75 / 336
グラス小隊のお仕事
グハウスの営舎
しおりを挟むジャングル内にあるサクラ旅団の基地は、以前と完全に様変わりをしていた。
打ち捨てられていた連隊駐屯地に、いきなり大人数が押しかけたので、広い更地にテント村が出来、そこで4000人くらいの人間が生活していた。
さながら被災地にできる難民キャンプ村のようだった。
それが、ほぼ全員でそこらじゅう一斉にログハウスを建て始めたのだ。
今の状況を例えるのならば、新しくできた住宅展示場で各社一斉に競争するかのようにモデルハウスを建て始めたようなものであった。
なぜこのようなことになったのかというと、少し前にグラス小隊が建てたレンガハウスが完成したあたりから始まる。
できたばかりのレンガハウスは、サカキ中佐の予言通り溜り場となり、グラス小隊メンバーの他に特殊工兵大隊の主だったメンバーも何かにつけレンガハウスにお茶しに来ていた。
そこに、基地まで案内したことで仲良くなったアザミ大隊の隊長アート少佐が訪ねてきて、相談を持ちかけてきたのだ。
早い話が、自分たちのテント村をどうにかしたいと悩んでいたところ、ここを作る少尉を見かけた。
相談しようかどうか悩んでいたそうだが、ここができると同時に少尉率いる小隊がログハウスを建て始めたのを機に、自分たちもログハウスを作り、営舎としたいと思い立ったとのことだった。
では、一緒にやりましょうとなって建て始めたら、それを見ていたバラ連隊の隊長 ナターシャ少佐もアート少佐と連れ立ってここに相談に来た。
たまたまその時に、サカキ中佐がこのあたりの視察ついでにレンガハウスで休憩を取っていたので、『ログハウスなら資材はそこらじゅうに生えている木を使えばいいから、それじゃ基地を上げて、営舎をログハウスで作ろうか』となった。
その前から始めているレンガ作りは継続して行われており、風呂棟はほぼ完成間際となっている。今は、新たな司令部建家の設計中であり、これはそのまま継続となるが、それに関わる者以外のほぼ全員を投入して、ログハウス作りとなった。
本気になったサカキ中佐はすごいの一言に尽きる。
木の伐採や加工は工兵に専業とさせ、運搬は残りの工兵と以前からこの基地にいたトーゴ大尉率いる中隊が受け持ち、それ以外の人員は手分けして運ばれてくる資材を使ってのログハウスの建設にあたり、先に説明したような住宅展示場の建設現場のような状況が出来上がった。
でも、この体制は強力である。
そのために次々にログハウスの営舎が完成していった。
資材の確保のために基地後背のジャングルがどんどん整地されていき、そこにきちんと等間隔に並ばせるようにログハウスを作っていったので、今までの基地はそのまま残り、基地後方へ基地が広がっていくようなものだった。
そんな状況の時にレイラ中佐が新たな仲間を率いて基地に帰ってきた。
レイラは基地に入り、基地の情景が一変しているのを発見し、腰を抜かさんばかりの驚きを示した。
「サ、サカキ中佐、こ、これは、いったい何?どうしたの?」
「あ~、これ。ほれ、例のあんちゃんがオモロイもの作っていたろ。そうしたら、花園連隊の連中も自分たちもテントより格段に良さそうだから、作りたいと言い出してな。それじゃ~、ってんで、基地を上げて一気にみんなの分も作ろうとなったんじゃよ。一斉に作り始めたもんだから、作業がはかどるはかどる。あっという間にこんな状況だよ。これなら、基地到着後にすぐにでも始めれば良かったよ。あんちゃんは大したものだな」
「また、あいつが言いだしっぺなのですね。本当に騒ぎを起こすことについては天才なんじゃないかしら。騒ぎのほとんどが、いえ、今のところ全てが功績となるのだから凄いの一言に尽きるわね。でも、なぜかしら、私はあいつを褒めることができないのよね。功績として認めることはできても、なぜかあいつについては、面倒を起こすやつという認識しかないのよね」
「ほ~、奇遇だな。俺もそうだ。あのあんちゃんは、面白いことを引き起こすという認識しかない。ま~、俺たちは広い気持ちで、あんちゃんのことを見守るくらいでちょうどいいんじゃないかね」
「私には、その広い気持ちになれないのが悩みなんですがね。サクラが帰ったら、どうなるかしらね。でも、少なくとも、今まで抱えていた兵士の住環境の改善には一定の目処がついたわね。この件については素直に喜ぶことにするわ」
「手前にできたばかりの営舎に連れてきた嬢ちゃんたちを入れたらどうだ。なんか、疲れているようだし、営舎については、かなり余裕をもって作っているから、後からでもどうとでもなる。なんなら、あそこの営舎は当分予備営舎とでもしておけばいい」
「え~、そうしていただけると助かります。でも、なぜ、そんなに余裕を持って作り始めたのですか」
「理由を聞きたいかね。でも、理由を聞いたら、呆れるぞ」
「是非、聞きたいですわね。今まで、全然足らない営舎だったのに、作り始めたら急に余裕を持っての計画だなんて、凄いです」
「そんなに、凄い話じゃない。また、あのあんちゃんが出てくるのだがな。最初にログハウスを作り始めたのが、あのあんちゃん達だったのは説明したよな。それじゃ~みんなの分も作ろうとなった時に、最初のログハウスを元に計画を立てて作業を始めたのだが、作り始めてしばらく立った時に、最初に作ったログハウスで問題が起こったのだよ」
「問題??何ですか、その問題とは」
「最初のログハウスにいざ入居となった時に、兵士たち、それも下士官たちがあんちゃんに食ってかかっていたので、理由を聴きに行ったら、驚いた。あのあんちゃん、本当に軍隊を知らなすぎだ。あのログハウスに、兵士全員分の個室を作ろうとしていたのだから、それも各部屋にトイレまで作ろうとしていたのだから、驚いた。ここに帝都にあるアパートでもここにつくるつもりだったらしい」
「え~~~~~。流石に、それはまずいわよね」
「あ~、山猫のボス猫が『頼むから、個室はやめてください。じゃないと私たちはほかの兵士から刺される』と泣いてお願いしていたので、『それじゃ2人部屋にでもするか』とか言い出すから、ほれあんちゃんとこの保護者の嬢ちゃんがコンコンと説明して、4人部屋で落ちついた。でも、ほかの隊、花園なんかは帝都と同じ8人部屋で作ることになったけど、最初の計画で建てていたのが個室のつもりだったから、慌てて計画全体を修正したのだけれど、かなり余る計算となり、余裕があるのじゃよ。多分、全部が完成すれば、師団規模の駐屯が可能だと思うぞ」
「は~~~。またですか。分かりました。私から、旅団長へは、連絡を入れておきます。『営舎の問題は一挙に片付いた』とね」
「あ~、そうしておいてくれ。それに、直に新しい司令部も完成するぞ。そうしたら、古い建家は全て解体し、基地を整備しなおすことにするぞ。たまたまだが、ここは建設の資材については、ほとんど問題が出ない。問題を探すとなると、使用するコンクリートだけは自前で用意できないことくらいかな」
「分かりました。コンクリートの追加発注も合わせてお願いしておきます」
レイラは頭を抱えながら連れてきた兵士たちを新たにできた営舎に落ち着かせた。
一緒にいたマーガレットは唯唯固まっていただけだった。
1
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部
山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。
これからどうかよろしくお願い致します!
ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。
今日はパンティー日和♡
ピュア
ライト文芸
いろんなシュチュエーションのパンチラやパンモロが楽しめる短編集✨
おまけではパンティー評論家となった世界線の崇道鳴志(*聖女戦士ピュアレディーに登場するキャラ)による、今日のパンティーのコーナーもあるよ💕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる