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11新しい住まいに案内される

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 何だか慌ただしく紹介所を出ると通りの向かいにある建物に連れて行かれた。

 大きな門をくぐり広い庭を向けると立派な二階建てのお屋敷が立っていた。

 「あの、ここは?」

 プリムローズは不安を隠しきれずダイルに尋ねる。

 「ああそうですね。元はお金持ちの屋敷だったらしいんですが、その金持ちの商会がつぶれて自殺したらしいんです。屋敷は人手に渡って貸家として出されたんですがこんな大きな屋敷に借りても付かないらしくて、ちょうどお手頃価格だったもので。それでみんなここに住むことにしたんです。あっ、部屋はたくさんありますから何も心配いりません」

 プリムローズは少し引く。

 (ダイルさん、借り手がいないのは自殺した屋敷だからですよ。そんなの竜人は気にしないのかな?もう、幽霊とかわたし苦手なんだけど)

 「あの…ここに住んでて何か変わった事はありませんか?例えば夜突然訳の分からない音が聞こえて来るとか、人の話し声が聞こえるとか」

 「いいえ、まったくありませんよ。竜人にも死んだ人への礼って言うものがあるんです。きちんとお祓いをして亡くなられた方の霊をお慰めしてこの屋敷に入りましたので何の心配もありませんよ」

 「そ、そうなんですか。良かった。私そう言うの苦手で」

 「もし、恐ければいつでもご一緒しますよ。実は私あなたのこと結構気に入ってますので」

 「あはっ、それはちょっと…」

 (さらりとそういうことを言う?だが、よく考えてみれば精神年齢29歳の私にとってダイルくらいの落ち着いた感じの男性との交際は願ってもない事ではないのだろうか?いやいや…)

 そんな事が頭をよぎったが無視した。


 2階の部屋の案内されて驚く。

 そこはすごく広い部屋で窓側にはバルコニーがある。部屋はリビングと寝室小ぶりだがシャワールームも完備で家具も年代物の使いやすそうなものばかりだった。

 ソファーに座ってやっと少し落ち着くがふとカイルに無事を知らせていないと気づく。

 (しまった。カイル心配してるわよね。これからちょっと出かけて来よう)

 一応住所を聞いてはいるがセトリアを出歩くのはほとんど初めてなのでダイルに尋ねる。


 「プリムローズ。知らない場所にひとりで出掛けると言うのは危険です。私も一緒に行きます。そこに書いてある住所ならわかりますので」

 「でも、ダイルさんにそこまでしてもらっては、申し訳ありません。地図を書いていただければひとりで行けますから」

 「いいえ、そういうわけには。あなたはわが社の大切な社員なんですから」

 ダイルはプリムローズと一緒に通りに出ると辻馬車を捕まえて行き先を告げた。

 馬車は目的地を目指して走り出した。

 カイルの働くニップ商会はこの辺りでは有名な織物を扱っている会社だった。カイルはニップ商会の仕立て屋で働いている。

 他にも機織り工房も持っているし、セトリアにある港から他の国との取り引きもしているらしい。

 プリムローズは思う。

 (ニップ商会にはたくさんの人が働いているわ。港で働く男達ってきっと出会い少ないだろうし、もしここで縁結び処を宣伝できればきっとたくさんの人が会員になってくれるのではないかしら。カイルに聞いてみよう。それに確かローリーも機織り工房で働いていたはずよ)

 そう考えたらカイルに会うのが楽しみになって来た。



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