魔手 ~Magic Hands〜

マシュー

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第11話

ディクシオン

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ピーシュの案内で魔書ディクシオンに会うために再び歩き始めた勝利と香音。
香音はひとりワクワクしていた。

「先輩、ディクシオンに会うの楽しみですね!どんな本なんですかね?本が喋るなんておとぎの国みたいですねー。」

「香音ちゃん、一段とテンション上がってるじゃん。ってか動物が喋ってる時点ですでにおとぎの国だよ!」

「ふふふ。カツ殿、上手いこと仰いますね。」
ピーシュは少し笑いのツボに入った。

「別に上手くねぇよ!」
勝利は照れ隠しで強がった。

「それは失礼しました。」

「確かに、そんなに面白くはなかったですね。」
香音の笑いのツボには入らなかったようだ。

「香音ちゃんに言われたら傷ついちゃうなぁ!」

「あははは、冗談ですよ~!まぁまぁでした。」

「まぁまぁかい!」
勝利は香音の冗談にツッコミをいれた。


すると、そうこうしているうちにピーシュの足並みがぴたっと止まった。
それに気付いた2人は前を見ると目の前の壁には大きな凹みがあいており、透明のガラスで塞がれている。


「さぁ、お待たせしました。この中に、魔書ディクシオンが保管されています。ガラス越しから中の様子がご覧いただけます。さぁお二人共こちらへどうぞ。」

ピーシュに言われるがまま、2人はガラス越しから中を覗いた。

「へぇ~、これが魔書かぁ。思ってたより普通の分厚い辞書みたいだなぁ。」

「ホントだぁ、一見普通の辞書ですねぇ。」


「そうですね。見た目は分厚い辞書のように見えますが、実際に手に取って見て下さい。」


「でもよ、このガラスどうやって開けるんだ?結構分厚くて頑丈そうなガラスだけど。」


「左様でございます。魔書保護法により定められた万全の特性防犯ガラスを使用しておりますので、そう簡単にはあけられません。」

「はっ?じゃあどうやって手に取るんだよ!」

「カツ殿、よく考えて下さい。あなたの両手は今、何の手になっているんですか?」

「え?ま、魔手だけど?それが何なんだよ?」


「先輩!私わかりました!先輩の魔手は頭に浮かんだモノを手から出すことが出来ますよね?それはきっと、見たことがあるモノなら何でも出せんるじゃないですか?」

「ってことは、そうか‼︎今目の前にある魔書を俺が頭の中で想像すれば良いんだな!?」

「流石はカツ殿、ご名答。ではやってみて下さい。」


「よし!分かった‼︎」

勝利はそっと目を閉じて、頭の中で魔書をイメージした。すると、勝利の広げた両手から魔書が出てきた。


「うおーー‼︎ピーちゃん!香音ちゃん!やったぞぉ‼︎俺の魔手で魔書が出せた‼︎」


「お見事です‼︎カツ殿、第1関門合格です‼︎」

「合格⁇えっ?どういう事?」

「試験はすでに始まっていたのです。香音さんが魔書の声が聞こえた時から。
そして2人は導かれ、この魔書を手にしたのです。」


「なんかよくわかんねぇけど、とにかくこれで魔手のコントロール方法が学べんだよな?」

「いえ、まだ仕上げが残っています。カツ殿が出したこの魔書を香音さんに手渡して下さい。」

「あぁ、分かった。」
勝利は香音の両手に魔書を乗せた。

魔書の表紙を見ると六芒星と六角形が重なった図形が描かれている。


「ピーちゃん、香音ちゃんに手渡したぜ。」

「はい、これで少し待ちましょうか。魔書が目覚めるはずです。」


「えっ!魔書は今まで寝てたの?」

「そうです、先程、香音さんが魔書の声が聞こえたというのは、実は魔書の寝言だったのです。寝言が聞けるのはかなりレアですよ。」

「ウケる!香音ちゃんは魔書の寝言聞いたの?それ面白いなぁ‼︎」


「先輩!なんか分かんないけどムカつく‼︎」

「ごめんごめん~。冗談だよ~!」

「さっきの仕返しですね?」

「まっ、そういう事になるね~。」

「やっぱムカつく~ぅ。」


その時、香音の両手の上の魔書が一瞬だけピクッと動いた。

「あっ!今、魔書が動いたよ?」

「香音さん、じっとしていて下さい。そろそろ魔書がお目覚めですよ。」


すると表紙に描かれた六芒星の中に目と口が現れた。目はパチパチ、口はパクパクと動くと、大きく口を開けて「ふぁ~ぁ。」とあくびをした。

「んぁ~、よく寝た~‼︎なんだぁ?もう朝かぁ?ん?」

とうとう魔書が目覚めた‼︎





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