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第6話 異世界の挨拶はスキルに弓矢かよ!
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街の中央広場の大きな台上に、ギロチンが一つ置かれていた。
そこに黒髪に眼鏡の女性がすでに取り付けられて、大きな刃がその首と手首を落とそうと待ち構えていたのだった。
その周りには見学の民衆が多数集まって、ギロチンショーを今か今かと待ち構えていた。
俺たちは時計台からその広場を見下ろしていた。
「これより、闇の王女ノアール・ローヤルの断罪裁判を行う。ノアール王女をここへ!」
裁判官であろうジジイが高らかに宣言すると、全身を鎧に身を包んだ屈強な男に両脇を固められた幼女ノアールがギロチンの側に連れてこられる。昨夜着ていた綺麗なゴスロリ服ではではなく、惨めで薄汚れたワンピース型の奴隷服に身を包んでいた。首と手足は鎖でつながれ、両脇の鎧を身に着けた男たちに引きずられるように現れた。
ノアールが現れると共に民衆から声が上がる!
「殺せ!」
「魔族との混血なんて殺してしまえ!」
その声は決してノアールに好意的な声ではない。いや、はっきりと悪意を持った声ばかりだった。
「このノアール王女は勇者召喚の儀式において失敗するならばまだしも、悪魔を召喚した上、勇者様一人に重傷を負わせて、国王陛下を危険にさらしたのだ~!」
「なんだと~!」
「我らが愛する国王陛下を~!」
「我らが希望の勇者を重傷にだと!」
「この魔族め~!」
裁判官の言葉に民衆はますますヒートアップして罵詈雑言をノアールに浴びせかける。
「その上、ノアール王女は卑怯にもそのことを頑なに認めようとしない! そこで我々はここに一人の証人を準備した。ノアール王女付きのメイドである。さあ、メイドよ。正しくノアール王女が悪魔を召喚したことを証言すれば、そこから解放してやろう」
裁判官はギロチンにかけられたメイに問いかける。
「ノアール王女は正しく勇者召喚を行いました。決して悪魔など召喚していません」
「ああ、民衆よ、聞きましたか。かわいそうにこのメイドは悪魔に取り憑かれています。さあ、ノアール王女よ、罪を認めなさい。罪を認めるならば、あなただけでなく、このメイドの魂も救われるでしょう」
裁判官は嘆きながら、ノアールへ問いかける。
「なあ、ネーラ。なんであの裁判官って人の話を聞かないんだ? あの国王や勇者もそうだったのだが、この世界の人間って人の話を聞かないのか?」
「そうかもしれませんニャ。再三、魔王様から会談を申し込んでいるのですが、とりつく島もないですニャ」
「やっぱりそうか。なんか民衆も聞きたいことしか聞かない感じだな。国王が国王なら、国民も国民だな」
広場が見渡せる高い時計台の上で、俺がネーラと話していると、考え込んでいたノアールが答えたところだった。
「……わたくしが……悪魔を召喚しました……さあ! メイを解放してください」
「姫様!」
王女であるはずのノアールが、血を吐くように嘘の告白をさせられる。ただ、メイド一人を助けるために。
「お、これでメイさんは助かるか?」
「……」
俺の言葉にネーラは何を言わない。黙って状況を見ていろと言わんばかりに。
「さあ、皆さん聞きましたか。ノアール王女、いや逆賊ノアールは国王の命を狙うために悪魔を召喚したと告白した! これは許させることではない! この罪は死を持って償うほか手はないのです。さあ、ギロチンをこちらへ!」
広場の陰に隠されていた、もう一つのギロチンが広場の台に設置し始める。
「どういうことですか! メイを解放してください。わたくしを処刑するのであれば、メイを解放したあのギロチンでいいでしょう!」
「あなたは何を言っているのですか? 私の話を聞いていましたか? あのメイドは悪魔に取り憑かれているのですよ。そしてあなたは悪魔を召喚した張本人。二人ともこの聖なるギロチンで魂を救済するほか方法はないのですよ」
「わたしはどうなってもかまいません。姫様を助けてください!」
ノアールとメイの二人はお互いにかばい合うように、裁判官の男に懇願する。
「おい、これって何がどうなっても二人はギロチンにかけられる流れじゃないのか?」
「そうだニャ。だから言ったニャ。闇の王女は処刑だって。だったら、闇の王女に関わる者もみんな処刑だニャ。まあ、もともと闇の王女に関わる者ってあのメイドしかいないけどニャ」
「ふざけるな! 俺のメイさんを助けに行く! ネーラは後の段取りを任せたぞ」
俺は十メートルはある時計台からギロチンに向かってジャンプをする。
「蒸着!」
俺はコンバットスーツを身につけると、メイが捕らわれているギロチンにキックをかます。
刃は砕け散り、それを支えている柱を真っ二つにしながら、台の上に降り立つ。
「な、何者! あ、悪魔!!」
裁判官の言葉にメイとノアールのギロチンショーを楽しみにしていた民衆に悲鳴が上がる。
俺はそれを無視してメイを拘束しているギロチンと鎖をレーザーブレードで外すと、メイを担ぎ上げる。
後はこのまま逃げて、ネーラと合流して、例の川下の小屋へ行くだけだ。
「ちょっとまってください、勇者様。姫様を、姫様を助けてください。わたしのことよりも姫様を助けてください!」
「へ!?」
俺の肩でメイが叫ぶ。
「お願いします。私ができることなら何でもしますので、姫様を助けてください」
俺がノアールを見ると、鎧を身に着けた屈強な騎士の向こうで、黒髪の少女は小さく首を横に振る。逃げて……と。
「助けたら、何でもするのか?」
「はい! お願いします。あの子は私の全てなのです!」
「分かった。約束だ。ネーラ!」
「はーいニャ!!」
俺の言葉に、空から強襲する影が一つ。飛竜に乗ったネーラが空から急降下してくる。
飛竜とは人が乗れるほどのトカゲの背中に巨大な翼をもつ、空飛ぶ恐竜と言うべき存在。
俺はメイを放り投げると、飛竜に乗ったままネーラが受け止める。
「命が惜しければ、どけ!」
鎧騎士は剣を抜き、俺の進路を妨害するように立っていた。
「うぉー!」
男たちは俺の忠告を無視して、襲いかかってくる。
ただの鉄の剣。避けるまでもないが、早くこの場から離脱したかった。
俺は踏み込むと鎧ごと二人を吹き飛ばす。民衆を巻き込みながら転がる二人。逃げ惑い、悲鳴を上げる民衆たち。
道はできた。
あとはノアールを連れて逃げるだけだ。
そのノアールが俺を指さす。
「危ない!」
「流水双覇剣!」
俺は背中に二つの強烈な衝撃を受けて、膝をつく。
『ダメージ大! 修復にエネルギーを回しますか?』
「修復後のエネルギー残量は?」
『およそ四十%』
「修復してくれ」
ナビちゃんとそんなやりとりをしながら、振り向くとそこには深い湖を思わせる髪。凛とした顔立ちの男が剣を手にこちらに向かっていた。
昨夜、俺に剣を突き立てた剣の勇者だった。
「ナビちゃん、盾出して」
『全面シールドと部分シールドがありますが、どちらを選択しますか?』
全面シールドにするとエネルギー消費が激しいだろう。
「部分シールドで」
『オッケー、マスター!』
ナビちゃんの言葉と共に俺の左手にシャボン玉のような薄い膜の盾が現れ、勇者の剣をはじく。
「なんだ、お前は!」
「僕の名はランスロット・サーライオン。名誉あるサーライオン家の跡取りにして、水の勇者だ! 貴様のような偽物とは違うのだよ!」
ご丁寧に自己紹介をしてくれる水の勇者ランスロット。
その間にレーザーブレードを抜くと、ランスロットはひとっ飛び距離を取った。
「受けてみろ! 必殺の~~~~!!!」
俺が叫ぶとランスロットは身構えてさらに距離を取る。
それを見た俺はノアールの所まで後ろに下がりながら、レーザーブレードを天高くかかげる。
「目をつむれ」
「え!」
俺は小声でノアールに指示する。
「猫だまし!」
コンバットスーツが一瞬最大光量で光る。その瞬間俺はレーザーブレードで鎖を外すと、ノアールを肩に担ぐと一目散に走り始めた。
「ナビちゃん。近い順から他の勇者の索敵をしてくれ」
『水の勇者三百メートル、土の勇者千五百メートル、火の勇者四千メートル』
土の勇者は王宮か? 火の勇者はどこに行っているんだ? まあ、いい。それよりも弓使いである風の勇者は?
『風の勇者索敵不可能』
「索敵不可能? 索敵範囲外って言うことか?」
『不明』
その時だったヒューと笛のような音が近づいてきた。
俺が走る側面方向から、俺の速度に合わせて放たれた矢をシールドではじく。
俺に気がつくように音が鳴る鏑矢。武士の時代に合戦の開始の合図に使われた矢。そもそも、人に当てるため矢ではない。
それを馬よりも速い速度で走る俺に横から当てに来る。
つまりはいつでも俺に矢を当てられるが、今回は挨拶代わりだと言っているようだ。
しかし火の勇者が四キロ先で索敵できている。それ以上離れても狙えるのか、それほど遠くない所にいるにも関わらず索敵できないのか。どちらにしても、あの四人の勇者の中で一番気をつけなければならないのは、風の勇者か。
俺は若葉色の長い髪をポニーテールにまとめた細身の勇者を思い出す。
見た目だけなら俺よりも弱そうな勇者。しかしレベルは、あの筋肉スキンヘッドの次に高い。
「人は見た目によらない……か。俺の敵ならば、真っ先に倒しておかないとな」
「何か言いましたか?」
俺のつぶやきにノアールが反応する。
「何でもない。しっかり掴まっていろよ」
俺は追っ手が来ていないか気をつけながら、合流地点の小屋へ向かうと、ネーラとメイはすでに到着していた。
そこに黒髪に眼鏡の女性がすでに取り付けられて、大きな刃がその首と手首を落とそうと待ち構えていたのだった。
その周りには見学の民衆が多数集まって、ギロチンショーを今か今かと待ち構えていた。
俺たちは時計台からその広場を見下ろしていた。
「これより、闇の王女ノアール・ローヤルの断罪裁判を行う。ノアール王女をここへ!」
裁判官であろうジジイが高らかに宣言すると、全身を鎧に身を包んだ屈強な男に両脇を固められた幼女ノアールがギロチンの側に連れてこられる。昨夜着ていた綺麗なゴスロリ服ではではなく、惨めで薄汚れたワンピース型の奴隷服に身を包んでいた。首と手足は鎖でつながれ、両脇の鎧を身に着けた男たちに引きずられるように現れた。
ノアールが現れると共に民衆から声が上がる!
「殺せ!」
「魔族との混血なんて殺してしまえ!」
その声は決してノアールに好意的な声ではない。いや、はっきりと悪意を持った声ばかりだった。
「このノアール王女は勇者召喚の儀式において失敗するならばまだしも、悪魔を召喚した上、勇者様一人に重傷を負わせて、国王陛下を危険にさらしたのだ~!」
「なんだと~!」
「我らが愛する国王陛下を~!」
「我らが希望の勇者を重傷にだと!」
「この魔族め~!」
裁判官の言葉に民衆はますますヒートアップして罵詈雑言をノアールに浴びせかける。
「その上、ノアール王女は卑怯にもそのことを頑なに認めようとしない! そこで我々はここに一人の証人を準備した。ノアール王女付きのメイドである。さあ、メイドよ。正しくノアール王女が悪魔を召喚したことを証言すれば、そこから解放してやろう」
裁判官はギロチンにかけられたメイに問いかける。
「ノアール王女は正しく勇者召喚を行いました。決して悪魔など召喚していません」
「ああ、民衆よ、聞きましたか。かわいそうにこのメイドは悪魔に取り憑かれています。さあ、ノアール王女よ、罪を認めなさい。罪を認めるならば、あなただけでなく、このメイドの魂も救われるでしょう」
裁判官は嘆きながら、ノアールへ問いかける。
「なあ、ネーラ。なんであの裁判官って人の話を聞かないんだ? あの国王や勇者もそうだったのだが、この世界の人間って人の話を聞かないのか?」
「そうかもしれませんニャ。再三、魔王様から会談を申し込んでいるのですが、とりつく島もないですニャ」
「やっぱりそうか。なんか民衆も聞きたいことしか聞かない感じだな。国王が国王なら、国民も国民だな」
広場が見渡せる高い時計台の上で、俺がネーラと話していると、考え込んでいたノアールが答えたところだった。
「……わたくしが……悪魔を召喚しました……さあ! メイを解放してください」
「姫様!」
王女であるはずのノアールが、血を吐くように嘘の告白をさせられる。ただ、メイド一人を助けるために。
「お、これでメイさんは助かるか?」
「……」
俺の言葉にネーラは何を言わない。黙って状況を見ていろと言わんばかりに。
「さあ、皆さん聞きましたか。ノアール王女、いや逆賊ノアールは国王の命を狙うために悪魔を召喚したと告白した! これは許させることではない! この罪は死を持って償うほか手はないのです。さあ、ギロチンをこちらへ!」
広場の陰に隠されていた、もう一つのギロチンが広場の台に設置し始める。
「どういうことですか! メイを解放してください。わたくしを処刑するのであれば、メイを解放したあのギロチンでいいでしょう!」
「あなたは何を言っているのですか? 私の話を聞いていましたか? あのメイドは悪魔に取り憑かれているのですよ。そしてあなたは悪魔を召喚した張本人。二人ともこの聖なるギロチンで魂を救済するほか方法はないのですよ」
「わたしはどうなってもかまいません。姫様を助けてください!」
ノアールとメイの二人はお互いにかばい合うように、裁判官の男に懇願する。
「おい、これって何がどうなっても二人はギロチンにかけられる流れじゃないのか?」
「そうだニャ。だから言ったニャ。闇の王女は処刑だって。だったら、闇の王女に関わる者もみんな処刑だニャ。まあ、もともと闇の王女に関わる者ってあのメイドしかいないけどニャ」
「ふざけるな! 俺のメイさんを助けに行く! ネーラは後の段取りを任せたぞ」
俺は十メートルはある時計台からギロチンに向かってジャンプをする。
「蒸着!」
俺はコンバットスーツを身につけると、メイが捕らわれているギロチンにキックをかます。
刃は砕け散り、それを支えている柱を真っ二つにしながら、台の上に降り立つ。
「な、何者! あ、悪魔!!」
裁判官の言葉にメイとノアールのギロチンショーを楽しみにしていた民衆に悲鳴が上がる。
俺はそれを無視してメイを拘束しているギロチンと鎖をレーザーブレードで外すと、メイを担ぎ上げる。
後はこのまま逃げて、ネーラと合流して、例の川下の小屋へ行くだけだ。
「ちょっとまってください、勇者様。姫様を、姫様を助けてください。わたしのことよりも姫様を助けてください!」
「へ!?」
俺の肩でメイが叫ぶ。
「お願いします。私ができることなら何でもしますので、姫様を助けてください」
俺がノアールを見ると、鎧を身に着けた屈強な騎士の向こうで、黒髪の少女は小さく首を横に振る。逃げて……と。
「助けたら、何でもするのか?」
「はい! お願いします。あの子は私の全てなのです!」
「分かった。約束だ。ネーラ!」
「はーいニャ!!」
俺の言葉に、空から強襲する影が一つ。飛竜に乗ったネーラが空から急降下してくる。
飛竜とは人が乗れるほどのトカゲの背中に巨大な翼をもつ、空飛ぶ恐竜と言うべき存在。
俺はメイを放り投げると、飛竜に乗ったままネーラが受け止める。
「命が惜しければ、どけ!」
鎧騎士は剣を抜き、俺の進路を妨害するように立っていた。
「うぉー!」
男たちは俺の忠告を無視して、襲いかかってくる。
ただの鉄の剣。避けるまでもないが、早くこの場から離脱したかった。
俺は踏み込むと鎧ごと二人を吹き飛ばす。民衆を巻き込みながら転がる二人。逃げ惑い、悲鳴を上げる民衆たち。
道はできた。
あとはノアールを連れて逃げるだけだ。
そのノアールが俺を指さす。
「危ない!」
「流水双覇剣!」
俺は背中に二つの強烈な衝撃を受けて、膝をつく。
『ダメージ大! 修復にエネルギーを回しますか?』
「修復後のエネルギー残量は?」
『およそ四十%』
「修復してくれ」
ナビちゃんとそんなやりとりをしながら、振り向くとそこには深い湖を思わせる髪。凛とした顔立ちの男が剣を手にこちらに向かっていた。
昨夜、俺に剣を突き立てた剣の勇者だった。
「ナビちゃん、盾出して」
『全面シールドと部分シールドがありますが、どちらを選択しますか?』
全面シールドにするとエネルギー消費が激しいだろう。
「部分シールドで」
『オッケー、マスター!』
ナビちゃんの言葉と共に俺の左手にシャボン玉のような薄い膜の盾が現れ、勇者の剣をはじく。
「なんだ、お前は!」
「僕の名はランスロット・サーライオン。名誉あるサーライオン家の跡取りにして、水の勇者だ! 貴様のような偽物とは違うのだよ!」
ご丁寧に自己紹介をしてくれる水の勇者ランスロット。
その間にレーザーブレードを抜くと、ランスロットはひとっ飛び距離を取った。
「受けてみろ! 必殺の~~~~!!!」
俺が叫ぶとランスロットは身構えてさらに距離を取る。
それを見た俺はノアールの所まで後ろに下がりながら、レーザーブレードを天高くかかげる。
「目をつむれ」
「え!」
俺は小声でノアールに指示する。
「猫だまし!」
コンバットスーツが一瞬最大光量で光る。その瞬間俺はレーザーブレードで鎖を外すと、ノアールを肩に担ぐと一目散に走り始めた。
「ナビちゃん。近い順から他の勇者の索敵をしてくれ」
『水の勇者三百メートル、土の勇者千五百メートル、火の勇者四千メートル』
土の勇者は王宮か? 火の勇者はどこに行っているんだ? まあ、いい。それよりも弓使いである風の勇者は?
『風の勇者索敵不可能』
「索敵不可能? 索敵範囲外って言うことか?」
『不明』
その時だったヒューと笛のような音が近づいてきた。
俺が走る側面方向から、俺の速度に合わせて放たれた矢をシールドではじく。
俺に気がつくように音が鳴る鏑矢。武士の時代に合戦の開始の合図に使われた矢。そもそも、人に当てるため矢ではない。
それを馬よりも速い速度で走る俺に横から当てに来る。
つまりはいつでも俺に矢を当てられるが、今回は挨拶代わりだと言っているようだ。
しかし火の勇者が四キロ先で索敵できている。それ以上離れても狙えるのか、それほど遠くない所にいるにも関わらず索敵できないのか。どちらにしても、あの四人の勇者の中で一番気をつけなければならないのは、風の勇者か。
俺は若葉色の長い髪をポニーテールにまとめた細身の勇者を思い出す。
見た目だけなら俺よりも弱そうな勇者。しかしレベルは、あの筋肉スキンヘッドの次に高い。
「人は見た目によらない……か。俺の敵ならば、真っ先に倒しておかないとな」
「何か言いましたか?」
俺のつぶやきにノアールが反応する。
「何でもない。しっかり掴まっていろよ」
俺は追っ手が来ていないか気をつけながら、合流地点の小屋へ向かうと、ネーラとメイはすでに到着していた。
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