29 / 160
第一部 第三章
3 国事部。
しおりを挟む
病院を出て、軍用地の門を通り、再度、白い大理石の廊下へとやってきた二人。
国事部という所は、先程入った会議室の一つ手前の部屋だった。
ヨウはノックをして部屋へと入る。
(うわっ……)
中は学校の教室ほどの広さだった。そこにびっしりと机が置かれ、皆、絨毯に座りながら黙々と仕事をしている。一番奥の机にハーシムが見えた。
「何か御用でしょうか?」
入口に向かい机が置かれた受付に座っていた、ハーシムと同じ白い服を着たアフリカ人の黒髪短髪の男性がヨウに声をかけた。
「ああ……ちょっとさっき特別に、カーシャさんに使用人で雇う人の健康診断してもらったんだ。で、結果をハーシムさんに……」
ヨウは臆することなくカーシャから預かった書類をその人に渡す。
「……少々お待ちください」
書類に一通り目を通すと、男性は立ち上がり、部屋の奥へと向かった。そして、ハーシムに声をかける。ハーシムがこちらを見た。立ち上がりこちらへやってくる。
(う……怖い……)
佐知子は少し緊張した。
「問題なかったようだな」
ハーシムは二人の前に来るとそう言った。
「ああ……これで使用人小屋に行っても大丈夫か?」
「ああ、問題ない。仕事の当番や給料の詳細については追って書記官を遣わす。娘、仕事に励めよ」
ハーシムは切れ長の金色の瞳でじっと佐知子を見つめた。
「はい!」
佐知子は姿勢を正し、そう答えるのが精一杯だった。
「じゃあな」
ハーシムはそう言うと、踵を返し、颯爽と去っていった。シャランと、綺麗な音が鳴る。
「あ~、怖かった~」
国事部の扉を閉めた佐知子は思わず胸を押さえて言葉を漏らす。
「はは……ハーシムさんは一見、怖いからな」
「ヨウくんは平気なの?」
「まぁ……怖いのは一見だからな。もう慣れた」
ヨウはほんの少し笑う。
「さて……じゃあ、使用人小屋へ行くか」
そしてそう言うと、歩き出した。
国事部という所は、先程入った会議室の一つ手前の部屋だった。
ヨウはノックをして部屋へと入る。
(うわっ……)
中は学校の教室ほどの広さだった。そこにびっしりと机が置かれ、皆、絨毯に座りながら黙々と仕事をしている。一番奥の机にハーシムが見えた。
「何か御用でしょうか?」
入口に向かい机が置かれた受付に座っていた、ハーシムと同じ白い服を着たアフリカ人の黒髪短髪の男性がヨウに声をかけた。
「ああ……ちょっとさっき特別に、カーシャさんに使用人で雇う人の健康診断してもらったんだ。で、結果をハーシムさんに……」
ヨウは臆することなくカーシャから預かった書類をその人に渡す。
「……少々お待ちください」
書類に一通り目を通すと、男性は立ち上がり、部屋の奥へと向かった。そして、ハーシムに声をかける。ハーシムがこちらを見た。立ち上がりこちらへやってくる。
(う……怖い……)
佐知子は少し緊張した。
「問題なかったようだな」
ハーシムは二人の前に来るとそう言った。
「ああ……これで使用人小屋に行っても大丈夫か?」
「ああ、問題ない。仕事の当番や給料の詳細については追って書記官を遣わす。娘、仕事に励めよ」
ハーシムは切れ長の金色の瞳でじっと佐知子を見つめた。
「はい!」
佐知子は姿勢を正し、そう答えるのが精一杯だった。
「じゃあな」
ハーシムはそう言うと、踵を返し、颯爽と去っていった。シャランと、綺麗な音が鳴る。
「あ~、怖かった~」
国事部の扉を閉めた佐知子は思わず胸を押さえて言葉を漏らす。
「はは……ハーシムさんは一見、怖いからな」
「ヨウくんは平気なの?」
「まぁ……怖いのは一見だからな。もう慣れた」
ヨウはほんの少し笑う。
「さて……じゃあ、使用人小屋へ行くか」
そしてそう言うと、歩き出した。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
ヤンデレ幼馴染が帰ってきたので大人しく溺愛されます
下菊みこと
恋愛
私はブーゼ・ターフェルルンデ。侯爵令嬢。公爵令息で幼馴染、婚約者のベゼッセンハイト・ザンクトゥアーリウムにうっとおしいほど溺愛されています。ここ数年はハイトが留学に行ってくれていたのでやっと離れられて落ち着いていたのですが、とうとうハイトが帰ってきてしまいました。まあ、仕方がないので大人しく溺愛されておきます。
二度目の人生は異世界で溺愛されています
ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。
ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。
加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。
おまけに女性が少ない世界のため
夫をたくさん持つことになりー……
周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。
男女比がおかしい世界にオタクが放り込まれました
かたつむり
恋愛
主人公の本条 まつりはある日目覚めたら男女比が40:1の世界に転生してしまっていた。
「日本」とは似てるようで違う世界。なんてったって私の推しキャラが存在してない。生きていけるのか????私。無理じゃね?
周りの溺愛具合にちょっぴり引きつつ、なんだかんだで楽しく過ごしたが、高校に入学するとそこには前世の推しキャラそっくりの男の子。まじかよやったぜ。
※この作品の人物および設定は完全フィクションです
※特に内容に影響が無ければサイレント編集しています。
※一応短編にはしていますがノープランなのでどうなるかわかりません。(2021/8/16 長編に変更しました。)
※処女作ですのでご指摘等頂けると幸いです。
※作者の好みで出来ておりますのでご都合展開しかないと思われます。ご了承下さい。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
美人すぎる姉ばかりの姉妹のモブ末っ子ですが、イケメン公爵令息は、私がお気に入りのようで。
天災
恋愛
美人な姉ばかりの姉妹の末っ子である私、イラノは、モブな性格である。
とある日、公爵令息の誕生日パーティーにて、私はとある事件に遭う!?
【※R-18】私のイケメン夫たちが、毎晩寝かせてくれません。
aika
恋愛
人類のほとんどが死滅し、女が数人しか生き残っていない世界。
生き残った繭(まゆ)は政府が運営する特別施設に迎えられ、たくさんの男性たちとひとつ屋根の下で暮らすことになる。
優秀な男性たちを集めて集団生活をさせているその施設では、一妻多夫制が取られ子孫を残すための営みが日々繰り広げられていた。
男性と比較して女性の数が圧倒的に少ないこの世界では、男性が妊娠できるように特殊な研究がなされ、彼らとの交わりで繭は多くの子を成すことになるらしい。
自分が担当する屋敷に案内された繭は、遺伝子的に優秀だと選ばれたイケメンたち数十人と共同生活を送ることになる。
【閲覧注意】※男性妊娠、悪阻などによる体調不良、治療シーン、出産シーン、複数プレイ、などマニアックな(あまりグロくはないと思いますが)描写が出てくる可能性があります。
たくさんのイケメン夫に囲まれて、逆ハーレムな生活を送りたいという女性の願望を描いています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる