44 / 143
第6話:戦場はヘスペリア平原
Aパート(3)
しおりを挟む
アルテローゼと巨大獅子が対峙している中、安全圏まで退避した指揮車では、五人組がその様子を見守っていた。
「おいおい、あの巨大猫はレールキャノンの弾を避けてるぜ。撃たれる前に回避行動をとるとか予知能力者がパイロットなのか?」
ディビットは、巨大獅子の回避行動を分析すると、両手を万歳して驚きを表現していた
「いや、それも四足歩行の機動性があってこそだな。あの機動兵器の耐G性能はアルテローゼと同じか、それ以上だぜ。あれを作ったメーカは何処だよ。あれと連邦軍の戦車部隊が戦ったら、負けるぞ」
マイケルは、巨大獅子が横に跳ねて砲弾を回避したのを見て、あきれていた。
「いや、弾を反らすんじゃなくて回避しているってことは、避けなきゃ当たるって事だろ? 前に戦った巨人は、弾が当たらなかったからな。巨大獅子の方は、数打ちゃ当たるだろ」
ホァンは、多脚装甲ロボットのレーザー機銃や40ミリ・グレネード弾が巨大獅子に通じるか、巨大獅子の装甲の分析を始めていた。
「航空支援できたらレイチェルさんに感謝されるかな。司令部に連絡が付けば、攻撃ヘリ呼んでアルテローゼを支援させられるんだ。ディビット、何とか電場妨害を解除できないか?」
クリストファーは、戦闘ヘリで援護することでレイチェルに良いところを見せたいらしいが、戦闘ヘリの制御モニターは『NO CONNECT』と表示され、通信不能であることを示していた。
「ちょっと待てよ。近距離通信ができるのに、遠距離だけ妨害されてるんだ。妨害の発信源があの巨大猫とすると、その手段がおかしいんだよ」
ディビットは、クリストファーに言われるまでもなく指揮車の通信装置やECM/ECCMをチェックしていた。しかし、ディビットががんばっても、長距離通信が回復する気配はなかった。
普通の通信妨害であれば、ディビットの言うように偵察ドローンとの低出力の通信ができて司令部との高出力通信が妨害されるのはおかしい。つまり、巨大獅子は普通とは異なる手段で通信やレーダーを妨害していると、ディビットは考えていた。
「ああ、ついに肉薄されたぞ。本当に巨大ロボット同士で格闘戦をやるのかよ」
「機動兵器が殴り合うとか、旧時代のロボット映画の世界だよ」
「レイチェルさん頑張れ!」
そんなやりとりが指揮車内で行われてる間に、モニターにはグランドフォームとなったアルテローゼと巨大獅子が、今まさにぶつかり合おうとする光景が映し出されていた。
◇
レールキャノンの弾をかいくぐり、アルテローゼに近づいてきた巨大獅子。そのままの勢いでアルテローゼに襲いかかってるかと思ったのだが、なぜか100メートルほどの距離を挟んで立ち止まった。
「突然撃ってくるなんてひどいじゃないか。ガオガオがシールドを張ってなかったら、僕たち大変な目に遭っていたよ」
立ち止まった巨大獅子から聞こえてきたのは、どう聞いても子供の声だった。
「え、子供?」
『子供の声じゃな』
その事実にレイチェルは驚くが、レイフは意外と冷静に受け止めていた。
「どうして子供が乗っているのですか?」
レイチェルは、子供の声が聞こえてきたことにかなり動揺していた。自分が命を賭けて戦う相手が子供ともなれば、歴戦の兵士であっても動揺するのだ。ましてやレイチェルは、普通の兵士ですらないのだ。心が乱されないわけがなかった。
『ふむ、敵も汚い手を使ってくるの。少年、いや声からしたら少女というか幼女だな。しかし、少女兵を差し向けてくるとか、邪神信者と戦って以来のことだな』
一方レイフは、多少驚いたがそこまで動揺はしなかった。何故ならレイフは帝国の筆頭魔道士として様々な戦場を経験してきた。その中には年端も行かない子供を兵士としたり、生け贄として悪魔を呼び出して憑依させ戦わせたりするような連中もいたのだ。
『レイチェル、たとえ相手が子供であっても兵士であれば戦わねばならないのだ。それが軍という物なのだ。それにもしかすると、子供の声を聞かせてこちらの動揺を誘っているのかもしれないぞ』
レイチェルを励ますように言ってアルテローゼは、槍と盾を構え巨大獅子との格闘戦に備えるのだった。
「ですが、もし本当だったら。子供相手に戦うなんて、私には…無理ですわ」
レイチェルのスティックを握る手は、震えて汗ばんでいた。
『(これはレイチェルに戦わせるのは難しいか。新兵のかかる病の一種だな。) 分かったよレイチェル。お前は優しすぎるのだ。巨大獅子とは儂が戦う。お前には許可だけ出せば良いのだ』
「レイフは、AIだから冷静ですね。…ええ、そうですわね。私はレイフに言われたとおりにトリガーを引きますわ」
『任せておけ。大丈夫、レイチェルが望まぬ結果は出さぬよ』
「できれば、パイロットは殺さないでください」
レイチェルは、巨人のパイロットがレイフによって殺された事を知っている。そうしなければ殺されていたのは自分であり、レイフだった。そう割り切れれば良いのだが、レイチェルにとって戦いはまだ二度目でありそんな割り切りはできなかった。
『当たり前だが、儂は最善を尽くす。その結果がどうなるかは相手次第だな』
アルテローゼは、巨大な槍を巨大獅子の心臓に向かって構えるのだった。
「おいおい、あの巨大猫はレールキャノンの弾を避けてるぜ。撃たれる前に回避行動をとるとか予知能力者がパイロットなのか?」
ディビットは、巨大獅子の回避行動を分析すると、両手を万歳して驚きを表現していた
「いや、それも四足歩行の機動性があってこそだな。あの機動兵器の耐G性能はアルテローゼと同じか、それ以上だぜ。あれを作ったメーカは何処だよ。あれと連邦軍の戦車部隊が戦ったら、負けるぞ」
マイケルは、巨大獅子が横に跳ねて砲弾を回避したのを見て、あきれていた。
「いや、弾を反らすんじゃなくて回避しているってことは、避けなきゃ当たるって事だろ? 前に戦った巨人は、弾が当たらなかったからな。巨大獅子の方は、数打ちゃ当たるだろ」
ホァンは、多脚装甲ロボットのレーザー機銃や40ミリ・グレネード弾が巨大獅子に通じるか、巨大獅子の装甲の分析を始めていた。
「航空支援できたらレイチェルさんに感謝されるかな。司令部に連絡が付けば、攻撃ヘリ呼んでアルテローゼを支援させられるんだ。ディビット、何とか電場妨害を解除できないか?」
クリストファーは、戦闘ヘリで援護することでレイチェルに良いところを見せたいらしいが、戦闘ヘリの制御モニターは『NO CONNECT』と表示され、通信不能であることを示していた。
「ちょっと待てよ。近距離通信ができるのに、遠距離だけ妨害されてるんだ。妨害の発信源があの巨大猫とすると、その手段がおかしいんだよ」
ディビットは、クリストファーに言われるまでもなく指揮車の通信装置やECM/ECCMをチェックしていた。しかし、ディビットががんばっても、長距離通信が回復する気配はなかった。
普通の通信妨害であれば、ディビットの言うように偵察ドローンとの低出力の通信ができて司令部との高出力通信が妨害されるのはおかしい。つまり、巨大獅子は普通とは異なる手段で通信やレーダーを妨害していると、ディビットは考えていた。
「ああ、ついに肉薄されたぞ。本当に巨大ロボット同士で格闘戦をやるのかよ」
「機動兵器が殴り合うとか、旧時代のロボット映画の世界だよ」
「レイチェルさん頑張れ!」
そんなやりとりが指揮車内で行われてる間に、モニターにはグランドフォームとなったアルテローゼと巨大獅子が、今まさにぶつかり合おうとする光景が映し出されていた。
◇
レールキャノンの弾をかいくぐり、アルテローゼに近づいてきた巨大獅子。そのままの勢いでアルテローゼに襲いかかってるかと思ったのだが、なぜか100メートルほどの距離を挟んで立ち止まった。
「突然撃ってくるなんてひどいじゃないか。ガオガオがシールドを張ってなかったら、僕たち大変な目に遭っていたよ」
立ち止まった巨大獅子から聞こえてきたのは、どう聞いても子供の声だった。
「え、子供?」
『子供の声じゃな』
その事実にレイチェルは驚くが、レイフは意外と冷静に受け止めていた。
「どうして子供が乗っているのですか?」
レイチェルは、子供の声が聞こえてきたことにかなり動揺していた。自分が命を賭けて戦う相手が子供ともなれば、歴戦の兵士であっても動揺するのだ。ましてやレイチェルは、普通の兵士ですらないのだ。心が乱されないわけがなかった。
『ふむ、敵も汚い手を使ってくるの。少年、いや声からしたら少女というか幼女だな。しかし、少女兵を差し向けてくるとか、邪神信者と戦って以来のことだな』
一方レイフは、多少驚いたがそこまで動揺はしなかった。何故ならレイフは帝国の筆頭魔道士として様々な戦場を経験してきた。その中には年端も行かない子供を兵士としたり、生け贄として悪魔を呼び出して憑依させ戦わせたりするような連中もいたのだ。
『レイチェル、たとえ相手が子供であっても兵士であれば戦わねばならないのだ。それが軍という物なのだ。それにもしかすると、子供の声を聞かせてこちらの動揺を誘っているのかもしれないぞ』
レイチェルを励ますように言ってアルテローゼは、槍と盾を構え巨大獅子との格闘戦に備えるのだった。
「ですが、もし本当だったら。子供相手に戦うなんて、私には…無理ですわ」
レイチェルのスティックを握る手は、震えて汗ばんでいた。
『(これはレイチェルに戦わせるのは難しいか。新兵のかかる病の一種だな。) 分かったよレイチェル。お前は優しすぎるのだ。巨大獅子とは儂が戦う。お前には許可だけ出せば良いのだ』
「レイフは、AIだから冷静ですね。…ええ、そうですわね。私はレイフに言われたとおりにトリガーを引きますわ」
『任せておけ。大丈夫、レイチェルが望まぬ結果は出さぬよ』
「できれば、パイロットは殺さないでください」
レイチェルは、巨人のパイロットがレイフによって殺された事を知っている。そうしなければ殺されていたのは自分であり、レイフだった。そう割り切れれば良いのだが、レイチェルにとって戦いはまだ二度目でありそんな割り切りはできなかった。
『当たり前だが、儂は最善を尽くす。その結果がどうなるかは相手次第だな』
アルテローゼは、巨大な槍を巨大獅子の心臓に向かって構えるのだった。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
悠久の機甲歩兵
竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。
※現在毎日更新中
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる