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第三章

魔法技術院とシルビア流通商会

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 俺は魔法習得に関する基礎知識の本も読んだが、やはり催眠術の表面的な手順しか伝わっていないようだ。
 これならば、俺の講義も役に立つだろう。

 俺たちは再度、院長と面会して調べたことを報告する。

「つまりはあのドラゴン、バハムートは攻撃さえしなければ逃げ去る可能があると言うのですか?」
「ああ、文献と昨日の状況よりその可能性が高いです。マリアーヌというかサンドラが納得するかが問題ですが……」
「本部長には申し入れておきますが、すでにドラゴン討伐の方向で準備が進んでいます。それに今日もグランドマスター隊と警備隊が門外に出ていっているようです。バハムート側も今更逃げて行ってくれますか?」

 はっきり言って分からない事が多くて俺には断言はできない。
 しかし、マリアーヌを初め、レイティアの姉のアリシア、リーの姉の腹ペコエルフのユリ、男装の麗人アレックス、レイティアの親友のリタ、双子の鬼人レンとラン、レイティアの同じ部隊だったマリーやサラが危険に晒される。見過ごすには知り合いが多すぎる。

「それは分かりません。ただ、功名のためだけに戦うべきではない。お互いに傷を負わないのがより良い道だと私は思いますが……」
「そうですね。分かりました。本部長には間違いなくこの情報は伝えさせていただきます」



 俺たちは魔法技術院を後にした。

 午後からはシルビア流通商会へ行き、荷物を売ろう。とりあえず、マナ石と武具だけ売って、兼光の抜け殻はまたの機会にしよう。バハムートが現れている状態で売ろうとするとあらぬ疑いをかけられかねない。

 食事をしてからシルビア流通商会へ向かう。
 馬車や人が慌ただしく出入りしている。もともと、活気のある商会ではあるが、今日はいつも以上に慌ただしい。
 殺気立っていると表現したほうが正しいだろう。

「申し訳ございません。社長は今、手が離せません。ご要件をお伺いさせていただいてもよろしいでしょうか?」

 いつも受付にいるライトブルーのショートの髪にの女性が対応してくれる。
 制服なのか、いつも落ち着いた茶色の清楚な感じのワンピースを着ている。

 様子を聞くとドラゴンが郊外に出たため、来る予定の行商人たちが引き返してしまったらしい。
 また、街から出る予定だった行商人は足止めをくらい荷物のやりくりで昨日からてんてこ舞いらしい。

「ああ、大変そうだな。今日は武具とマナ石の引取り価格を教えてもらいに来ただけなんだけど」
「それでは私の方で対応させていただきます」

 提示された金額は俺が予想していたものより一割ほど高かった。
 俺たちが院長に話した通り、マリアーヌたちが攻撃をやめて、バハムートが立ち去れば反動で価格はぐっと下がるだろう。
 あまり欲をかいて逆に損をしては意味がない。
 俺は荷物を持ってくることを告げて家へ戻る。

「ご主人様、アレはどうしますか?」

 アレとは当然、兼光の抜け殻のことだ。

「アレについてはシルビアと直接話しをした方がいいだろう。とりあえず今回は急いでミクス村に行かなくても大丈夫だろうから、時期を見てシルビアと話をしよう。村で作った食料のことも相談したいし……」

 俺は武具とマナ石で二千八百万マルを手に入れた。
 商会の人間が兼光の抜け殻が入ったタルだけを残しているのに不思議そうな顔をしていたが、個人的な持ち物だとごまかした。

「火酒はまだあるか?」
「今、街の消費分もありますのでそちらにお渡しできるのは三タル分のみですね。今はひとタル百二十万マルになります。ただ、いつ街を出られるかわかりませんよ」

 二割も高くなってるのか。
 仕方がない。俺は三百六十万マルプラス税金で三百九十六万マル支払い、火酒三タルを手に入れた。
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