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第13話:宇宙の果て
Eパート(3)
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『このままの軌道で進めばレッドノーム号は大気圏に突入し、減速して地上に落下するのはレイチェルさんも分かっていますよね』
『はい』
『それはさっき説明したぞ』
『じゃあ、大気圏に突入しないように軌道修正する必要があるけど、そうするにはどうすれば良いかだけど…ぶっちゃけ、船のスラスターを使うしかないというのが俺の結論です。全長二キロの船の軌道をアルテローゼの推力で何とかできるとか無理です』
『『…』』
最悪、某アニメ映画のように船の外に出てアルテローゼで船の針路を変えようと思っていた二人は、ディビットの説明に押し黙るしかなかった。実際やったとしても、直ぐに軌道が修正されてしまっただろう。
『だが、船のスラスターを使うにも、レッドノーム号の制御は儂にはできないぞ』
レイフは魔力が足りず、レッドノーム号の制御AIを支配できていない。もしAIを支配していればここで悩んではいなかったのだ。
『船の制御を俺が奪えれば良かったんだけど、今からやっても時間切れで船は大気圏に突入しちゃいます』
『では、どうすればよいのです?』
『それでどうするかですが、…船のスラスターの制御をAIから奪っちゃいたいと思います』
ディビットはそう言って、通信モニターにレッドノーム号の船内図を表示する。そこには第二艦橋と書かれた部分に花丸が描かれていた。
『レッドノーム号には、そんな物があるのか?』
戦艦という物は様々な状況に対応する必要があり、その中でもダメージコントロールが重要である。艦橋が破壊されただけでコントロール不能とならないように、予備の艦橋を用意しておくのは当たりまえの事であった。
レイフがそんな常識的な事も知らなかったのは、彼が一番よく知っている船は帆船だったため、艦橋という物が存在しなかったからである。つまり艦橋の予備があるという事を全く思いつかなかったのだ。
『第二艦橋ですか? もしかして第三艦橋とかも…』
『レイチェルさん、そんな危険な部署は存在しません!』
レイチェルの疑問にディビットは即答する。レイチェルは何故かほっとした顔をしているが、その理由はレイフには分からなかった。
『それで、第二艦橋を抑えれば船を制御できるのか?』
船内図を見ると、第二艦橋までアルテローゼが移動できる通路が表示されている。全力で移動すれば、一分とかからずにたどり着けるだろう。
『残念だけど、第一艦橋が無事だと、第二艦橋からは何もできないようになっているんだ』
『では、第一艦橋を?』
『破壊するしかないんですよね』
レイフの問いかけに、ディビットは肩をすくめ両手を挙げた。
『…それしか手が無いのですね?』
『一番成功率の高い作戦ですね』
『では、やりましょう』
レイチェルは決断するが、
『この作戦だと、レイチェルが第二艦橋に残り、アルテローゼが外に出て第一艦橋を潰すことになるのか。レイチェルが危険ではないか?』
レイフはレイチェルが単独で第二艦橋に残ることに不安を感じるのだった。
『時間を考えると二手に分かれるしかないぞ。それにアルテローゼに乗って第一艦橋を潰す作業の方が危険だと思うが?』
『確かにそうかもしれないが…』
『ガードロボットの方は俺が何とかするからな。それと、作戦を始めないとタイムアップしてしまうぞ!』
ディビットは作戦が実行できるタイムリミットが残り少ないことを示すように、モニターにカウントダウンを表示する。
『分かった。しかし、儂がレイチェルが危ないと判断したら直ぐに作戦を変更するからな』
『ヘリオスを救うのが先決ですわ!』
『儂にはレイチェルの方が大事だがな。行くぞ』
アルテローゼはミサイルを抱えると、一目散に第二艦橋に向かっていった。
◇
「フゥ、何とかAIを騙せたっす」
禿頭の大男はため息をつくと、オペレータ席をリクライニングさせた。
どうやって彼がレッドノーム号をヘリオスへの衝突軌道に乗せたかだが、仕掛けは簡単でAIが参照するデータベース火星のデータを、昔の火星のデータと置き換えただけだった。
地球並みの大気を持つ今の火星と異なり、昔の火星は地球の1パーセント程度の大気圧しかなかった。今のデータと昔のデータのタイムスタンプを書き換える事で、AIはあっけないほど簡単に騙されてしまったのだ。
「ですが、このままあの機動兵器が大人しくしているとは思えないっすね」
大男が船内図をモニターに出すと、アルテローゼの位置が融合炉の側に表示された。
『もう軌道は確定したっす。今更融合炉を壊しても手遅れでやんす』
大男はククッと笑うが、アルテローゼが移動し始めるのを見て笑うのを止めた。
『第二艦橋とは、考えたっすね。でも第一艦橋を何とかしないと意味が無いっす。…念のために防備は固めておきますか…』
レッドノーム号は艦長がいなくなったため積極的な攻撃はできないが、防衛行動はできる。大男は端末を操作して、生き残っている武装で艦橋を護るようにAIに命じるのだった。
『はい』
『それはさっき説明したぞ』
『じゃあ、大気圏に突入しないように軌道修正する必要があるけど、そうするにはどうすれば良いかだけど…ぶっちゃけ、船のスラスターを使うしかないというのが俺の結論です。全長二キロの船の軌道をアルテローゼの推力で何とかできるとか無理です』
『『…』』
最悪、某アニメ映画のように船の外に出てアルテローゼで船の針路を変えようと思っていた二人は、ディビットの説明に押し黙るしかなかった。実際やったとしても、直ぐに軌道が修正されてしまっただろう。
『だが、船のスラスターを使うにも、レッドノーム号の制御は儂にはできないぞ』
レイフは魔力が足りず、レッドノーム号の制御AIを支配できていない。もしAIを支配していればここで悩んではいなかったのだ。
『船の制御を俺が奪えれば良かったんだけど、今からやっても時間切れで船は大気圏に突入しちゃいます』
『では、どうすればよいのです?』
『それでどうするかですが、…船のスラスターの制御をAIから奪っちゃいたいと思います』
ディビットはそう言って、通信モニターにレッドノーム号の船内図を表示する。そこには第二艦橋と書かれた部分に花丸が描かれていた。
『レッドノーム号には、そんな物があるのか?』
戦艦という物は様々な状況に対応する必要があり、その中でもダメージコントロールが重要である。艦橋が破壊されただけでコントロール不能とならないように、予備の艦橋を用意しておくのは当たりまえの事であった。
レイフがそんな常識的な事も知らなかったのは、彼が一番よく知っている船は帆船だったため、艦橋という物が存在しなかったからである。つまり艦橋の予備があるという事を全く思いつかなかったのだ。
『第二艦橋ですか? もしかして第三艦橋とかも…』
『レイチェルさん、そんな危険な部署は存在しません!』
レイチェルの疑問にディビットは即答する。レイチェルは何故かほっとした顔をしているが、その理由はレイフには分からなかった。
『それで、第二艦橋を抑えれば船を制御できるのか?』
船内図を見ると、第二艦橋までアルテローゼが移動できる通路が表示されている。全力で移動すれば、一分とかからずにたどり着けるだろう。
『残念だけど、第一艦橋が無事だと、第二艦橋からは何もできないようになっているんだ』
『では、第一艦橋を?』
『破壊するしかないんですよね』
レイフの問いかけに、ディビットは肩をすくめ両手を挙げた。
『…それしか手が無いのですね?』
『一番成功率の高い作戦ですね』
『では、やりましょう』
レイチェルは決断するが、
『この作戦だと、レイチェルが第二艦橋に残り、アルテローゼが外に出て第一艦橋を潰すことになるのか。レイチェルが危険ではないか?』
レイフはレイチェルが単独で第二艦橋に残ることに不安を感じるのだった。
『時間を考えると二手に分かれるしかないぞ。それにアルテローゼに乗って第一艦橋を潰す作業の方が危険だと思うが?』
『確かにそうかもしれないが…』
『ガードロボットの方は俺が何とかするからな。それと、作戦を始めないとタイムアップしてしまうぞ!』
ディビットは作戦が実行できるタイムリミットが残り少ないことを示すように、モニターにカウントダウンを表示する。
『分かった。しかし、儂がレイチェルが危ないと判断したら直ぐに作戦を変更するからな』
『ヘリオスを救うのが先決ですわ!』
『儂にはレイチェルの方が大事だがな。行くぞ』
アルテローゼはミサイルを抱えると、一目散に第二艦橋に向かっていった。
◇
「フゥ、何とかAIを騙せたっす」
禿頭の大男はため息をつくと、オペレータ席をリクライニングさせた。
どうやって彼がレッドノーム号をヘリオスへの衝突軌道に乗せたかだが、仕掛けは簡単でAIが参照するデータベース火星のデータを、昔の火星のデータと置き換えただけだった。
地球並みの大気を持つ今の火星と異なり、昔の火星は地球の1パーセント程度の大気圧しかなかった。今のデータと昔のデータのタイムスタンプを書き換える事で、AIはあっけないほど簡単に騙されてしまったのだ。
「ですが、このままあの機動兵器が大人しくしているとは思えないっすね」
大男が船内図をモニターに出すと、アルテローゼの位置が融合炉の側に表示された。
『もう軌道は確定したっす。今更融合炉を壊しても手遅れでやんす』
大男はククッと笑うが、アルテローゼが移動し始めるのを見て笑うのを止めた。
『第二艦橋とは、考えたっすね。でも第一艦橋を何とかしないと意味が無いっす。…念のために防備は固めておきますか…』
レッドノーム号は艦長がいなくなったため積極的な攻撃はできないが、防衛行動はできる。大男は端末を操作して、生き残っている武装で艦橋を護るようにAIに命じるのだった。
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