56 / 186
第一章
救出部隊メンバー
しおりを挟む
返さなくていいならそれに越したことはない。
「その条件をお聞かせください」
俺はソフィアの母親をじっと見る。
絶世の美女というわけでは無いが、愛嬌のあるふんわりとしたイメージを抱かせ、ずっと笑みを浮かべているのではないかと錯覚させるその顔がほんのりニヤリとした。
あ、何か悪いこと考えている。
「簡単な話です。娘と結婚すれば良いだけですよ。このお金は私たち夫婦の個人的な物ですので、結婚祝いとしてお渡しする事も可能ですよ」
「お母様!」
ソフィアは何か言おうとしたが、母親の一瞥(いちべつ)で黙ってしまった。
「どうです? 引っ込み思案な性格を除けば、器量よしの自慢の娘ですよ」
母親は熱のこもった言葉を吐いた。
「……ええ、お嬢さんは家事も得意ですし、頭も良く飲み込みも早い。それに美人ですよね」
両親の顔がパッと明るくなり二人は顔を見合わせた。
「じゃあ!」
「だからこそ、こんな金で買うような人じゃっない!」
俺は立ち立ち上がり、礼をした。
「お金はきちんと返済します。ありがとうございました。行くぞ! ソフィア」
そう言って鞄と剣を片手にもう片方はソフィアの手を引いて家を後にした。
「ご主人様、申し訳ありません」
ムサシマルと合流すべく宿に向かっている道でソフィアは俺に謝る。その頃には俺も冷静になっていた。
「大丈夫だよ。もう落ち着いている。俺の方こそ悪かった。つい頭に血が上ってしまった」
「いえ、あたしはうれしかったです。両親にはあとで話しておきます」
しかし、変な方向で暴走するのは両親譲りか?
娘のことを思っての言葉かもしれないが、ズレてるんだよな。
「ほう、こんなにも借りれたんじゃな」
ムサシマルはすでに起きて準備を済ませていた。
「食料は昨日のうちに酒場の御親父に頼んでおいた。これで馬もマナ石も買えるぞ」
「師匠、ちゃんと交渉して安く買ってきてくれよ。余裕はあるけど無限じゃないんだから」
俺はムサシマルに一千万マルだけ渡した。この後、警備隊本部に行ったときに追加で金が必要かもしれない。
全員がそろってから、少し早めの昼飯を食べてから出発することにした。
「じゃあ、後でいつもの酒場に集合で」
そう言って俺は警備隊本部へ行き、レイティア達を呼び出してもらった。
レイティアは暗い顔で出てきた。
「どうした?」
「それが……マリーとサラは今回の件には参加しないって言ってきたの」
え、そうすると三人しかいないとなると警備隊の依頼が却下されるのでは?
「一応、あと二人は決まったのよ。その二人が問題でね」
口ごもるレイティアの代わりにリタが話してくれた。
「やあ、子猫ちゃんたち、準備はできたかね。こっちの準備は整ったよ」
「「さすがですわ! アレックス様」」
キザ男の後ろから、金髪の双子が出てきた。
「もしかして……」
「ええ、そのもしかしてよ」
アレックスの取り巻きのレンとランだ。
「アレックスを隊長としてレン、ラン、レイティアそして私の五人で部隊を組む事になったの」
「よろしくな。依頼主」
アレックスが参加するのは昨日の時点で分かっていたのであきらめがついていたが、まさか双子と一緒とは。俺よりもレイティアが心配だ。
「ああ、よろしく。隊長殿。ちょっと依頼主として隊長と二人で話があるんだが」
俺はアレックスを連れてみんなの見えないところへ移動した。
「俺が編成について口出しできないことは承知している。また志願者が五人にないと依頼が却下されるから、それについても文句言うつもりはない。ただ、あの双子のレイティアに対する態度はお前の方でどうにか押さえろ。私怨で動かれるとこの依頼は命に係わるかもしれない」
「何言ってるんだ。あの双子は素直でいい子だよ」
それは自分の感情に素直なだけじゃないのか?
俺は初めてあの双子に会った時の双子の態度とレイティアの怯えっぷりを話した。
「わかった、それは僕の方で気を付けておくよ。じゃあ、僕の方からいいかね」
「ああ、なんだ」
「君は依頼主ではあるが、街の外に出た時から隊長である僕の指示に従ってもらうよ。君の私兵である、あの二人も含めて」
私兵ってムサシマルとソフィアの事か。まあ、指令系統が複数あることは好ましくない。アレックスの言うことは理解できる。
「わかった。基本的にはお前の指示に従おう。ただしその内容に納得できない場合は独自の判断でやらしてもらう」
俺たちは手を結んだ。
その手は女性らしい柔らかさと警備隊として剣を握っている硬さが同居していた。
「ではまず、場所を移動してミーティングをしよう」
「その条件をお聞かせください」
俺はソフィアの母親をじっと見る。
絶世の美女というわけでは無いが、愛嬌のあるふんわりとしたイメージを抱かせ、ずっと笑みを浮かべているのではないかと錯覚させるその顔がほんのりニヤリとした。
あ、何か悪いこと考えている。
「簡単な話です。娘と結婚すれば良いだけですよ。このお金は私たち夫婦の個人的な物ですので、結婚祝いとしてお渡しする事も可能ですよ」
「お母様!」
ソフィアは何か言おうとしたが、母親の一瞥(いちべつ)で黙ってしまった。
「どうです? 引っ込み思案な性格を除けば、器量よしの自慢の娘ですよ」
母親は熱のこもった言葉を吐いた。
「……ええ、お嬢さんは家事も得意ですし、頭も良く飲み込みも早い。それに美人ですよね」
両親の顔がパッと明るくなり二人は顔を見合わせた。
「じゃあ!」
「だからこそ、こんな金で買うような人じゃっない!」
俺は立ち立ち上がり、礼をした。
「お金はきちんと返済します。ありがとうございました。行くぞ! ソフィア」
そう言って鞄と剣を片手にもう片方はソフィアの手を引いて家を後にした。
「ご主人様、申し訳ありません」
ムサシマルと合流すべく宿に向かっている道でソフィアは俺に謝る。その頃には俺も冷静になっていた。
「大丈夫だよ。もう落ち着いている。俺の方こそ悪かった。つい頭に血が上ってしまった」
「いえ、あたしはうれしかったです。両親にはあとで話しておきます」
しかし、変な方向で暴走するのは両親譲りか?
娘のことを思っての言葉かもしれないが、ズレてるんだよな。
「ほう、こんなにも借りれたんじゃな」
ムサシマルはすでに起きて準備を済ませていた。
「食料は昨日のうちに酒場の御親父に頼んでおいた。これで馬もマナ石も買えるぞ」
「師匠、ちゃんと交渉して安く買ってきてくれよ。余裕はあるけど無限じゃないんだから」
俺はムサシマルに一千万マルだけ渡した。この後、警備隊本部に行ったときに追加で金が必要かもしれない。
全員がそろってから、少し早めの昼飯を食べてから出発することにした。
「じゃあ、後でいつもの酒場に集合で」
そう言って俺は警備隊本部へ行き、レイティア達を呼び出してもらった。
レイティアは暗い顔で出てきた。
「どうした?」
「それが……マリーとサラは今回の件には参加しないって言ってきたの」
え、そうすると三人しかいないとなると警備隊の依頼が却下されるのでは?
「一応、あと二人は決まったのよ。その二人が問題でね」
口ごもるレイティアの代わりにリタが話してくれた。
「やあ、子猫ちゃんたち、準備はできたかね。こっちの準備は整ったよ」
「「さすがですわ! アレックス様」」
キザ男の後ろから、金髪の双子が出てきた。
「もしかして……」
「ええ、そのもしかしてよ」
アレックスの取り巻きのレンとランだ。
「アレックスを隊長としてレン、ラン、レイティアそして私の五人で部隊を組む事になったの」
「よろしくな。依頼主」
アレックスが参加するのは昨日の時点で分かっていたのであきらめがついていたが、まさか双子と一緒とは。俺よりもレイティアが心配だ。
「ああ、よろしく。隊長殿。ちょっと依頼主として隊長と二人で話があるんだが」
俺はアレックスを連れてみんなの見えないところへ移動した。
「俺が編成について口出しできないことは承知している。また志願者が五人にないと依頼が却下されるから、それについても文句言うつもりはない。ただ、あの双子のレイティアに対する態度はお前の方でどうにか押さえろ。私怨で動かれるとこの依頼は命に係わるかもしれない」
「何言ってるんだ。あの双子は素直でいい子だよ」
それは自分の感情に素直なだけじゃないのか?
俺は初めてあの双子に会った時の双子の態度とレイティアの怯えっぷりを話した。
「わかった、それは僕の方で気を付けておくよ。じゃあ、僕の方からいいかね」
「ああ、なんだ」
「君は依頼主ではあるが、街の外に出た時から隊長である僕の指示に従ってもらうよ。君の私兵である、あの二人も含めて」
私兵ってムサシマルとソフィアの事か。まあ、指令系統が複数あることは好ましくない。アレックスの言うことは理解できる。
「わかった。基本的にはお前の指示に従おう。ただしその内容に納得できない場合は独自の判断でやらしてもらう」
俺たちは手を結んだ。
その手は女性らしい柔らかさと警備隊として剣を握っている硬さが同居していた。
「ではまず、場所を移動してミーティングをしよう」
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!
ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。
なのに突然のパーティークビ宣言!!
確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。
補助魔法師だ。
俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。
足手まといだから今日でパーティーはクビ??
そんな理由認められない!!!
俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな??
分かってるのか?
俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!!
ファンタジー初心者です。
温かい目で見てください(*'▽'*)
一万文字以下の短編の予定です!
婚約者に犯されて身籠り、妹に陥れられて婚約破棄後に国外追放されました。“神人”であるお腹の子が復讐しますが、いいですね?
サイコちゃん
ファンタジー
公爵令嬢アリアは不義の子を身籠った事を切欠に、ヴント国を追放される。しかも、それが冤罪だったと判明した後も、加害者である第一王子イェールと妹ウィリアは不誠実な謝罪を繰り返し、果てはアリアを罵倒する。その行為が、ヴント国を破滅に導くとも知らずに――
※昨年、別アカウントにて削除した『お腹の子「後になってから謝っても遅いよ?」』を手直しして再投稿したものです。
勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。
飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。
隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。
だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。
そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる