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第11話:空から来るもの
Bパート(2)
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「また巨人が倒されたのか」
「はい。今度は右翼の馬型の巨人が倒されました」
「…連邦軍も無能揃いではないという事だな」
さすがに二体目の巨人が倒されれば、イスハークも巨人だけの力では連邦軍を倒せないことを納得せざるを得なかった。
「だが、こちらも補給は終わった。主力の部隊と合流するまで、中央に向かった巨人は一旦停止させろ」
「わ、分かりました」
また怒鳴られるかとびくついていたオペレータは、イスハークの冷静な様子に安堵すると、命令を実行するために自席に走っていった。
「合流したら、今度こそ連邦軍を叩きつぶすぞ」
イスハークのかけ声を開始の合図として、革命軍のロボット兵器部隊は前進を開始した。
総数五千を超える部隊が、土煙を上げて一斉に前進する。それはまるで土の津波が進むようであった。
◇
連邦軍の中央部の指揮を執っていたアレクセイ中佐は、二体の巨人が進撃を止めたことに気づくと、すぐさま左翼と右翼の指揮官に連絡を取り付けた。
そして三人は3Dモニターで顔をつきあわせて、状況報告と今後の対応を検討する。
「ブルーノ少佐とアルフォンス少佐の部隊は、巨人を無事撃退できたのか。良くやってくれた」
「ああ、アルフォンス少佐の部隊が巨人を先に倒してくれたおかげで、こちらも攻略の糸口を掴めたんだ。おかげで部隊の被害は大きかったが、何とか巨人を倒せたよ」
ブルーノ少佐がそう言うが、左翼の指揮を執っていたアルフォンス少佐の顔色は優れなかった。
「確かに巨人を倒したが、それは私の功績ではない」
「「?」」
アレクセイ中佐とブルーノ少佐はアルフォンス少佐の発言に驚く。
「我々は巨人の出現でパニック状態になった。まともな抵抗すらできずに後退しかけたのだが、それを救ったのは第32武装偵察小隊の連中だ。あいつらは、ウィルスプログラムで各部隊からロボットの指揮権を取り上げると、見事な部隊指揮で巨人をワナに追い込んで倒したんだ」
アルフォンス少佐は、情けないことのようにため息を吐く。
「なるほど、また電子オタクがやらかした訳か。軍の回線をハックして指揮権を奪ったのだ、軍法会議は免れんな」
アレクセイ中佐は、アルフォンス少佐に同情するように頷いた。
「しかし、おかげで左翼は瓦解せず、巨人を倒すことができたのだ。連中を軍法会議にかけるのは辞めてほしいところだな」
「左翼が巨人を倒してくれなければ、私も巨人に勝てるわけが無いと思っていたから、巨人を倒そうと思わなかっただろうな。初戦の殊勲賞は第32武装偵察小隊の連中だろう」
第32武装偵察小隊を擁護するアルフォンス少佐にブルーノ少佐が同意する。
「まあ、その点は司令室が判断するだろう。…さて、問題なのはこの後中央に来るだろう革命軍の攻撃にどう対処するかだ。巨人二体に五千のロボット部隊…まともにやったら勝てないぞ」
アレクセイ中佐は第32武装偵察小隊の件を司令室に丸投げすることにして、ようやく本題の今後の方針について切り出した。
「私の部隊は、装輪戦車が百、多脚装甲ロボットが三百が行動可能だ」
ブルーノ少佐の指揮する右翼部隊は、馬型の巨人の攻撃よってその戦力を半数に減らしていた。
「こちらは装輪戦車が百八十、多脚装甲ロボットが五百だな」
「元からこちらの数は少ないのだ。まともに戦えば負けるのは分かっている。しかし、我らは職業軍人だ、戦力で負けているからといって革命軍の素人に簡単に負けては、給料泥棒のそしりはまぬがれんぞ」
アレクセイ中佐は渋い顔をして二人の顔を見返す。
「といっても、まだ巨人が二体残っている。それが五千の部隊と同時に突撃してくれば、支えきれないだろう」
「中央突破されれば、部隊は瓦解するな」
アルフォンス少佐とブルーノ少佐にも妙案はないようだった。
『それなら、こういう戦術を試してみないか』
突然、指揮車両のモニターが切り替わると、謎の声とともに戦闘シミュレーション・プログラムが表示される。
戦闘シミュレーション・プログラムは、軍の戦術を検討する場合に使われるモノで三人も当然よく知っていた。しかしそれを起動させたのは、この三人以外の誰かであった。
「…ディビットか?」
アレクセイ中佐には、こんな事をする者の心当たりは一人しかいなかった。
『まあ、誰でも良いじゃないかな。取りあえずこれを見てくれ』
戦闘シミュレーション・プログラムでは、革命軍が鋒矢陣形で突っ込んでくるのに対して、連邦軍は鶴翼の陣形を取り包囲殲滅すると言う戦術が表示されていた。
「…いや、幾ら革命軍が素人でも、こんな簡単な罠に引っかかるか?」
「だよな」
「士官学校の新入生でも引っかからないだろう」
三人は提示された戦術に即座に駄目出ししてしまった。
『それを引っかけるのが、司令官の役目でしょうが。相手は巨人を各個撃破されて慎重になっているはずだ。つまり数を武器に中央突破を狙ってくる。そこで上手く引き込むのがプロの腕前でしょうが。それに悩んでいる時間はもう残ってないよ』
謎の声は、そう言って偵察ドローンが拾ってきた敵の様子を映し出す。革命軍は二体の巨人を先頭に矢じりのような陣形で進み出していた。
「確かに、悩んでいる時間は無いか…。分かったこの戦術でいくとする。しかしこの戦術を成功させるには、ロボット部隊の制御を慎重に行う必要がある。しかし、それだけのスキルを持ったベテランはこの前の戦いで戦死してしまった。…つまり、ディビットの協力が必要だが、力を貸してくれるか?」
アレクセイ中佐が、そう言うと
『それは命令かな?』
謎の声はそう問いかけてきた。
「……いや、お願いだ」
少し悩んでから、アレクセイ中佐はそう答えた。
『命令は嫌いだけど、お願いなら聞いてあげるさ』
そう言って、謎の声の通信は切断された。
「聞いての通りだ、二人とも準備にかかるぞ!」
「「了解!」」
アレクセイ中佐の決断を受けて、アルフォンス少佐とブルーノ少佐も通信を切断すると、自分の部隊の再編に取りかかった。
「はい。今度は右翼の馬型の巨人が倒されました」
「…連邦軍も無能揃いではないという事だな」
さすがに二体目の巨人が倒されれば、イスハークも巨人だけの力では連邦軍を倒せないことを納得せざるを得なかった。
「だが、こちらも補給は終わった。主力の部隊と合流するまで、中央に向かった巨人は一旦停止させろ」
「わ、分かりました」
また怒鳴られるかとびくついていたオペレータは、イスハークの冷静な様子に安堵すると、命令を実行するために自席に走っていった。
「合流したら、今度こそ連邦軍を叩きつぶすぞ」
イスハークのかけ声を開始の合図として、革命軍のロボット兵器部隊は前進を開始した。
総数五千を超える部隊が、土煙を上げて一斉に前進する。それはまるで土の津波が進むようであった。
◇
連邦軍の中央部の指揮を執っていたアレクセイ中佐は、二体の巨人が進撃を止めたことに気づくと、すぐさま左翼と右翼の指揮官に連絡を取り付けた。
そして三人は3Dモニターで顔をつきあわせて、状況報告と今後の対応を検討する。
「ブルーノ少佐とアルフォンス少佐の部隊は、巨人を無事撃退できたのか。良くやってくれた」
「ああ、アルフォンス少佐の部隊が巨人を先に倒してくれたおかげで、こちらも攻略の糸口を掴めたんだ。おかげで部隊の被害は大きかったが、何とか巨人を倒せたよ」
ブルーノ少佐がそう言うが、左翼の指揮を執っていたアルフォンス少佐の顔色は優れなかった。
「確かに巨人を倒したが、それは私の功績ではない」
「「?」」
アレクセイ中佐とブルーノ少佐はアルフォンス少佐の発言に驚く。
「我々は巨人の出現でパニック状態になった。まともな抵抗すらできずに後退しかけたのだが、それを救ったのは第32武装偵察小隊の連中だ。あいつらは、ウィルスプログラムで各部隊からロボットの指揮権を取り上げると、見事な部隊指揮で巨人をワナに追い込んで倒したんだ」
アルフォンス少佐は、情けないことのようにため息を吐く。
「なるほど、また電子オタクがやらかした訳か。軍の回線をハックして指揮権を奪ったのだ、軍法会議は免れんな」
アレクセイ中佐は、アルフォンス少佐に同情するように頷いた。
「しかし、おかげで左翼は瓦解せず、巨人を倒すことができたのだ。連中を軍法会議にかけるのは辞めてほしいところだな」
「左翼が巨人を倒してくれなければ、私も巨人に勝てるわけが無いと思っていたから、巨人を倒そうと思わなかっただろうな。初戦の殊勲賞は第32武装偵察小隊の連中だろう」
第32武装偵察小隊を擁護するアルフォンス少佐にブルーノ少佐が同意する。
「まあ、その点は司令室が判断するだろう。…さて、問題なのはこの後中央に来るだろう革命軍の攻撃にどう対処するかだ。巨人二体に五千のロボット部隊…まともにやったら勝てないぞ」
アレクセイ中佐は第32武装偵察小隊の件を司令室に丸投げすることにして、ようやく本題の今後の方針について切り出した。
「私の部隊は、装輪戦車が百、多脚装甲ロボットが三百が行動可能だ」
ブルーノ少佐の指揮する右翼部隊は、馬型の巨人の攻撃よってその戦力を半数に減らしていた。
「こちらは装輪戦車が百八十、多脚装甲ロボットが五百だな」
「元からこちらの数は少ないのだ。まともに戦えば負けるのは分かっている。しかし、我らは職業軍人だ、戦力で負けているからといって革命軍の素人に簡単に負けては、給料泥棒のそしりはまぬがれんぞ」
アレクセイ中佐は渋い顔をして二人の顔を見返す。
「といっても、まだ巨人が二体残っている。それが五千の部隊と同時に突撃してくれば、支えきれないだろう」
「中央突破されれば、部隊は瓦解するな」
アルフォンス少佐とブルーノ少佐にも妙案はないようだった。
『それなら、こういう戦術を試してみないか』
突然、指揮車両のモニターが切り替わると、謎の声とともに戦闘シミュレーション・プログラムが表示される。
戦闘シミュレーション・プログラムは、軍の戦術を検討する場合に使われるモノで三人も当然よく知っていた。しかしそれを起動させたのは、この三人以外の誰かであった。
「…ディビットか?」
アレクセイ中佐には、こんな事をする者の心当たりは一人しかいなかった。
『まあ、誰でも良いじゃないかな。取りあえずこれを見てくれ』
戦闘シミュレーション・プログラムでは、革命軍が鋒矢陣形で突っ込んでくるのに対して、連邦軍は鶴翼の陣形を取り包囲殲滅すると言う戦術が表示されていた。
「…いや、幾ら革命軍が素人でも、こんな簡単な罠に引っかかるか?」
「だよな」
「士官学校の新入生でも引っかからないだろう」
三人は提示された戦術に即座に駄目出ししてしまった。
『それを引っかけるのが、司令官の役目でしょうが。相手は巨人を各個撃破されて慎重になっているはずだ。つまり数を武器に中央突破を狙ってくる。そこで上手く引き込むのがプロの腕前でしょうが。それに悩んでいる時間はもう残ってないよ』
謎の声は、そう言って偵察ドローンが拾ってきた敵の様子を映し出す。革命軍は二体の巨人を先頭に矢じりのような陣形で進み出していた。
「確かに、悩んでいる時間は無いか…。分かったこの戦術でいくとする。しかしこの戦術を成功させるには、ロボット部隊の制御を慎重に行う必要がある。しかし、それだけのスキルを持ったベテランはこの前の戦いで戦死してしまった。…つまり、ディビットの協力が必要だが、力を貸してくれるか?」
アレクセイ中佐が、そう言うと
『それは命令かな?』
謎の声はそう問いかけてきた。
「……いや、お願いだ」
少し悩んでから、アレクセイ中佐はそう答えた。
『命令は嫌いだけど、お願いなら聞いてあげるさ』
そう言って、謎の声の通信は切断された。
「聞いての通りだ、二人とも準備にかかるぞ!」
「「了解!」」
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