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第13話:宇宙の果て
Cパート(2)
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アイラが個室でガードロボットに襲われているその時、ディビットとケイイチは人が一人ようやく通れそうな狭い通路を進んでいた。
「しかし、こんな経路で本当に見つからずにコントロールルームまでいけるのか?」
「この経路はステーション建造時、作業員が移動するために作った隠し通路なんだ。本来ならステーションの建造が終わった後閉鎖されるはずだったんだが、なぜか残っている。だから監視カメラもセンサーもないから、AIにも見つからずにいけると思うぞ」
「そんな経路、どうしてお前が知っているんだよ」
「そりゃ、連邦宇宙軍のデータベースをハッキングして、ステーションの設計図データをダウンロードしたからだよ」
「それって、犯罪だろ…」
「俺が入れるようなセキュリティしか設定していない宇宙軍が間抜けなんだよ。大体公開されているデータと実際の建造時の設計図が異なるとか、宇宙軍も後ろ暗いことがあると言っているような物だ。管理AIすらその事実を知らないというのが凄いな」
ディビットがこの通路を見つけたのは、正式公開されているデータとの差異を見つけたからである。
「…このステーション大丈夫なのか?」
ディビットの説明を聞いたケイイチは、不安そうに辺りを見回すのだった。
「ケイイチ、何しているんだ。こうしている間にもアイラちゃんは一人でがんばってるんだ、とにかく急ぐぞ」
「分かったよ。それにしてもあんな手でAIをだませるって、魔法って凄いな」
「イリュージョンの魔法と言うらしいが、カメラもセンサーもごまかせるとかチート過ぎるわ」
二人が話しているように、アイラと一緒に個室にいるディビットとケイイチはイリュージョンの魔法で作り出された偽物であった。
最初は三人と一匹でこの経路を使って進むつもりだったが、通路はガオガオが通るには狭すぎることが分かり、そこでアイラが囮となって個室に残ることになった。そして二人が居なくなったことをどうやって誤魔化すか悩んでいた時、ガオガオが見せたのがイリュージョンの魔法だった。
イリュージョンの魔法で作り出された幻影は、誰かに触られない限り見破られない。そしてシールド魔法を使用しているガオガオに触れる物はいない。後はアイラとガオガオの魔力がどれだけ持つかだが、
「二人がコントロールルームに行くまでは持つ、いや持たせてみせるよ」
とアイラに言われててはディビットとケイイチは黙るしかなかった。
◇
《これで破壊されたガードロボットは百二十三体目になります》
ガオガオにより破壊されたガードロボットの残骸が、個室の前から運び出される映像を映し、AIはある存在にお伺いを立てた。
『当たり前だ。シールドの魔法で亀のように護りを固めているが、いつかは魔力は切れる。そうなるまで攻撃を続けろ』
しかし、ある存在は攻撃を続けるように命令を下す。
《しかし、これ以上ガードロボを消耗すると、次の定期船の補給を受けてもステーションの管理体勢に支障が出ますが》
『ふん、そんな事、儂は知らん。それにどうせ次は無いのだ。儂の命令に従え!』
《了解しました》
AIはガードロボットに攻撃続行を命じる。
しかし、AIもある存在も、ガオガオの側にいるケイイチとディビットがほとんど動いていないことに気付いていなかった。
◇
隠し通路を進んでいたディビットとケイイチは、コントロールルームの上に辿り着いてた。
「この下がコントロールルームだな」
「下には誰もいない。ディビット、コントロールルームに降りるか?」
天井パネルの隙間からコントロールルームの様子を確認したケイイチがそう提案したが、
「いや下に降りるのは止めよう。降りた途端ガードロボットが押し寄せるだろう。それより、この辺りにAIの制御コアに直結している通信ケーブルがあるはずなんだ、それを見つけて何とかAIと接触する方が良いだろう」
ディビットは首を横に振ると、隠し通路の周囲のケーブルを物色し始めた。
「なるほどね。俺にはどのケーブルがそうか分からないから、ディビットに任せるよ」
ケイイチはお手上げというポーズを取って、腰の拳銃を抜いて点検を始めた。
「…これも違う。アレは電力だし、これか!」
数分ほどケーブルを物色していたディビットは、ついにAIの制御コアに直結しているケーブルを見つけ出した。
「見つかったか。それでどうやってこれに繋げるんだ? ケーブルをぶった切るのか?」
ケイイチが何処から取り出したのか、サバイバルナイフを手にする。
「光ファイバーケーブルを切ってどうするんだよ。このケーブルをたどっていくと中継機がある。そこに細工をするんだ」
配線を追いかけていくと、ディビットの言う中継機にケーブルは吸い込まれていた。ディビットは鼻歌交じりに手なれた様子で中継機の外版を外していく。
「意外と簡単だな~」
ディビットの手際を見てケイイチはそんな感想を漏らす。
「簡単そうに見えるだろ。実際はそう簡単にはいかないんだよな~」
そう言いながらもディビットは光ファイバー接続端子が見える所まで中継機を分解していった。
そしてランドセルから大量の光ファイバーの束を取り出したディビットは、接続端子に合う物を選ぶと自分の端末に接続する。
「いつもそんな物を持ち歩いているのか?」
「まあ、ハード・クラックするなら準備しておくのは当然だろ。後はこっちの端子をここに接続してこのツールを立ち上げれば、AIに繋がるって寸法さ」
ディビットはにやりと笑い、端末に彼が自作したツールを立ち上げると、光ファイバーを接続端子に突き刺した。
「さて、AIちゃんとお話ししようか」
ディビットの手が流れるように端末の入力インターフェイスの上を舞い始めた。
「しかし、こんな経路で本当に見つからずにコントロールルームまでいけるのか?」
「この経路はステーション建造時、作業員が移動するために作った隠し通路なんだ。本来ならステーションの建造が終わった後閉鎖されるはずだったんだが、なぜか残っている。だから監視カメラもセンサーもないから、AIにも見つからずにいけると思うぞ」
「そんな経路、どうしてお前が知っているんだよ」
「そりゃ、連邦宇宙軍のデータベースをハッキングして、ステーションの設計図データをダウンロードしたからだよ」
「それって、犯罪だろ…」
「俺が入れるようなセキュリティしか設定していない宇宙軍が間抜けなんだよ。大体公開されているデータと実際の建造時の設計図が異なるとか、宇宙軍も後ろ暗いことがあると言っているような物だ。管理AIすらその事実を知らないというのが凄いな」
ディビットがこの通路を見つけたのは、正式公開されているデータとの差異を見つけたからである。
「…このステーション大丈夫なのか?」
ディビットの説明を聞いたケイイチは、不安そうに辺りを見回すのだった。
「ケイイチ、何しているんだ。こうしている間にもアイラちゃんは一人でがんばってるんだ、とにかく急ぐぞ」
「分かったよ。それにしてもあんな手でAIをだませるって、魔法って凄いな」
「イリュージョンの魔法と言うらしいが、カメラもセンサーもごまかせるとかチート過ぎるわ」
二人が話しているように、アイラと一緒に個室にいるディビットとケイイチはイリュージョンの魔法で作り出された偽物であった。
最初は三人と一匹でこの経路を使って進むつもりだったが、通路はガオガオが通るには狭すぎることが分かり、そこでアイラが囮となって個室に残ることになった。そして二人が居なくなったことをどうやって誤魔化すか悩んでいた時、ガオガオが見せたのがイリュージョンの魔法だった。
イリュージョンの魔法で作り出された幻影は、誰かに触られない限り見破られない。そしてシールド魔法を使用しているガオガオに触れる物はいない。後はアイラとガオガオの魔力がどれだけ持つかだが、
「二人がコントロールルームに行くまでは持つ、いや持たせてみせるよ」
とアイラに言われててはディビットとケイイチは黙るしかなかった。
◇
《これで破壊されたガードロボットは百二十三体目になります》
ガオガオにより破壊されたガードロボットの残骸が、個室の前から運び出される映像を映し、AIはある存在にお伺いを立てた。
『当たり前だ。シールドの魔法で亀のように護りを固めているが、いつかは魔力は切れる。そうなるまで攻撃を続けろ』
しかし、ある存在は攻撃を続けるように命令を下す。
《しかし、これ以上ガードロボを消耗すると、次の定期船の補給を受けてもステーションの管理体勢に支障が出ますが》
『ふん、そんな事、儂は知らん。それにどうせ次は無いのだ。儂の命令に従え!』
《了解しました》
AIはガードロボットに攻撃続行を命じる。
しかし、AIもある存在も、ガオガオの側にいるケイイチとディビットがほとんど動いていないことに気付いていなかった。
◇
隠し通路を進んでいたディビットとケイイチは、コントロールルームの上に辿り着いてた。
「この下がコントロールルームだな」
「下には誰もいない。ディビット、コントロールルームに降りるか?」
天井パネルの隙間からコントロールルームの様子を確認したケイイチがそう提案したが、
「いや下に降りるのは止めよう。降りた途端ガードロボットが押し寄せるだろう。それより、この辺りにAIの制御コアに直結している通信ケーブルがあるはずなんだ、それを見つけて何とかAIと接触する方が良いだろう」
ディビットは首を横に振ると、隠し通路の周囲のケーブルを物色し始めた。
「なるほどね。俺にはどのケーブルがそうか分からないから、ディビットに任せるよ」
ケイイチはお手上げというポーズを取って、腰の拳銃を抜いて点検を始めた。
「…これも違う。アレは電力だし、これか!」
数分ほどケーブルを物色していたディビットは、ついにAIの制御コアに直結しているケーブルを見つけ出した。
「見つかったか。それでどうやってこれに繋げるんだ? ケーブルをぶった切るのか?」
ケイイチが何処から取り出したのか、サバイバルナイフを手にする。
「光ファイバーケーブルを切ってどうするんだよ。このケーブルをたどっていくと中継機がある。そこに細工をするんだ」
配線を追いかけていくと、ディビットの言う中継機にケーブルは吸い込まれていた。ディビットは鼻歌交じりに手なれた様子で中継機の外版を外していく。
「意外と簡単だな~」
ディビットの手際を見てケイイチはそんな感想を漏らす。
「簡単そうに見えるだろ。実際はそう簡単にはいかないんだよな~」
そう言いながらもディビットは光ファイバー接続端子が見える所まで中継機を分解していった。
そしてランドセルから大量の光ファイバーの束を取り出したディビットは、接続端子に合う物を選ぶと自分の端末に接続する。
「いつもそんな物を持ち歩いているのか?」
「まあ、ハード・クラックするなら準備しておくのは当然だろ。後はこっちの端子をここに接続してこのツールを立ち上げれば、AIに繋がるって寸法さ」
ディビットはにやりと笑い、端末に彼が自作したツールを立ち上げると、光ファイバーを接続端子に突き刺した。
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