41 / 54
40俺も行くからな!
しおりを挟むそれから話は早かった。
アルナンドがみんなにプリムローズが祖母の墓参りをしたいと言っていると話をするとみんなは仕事を休むことも墓参りに行く事にも賛成してくれた。
「プリムローズどうして今まで黙っていたのですか?あなたはもう自由になったんです。思うことをすればいいんです」
ダイルはまるで兄のように優しい口調でプリムローズに言う。
「そうだ。俺達がそんな狭い了見の男に見えるか?おばあちゃんの墓参り?早く行ってやれよ」
「そうだ。なぁ俺達も一緒に行けないか?せぶりの森なんて久しぶりだよな」
レゴマール、ブレディも後押しする。
「みなさん、せぶりの森知ってるんです?」
プリムローズは驚く。
「ああ、竜人は番を求めてるからあちこちの国を飛び回るんだ。そうやって国の空を飛ぶことが加護になってゼフェリス国二は他国から加護のお礼としてたくさんの金が入って来るって仕組みなんだ。メルクーリ国はとなりだからしょっちゅう飛び回ってたしな、せぶりの森なんか庭みたいなもんだ」
「でも、旨い事回ってるよな。俺達は番を求めて探し回っているだけなのに他の国からしたらそれが加護になるって言うんだからさぁ」
「なぁ。ハハハ」
ふたりが目を合わせカラカラ笑う。
プリムローズは少し引いた。
(そうだったんだ。知らなかった。竜人に取ったら何でもない事か。ううん。でも、番をみつけるのは竜人の究極の願いだって聞いた事があるから彼らの取ったらすごく大切な事なんだろうけども…加護がそんな簡単な事だったとは…)
「そうなんですね…ハハハ」
プリムローズの顔はかなり強張っていたらしくピックが慌ててレゴマールとブレディを制する。
「ちょっとみんな。プリムローズが驚いてるじゃないか。ふたりともあまり変なこと教えないでよ。いいからここは何にも気にせずに行ってくればいいよ」
ピックは相変わらず優しい弟みたいに言ってくれる。
「みんなありがとう。そう言ってもらえると安心して行って来れます。じゃあ、仕事は今のところ急ぎはないでしょうから、明日にでも出発しますね。そうとなれば私カイトに知らせて来ます」
「あっ、俺がカイトに連絡して来てやるよ。プリムローズは待ってろ」
レゴマールがそう言って縁結び処を出て行く。
「では、お言葉に甘えて…みなさん本当にありがとう」とは言ったものの。
(カイトすぐに都合つくのかしら?まあ、無理なら行ける日まで待てばいいんだし)
プリムローズはこの際思い切ろうとした。
そうと鳴ったら仕事を片付けておこうとした時だった。
「プリムローズ。わかってるだろうが俺も行くからな」
「えっ?アルナンドも一緒に来るつもり?どうしてです?」
「おい、男とふたりきりで旅をするつもりか?そんな事を未婚の女にさせられるわけがない。俺はここの責任者だ。従業員の安全を守る義務がある」
「そんなの…やたらと女性社員に言い寄るのって私のいた世界じゃセクハラって言うんですよ。アルナンドっていやらしいおじさんみたい」
プリムローズは喜ぶどころか気分を悪くしてアルナンドの瞳より冷たい視線を送って来る。
「せ・く・は・ら?」
「職場の人を不快な気分にされる事を元の世界でそう言うんです!」
「な。何でそうなる?俺はプリムローズの身の安全が心配なだけで…」
そんな態度にアルナンドはたじろぐ。
「まあまあ、プリムローズもそんなに言わずに…そうですね。カイトさんもいらっしゃるならいっそ4人で一緒に飛んでいけばいいのでは?」
ダイルが見かねて助け舟を出して来るのでプリムローズはさらに腰に手を当ててふたりを睨む。
「そうだな。ダイルお前いいことに気づいた。プリムローズ。お前は俺が乗せて行く。カイトは…そうだな。ブレディお前がいけ」
「えっ?いきなり何の話だ?」
「ブレデイ話を聞いていなかったのですか。せぶりの森まで馬車で行くのではなく竜化して飛んでいくのですよ。アルナンドはカイトを乗せてやれとおっしゃったんです」
「俺が男を背に乗せろだって…勘弁しろよ」
「これは竜帝としての命令だ。いいなブレデイ。カイトをのせてせぶりの森まで行くんだ」
アルナンドの紫の瞳がキラリと光る。
さすがのブレディもさっと顔色が悪くなる。
「わ、わかった。もういいから、そんなに睨むな。ほら、アルナンド。プリムローズが…」
アルナンドはそう言われてすぐにはっとしたらしく紫の瞳からダイアモンドのような輝きがすっとなくなるとプリムローズの方に向き直った。
そしてまるで子供を諭すように優しく話しかける。
「なっ、これで問題解決だろう。プリムローズたちは俺達が送り迎えをする。4人で一緒に行こう。な?」
アルナンドは背をかがめて滅多に使わない表情筋を使ってにこりと微笑む。
その仕草は他の者にはとても見てはいられるものではなかったが…
プリムローズは口をつぐんだまま。
(これって何にも解決してないじゃない。まあ、でも、4人なら…それに竜の背中に乗れるなんてめったにない経験かもじゃない)
「そうですね。せっかくのお申し出ですから、お断りするのも…では、お願いします」
突然アルナンド以外の4人から拍手が沸き起こる。
プリムローズは一体何の拍手かと突っ込みたくなったがやめておく。
「では、皆さん仕事の事や送り迎えの事よろしくお願いします」
(それにしてもいいのかな…まっ、マグダのお墓参りはまんざら嘘じゃないし、宝珠の事は…まぁ話さなくてもいいわよね。それにしてもこの人達どこまでお人好しなんだろうなぁ。でも、すごくうれしい)
プリムローズはみんなにありがとうとお辞儀をして微笑むとまた仕事を始めた。
10
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
多産を見込まれて嫁いだ辺境伯家でしたが旦那様が閨に来ません。どうしたらいいのでしょう?
あとさん♪
恋愛
「俺の愛は、期待しないでくれ」
結婚式当日の晩、つまり初夜に、旦那様は私にそう言いました。
それはそれは苦渋に満ち満ちたお顔で。そして呆然とする私を残して、部屋を出て行った旦那様は、私が寝た後に私の上に伸し掛かって来まして。
不器用な年上旦那さまと割と飄々とした年下妻のじれじれラブ(を、目指しました)
※序盤、主人公が大切にされていない表現が続きます。ご気分を害された場合、速やかにブラウザバックして下さい。ご自分のメンタルはご自分で守って下さい。
※小説家になろうにも掲載しております
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃
紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。
【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる