62 / 116
第二章
第57話 駆け出し冒険者の話し合いの結果
しおりを挟む
「やっと、寝たわよ」
食事の後、みんなでお風呂に入った子供達をエルシーは寝かしつけてた。
小説も書いているエルシーのお話は、外の世界を知らない子供達には刺激的な話だった。そのため、エルシーが来るたびに何度も何度もお話をせがむのだった。
みんなで夕飯を食べた長テーブルにはアイル夫妻と平和の鐘のメンバーが集まっていた。
「大変だったわね。ありがとうね、エルシー。みんな、エルシーが来るの楽しみにしてるのよ」
「みんな元気で良かったわ。あ、そうそう、オルコットちゃん、アレを出してくれる?」
椅子に座り、アイルの淹れたコーヒーを一口飲むと、エルシーはオルコットに預けてあった革袋を渡すようにお願いした。
オルコットは黙って、エルシーが家を出るときに忘れかけていた革袋を渡した。エルシーはそれを受け取るとそっくりそのまま、アイルに渡したのだった。
「アイル姉さん、ワイズ兄さん。これを受け取って」
「エルシー。いつも、ありがとう。でも無理しないでね」
アイルはお礼を言うと、革袋の中のお金を数え始めた。
「今回、臨時収入があったから大丈夫よ。わたしは、みんなが頑張ってくれたおこぼれを貰っただけだから、気にせず使って」
「そうなの。え!? こんなに?」
アイルは思いのほか多いお金に驚いた。これだけあれば、一年は子供達に十分栄養のある食事を食べさせる位の額はあった。
そしてその額にエルシー自身も驚いた。それはエルシーが入れていた額よりも倍以上あったからだ。
「え!? あたし、こんなに入れてなかったけど……あ! オルちゃん!」
革袋のお金をどうにか出来るなら、ここに来るまで革袋を持っていたオルコットにしか出来ないと、エルシーは気が付いた。
でも、今回のオルコットの分を全部入れても、増えた額は多すぎる。
「みんなで、話し合ったの。エル姉ちゃんのお姉ちゃんなら、あたし達にとってもお姉ちゃんみたいな人じゃない。だったら、助け合わなきゃって」
「でも、トリ君もオルちゃんも買いたかった物があったんじゃないの?」
「大丈夫だよ。ちゃんと、自分達の無理のない範囲でっみんなで決めたんだから……それに」
「それに?」
「わたくしたちは家族なんでしょう。お姉様」
そう言う三人をスティーブンはただ静かに微笑んでいた。その様子を見てスティーブンも今回の件に関わっていることは明らかだった。
「みんな……ありがとう」
「エルシー、それは、私から言わせて、みんな本当にありがとう。このお金は大事に使わせて貰うわ」
アイルはエルシーの言葉を遮ってエルシーを含んだ平和の鐘のメンバーにお礼を言った。
その隣でワイズは黙って頭を下げていた。テーブルに小さな水たまりを作りながら。
次の日、オルコットはアイルと一緒に家事をこなし、トリステンはワイズと共に畑仕事に向かった。
スティーブンは朝一、乗り合い馬車に予定変更を伝え、返金交渉と次回の乗合馬車の確認を行った。
そして、エルシーとマリアーヌは子供達の世話をする事になったのだった。
食事の後、みんなでお風呂に入った子供達をエルシーは寝かしつけてた。
小説も書いているエルシーのお話は、外の世界を知らない子供達には刺激的な話だった。そのため、エルシーが来るたびに何度も何度もお話をせがむのだった。
みんなで夕飯を食べた長テーブルにはアイル夫妻と平和の鐘のメンバーが集まっていた。
「大変だったわね。ありがとうね、エルシー。みんな、エルシーが来るの楽しみにしてるのよ」
「みんな元気で良かったわ。あ、そうそう、オルコットちゃん、アレを出してくれる?」
椅子に座り、アイルの淹れたコーヒーを一口飲むと、エルシーはオルコットに預けてあった革袋を渡すようにお願いした。
オルコットは黙って、エルシーが家を出るときに忘れかけていた革袋を渡した。エルシーはそれを受け取るとそっくりそのまま、アイルに渡したのだった。
「アイル姉さん、ワイズ兄さん。これを受け取って」
「エルシー。いつも、ありがとう。でも無理しないでね」
アイルはお礼を言うと、革袋の中のお金を数え始めた。
「今回、臨時収入があったから大丈夫よ。わたしは、みんなが頑張ってくれたおこぼれを貰っただけだから、気にせず使って」
「そうなの。え!? こんなに?」
アイルは思いのほか多いお金に驚いた。これだけあれば、一年は子供達に十分栄養のある食事を食べさせる位の額はあった。
そしてその額にエルシー自身も驚いた。それはエルシーが入れていた額よりも倍以上あったからだ。
「え!? あたし、こんなに入れてなかったけど……あ! オルちゃん!」
革袋のお金をどうにか出来るなら、ここに来るまで革袋を持っていたオルコットにしか出来ないと、エルシーは気が付いた。
でも、今回のオルコットの分を全部入れても、増えた額は多すぎる。
「みんなで、話し合ったの。エル姉ちゃんのお姉ちゃんなら、あたし達にとってもお姉ちゃんみたいな人じゃない。だったら、助け合わなきゃって」
「でも、トリ君もオルちゃんも買いたかった物があったんじゃないの?」
「大丈夫だよ。ちゃんと、自分達の無理のない範囲でっみんなで決めたんだから……それに」
「それに?」
「わたくしたちは家族なんでしょう。お姉様」
そう言う三人をスティーブンはただ静かに微笑んでいた。その様子を見てスティーブンも今回の件に関わっていることは明らかだった。
「みんな……ありがとう」
「エルシー、それは、私から言わせて、みんな本当にありがとう。このお金は大事に使わせて貰うわ」
アイルはエルシーの言葉を遮ってエルシーを含んだ平和の鐘のメンバーにお礼を言った。
その隣でワイズは黙って頭を下げていた。テーブルに小さな水たまりを作りながら。
次の日、オルコットはアイルと一緒に家事をこなし、トリステンはワイズと共に畑仕事に向かった。
スティーブンは朝一、乗り合い馬車に予定変更を伝え、返金交渉と次回の乗合馬車の確認を行った。
そして、エルシーとマリアーヌは子供達の世話をする事になったのだった。
0
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる