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第29話 可憐なカミーユ
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「さあ、毒も傷も大丈夫だ。お、意識も戻ったか?」
ガドランドに治療されていた可憐な回復術師はうっすらと、目を開ける。
「おじさまが助けてくださったのね。ありがとうございます」
「よし、大丈夫だな。安静にしてろ」
「はい」
アマンダは驚いた。ガドランドを初めて見て、悲鳴をあげない女性がこの世に存在するなんて。経験豊かな冒険者はやはり違うのだろうか? そんな疑問と何やら、もやっとした気持ちを胸に秘めて手当を続けた。
「親父。こっち、お願い」
クリスは片腕がちぎれかかっていた女魔法使いの腕の表面だけ取り付けて、出血を抑えていた。
「よくやった。ここまでやったら、動かせるようにつないでやる」
ガドランドが気絶している女魔法使いを治療している間に、ロレンツとウェインは残ったデミレオポルドを片付けていた。
「おっさん、終わったぞ」
「こっちも、もうすぐ終わる。よし! これで終了だ」
「親父、終わった」
腕を折られた女戦士の治療を終えたクリスも声をかける。
「きゃー!」
目を覚ました女魔法使いがガドランドの顔を見て悲鳴を上げる。その声を聞いて、治療を受けていた女戦士が剣を抜いて、ガドランドを威嚇する。
「キサマ! 何をした!」
その声を聞いてアマンダはなぜかホッとした。それが普通の反応だと。そしてガドランドをかばおうとした時に、別のところから声が上がった。
「ミレイ、おじさまたちはわたくしたちを治療してくださったのよ。モリエも剣を下ろしなさい」
可憐な回復術師はガドランドをかばうように仲間を叱咤する。
「え! あ、ありがとうございます」
「わかったわ、カミーユ……助けていただいたのに、悲鳴をあげてしまって、すみませんでした」
「いや、死者がでなくてよかった。お前ら、ここで休憩するぞ。ルカ、準備してくれ。アマンダさん、手伝ってもらっていいですか?」
「あ、はい!」
アマンダは出遅れたところに、ガドランドから声をかけられて、動揺する。
なぜか、あの回復術師に対して引っかかるものを感じながら、食事の準備をしていた。
総勢十一人という大所帯となった一団は、食事をしながら情報交換を始めた。
モリエと呼ばれた最後まで戦った女戦士はウェインに、ミレイと呼ばれた女魔法使いはクリスにべったりとくっついていた。ほかの二人もそれぞれ、ロレンツとルカにくっついていた。先程まで全滅の危機に陥っていたとは思えない風景だった。そしてカミーユと呼ばれた、荒くれ者の多い冒険者とは思えない可憐な回復術師は、ガドランドにもたれかかっていた。
「ちょ、ちょっと離れてもらえないか?」
「ごめんなさい、おじさま。まだ少し辛いの……このままでもいいですか? それともわたくしのことお嫌い?」
「いや、そういうわけではないが……」
そう言って断りきらないガドランドの姿を見て、イライラとした気持ちが湧き出るのを感じるアマンダだった。いや、彼はただ、目的を果たすために利用しているだけで、何をしようと自分には関係ない。そう、自分に言い聞かせながら。
そんなアマンダの気持ちに気がつかないのか、ガドランドは普通に可憐な回復術士カミーユに話しかける。
「それよりも、モンスターの奇襲を受けたと聞いたんだが、その時の状況を詳しく教えてくれないか?」
「いいですわよ。初めにこの広場に入ったときは何もなかったのです。こんなに広いのですから何かあるのかとカーラが言い始めて、壁を調べ始めたのです。その間、モリエとトラミは入り口を見張っていました。わたくしとミレイがカーラの手伝いをしていたら、突然背中に痛みを感じて、そのまま気絶をしてしまったのです。次に目を覚ました時には、王子様が目の前に……きゃっ」
自分の言葉に真っ赤になって照れるカミーユは両手で顔を隠してしまう。
その姿を見たアマンダは、若く可愛らしい女の子の仕草だと感心してしまう。
ガドランドに治療されていた可憐な回復術師はうっすらと、目を開ける。
「おじさまが助けてくださったのね。ありがとうございます」
「よし、大丈夫だな。安静にしてろ」
「はい」
アマンダは驚いた。ガドランドを初めて見て、悲鳴をあげない女性がこの世に存在するなんて。経験豊かな冒険者はやはり違うのだろうか? そんな疑問と何やら、もやっとした気持ちを胸に秘めて手当を続けた。
「親父。こっち、お願い」
クリスは片腕がちぎれかかっていた女魔法使いの腕の表面だけ取り付けて、出血を抑えていた。
「よくやった。ここまでやったら、動かせるようにつないでやる」
ガドランドが気絶している女魔法使いを治療している間に、ロレンツとウェインは残ったデミレオポルドを片付けていた。
「おっさん、終わったぞ」
「こっちも、もうすぐ終わる。よし! これで終了だ」
「親父、終わった」
腕を折られた女戦士の治療を終えたクリスも声をかける。
「きゃー!」
目を覚ました女魔法使いがガドランドの顔を見て悲鳴を上げる。その声を聞いて、治療を受けていた女戦士が剣を抜いて、ガドランドを威嚇する。
「キサマ! 何をした!」
その声を聞いてアマンダはなぜかホッとした。それが普通の反応だと。そしてガドランドをかばおうとした時に、別のところから声が上がった。
「ミレイ、おじさまたちはわたくしたちを治療してくださったのよ。モリエも剣を下ろしなさい」
可憐な回復術師はガドランドをかばうように仲間を叱咤する。
「え! あ、ありがとうございます」
「わかったわ、カミーユ……助けていただいたのに、悲鳴をあげてしまって、すみませんでした」
「いや、死者がでなくてよかった。お前ら、ここで休憩するぞ。ルカ、準備してくれ。アマンダさん、手伝ってもらっていいですか?」
「あ、はい!」
アマンダは出遅れたところに、ガドランドから声をかけられて、動揺する。
なぜか、あの回復術師に対して引っかかるものを感じながら、食事の準備をしていた。
総勢十一人という大所帯となった一団は、食事をしながら情報交換を始めた。
モリエと呼ばれた最後まで戦った女戦士はウェインに、ミレイと呼ばれた女魔法使いはクリスにべったりとくっついていた。ほかの二人もそれぞれ、ロレンツとルカにくっついていた。先程まで全滅の危機に陥っていたとは思えない風景だった。そしてカミーユと呼ばれた、荒くれ者の多い冒険者とは思えない可憐な回復術師は、ガドランドにもたれかかっていた。
「ちょ、ちょっと離れてもらえないか?」
「ごめんなさい、おじさま。まだ少し辛いの……このままでもいいですか? それともわたくしのことお嫌い?」
「いや、そういうわけではないが……」
そう言って断りきらないガドランドの姿を見て、イライラとした気持ちが湧き出るのを感じるアマンダだった。いや、彼はただ、目的を果たすために利用しているだけで、何をしようと自分には関係ない。そう、自分に言い聞かせながら。
そんなアマンダの気持ちに気がつかないのか、ガドランドは普通に可憐な回復術士カミーユに話しかける。
「それよりも、モンスターの奇襲を受けたと聞いたんだが、その時の状況を詳しく教えてくれないか?」
「いいですわよ。初めにこの広場に入ったときは何もなかったのです。こんなに広いのですから何かあるのかとカーラが言い始めて、壁を調べ始めたのです。その間、モリエとトラミは入り口を見張っていました。わたくしとミレイがカーラの手伝いをしていたら、突然背中に痛みを感じて、そのまま気絶をしてしまったのです。次に目を覚ました時には、王子様が目の前に……きゃっ」
自分の言葉に真っ赤になって照れるカミーユは両手で顔を隠してしまう。
その姿を見たアマンダは、若く可愛らしい女の子の仕草だと感心してしまう。
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