14 / 54
13これって前世で言うところのシェアハウスってやつですね
しおりを挟むカイトに会いに行った帰りダイルは気を利かせてプリムローズに必要な物を買いに寄ってくれた。
明日から仕事で着るシンプルなワンピースドレスを数枚と下着やドロワーズなど数枚、それに寝間着まで。
住まいになる屋敷に帰って来ると、ついでにこれも必要だろうと香りのいい石鹸やブラシなどを渡された。
プリムローズは「そんなことまでして頂いては」と断ったがダイルは聞く気はなかったらしく無理やり押し付けられた格好になった。
このままでは気が済まない。
「ダイルさん。ではこれらはお給料から引いて頂くと言うことでお願いします」
「そんな事言わないで下さい。これからプリムローズにはお世話になるんですから、気にしないで下さい」
「でも、ほんとに困りますから」
「いいえ、その代わり婚活アドバイザーの方をよろしくお願いしますよ」
「じゃあ、せっかくのご厚意ありがたくいただきます。では、部屋に戻ります」
「ええ、夕食は一緒に食べませんか?ダイニングルームに7時ではどうでしょう?」
「でも、夕食はどなたが作るんです?」
「一応、交代で…今日は私の担当なので男ばかりで騒々しいとは思いますがそこはご勘弁と言うことでお願いできれば…」
ダイルは苦笑する。
(確かに、男5人きっとすごい食欲と騒がしさなんだろうな。でも、私賑やかなの嫌いじゃないし…)
子供の頃は祖母の家にはいつも大勢の人が出入りしていて賑やかだったから。
「構いません。私、にぎやかな方が好きなので…じゃあ、私も何かお手伝いさせて下さい。これからお世話になるんですから」
「ええ、まあ今日はお疲れでしょうから、プリムローズは休んでいて下さい。これからはいやでも掃除や洗濯や食事の当番に入ってもらうことになるでしょうからその時はお願いします。あっ、でも掃除とか食事作れるんですか?あっ、失礼しました」
「いえ、ここ数年はやっていませんでしたが、祖母と暮らしていた頃は何でもやっていたので、でもしばらくは失敗するかもしれませんね。なのでまた色々教えて頂けたら助かりますけど」
「ええ、もちろんです。何でも聞いて下さい。遠慮なんかしなくていいですからね」
(ダイルさんって優しい。こんな人が旦那さんになったら素敵だろうな…いや、私ったら)
プリムローズは部屋に戻ると買ってきたものを片づけたり、出してもらったシーツでベッドを整えたりした。
突然扉がノックされた。
「はい、どなた?」
「ピックだけど入っていい?」
「ええ、どうぞ」
ピックがこれまた子ウサギみたいにぴょんと跳ねるように入って来た。
「プリムローズ何か手伝うことはない?」
部屋の中をきょろきょろ見回す。
「ああ、大丈夫です。ベッドとかもきちんと出来たしすべて終わりましたから」
「なんだ。もうやっちゃたの?僕、手伝おうと思って張り切ってたのに…」
しょんぼりうなだれるピックに何だか悪いことをした気分になる。
「ありがとうございます。でも、自分のことですから。あっ、皆さんもここに住んでるんですよね?ピックさんのお部屋は?」
「ああ、僕の部屋は真向かいだよ。ねぇ、ピックって呼んでよ。それに僕の部屋見たくない?」
「いえ、そんな失礼なことは出来ません。部屋の場所だけ教えてもらえればピック…」
「そう?まあ、ピックって呼んでくれたからあまり無理は言えないかな。じゃや、部屋の教えるから来て」
ピックはプリムローズの手をさっと取ると一緒に部屋を出て真向かいの部屋が自分の部屋だと教えてくれた。
そしてレゴマールの部屋がピックの隣でブレディの部屋はプリムローズの隣だと教えてくれた。2階の各部屋には手狭だがシャワールームが付いている。
ちなみにアルナンドとダイルの部屋は1階で、ダイニングルームにリビングルームや書斎、洗濯室やバスルームも1階にあると教えてくれた。
「ここってすごい大きなお屋敷なんですね。こんな所良く借りれましたね」
「お金はアルナンドが全部出してくれたんだ。アルナンドは竜帝の息子だけど色々あって辛い幼少期を過ごしたんだ。そんな時期に知り合った僕たちはアルナンドとはかけがえのない絆で結ばれてて彼が竜帝になってもその関係は変わることはなかったんだ。だからこうやって一緒に嫁探しをしてるって事なんだけど」
「じゃあ、5人はかけがえのない友達って事ね。羨ましいな、そんな友達と一緒に暮らしてるなんて…」
「プリムローズ君ももう僕たちのかけがえのない友人になったんだよ。今日からよろしくね」
ピックが何気なくそんな言葉を言ったせいでプリムローズの胸はうれしさでいっぱいになる。
「え、ええ。すごくうれしいわピック。これからよろしくね」
そんなところに「「「ただいま!」」」とアルナンド、ブレディ。レゴマールが帰って来た。
「そろそろ夕食だ。プリムローズ一緒に降りようか」
ピックはまた手を差しだしたが、さすがにそこまでは出来ないと断った。
11
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃
紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。
【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
多産を見込まれて嫁いだ辺境伯家でしたが旦那様が閨に来ません。どうしたらいいのでしょう?
あとさん♪
恋愛
「俺の愛は、期待しないでくれ」
結婚式当日の晩、つまり初夜に、旦那様は私にそう言いました。
それはそれは苦渋に満ち満ちたお顔で。そして呆然とする私を残して、部屋を出て行った旦那様は、私が寝た後に私の上に伸し掛かって来まして。
不器用な年上旦那さまと割と飄々とした年下妻のじれじれラブ(を、目指しました)
※序盤、主人公が大切にされていない表現が続きます。ご気分を害された場合、速やかにブラウザバックして下さい。ご自分のメンタルはご自分で守って下さい。
※小説家になろうにも掲載しております
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる