き飛ばされた剣士にやらせろうとしただけだった。つまり、こいつ自身なんの力も無い。
「おい、このネーラもこの村も、俺の仲間だ。帰って領主に伝えろ。この村はもう、お前達に税金を払うつもりはない!」
「貴様、そんなことで引き下がれるか。私がただの税収者だと思うな! アグ、レル、ト、来たれアング、レミ、ローダン!!」
男の手のひらには炎の玉が現れた。
「あんた、魔法使いか?」
「ふふふ、今更、泣いて命乞いをしても無駄だぞ。骨の髄まで焼き尽くせ~~~!!!」
男は炎の玉を俺に投げつけてきた。子供のキャッチボールくらいの速度で。
その炎の玉を俺は左手で受け取り、吸収する。
ナイスキャッチ!
『エネルギー充填率972%』
エネルギー上昇率0%か。なんだ、こいつの魔法は弱くないか?
まあいいか……あ! そうだ、貴重な魔法使い。こいつを使わない手はない。
「な、なんだ、貴様は……ゲッフ!」
俺はパンチ一発、腹にたたき込んで気絶をさせる。
「村長、ポンプの動力を確保したぞ。生かさず殺さず、上手く搾り取ってくれ」
こうして、俺たちは村の水問題を一気に解決したのだった。
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