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第一章

修羅場

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「今日はお疲れ様でした」

 昼に身につけていた武具を外し、昨日と同じようにメイド服に身を包み、長い髪をおろしたソフィアが最上級の笑顔で俺たちを出迎えてくれた。

「ああ、お疲れ、ってなんでいるんだよ」
「なぜって、ご主人様のお世話をするのが私の役目ですし、夕飯を一緒に食べていただけると昨日約束したじゃないですか?」

 昨日のやりとりを思い出す。
 一緒に食事をしてもいいかと聞かれて了承した。いつとはどちらも言ってない。どうやらソフィアはこれからずっとという意味で言っていたようだ。
 俺はムサシマルに助けを求めるように視線を流す。
 ムサシマルは白い歯が見えるようにニカッと笑って親指を立てる。
 楽しんでやがるな。まあ、どちらにしろ一度レイティア達に紹介する必要はあると思ってた。腹をくくるか。
 さて問題はどのようにソフィアの事を紹介するかだ。
 リタには魔法習得の時に相談したのでまだ説明が楽なのだが、問題はレイティアだ。
 下手に嘘をついてもしょうがない。
 酒場を覗くとレイティア達はすでに来ていた。ソフィアにはいったん酒場の外で待ってもらった。

「よう、おつかれ」
「あら、キヨ。もうお腹は大丈夫なの?」

 レイティアが兎のもも肉の香草焼きを手に持ったまま声をかけてきた。
 昨日来なかったのは俺の体調不良だとムサシマルが説明してたようだ。

「ああ、ありがとう。実は今日、もう一人連れてきているんだけどいいかな?」
「わたしはいいわよ。リタは?」
「私も別に構わないよ。レイティアがよければだけど……」

 リタの顔を見るとどうやら察してくれたらしく意味深な笑いを浮かべた。

「ムサシマルはもう知ってるみたいだけど、どんな人?」
「俺の魔法習得に尽力してくれた人だ」
「え、キヨ。魔法覚えたの? それならその人はキヨの恩人じゃない。早く入ってもらってよ」

 レイティアは身を乗り出してきた。

「ああ、ちなみに女性なんだ。ちょっと待っててくれ。呼んでくる」

 それだけ、さらっと言い放つと俺は酒場の外のソフィアを呼びに行った。
 ソフィアは酒場に入り、レイティア達を見た瞬間、俺の後ろに隠れた。
 どうやら俺とムサシマルしかいないと思ってたな。

「こちらはソフィア、かなり人見知りが激しいのでそこは勘弁してほしい」
「私はリタよ。よろしくね」
「わたしはレイティアよ。そこのキヨの婚約者ってことになってるわ」

 ん。婚約者?

「お、奥様?」

 ソフィアは俺の後ろから慌てて出てきた。

「あ、あたし、ご主人様の奴隷のソフィアです。よ、よろしくお願いします」
「ちょっと待て!」

 なんて説明の仕方をしてんだよ!

「「奴隷!?」」

 レイティアとリタが綺麗にハモった。

「誤解だ。説明させてくれ」

 ムサシマルは我関せずとビールを飲んでいる。

「ソフィアが勝手にそう言ってるだけだ。ちゃんと説明するから話しを聞いてくれ!」

 しかし、その話をする前に大事件が酒場に飛び込んで来た!
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