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第43話 初めてのデート
しおりを挟む朝食を食べながら今日の予定が決まった。
全く慣れていない東京でのデート、というより人生で初めてのデートだ。
順番が違ったような気がするが、人生の初めてのデートがそれこそ女優が裸足で逃げ出すような美女、美少女、どっちで表現したほうがいいかわからないが、小喬さんとデートのメッカであるネズミの王国でのデートだ。
今日はみんなもゆっくり過ごすと言うので気兼ねなく楽しめそうだ。
俺は小喬を連れてロビーまで降りてきた。
ロビーのすぐ外にはいつも数台のタクシーが止まって乗客を待っているので、タクシーを利用するにはほとんど待たずに利用できる。
ここは本当に金持ちには快適な環境だ。
俺たちも、そのまま待機していたタクシーに乗り込んだ。
タクシーに乗り込み日本語で行き先を告げる。
「すみませんがネズミの王国に行ってください」
ドライバーはただ一言「わかりました」とだけ、中年に差し掛かった男性ドライーバで寡黙の人であった。
しかし、運転中に異様に後部座席の方を気にしているようだった。
思い違いかもしれないが、連れている小喬はどこに出しても引けを取らない美人だ。
そのツレが余りにも平凡な大学生といった感じの男では、男としては気持ちはわかる。
それも美女と会話が英語だったので異様に気になるようだ。
しかし、これだとこちら側が落ち着かない。
いたたまれない気持ちになったが、こればかりは我慢しかない。
そんな時に思ったのだが、そういえば自動車免許を取れる年になったのだ。
そうだ免許を取ろう。
じゃなくて、日本で活動するなら免許も必要だろう。
自動車についてはリースでもレンタルでもいいのだが、運転だけは免許が必要だ。
そこで気になったので小喬さんに聞いてみた。
「小喬さん、デート中に仕事関連のことを聞くのは申し訳ないが教えて欲しい」
「直人さん、なんですか。
なんでも聞いてください」
「皆さんは自動車を運転できますか。
免許など持っているのでしょうか」
「え?
あ、免許ですね。
誰も持っていないと思います」
「自家用車が無いと不便じゃないですか」
「いや、日本では不自由を感じませんね。
特にこのあたりではどこでもタクシーが拾えますし、鉄道がそこらじゅうに走っておりますから車を運転したいとは思ったことがありませんでした」
小喬さんはこう言ったが、やはり免許は欲しいし、みんなにも運転して欲しい時が来そうだ。
持っていても邪魔になるものじゃないし、暇になったら交代で免許を取ってもらおう。
まあ一度持ち帰って相談だ。
そんなことを考えていると持たされている携帯が鳴った。
誰からだろうと形態の液晶画面を見るとかおりさんからだった。
「直人です」
「かおりです。
ご連絡がありますので電話しましたが、今大丈夫ですか」
そう聞かれたので、直人は運転手にとりあえず聞いてみた。
「タクシー内で携帯電話をしてもいいですか」
「問題ありません。
ご自由にどうぞ」
「大丈夫みたいです。
報告ってなんですか」
「ネズミの王国に併設されているビューティフル・ドリームホテルの部屋が取れましたので、最初にそちらでチェックインしてください。
そのホテルでネズミの王国のチケットも手配してありますし、色々と王国内の便宜を図ってもらえますので。
疲れたら休憩用に使ってください。
それでは楽しい一日を」
「小喬さん、かおりさんからの伝言で併設のホテルを抑えたそうです。
まずそちらに向かうことになりました。
疲れたら休憩もできますし、当然食事も取れるそうです」
「え、え、併設のホテルってひょっとしてビューティフル・ドリームですか。
もしかして、あこがれのホテルに泊まれるのですか」
「宿泊で抑えてはいるようですが、残念ですが泊まれません。
夜には帰らないといけませんから。
あ、小喬さんだけだったら」
「直人様。
そんなさみしいこと言わないでください。
わかっていますよ。
直人様とのお約束は半日ですから。
でも、休憩はできますよね。
絶対に休憩だけはしましょうね」
「わかっていますよ。
運転手さん、すみませんがネズミの王国ですが、併設されているビューティフル・ドリームホテルに向かってもらえますか」
「ビューティフル・ドリームホテルですね。
わかりました」
そのままタクシーは何事もなくホテルの車寄せについた。
かなりメルヘンチックに着飾ったドアマンにサポートをしてもらいながらタクシーを降り、そのままフロントに向かった。
フロントはチェックアウトのお客さんと重なったために混雑していたが、我々を見つけたフロント責任者の案内で直ぐにチェックインすることができた。
チェックイン専用に別に窓を開けたため、我々だけでなく後3組のお客さんのチェックインがとても速やかに済んだ。
割とこういったケースに慣れているようだ。
利用者目線に立ってよく教育がされているようだ。
フロントでは自分の名前を言うと
「お待ちしておりました本郷様。
お部屋の準備が整っております。
まずはお部屋のご案内させていただきます」 と言われ、係りの人に最上階のスウィートに連れて行かれた。
部屋で一通りの説明を受けたあと、直ぐにホテルのコンシェルジュが訪ねてきた。
王国のチケットとプライベートツアーの案内を持って。
30分後にロビーから王国内のプライベートツアーを開始するとの説明を受けた。
なんでもこのツアー、このホテルからは1日3組限定で別料金で設定されているツアーで園内を案内しながら回ってくれる。
途中、5箇所のアトラクションをほとんど並ばずに体験できるほか希望で3箇所を自由に選べ、これも並ばずにアトラクションが楽しめる時間的には非常にお得なツアーだ。
年内は予約で取れないとのことだったが、協賛企業枠で取られたとも説明してくれた。
かおりさんかイレーヌさんが海賊興産を利用しての取得だろう。
なにせ海賊興産はこのネズミの王国設立当時からの協賛企業で、運営母体の大株主だとか。
本当にコネって大事だ。
ただのデートでも快適に楽しめる、まさに金持ちならでは……なんだか成金のようで嫌な感じだな。
あ、俺成金か。
部屋で小喬さんとイチャイチャしたあとロビーに降りてツアーを楽しんだ。
3時間ばかりでツアーを終えて、遅い昼食をホテルのレストランで楽しんだあと、スウィートで明るいうちから逢瀬を楽しんだ。
あまり遅くならない時間に帰るために夕方にはチェックアウトをしてタクシーで戻っていった。
慣れないデートも、というより初めてのデートだったが、かおりさんのさりげない気配りで恥をかかずに思う存分楽しんだ。
小喬さんが楽しんだかはわからないが、帰りのタクシーでのにやけ……もとい、幸せそうな顔を見たら今日のデートは成功だったのだろう。
みんなともこういう一日があってもいいかもしれない。
そんなことを感じた一日だった。
え、まだ終わっていない。
今日も『初夜の儀』があるんだって。
ヤレヤレ………いえ、楽しみです。
見栄を張ってすみません。
今日はラナさんの当番だったか。
当番言うなって、そうだよね、でも、この日も十分に甘甘なひと夜を二人で過ごすことができた。
でも、昼の小喬さんとのデートの余韻も楽しめないな。
この『初夜の儀』が終わったらまた全員に、今度は1日かけて二人きりで楽しめるようにするのもありだな。
年に一回はそういう日を作っていこう。
ま~先の話だが。
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