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第10話
リーダー
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ピーシュは気持ちを落ち着かせるために大きく息を吸い込み、深く吐き出した。そして香音の手をそっと離すと、香音の目を真っ直ぐに見つめた。
「香音さん、彼の名はディクシオンといいます。これから会う魔書の名前です。」
「ディクシオン?」
「はい。彼の話をする前にまず、人間のお二人には、そもそも魔書というモノが何なのかをご説明しておく必要があります。」
「ホントだ!俺たちワケも分からずこの洞窟みたいなとこに入って来たけど、魔書の事何も知らなかったなぁ。」
「ピーシュさん、魔書、いえディクシオンの事、教えてください!」
ピーシュは2人に魔書ディクシオンの事を話し始めた。
「私たちが暮らしているこの魔天界の子供達にとって魔書は魔法を学ぶためのいわゆる教科書なのですが、ただ魔書を使用するためには、その魔書に選ばれたリーダーが必要なのです。そのリーダーがいないと魔書を取り扱う事はおろか、魔法の勉強を教わる事が出来ないのです。」
「ええ~?!何それ~!!それじゃ今はそのリーダーってのはいないわけ?」
「ええ、長きに渡り勤めていた魔書リーダーのジャンネット先生が病に倒れてしまいつい先日お亡くなりになりました。
そのためディクシオンの新たな魔書リーダーを決めるために我こそはと何名もの魔書リーダー希望者達の選考面接を行いました。ですが残念ながら、ディクシオンのお眼鏡に叶うリーダーは現れませんでした。」
「その選考面接ってどうやって決めるの?」
興味津々の香音はピーシュに質問した。
「それは性別と相性です。ディクシオンの場合は女性が好みでして、男性の希望者はそれだけで落選。そして相性というのは、ディクシオンを頭の上に乗せる事で相性を知る事が出来るのですが、それでもディクシオンとの相性が合わず希望者はみんな落選してしまいました。」
「すげぇなぁ!相性とか分かるのか~!」
「ディクシオンに選ばれる事はそんなに難しい事なのね。」
「そうです。前魔書リーダーのジャンネット先生とはそれはもう相性バツグンでしたから。彼女を越える魔書リーダーは現れないかもしれないと言われるほどで。ですが、もう1つディクシオンとの相性が分かる方法があるのです。
それがディクシオンの声が聞こえるかどうか。」
「ディクシオンの声?どういう事?」
「通常、ディクシオンの声は魔書リーダーのみが聞く事が出来ます。それは聞こえるのが選ばれてからか、選ばれる前かのどちらかなのです。」
「って事は、香音ちゃんは、要するにそのディクシオンの声を選ばれる前に聞いちゃったって事?」
「私にディクシオンの声が聞こえたって事は、私はディクシオンと相性が合うって事ね?」
「ええ、まさにお2人のおっしゃる通りです。」
「ええ~~~~‼︎‼︎」
2人とも目と口を大きく開けて驚愕の表情をしている。
「驚かせてしまい申し訳ありません。」
「どうりで、だからピーシュさん、さっきあんなに取り乱してたのね?」
「そりゃムリもねぇわ~!やっとリーダーが現れたんだからなぁ!」
「ご理解頂けて良かったです。
しかも、極め付けはそのリーダーが魔天界始まって以来、前代未聞の人間であるという事。もうこれは事件なのです!冷静沈着なこの私でさえも冷静を欠いてしまうほどの大事件なのですよこれは!」
「でもさ、なんか面白そうじゃん!オレこういうの嫌いじゃねぇよ。早くその魔書に会いに行こうぜ!」
「わたしもディクシオンに早く会いたい!ピーシュさん!」
「はい、もちろんですとも!あっ!それともうひとつお伝えしておかなくてはならない事があります。」
「おう!なになに?」
「カツ殿の手と同化した魔手とこれから会う魔書ディクシオンは、実は一対です。そして声が聞こえた香音さんと同じくその魔手も魔書ディクシオンと共鳴しているのです。」
「んっ?つまり、それはどういう事??」
「実はあの魔手は本来ならば魔書リーダーが装着するモノだったのです。」
「・・・・」
「え~~~~‼︎‼︎」
頭の整理が付かないまま2人は再び驚愕の表情をしている。
「えっ?!そーなの?じゃぁ、ってことは!な、なんかゴメンな~!あの時、箱を拾って、興味本意で開けて、そのまま手に付けちまって。あー!オレはなんて事をしちまったんだー!」
勝利は反省の面持ちでピーシュに謝った。
「カツ殿、大丈夫ですよ。」
「えっ?大丈夫なの?」
「ええ、もう済んだ事ですから。
実を言いますとね、本当はあの魔手は、坊っちゃま、いや、マック王子に私からプレゼントにだったのですが、色々と訳がありまして、はるばる人間界に行く事になり、その道すがら、私とした事が、大切なプレゼントを落としてしまい、必死で探しているところに丁度、カツ殿があの時拾ってくださったのです。そして不思議な乗り物で去っていくカツ殿を追いかけて追いかけて、やっと辿り着いた後、恥ずかしながら疲れ果て、寝てしまいました。」
「うわぁー!!さらにゴメンなー!あの箱、マッくんのだったんだぁ!本当ゴメン!マジ悪いことしちまったなぁ!」
「カツ殿はお優しい方ですね。でもご安心下さい。実はマック王子は魔法学が大の苦手でして。私が魔手をプレゼントしようとしたら、慌ててりゅうまに乗って人間界に逃げてしまったのです。それ程マック王子にとっては、あのプレゼントは嬉しく無かったため、カツ殿が手にしたと知って、内心安堵しているはずです。」
「要するにマックくん的には先輩に拾ってもらって好都合だったってわけね。」
「まぁ、私としてはマック王子の教育の為と思っていたので、とても不本意ではありますが、魔手を装着してしまった場合、ご存知の通り、装着主が目標を達成するまで魔手は外れる事はありません。この責任は全て私にあります。ですからカツ殿の目標を達成するまでの間、私が責任を持ってお手伝いさせて頂く覚悟でございます。」
「いやー、なーんだ!そーだったんだ!結局は結果オーライってわけだな!いやー、良かった良かったー!ってか、ほんで?オレの魔手と魔書の関係性の話は?」
「そうでしたね。基本的には魔手は魔書リーダーが装着するのですが、例外として、香音さんのように、魔書に選ばれる前に、魔書の声が聞こえた場合のみ、魔手の所有者は他のモノでも構わないのですが、これは本当に稀なケースでして、どういう運命のいたずらなのか、しかも人間がそれを成し遂げる事になるなんて、今までの歴史上初めての事なのですよ!」
「マジか‼︎そりゃまさに大事件だわ‼︎」
「先輩、わたし達凄い事になっちゃいましたね。なんだかワクワクしますね。」
「オ、オレもワクワクとドキドキがごちゃ混ぜになってる。」
「では、魔書についての説明はこれで終わりますが他に何かご質問はありますか?」
「とにかく早くディクシオンに合わせてくれ‼︎」
「先輩の目標を達成しないといけませんからね!わたしも頑張ります!」
「ありがとねー!香音ちゃん!めっちゃ頼もしい!」
「ピーシュさん案内宜しくお願いします!」
「はい、かしこまりました。ではこちらへ。」
ピーシュの案内で勝利と香音は再び洞窟の中を歩き始めた。
「香音さん、彼の名はディクシオンといいます。これから会う魔書の名前です。」
「ディクシオン?」
「はい。彼の話をする前にまず、人間のお二人には、そもそも魔書というモノが何なのかをご説明しておく必要があります。」
「ホントだ!俺たちワケも分からずこの洞窟みたいなとこに入って来たけど、魔書の事何も知らなかったなぁ。」
「ピーシュさん、魔書、いえディクシオンの事、教えてください!」
ピーシュは2人に魔書ディクシオンの事を話し始めた。
「私たちが暮らしているこの魔天界の子供達にとって魔書は魔法を学ぶためのいわゆる教科書なのですが、ただ魔書を使用するためには、その魔書に選ばれたリーダーが必要なのです。そのリーダーがいないと魔書を取り扱う事はおろか、魔法の勉強を教わる事が出来ないのです。」
「ええ~?!何それ~!!それじゃ今はそのリーダーってのはいないわけ?」
「ええ、長きに渡り勤めていた魔書リーダーのジャンネット先生が病に倒れてしまいつい先日お亡くなりになりました。
そのためディクシオンの新たな魔書リーダーを決めるために我こそはと何名もの魔書リーダー希望者達の選考面接を行いました。ですが残念ながら、ディクシオンのお眼鏡に叶うリーダーは現れませんでした。」
「その選考面接ってどうやって決めるの?」
興味津々の香音はピーシュに質問した。
「それは性別と相性です。ディクシオンの場合は女性が好みでして、男性の希望者はそれだけで落選。そして相性というのは、ディクシオンを頭の上に乗せる事で相性を知る事が出来るのですが、それでもディクシオンとの相性が合わず希望者はみんな落選してしまいました。」
「すげぇなぁ!相性とか分かるのか~!」
「ディクシオンに選ばれる事はそんなに難しい事なのね。」
「そうです。前魔書リーダーのジャンネット先生とはそれはもう相性バツグンでしたから。彼女を越える魔書リーダーは現れないかもしれないと言われるほどで。ですが、もう1つディクシオンとの相性が分かる方法があるのです。
それがディクシオンの声が聞こえるかどうか。」
「ディクシオンの声?どういう事?」
「通常、ディクシオンの声は魔書リーダーのみが聞く事が出来ます。それは聞こえるのが選ばれてからか、選ばれる前かのどちらかなのです。」
「って事は、香音ちゃんは、要するにそのディクシオンの声を選ばれる前に聞いちゃったって事?」
「私にディクシオンの声が聞こえたって事は、私はディクシオンと相性が合うって事ね?」
「ええ、まさにお2人のおっしゃる通りです。」
「ええ~~~~‼︎‼︎」
2人とも目と口を大きく開けて驚愕の表情をしている。
「驚かせてしまい申し訳ありません。」
「どうりで、だからピーシュさん、さっきあんなに取り乱してたのね?」
「そりゃムリもねぇわ~!やっとリーダーが現れたんだからなぁ!」
「ご理解頂けて良かったです。
しかも、極め付けはそのリーダーが魔天界始まって以来、前代未聞の人間であるという事。もうこれは事件なのです!冷静沈着なこの私でさえも冷静を欠いてしまうほどの大事件なのですよこれは!」
「でもさ、なんか面白そうじゃん!オレこういうの嫌いじゃねぇよ。早くその魔書に会いに行こうぜ!」
「わたしもディクシオンに早く会いたい!ピーシュさん!」
「はい、もちろんですとも!あっ!それともうひとつお伝えしておかなくてはならない事があります。」
「おう!なになに?」
「カツ殿の手と同化した魔手とこれから会う魔書ディクシオンは、実は一対です。そして声が聞こえた香音さんと同じくその魔手も魔書ディクシオンと共鳴しているのです。」
「んっ?つまり、それはどういう事??」
「実はあの魔手は本来ならば魔書リーダーが装着するモノだったのです。」
「・・・・」
「え~~~~‼︎‼︎」
頭の整理が付かないまま2人は再び驚愕の表情をしている。
「えっ?!そーなの?じゃぁ、ってことは!な、なんかゴメンな~!あの時、箱を拾って、興味本意で開けて、そのまま手に付けちまって。あー!オレはなんて事をしちまったんだー!」
勝利は反省の面持ちでピーシュに謝った。
「カツ殿、大丈夫ですよ。」
「えっ?大丈夫なの?」
「ええ、もう済んだ事ですから。
実を言いますとね、本当はあの魔手は、坊っちゃま、いや、マック王子に私からプレゼントにだったのですが、色々と訳がありまして、はるばる人間界に行く事になり、その道すがら、私とした事が、大切なプレゼントを落としてしまい、必死で探しているところに丁度、カツ殿があの時拾ってくださったのです。そして不思議な乗り物で去っていくカツ殿を追いかけて追いかけて、やっと辿り着いた後、恥ずかしながら疲れ果て、寝てしまいました。」
「うわぁー!!さらにゴメンなー!あの箱、マッくんのだったんだぁ!本当ゴメン!マジ悪いことしちまったなぁ!」
「カツ殿はお優しい方ですね。でもご安心下さい。実はマック王子は魔法学が大の苦手でして。私が魔手をプレゼントしようとしたら、慌ててりゅうまに乗って人間界に逃げてしまったのです。それ程マック王子にとっては、あのプレゼントは嬉しく無かったため、カツ殿が手にしたと知って、内心安堵しているはずです。」
「要するにマックくん的には先輩に拾ってもらって好都合だったってわけね。」
「まぁ、私としてはマック王子の教育の為と思っていたので、とても不本意ではありますが、魔手を装着してしまった場合、ご存知の通り、装着主が目標を達成するまで魔手は外れる事はありません。この責任は全て私にあります。ですからカツ殿の目標を達成するまでの間、私が責任を持ってお手伝いさせて頂く覚悟でございます。」
「いやー、なーんだ!そーだったんだ!結局は結果オーライってわけだな!いやー、良かった良かったー!ってか、ほんで?オレの魔手と魔書の関係性の話は?」
「そうでしたね。基本的には魔手は魔書リーダーが装着するのですが、例外として、香音さんのように、魔書に選ばれる前に、魔書の声が聞こえた場合のみ、魔手の所有者は他のモノでも構わないのですが、これは本当に稀なケースでして、どういう運命のいたずらなのか、しかも人間がそれを成し遂げる事になるなんて、今までの歴史上初めての事なのですよ!」
「マジか‼︎そりゃまさに大事件だわ‼︎」
「先輩、わたし達凄い事になっちゃいましたね。なんだかワクワクしますね。」
「オ、オレもワクワクとドキドキがごちゃ混ぜになってる。」
「では、魔書についての説明はこれで終わりますが他に何かご質問はありますか?」
「とにかく早くディクシオンに合わせてくれ‼︎」
「先輩の目標を達成しないといけませんからね!わたしも頑張ります!」
「ありがとねー!香音ちゃん!めっちゃ頼もしい!」
「ピーシュさん案内宜しくお願いします!」
「はい、かしこまりました。ではこちらへ。」
ピーシュの案内で勝利と香音は再び洞窟の中を歩き始めた。
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