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第2章 導かれし王編

第九十九話 アルタシア

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「起きろ」

 頭がガンガンする……もう少し寝かせてくれよ……。

「起きろって」

 ドラゴンにゆさゆさされて、ようやく起きる決意をする。ゆっくり起き上がると、そこにはブリちゃんがいて、その奥には村長もいた。

「よく寝れたか?」

 ブリちゃんの声が頭を壊すかのように響く。なんでこんなに頭痛いんだろう、疲れているのかな?
 そう思ったが、正解は実に単純だった。
 時計の針は朝の三時を指していた。たしか昨日寝始めたのはちょうど零時くらいの時だった。ということはだ。

「まだ三時間しか経ってないじゃないか!」
「えっ? ああ、忘れてた。人間はもっと寝るんだったな。ドラゴンは普通三時間しか寝ないからさ」
「殺す」

 俺は殺意をあらわにしてブリちゃんに突っ込んでいった。

「おい、ちょっと待てって!?」
「問答無用だこの野郎!」

 俺はブリちゃんの頭を思いっきり殴った。まあ、ブリちゃんもこの程度で死ぬような雑魚ではないし、大丈夫だ。
 ということで、村長さんにあと五時間したら起こしてくれと言ってもう一度寝た。
 ブリちゃんが覚えとけよとかなんとか言ってたけど、ガン無視して寝させていただきました。

 五時間後、村長さんに起こされ、外に出た。途中で一度起こされたからまだ少し疲れは取れきっていない感じがするが、寝た程度で完全に疲れが取れるような都合の良い身体はしていないので、いつも通りって感じだ。

「それでは、アルタシアに連れていってくれ」
「じゃあ、行くか」

 村長に乗せてもらってアルタシアのほうに向かった。ブリちゃんと違ってゆっくり行ってくれたので、乗り心地がよかった。
 そして、遠い場所というわけでも無かったので、一時間もせずにアルタシアに着いた。
 と言っても、アルタシアの中に入ったわけではない。いきなりドラゴンが入ってきたらびっくりされて撃ち落とされかねないからな。もちろん撃ち落とそうとして負けるのは確実にアルタシアのほうではあるが。

 とりあえず、話し合いをするためにアルタシアで大きな力を持っているギルドのほうに向かった。

「こんにちは」
「荒巻様ではないですか!? 本日はどのようなご要件で?」
「少しギルドマスターと話したいのですが」
「わかりました。少々お待ちください」

 この前ギルドを救ったのが効いているのだろう、すぐにギルドマスターを呼んできてくれた。ダンディーな感じのかっこいい人だったからよく覚えている。もはや懐かしい顔だ。

「ギルドマスター、お久しぶりです」
「荒巻様、本日はなにかございましたか?」
「そんな堅苦しくしなくて大丈夫ですよ」
「いえいえ、英雄様に対してそんな無礼なこと出来ませんよ」

 うーん、そんなに堅苦しくされてもこっちも気持ち悪いんだけどな。まあいいか。それはそれで楽しいっちゃ楽しいし。

「今回はこの一帯を統治させようと思っている者を連れてきたので、ご挨拶にと思いましてね。ちょっと驚かせてしまうかもしれませんが」
「英雄様が選んだ方なら何も問題ないですよ」
「それなら良かったです。呼んできますので、この辺の人には伝えておいて下さい。どんなやつが来ても攻撃はしないでくれと」
「……ええと、人……ですよね?」
「ドラゴンです」
「……わかりました、いますぐに伝えます」

 うん、まあその反応が正しいと思うよ。俺が英雄じゃなかったら帰ってくれと言われてもおかしくなかったと思う。まあつまり英雄最高!

「とりあえず、許しを貰ったからギルドマスターと話をしに行こう」
「わかった、と言いたいところだが、場所は大丈夫なのか?」
「大丈夫、ちゃんと話しておいたから」

 街の中にドラゴンが話し合える場所はさすがにない、ということで近くの森のひらけているところで待ち合わせてもらった。
 少しだけ遠いので、そこまでまた村長に乗せてもらい行くと、まだギルドマスターは来ていなかった。連絡やらなんやらで忙しいのと、普通に遠いんだろうな。

 村長と喋りながら待っていると、すぐにギルドマスターとその他二人の女性が来た。

「こちらはソフィ、こちらはルィと言います。この二人は王様との連絡係として連れてきました。そして、私はギルドマスターのレストです」
「俺はレグイと言う。実は俺もつい先程王になってくれと言われて、勝手がわからんのだが、よろしく頼む」

 互いに自己紹介が終わり、俺が王の統治する範囲と権力などの話をした。
 範囲は十個のギルドのうち首都にしようと思っている一つを除いた九つで均等になるように大体で決めた。反対されたらその時考えようとしていたのだが、両方が納得してくれたので、そのままいくことにした。
 そして、権力面では人間側に議会を作らせ、議会と王の権力が同じくらいになるようにと言っておいた。その調整はギルドマスターや王、つまりレストさんやレグイに自由にやらせることにした。一応報告だけしてもらうように魔王様製の精鋭のロボットを渡しておくつもりではあるが。

 他にもなんだかんだ話し合ったが、所詮机上の空論になってしまうので、やっていくうちに慣れてしまう方がいいという結論が出た。
 ということで、とりあえず三日後から王として活動してもらう予定だ。

「では、また後ほど」
「みんなに知らせることだけよろしくお願いします」
「任せてください」

 とりあえず、報告しに魔王様の元へ戻ろう。
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